あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

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「ん、なあに? 聞きたい事? ……ああ、それは太陽ね。朝になると昇るし、夜には沈むわ。
あれがないと農作物は育たないし、皆からも元気がなくなるし……え? あれ? あっちは太陽じゃないわ。あれは……」

月明かり差し込む部屋に、少女の声が響いている。ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの声だ。
一見延々と独り言を続けており、見るものが見れば、ヴァリエール家のご令嬢の……あるいは、出来そこないのゼロのルイズの気が、遂に触れたと思ってしまうだろう。
だが、それは独り言ではない。
会話相手の声は、ちゃんと響いていた。――ルイズの頭の中だけに。

一体、どうなっているのだろうか。
話は、二人が出会った日まで遡る。



『ここは、どこ? ボクは、だれ? どうしてボクは、ここにいるの……?』

そう囁く声を聞き、流石のルイズも飛び上がるほどに驚いた。
「あ、貴方……お、起きてる、の?」
確かミスタ・コルベールは、彼が胎児にも等しい状態だと言っていた。そしてその命は脆いとも。
だが、彼は生きていた。目は閉じているし、身体も水の中で丸めたままだが、生きていた。
「ねえ! もう一度、もう一度でいいわ! 何か言って!」
ルイズは水槽に顔を押し付けそうな勢いでかぶりついた。

『……キミは……なあに?』

使い魔が――しかも、まだ言葉も覚えていないであろう胎児が言葉を発した。
韻竜か、何らかの先住魔法なのか、はたまたルイズも知らぬ未知の力なのか。
あの状態から持ち直した事も驚きだったが、こうして口を利いたことも驚きだった。
ルイズは唾を飲み込み、
「わ、わたしは、ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……あなたを呼び出したメイジよ」
と、名乗った。
『…………る、い、ず?』
まただ。また、聞こえた。おまけにその言葉は、ルイズの頭の中に直接聞こえてきた。
しかも、話しただけではない。ルイズの存在を認識し、その言葉に答えたのだ。
緊張なのか恐怖なのか、あるいは興奮なのか。ルイズの額を汗が伝った。
「そ、そうよ。ルイズ。それが、わたしの名前。……言ってみて?」
『る、い、ず……るいず……ルイ、ズ?』
「そう! ルイズ!」
ルイズ、ルイズ、と、覚えようとするように復唱する「彼」。
やがて彼は、
『うん。おぼえたよ、ルイズ』
と答えた。そして、
『ねえ。ここは、どこ? ボクは、だれ? どうしてボクは、ここにいるの?』
そう、無邪気な――しかし不安げな声で、そう尋ねてきた。
どうやら、知能は高いらしい。ルイズはそう判断すると、質問に答え始めた。
「ここは、トリステイン魔法学院の医務室よ。貴方は……」
先ほど決めた名前を、告げる。
「……ブロン。貴方の名前はブロン。わたしが召喚した使い魔よ。ここにいるのも、わたしが貴方を呼んだから」
その白い身体を見て、思いついた名前だった。
『ブ、ロ、ン? ツ、カ、イ、マ? それが、ボク?』
「そう! そうよ、ブロン!」
解ってくれたらしい。ルイズはなんだか嬉しくなった。
彼は、ブロンは、生きている。こんな状態でも、彼は生きていてくれる。しかも、お話をすることが出来る。
『コントラクト・サーヴァント』はまだ出来ないだろうが、それでもルイズは嬉しくなった。
が、しかし。世の中そんなに甘くないのが常である。
『じゃあ、ルイズもツカイマ?』
ルイズは思わずズッコけざるをえなかった。
「違うわよ! わたしはメイジ! 魔法使いで貴族で、貴方のご主人様!」
『……???』
混乱したような気配が返ってきただけだった。
「……まあ、あなたはまだ小さいしね。これから教えてあげるわ。時間はまだ、沢山あるし」
意思疎通には困らないようだし、表に出てから苦労しないように、色々教えるのはいい事かも知れない。ルイズはそう思った。
途端、ルイズの中に弾んだ思考が飛び込んできた。
『ほんと? あのね、ルイズ。ボク、もっと、いろんなことしりたい!
じゃあね、ルイズ。あのねぇ、ツカイマって、メージって……いったいなんなの?』
ルイズは咳払いをひとつすると、かつて自分が教わってきたことを思い出しながら、話しはじめた。
「それじゃ、教えるわ。そうね、まずはこの国の事から教えたほうが分かりやすいかしら」
『うん! おしえてルイズ!』

この世界の事、メイジの事、使い魔の事、学園の事、自分の事、そして、ブロンの事。
教える事は多すぎて、とても一日で伝えられることではなかった。
それにルイズの本業は、あくまで学生である。いくらゼロと呼ばれようが、魔法が失敗しようが、日々勉強し、立派なメイジ、貴族を目指すのが本分だ。
だから結果的に、夕食後から消灯までが、この小さな学校の時間となった。
ブロンの物覚えは目覚しかった。好奇心も強く、何かを学ぼうとする意欲も申し分ない。
一を教えれば十を知りたがり、百、千と知りたがる。
ルイズというたった一つの接点を通じ、ブロンはますます賢くなっていくようだった。
そしてルイズもブロンに教えていく中で、また新しい見方を発見していった。

そして、今に至る。


「あれは月よ、ブロン」
『つき? ねえルイズ。どうしてつきはふたつなの? おひさまはひとつなのに。どうして?』
「……うーん」
『ねえねえ、どうして? どうしておつきさまはふたつなの? ねえ、ルイズったらあ。ねえ!』
「それは……また今度調べとくわ」
『そう? あ、それからね、ルイズ。あのね……』


気がつけば二人は、メイジと使い魔の関係ではなく、むしろ姉と弟、あるいは母と子のような、より近しい関係になっていった。
たとえ少しの間だけだとしても、互いに教え、教えられることで、その絆はより深く固いものへと変わっていった。
しかし。
昨日の敵は今日の友という。が、今日の友は明日も友とは、限らない。ましてや、双方心や主張を持っているからこそ、永遠の絆はそうありえることではない。
二人は、まだ。それに気づいていない。

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