あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るいずととら-9


ある晩のことである。
シルフィードは夜の散歩を楽しんでいた。月の光を浴びながら、楽しそうに歌うシルフィードの姿は、まさにおとぎ話の中から出てきたようであった。


(たまにはこうしてひとりで飛ぶのも悪くないのね、きゅいきゅい)

普段はタバサを乗せているから、シルフィードが全速力で飛ぶことはほとんどない。
しかし、シルフィードも人間に換算すれば10歳ほど、ちょうど遊び盛りの年頃であった。

(よし、どれだけ高く飛べるかやってみるのだわ! るー! るるーる!)

シルフィードの青いうろこに覆われた強靭な翼が、夜の闇を切り裂いていく。強力な速さを誇る風竜である。
ぐんぐんと速度を上げ、あっという間に、シルフィードは雲を突き抜けて飛んだ。

(気持ちいい! やっぱり、人間の服はきゅうくつ。でも、言葉つかえないのもきゅうくつ!もう、おねえさまはケチね!)

シルフィードは、タバサの同級生である、桃色のルイズが召喚した使い魔のことを思い出していた。
その使い魔は、巨大なトラのような幻獣で、平気で人語を操っていた。どうやら空も飛べるらしい。

(それに、ギーシュさまと戦ったとき、炎を吐いてた! 先住魔法? とても強力なのだわ。キュルキュルのあばずれよりも強いかも)

とすれば、あの幻獣のブレスはスクウェアクラスのメイジと同等であることになる。もっとも、ドラゴンの世界ではそう珍しいことではないだろうが。

(金色の幻獣、強かった! おねえさまも驚いていたもの。おねえさまと戦ったら、どちらが強いかしら? きゅいきゅい……)

そんなことを考えながら、シルフィードは風に任せて飛んでいた。

「それ」はいつも空の高いところにいる。
時折、人間を食べに低いところに降りていく。あとには、溶かされた人の死体が残った。
その月の晩も、腹をすかせた「それ」は、雲の上を飛んでいて――
竜の子供を見つけたのだった。



とらは腹を減らしていた。
『てりやきばっか』をさんざシエスタに食べさせてもらったのだが、こうして空を飛んでいると、自分の「空腹」に気がつく。

(ハラァ、減ってるわけじゃねえ……こいつあ、喰い足りねーのは戦い、だな……)

「ぎいしゅ」をぶちのめしたばかりなのであるが、とらにとっては戦いのうちにも入らなかった。ドットメイジの悲しさである。
とらはふとルイズのことを考える。たしかに、ひ弱な魔法使いであった。だが……

(法力……いや、魔力はある。だが、上手く形にできてねえな)

ルイズの説明によれば、ここでの魔法の系統は、火・水・土・風・伝説の系統の五種類だという。
それぞれのメイジは、自分の得意とする系統を一つ持つ。複数の系統を使えるメイジは、ライン、トライアングル、スクウェアなどと呼ばれる。

(たしかに、法力とは違えな……)

法力は固有の系統などは持たない。火、水、土、金、木、それぞれの気を時にはいなし、時には跳ね返す。
秋葉流ほどの術者であれば、とらの炎も雷もあしらうことが出来た。

(あんとき、空を飛んでた竜……あいつぁ化生だな。コトバを使う……それに、上に乗ってたちいせえのは、少々やるかもな)

とらの中で何かが熱を帯び、口元が凶暴に歪む。ちりちりとたてがみが雷をほとばしる。

(くっくっく……うしお……おめーはどこにいるよ? こっちぁ、ちったあ面白くなりそうだぜ……!)

その時だった。

とらの視界に、いつか戦った化け物が目に入ったのは――



(竜のこどもかぁ~~~。へへへへ、ひさしく喰ってねぇ~~~。うまそうだぁ……)

「それ」はすさまじい速さで、シルフィードを追いかけてきた。
視界に入った「それ」を見て、シルフィードの目が驚愕に開かれる。

(な、なに? なんなの!?)

長い頭に手足、巨大な両目と口、そして、半透明の体は、へばりつくようにシルフィードを追ってくる。
かつて見たことのない幻獣……いや、それは、まさしく化物と呼ぶにふさわしかった。

(ふりきって……やるのだわ……!)

速力を上げようと、ぐんと力をこめたシルフィードの翼に、ずるりと「それ」の手が巻きつく。シルフィードは翼に痛みを感じた。

(とか……されてるの? いや……おねえさま、助けて! 助けて!!)

(喰ってやらぁ~~。溶かしてなァー。へへ……へへ)

「助けて! 助けて!! おねえさま!」

恐怖に全身を貫かれたシルフィードは、死に物狂いで叫んでいた。タバサなら、タバサならきっと助けてくれる。
こいつをやっつけてくれる――
だが。
現れたのは、タバサではなかった……。

「おぉおおおおおおおおおおっ!!!」

雄叫びが聞こえ、ついで、巨大な炎が「それ」掠める。「それ」は身悶えして、シルフィードを放した。

(なぁんだぁァ~~~!! てめぇはぁァ~~っ!!)

身を焦がしながら「それ」が叫んだ。闇夜に浮かび上がる金色のたてがみが、二つの月の光を浴びて妖しく輝きを放つ。

「くっくっく……この長飛丸を忘れたかよ? ああ、衾ァ……?」

(あ、あれは……桃色のルイズの呼び出した使い魔……!)

シルフィードと、「衾」と呼ばれたそれの間に、ルイズの金色の幻獣が立ちふさがった。

(て、てめえぇなんて、しらねえぇ~~ッ! じゃまをするなぁァ~~~……へ、へへ、雑魚がァ! てめえも喰ってやらァ~~)

そう叫ぶと「衾」は体をよじらせながら、ルイズの使い魔に襲い掛かる。

「けっ! うしおの野郎にぶった切られて、ちっさくなってるじゃねーか。そんなんでわしに勝てると思ったかよ?
 ああ!? ばっかやろうがよぉおおおっ!!」

轟ッ!!

幻獣が吐いた炎は、ギーシュと戦ったときのそれとは比べ物にならない大きさである。
まるでファイアー・ボールがマッチの火のような、圧倒的な火力であった。

(げええええええッ! 火は、火はイヤダァアアァ!!)

「あばよ、衾! オメーが弱いのがわりいのよぉ!!」

閃光――一瞬、太陽よりも明るくなったようにシルフィードには見えた。とらが出した雷が、弱りきった「衾」に止めを刺したのだ。
チリチリと雷をまだ帯びたたてがみを揺らし、黄金の幻獣がシルフィードを振り返る。

「あの青髪の小娘のところに帰んな、竜のガキ……わしがぶっころしたあいつぁ、衾ってバケモンだ。
 火には弱いが、他には滅法つえぇのよ。大量の火が出せねえなら、ここらの高さは飛ばねえことだな……」

それだけいうと、金色の獣は楽しそうにニヤリと笑い、再び風のように飛んでいってしまった。

(強い……! あんな強いヒト……見たことないわ……!!)

痛む翼で、トリステイン魔法学院に降下していくシルフィードは、なぜか自分の体温が上がり、心臓が高鳴るのを感じていた。
恐怖か、好奇心か。それとも、これが、人間の言うところの「恋」、なのだろうか?

「るーるるー、るーるる、るるー……」

翼の痛みに顔をしかめながらも、シルフィードは歌っていた。そして、治療の水魔法をかけてもらいに、タバサのもとに急ぐ。

(おねえさま、おねえさま! 不思議、わたし、恋をしたかもしれないの……二つの月に見下ろされて、金色に輝く大きな影に!)

るーるる、るーるるーる……

学院には、かすかにシルフィードの歌声がこだましていた。不安から開放されて、安心した歌声。
歓喜の歌、そして、求愛の歌であった。


ごぉおおおおぉおぉぉぅう……

金色の風が、二つの月に照らし出された夜の闇を切り裂いて飛んでいく。


そんな晩のことであった。



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