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白き使い魔への子守唄 第14話 忠実なるもの

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なぜタバサの母親が何の前触れもなく、理由も謎のまま、回復したのか。
それは毒を飲んだ時からの記憶を失っている本人すら解らぬ事だった。
そのため手放しに喜ぶという訳にはいかなかったが、タバサはとても落ち着いていた。
なぜ母が正気を取り戻したのか、理由などどうでもいいという態度。
母親はタバサが目覚めてから、改めて己の身に起きた出来事を聞かされ、
今までタバサにつらい思いをさせたと酷く悔いた。
だがこれから、今までの不幸だった分を取り戻すべく、幸せな時間をすごせる。
キュルケもしばらく学院を休んで、母と一緒にすごす事を勧めた。
しかしタバサは言う。
「他にやる事ができた」
タバサはその日のうちに学院へ戻った。ルイズ達と一緒に。

   第14話 忠実なるもの

「本当によかったの? せっかくお母様が元気になられたのよ?
 今までさみしい思いをしてきたんだから、数日学院を休むくらい……」
「いい」
馬車の中でキュルケはしきりにタバサに話しかけたが、タバサは普段通り黙々と読書、
かと思いきや時折御者台に目を向ける。手綱を握っているのは、ハクオロだった。
「ダーリンと何かあったの?」
「別に何も」
やっぱり何かあったに違いないとキュルケは思ったが、
タバサがそれを口にしたくないなら、何も訊かない方がいいのだろうとも思う。
ギーシュとモンモランシーは外の景色を眺めながら歓談している。
ルイズは、一人でぼんやりとハクオロの背中を見つめていた。何か考え事があるようだ。
しばらくして、ハクオロは「あっ」と声を上げる。
全員の視線が集中する中、ハクオロは気まずそうに言った。
「……いかん」
「ハクオロ、どうかしたの?」
「すっかり忘れていた……」
「何を?」
ハクオロは、引きつった笑みを浮かべる。
「デルフの奴を、タバサの家に置き忘れた」
「別にいいんじゃない?」
「そうね、無くても特に困らないんじゃない?」
「デルフって何?」
「ああ、あのインテリジェンスソードか。後で送ってもらえばいいんじゃないか?」
こうして、わざわざ取りに戻るというのを面倒くさがった皆の意見により、
デルフリンガーは後で学院に送ってもらう事になった、のだが。
「私が取ってくる」
と、タバサが言うや、口笛を吹いて使い魔のシルフィードを呼び、
わざわざ取ってきてくれるから驚きだ。
ちなみに持ってこられたデルフリンガーは愚痴がうるさかったので、
鞘にきつくきつく納められましたとさ。

学院に帰ってからの生活は静かで平和だった。
特に事件も無く、ギーシュとモンモランシーも仲直りしたようで、
タバサも手紙で母とやり取りしているようだ。それを見てキュルケも安心している。
ハクオロはハクオロで、タルブの村の様子を知るべく手紙を受け取っていた。
シエスタと一緒に手紙を読んで、二人して笑っているところを見ると、
どうやらタルブの村改造計画は順調らしい。収穫が楽しみだ。
ルイズは、コモンマジックに続いて系統魔法も成功させようと躍起になっているが、
結局夜中の広場で爆発を起こすだけで何の進展も無かった。

平和な日々を壊す人物は、外からやって来る。

ある日、突然、アンリエッタ王女殿下が学院を訪問してきた。
授業は中止になり生徒達総出で歓迎する。
姫の警護をしていた衛士の一人に、ルイズとキュルケは見惚れてしまう。
が、ルイズの場合はキュルケとは違う意味でその衛士から目が離せないようだった。
夜になって、ルイズの部屋をアンリエッタが訪ねてきた。
探知の魔法で目や耳が無い事を確認すると、顔を隠すフードを脱いでルイズと手を取り合う。
ルイズは幼少の頃、アンリエッタ姫の遊び相手をしていた事があったらしい。
思い出話に花が咲き、蚊帳の外のハクオロは藁の上で正座をしていた。
一応、相手が姫という事で正座なのだが、眼中に無いから意味が無い。
しかしいよいよアンリエッタが本題に入ろうかとしたところで、
今さらすぎるがハクオロの存在に気づいた。
ルイズが部屋に連れ込んだ恋人、というお約束の誤解を解いて使い魔と説明。
するとアンリエッタは、秘密の話をルイズだけでなくハクオロにも聞かせる事にした。

アンリエッタはゲルマニアの皇帝に嫁ぎ、両国に同盟を結ぶ事になった。
理由はアルビオンの貴族が反乱を起こし、
王室を倒した後はトリステインを攻めてくる可能性が高いためだ。
だが同盟のための婚姻を阻む材料が、アルビオンの王室にある。
それが反乱軍、貴族派の手に渡れば婚約ともども同盟はご破算。
かつてアルビオンのウェールズ皇太子に送った一通の手紙がその材料だ。
大仰に嘆き悲しむアンリエッタを、ルイズが励ます。自分がその手紙を回収する、と。
そこでハクオロが口を出した。
「失礼。アンリエッタ皇女殿下にひとつ質問がある」
「何でしょう?」
「貴女は、友人たるルイズに『死ね』と命じているとご理解しておいでか」
アンリエッタとルイズの表情が固まる。
「……反乱の起こっている國、しかも劣勢な王室の皇太子に会いに行くなど不可能に近い。
 まさに命をとして果たさねばならぬ任務だろう。
 國の平和のために、唯一信頼の置ける友に命令を下すという貴女の判断を否定はしない。
 だがそのような泣き落としをしてルイズを死地に送るのは如何なものか?」
「……それは…………」
「少なくとも私は、自分の部下に危険な任務を命ずる時、その者の死を覚悟する。
 ……私の言葉で、その者が死ぬという責任を負う覚悟を。貴女はどうか? 姫殿下」
沈痛な面持ちとなったアンリエッタは、しばし黙り込み、唇を噛んで震えた。
そんなアンリエッタを見ながら、ハクオロはいくつかの記憶を思い出す。

死ねと命じた事は無い。だが、死の危険がある命令を下した事はある。
戦なのだ。死者が出ぬ訳がない。
それを理解した上で、自分は戦に身を投じた。
守るために戦った事もあれば、復讐のために戦った事もあった。
皇として、國のために、友のために、家族のために。

(ああ、そうか。私は皇……トゥスクルの皇だった)

思い出したからこそ、このアンリエッタという姫の未熟さがよく解る。
だからといって彼女を蔑むつもりは無い。
しかしこのままでいいとも思わない。
「アンリエッタ姫。無礼を承知で、言わせていただきます。
 貴女は皇族としてもっと自覚を持ち、学ぶべきだ。
 友の前で素顔をさらすのはいい。だが公私はわきまえなければならない。
 如何に相手が友といえど、このような頼み事をするのなら、
 例え胸中がどれほどの不安にさいなまれようとも毅然とあるべき……」
デルフリンガーが鞘をかぶったままハクオロの後頭部をどつく。
「だっ!?」
「ひひひ、姫様に何て無礼な事を……!」
デルフリンガーを振るったのはルイズだった。
しかしそんな彼女を、アンリエッタがたしなめる。
「いいのです、ルイズ・フランソワーズ。彼の言う事はもっともです。
 このアンリエッタ、如何に自分が未熟であるかを思い知りました。
 使い魔さん。貴方はもしや、高貴な生まれの方でいらっしゃる?」
「自分は……」
皇だった。しかし自分は反軍を率いて朝廷を滅ぼし、新たに國を築いたにすぎない。
余計な乱を防ぐため皇の座について、皇としての立ち振る舞いも学んだ。
そう、例えば……山積みの書簡を置いて逃げ出して虎に餌をやったり、
エルルゥとお茶を飲んだり、視察と称して町に行っちゃったり。
「……自分は、別に高貴ではありませんよ」
元皇として偉そうな事を言ってしまったハクオロだが、
思い出した記憶によると、あまり褒められた皇ではなかったように思える。
「自分は、異境から召喚されたルイズの使い魔です。
 今の私はそれ以上でもそれ以下でもありません」
「……そうですか。では、ルイズ・フランソワーズ。改めて命じさせていただきます。
 アルビオンへ赴き、何としてもウェールズ様の持つ手紙を回収してきてください」
仕切りなおしとばかりに、ルイズは深々と頭を垂れてひざまずいた。
「はっ」
「そして……この任務、どれほど危険なものか承知した上で……。
 もうひとつ、無理難題を申しつけます」
「何なりとお申しつけください」
「生きて、帰ってきてください。私のお友達、ルイズ・フランソワーズ」
「……必ずや、この任、完遂してみせます」

綺麗に場がおさまったと思った途端、部屋の戸を開け放ち一人の少年が入ってきた。
「姫殿下! その任、どうか僕にもお与えください!」
ギーシュである。どうやら部屋の外で盗み聞きしていたらしい。
気づかなかった自分達に落ち度があるが、聞かれてしまった以上放ってもおけない。
仕方なく彼も任務に加える事で情報の漏洩を防ぐ。
アンリエッタはウェールズに手紙を返してもらう旨を書いた手紙を用意し、
ルイズ達は翌日の早朝、ラ・ロシェールに向けて馬を走らせる事にした。
そして最後に、アンリエッタは己の指から抜き取った青い宝石の指輪をルイズに渡す。
「これは?」
「これは水のルビー。お守りとして持っていってください。
 もしお金に困るような事があれば、資金に変えてしまって構いません」
これで任務のすべてを話し終えたと、アンリエッタはこっそりと退出する。
それからしばらくして、ギーシュも部屋から出て行った。
明日は早いとルイズとハクオロが寝入ってから、
窓の外で、外壁に錬金をかけ足場を作って息を潜めていた彼女は、
ようやくレビテーションで静かに地面に降りた。

翌朝になってふと目覚めたキュルケは、まだ早い時間だったため二度寝を考えたが、
ふと見た窓の外、学院の塀を越えて広場へと入ってくるシルフィードに気づいた。
朝食をもらいにきたにしては妙だ、この時間では他の使い魔は眠っている。
となれば、任務、だろうか?
タバサは王室から危険な任務を命じられ、利用されている。死すら願われている。
急速に意識を覚醒させたキュルケは、素早く着替えるとタバサの部屋に走った。
「タバサ!」
アンロックで鍵を開けて中に入ると、タバサは旅支度を整え、
今まさに窓から抜け出そうとしている最中だった。
「……任務、なの?」
「違う」
恐る恐る訊いて、即座に否定された。
タバサの事情を知っている自分に対して嘘をつく理由は無い。
「……違うの? じゃあどこ行くのよ?」
「……ラ・ロシェール」
「……任務じゃないのよね?」
タバサはうなずく。
しばし黙考したキュルケは、タバサの肩を抱くと窓から飛び降りる。
予想通り、そこには彼女の使い魔シルフィードが待機していた。
「さあ、ラ・ロシェールにしゅっぱーつ!」
抗議の声を上げたのはタバサではなくシルフィードだった。
いいの? とタバサに鳴いて訊ね、いい、と態度で返事をされる。
こうしてタバサとキュルケはラ・ロシェールに向けて飛び立った。

早朝から旅支度を整えたルイズとハクオロは、馬を二頭借りて学院の外に出る。
そこにはやけに張り切った様子のギーシュが、馬に乗って待っていた。
「やあ! 遅かったね二人とも!」
「あんたが早いのよギーシュ。約束の時間まで、まだちょっとあるわよ」
「そうかい? いやあ、姫殿下に尽くせるのだと思うと気分が晴れ晴れとしてね!」
「あー、そう」
ギーシュのテンションに朝っぱらからついていけるはずもなく、
ルイズとハクオロは申し合わせたように深々と溜め息をついた。
「……さて、行きましょうか」
「……そうだな、行くとしよう」
頭に春が来てるギーシュを置いていく勢いで二人は馬を走らせようとし、
直後頭上から舞い降りてくる影に気づき慌てて馬を止める。
「何だ?」
呟きながら上を見ると、一頭のグリフォンがその背に何者かを乗せて降りてきた。
アンリエッタからの命を知るのは自分達のみ。
だからグリフォンに乗る人物は、敵でもなければ味方でもないはずだ。
学院の誰かだろうかとハクオロは思ったが、
着地したグリフォンから降りてきたダンディな男は満面の笑顔を向けてきた。
「久し振りだねルイズ! 僕の可愛いルイズ!」
「わ……ワルド様!?」
男の正体はグリフォン隊の隊長、ワルド子爵だった。
聞けば彼も昨晩アンリエッタから命を受け、ルイズ達に同行するよう言われたらしい。
ルイズの身を案じて、あの後信用できる者を護衛にと考えたのだろう。
そうならそうと前もって言って欲しかったが、仲間が増えるのは心強い。
ワルドが憧れの魔法衛士隊とあって、ギーシュは感激し、
ハクオロも快く彼を仲間として受け入れた。
しかし、顔見知りらしいルイズとワルドの関係を訊ねてハクオロは唖然とする。
「婚……約者?」
これにはギーシュも引っくり返るほどに驚いた。
ルイズは恥ずかしがり、けれど、嬉しそうな素振りも見せる。
だからワルドが自分のグリフォンに乗らないかとルイズを誘えば、
当然その誘いを受け、余った馬をハクオロに頼んで戻しに行ってもらう。

ハクオロが馬を返しに学院の中に戻っている時、ワルドは何気なくルイズを褒めた。
「ルイズ。君は美しい指輪と腕輪をしているね。どちらも色鮮やかな蒼の宝石がついてる。
 とてもよく似合ってるよ、僕のルイズ」
しかしその褒め言葉で、初めてルイズの表情が陰った。
左手にしているクスカミの腕輪を見て、白い仮面の男を思い浮かべた。
――これは君が持っているといい。
今朝旅支度をしている時、彼が護身用にと渡してきたのだ。
コモンマジックを除けば、威力が凄まじいとはいえ失敗魔法しか使えないルイズにとって、
雷の柱を何本も落とせるこのクスカミの腕輪は強力な武器となるだろう。
使い魔として当然の心配りが、ルイズにはとても嬉しかった。

ハクオロが戻ってくると、彼とギーシュは馬で、ルイズとワルドはグリフォンで、
ラ・ロシェールに向けて旅立つのだった。成すべき事を果たすために。






NGシーン
「……任務、なの?」
「違う」
恐る恐る訊いて、即座に否定された。
タバサの事情を知っている自分に対して嘘をつく理由は無い。
「……違うの? じゃあどこ行くのよ?」
「……ロマリアで開かれる天下一はしばみ草大食い大会へ出場しに」
「……行ってらっしゃい」

   食闘士(シュヴァリエ)タバサ 天下一編 序奏~overture~ 完

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