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生まれえざる0

――生まれえざる0――

「ふ…たった7万か……やれやれ、私は何処までも罪人なのだな…」
アルビオンから艦隊が退却する折、その殿を押し付けられた己の主に代わって、私がこれを迎え撃つ事になった。
「彼女は艦に乗せておいた、後は全てを殺し……いや、止める」
銀の髪の毛を風に遊ばせながら、長身の男が一人、覚悟を決めた。

私は、私が生まれた世界で数多の罪を犯した男だ。
世界を、つまらないし美しくも無い物であると決め付けて、目に付いた全てを殺し続けた。
世界を愛した姉さんをこの手で殺し、あの不思議な石版の力を我が物にした時から、私は狂っていたのだろう。

そんな私を止めてくれた男がいた。

最初に出会った時、彼は狼の力を持ち、しかしその力は私の腕の一振りで吹き飛んでしまうほど弱かった。
だというのに彼は何度でも立ち上がり、最後には、石版をおいて逃げざる終えなくなってしまった。

そしてその時から、私の中に二つの声が争うようになったのだ。
一つは世界を愛し罪を償えという、姉さんに良く似た人の声
もう一つは、世界を異形で満たし、己の天下とせよという悪魔の声

やがて、悪魔の声が人の声を押さえ込むようになり、私は多くの人を殺した。
あれは、そんな時だった……女の身で私の力を模倣したガイアの使いを切り伏せた時に、彼が現われた。
彼は、以前よりも鋭く、強く、早い攻撃を持って私を打ち据えた。しかし、それでも私の方がずっと強かった。
心が折れるような速さで腕を振るい、骨が砕けるような力で蹴りを入れ、魂が霧散するような斬撃を喰らわせて…それでも彼は倒れない。
私は……私の中の悪魔は、彼を恐れた。
私の中の、僅かに残っていた人間が、彼の姿に光を見た。

そして、悪魔は逃げた……私の中の悪魔が、彼を危険な存在だと認めたのだ。
その瞬間、私は、人としての私は、私を模倣した女性と共にこの悪魔を切り裂いた。

その後私は、自分の犯した数多の罪に絶望し、そして悔やんだ。
贖罪の為にと言われて武道会に出たりもしたが……そんな事で償いきれるものではなかった。

そして、少しでも贖罪になればと世界を飛び回っていた時の事だ、私はこのハルゲニアに召喚された。
それからは、私には眩しすぎるような楽しい日々だった。

私を召喚した少女は、私の顔を見ると頬を赤く染めて目を背ける事が多かった。
洗濯物を頼まれ、困っていたところで話しかけてきたメイドとも友になった。
薔薇を名乗る少年がそのメイドを攻め立てた時、私は彼女を庇って決闘を受けた。
――青銅とはいえ、動く金属の塊を7体同時に戦う為には、私も思わず本気を出さざる終えなかったが…

職員に扮していた女盗賊が使う、巨大な岩の巨人と戦った事もあった。
窮地に立たされた時、主である少女の誇りある姿を見て、私の中で何かが吹っ切れたように想う。
胸に刻まれた不思議な模様が、嘗ての石版とは異なる、清浄な力を私にくれて、私はゴーレムを切り裂いた。

アルビオンに書類の奪還に赴いた時には、主である少女の婚約者が裏切りを働き、私は裏切り者である彼の腕を切り落とした。
そういえば、アルビオンの王子が――死者ではあったが嘗ての私の様に操られた事もあったな…

私は、平和を願って戦った。
短い間であったが、主である少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと過ごした時間を、私は忘れない。
そして、大きな戦の最終局面、撤退する艦隊の殿を彼女が一人で行う事になったと聞いて、私は決意した。
僅かな時間ではあったが、こんな罪人に明るい世界と楽しい時間をくれた彼女を、美しい世界を、私は守りたいと…

私は、ここで私の命を燃やし尽くす覚悟がある。
嘗て悪魔が私を利用していた時には遠く及ばないだろうが、それでも、私は負けない。
胸に刻まれた模様が…ルイズとの絆が、私の思いと魂を燃やし戦う力をくれるのだから、私は負けない!

「うォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!」

私は『生まれえざるモノ』へと姿を変える。
私の髪と同じ色の外皮を持ち、長い触角と虫のような外郭、手首と足首からは鋭い刃が伸び、背中からは長い触手が2本生えている異形…
その見るに耐えない、禍々しき怪物に、幸せな時間をくれた主を……この怪物は、心から守りたいと想う。

だから私は今一度、武器を持つ人ではなく、人に武器を持たせる国を、世界を殺す罪人と成ろう!



―――以下旧アルビオン軍司令部大将の記録より抜粋
7万の軍勢がトリステイン軍の艦隊に追撃をかけた時の事だ、我々は異形の勇者に出会った。
ソレはおおよそ人には見えない姿であり、人所かエルフですら実現しえないであろう動きで我が軍を翻弄した。
放たれた矢も、魔法もソレの振るう刃の前には無力であり、空を飛ぶ軍艦ですらも、ただの一刀で切り伏せでみせた。
それだけならば、ただの怪物でしかないのだろうが、ソレは違った。
負傷者は数え切れなかったが、驚くべき事に死者は一人もいなかったのだ。
船が落ちたというのに、その乗員の全てをソレはただ一つの体で救ったのだ!
ソレは異形の姿ではあったが、イーヴァルディの勇者だとその場に居た全員が思った…
我が軍は戦意を喪失し、異形なるイーヴァルディの勇者は我々の前から消えた。

それから5年ほどが経過した時、世界は大きく変わっていた。
各国の保有していた火薬が、武器が、船の全てが何者かによって破壊されたのだ。
その破壊の爪跡は、巨大な刃物を振り回したかの様だった。
それだけではない、平民の間に製鉄技術や金属加工の技術、液状化した石炭を燃やすだけで動く動力などが齎された。
その上、安価で効果の高い薬を、岩や草等の材料を磨り潰し、または水や酒に溶かして混ぜただけで作れる者すら現われたのだ。
たった1年と言う短い時間の流れは、我々メイジの存在意義すら否定して見せたのだ。

そして、その全てをあの『異形のイーヴァルディの勇者』が行ったのだと云われている。
我々、旧アルビオン軍を初めとする調査委員会の全てが、彼の軌跡を追っているが、依然として彼の行方は知れない。

―――――――――――――――――――

空には星が輝き、町には魔法ではない安定した灯りが点っている。
産業の発展によって大気汚染や水質汚染が引き起こされる事がないように、後10年は世界を見て回った方がいいだろう。
だが、私には会わねばならない相手が居る。
数年前、私がこの世界に来る切欠となった光の鏡が現われた…しかし、あの時私は彼女の元に戻るわけにはいかなかった。
ただ、何者かに襲われている事だけは解ったので、片腕だけを突っ込み、私の生まれえざるものとしての感覚を頼りに敵を切り伏せた。
私は、あの時腕にすがり付いてきた彼女の温もりを未だに覚えている。
だが、私は言った、あと5年だけ時間をくれと…皆が平等で、平和な世界を作りたいんだと…

あれから丁度5年になる。彼女は怒るだろう、もしかすると爆発に巻き込まれるかもしれない。
だが、私はそれらを恐れる事は無い。
私は、彼女の今の住まい……ヴァリエール家の門を叩く。

少しして扉が開くと、そこには……


――お帰りなさい、バカシオン――


  • BLOODY ROAR3~4、EXより、世界を震撼させた異形の獣人―シオンを召喚―

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