あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの独立愚連隊-01


「あっちゃっちゃあ!!」
 がばり、と跳ね起きるだらしない格好の男。まあ、服そのものはワイシャツにネクタイ、ロングコートと変ではないのだが、ことごとく手入れ不足でよれているのでしまらない。寝タバコなんて最近してなかったけどなぁ…、などと呟きつつ左手を振っている。と、
「目、覚めたみたいね」
「へ?」
 言われて周りを見る。
 不機嫌そのものの表情のピンクの娘さん。疲れた顔をして襟のよれたハゲチャビン。その他。ていうか、ここ地面の上?
「まだ夢の中みたいだねーあいたぁ!」
 のん気に答える男に、べし、と目の前の女の子が星の飾りの付いた棒で頭を叩く少女。周りから上がる笑い声を受けて赤みを増していくその顔は、不機嫌そのものである。
 だが、少女が視線にどれほど怒気を込めても目の前の男はのほほんとした顔を崩さない。というか、明らかにまだ寝ぼけている。
「あー……色んなことはさておいて、君、何?」
 それにびくり、と眉を跳ね上げ、貴族様に向かって不躾に指を向けるその男に、少女は精一杯の厳格さ(のつもり)を乗せた声で告げる。
「私はトリステイン公爵家、ヴァリエールが三女ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 あんたを私の使い魔にしてあげるわ。光栄に思ってこれからはご主人様である私に精一杯奉仕しなさい!」
 決まった。腕を組み仰け反りぎみの姿勢で頑張って見下すルイズは、内心で自分に喝采を送る。このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが召喚した使い魔なのだ。もしかしたらいや間違いなくでもやっぱりそんなことはなかたったりするんじゃないかという気もするのだがそれでもなお信じたいのであるからして特殊な能力があると仮定するならば、ここで上下関係をはっきりさせなければ使い魔に逆らわれると面倒である。
 が、目の前の使い魔はしばらく指先と目をふらふらさまよわせた後、

「えー……あなたはSの字異常性癖の痴(幼)女で、私は性の奴隷として拉致られた?……優しくしてね?」

 くねり、とポーズを取ってボケをかました。空気が凍結した。
 あまりのキモさに思考停止するルイズ。
 無表情で固まるコルベール。
 微熱を絶対零度に持って行かれたキュルケとあんまり変わらないタバサ。
 そして空気を読んで一緒に固まる大勢の生徒と使い魔。


………
…………

 凍りつく空気を破ったのは、あんまり空気を読まないor空気と同化しやすい丸い生徒だった。
「Sだ!ゼロがSになった!Sのルイズだ!」
「ぶ、ぶはははっははは!Sだって、Sのルイズ!よかったわね~、長年の悲願だったゼロのルイズの汚名返上が適ったわよってぷははは、ダメ、耐えられないぃひひっひひぃぃ…」
「いや~おじさんこの年で新しい世界に目覚めさせられそうになるなんて、困っちゃうなぁ。たはは~」
『ははははははははははははは』
「………」
 悪い意味で汚名返上した、というか汚名上書きして怒りに震えるルイズ。しかし、先ほどから続く嘲笑や罵声、気絶している男にコントラクトサーヴァントを行ったときの下品な野次。それを考えれば、今さらこれに一々反論するのも燃料を供給するようなものだ。やむなく教師の権力で黙らせてもらおうと、コルベールの方を振り向き……
 背中を向けてガクガクと震えているハゲ。
「ぐうぅ…ぐふっ、ぐふっ……ふーっ、ふーっ……ぶっ、ごふっ…はぁーはぁー(ビクンビクン)」
 ぎん!と一睨み効かせた後、再度使い魔の男に目をやると、こっちはこっちで頭は夢の中のようである。
「いやー、明晰夢だっけこういうの。楽しいねぇ~よーし、ロリっ子はあんまり趣味じゃないから下着ウェイトレスのお姉ちゃん登場で!(パンパン)」
「何が夢よ!黙れこの、この、エロ犬!!」
 連続噴火しながら杖で男を乱打し、とどめに失敗魔法で吹き飛ばす。
 息を荒げるルイズ。
 爆笑する生徒たち。
 いよいよ呼吸困難で顔色がやばいコルベール。
 激動を迎えつつあったハルケギニアの歴史。それに止めを刺した、あるいは新たな歴史の風を吹き込んだ男。メック戦士ユージン・サモンジの(しまらない)戦いの始まりだった。

 はっ、と目を覚ます。
 見上げれば見慣れない天井。見渡せば白いカーテン。今いるのはベッド。不本意ながら負傷入院に慣れているサモンジは、とりあえず病室にいるんだなーくらいは把握した。
「とはいえ、ここ何処だろ?うちの基地の医務室じゃないよなー」
 とりあえず今までのことを思い出してみる。いつもの氏族メックを想定したシミュレーターだけではく、実機を使用しての野外訓練を行っては、という話が出て、ならばついでにとエニウェア政府から蛮王国への強行偵察の依頼があったのだ。まあ強行偵察といっても、駐屯している部隊のいない小衛星の一つだし、サモンジ隊の実力は何度か小競り合いをして知っている相手である。ここで暴れるなら手を出すまい、という威嚇目的の軍事演習のようなものだった。
 だが、そこに未探索と思われる星間連合時代の遺跡を発見したのだ。とりあえず規模が小さいこともあり、報告を出した後は小隊で軽く探索をしようということになった。基地に戻った翌週に準備を整え出発したのだが……
「イワンの馬鹿が『この辺の浅い階層ならそうヤバイ罠も無いでしょうし経験点は温存しましょうや』とかいってケチったんだよ」
 まあ実際そう致命的な罠も無く、いくつかの未探索の部屋の扉がロックされる程度のトラブルで済んでいた。のだが。
「妙な機械の集まった部屋の探索中に……だよなぁ、多分あのとき何かあったんだろうけど……」
「目、覚めたみたいね」
 と、カーテンが開いて声がかかる。そこにいたのは
「あ。夢に出てきたSの人!」
 ゴ。
 とっさにルイズが掴んだ花瓶の一撃を食らって、サモンジは再度意識を手放した。

「夢じゃなーいっ!?嘘ー!!」
「夢じゃないって何度も言ってんでしょ、このバカ!私の使い魔にしてやるって言ってんの!それ以外無いの!」
「嘘だ嘘だ……私一人こんなところに拉致られてるなんて嘘だ……」
 夜になってようやく目が覚めたサモンジはこんな調子である。
 とりあえず今になってようやく互いに名前を告げ、状況を確認しようと会話を始めたのだが……
ルイズの語る、使い魔召喚の件からサモンジは矢継ぎ早に質問を繰り返し、魔法なんて信じらんない、使い魔って何?等のやり取りの後、通信機を散々弄り回して連絡が取れず、途方にくれて空を見上げれば衛星が二つも見える。
 明らかにサモンジがいた蛮王国の衛生とも、その近辺にある居住惑星とも別の星である。加えて言えば、周辺宙域にある居住可能惑星ぐらいは頭に入っている。が、こんな独自の文明を持った隠れ里のような惑星があるとは考えられない。
 ルイズからサモンサーヴァントやコントラクトサーヴァントを行ったことを説明されるが、「人間を対象にした超空間移動?あれは『よく似た空間を繋いで瞬時に移動』なんだから惑星重力下の上に大気圏内で行うなんて不可能なんじゃない?」などとルイズ達には意味不明のことを言い、そういう魔法だと言うルイズとそんなことはできないと言うサモンジで押し問答になった。
 しかし、いい加減不毛になってきたと思ったサモンジが先に折れることにする。
「まあ、魔法で呼ばれたとして、倒れてたのは私一人?私の小隊の部下が3人いたんだけど」
「知らないわよ。サモンサーヴァントで呼び出すのは、基本的にハルキゲニアの生物1体だもん。あんた軍人?それとも傭兵?」
 ここまでで、サモンジの頭にはサモンジにとって極めて致命的な重大問題が浮かび、それに占められた。そりゃもうサモンジにとっては、世界が滅びるのと『コレ』を天秤にかけられたら結論を出せないくらい重大な問題。
「じゃ、じゃあ!ルイズさん、ちょっと大事な質問が!」
 ガバリ、とルイズの両肩をつかんで真剣な顔になる。
「な、何よっ!」
 一瞬気圧されるが、平民如きに、と睨み返す。

「私のサイクロプスは何処だ?」

 変なことを聞かれた。一つ目巨人が、私の?この使い魔の、物?もしかするとこのさえない平民は、凶悪な幻獣を手なずけるような特殊な技能を持っているんだろうか?そう思ってルイズは問い返す。
「何よ、もしかしてあんた魔獣使いとか、そんな感じの特技持ってんの?」
「いや、私はメック戦士だってば。だから私のメックは?サイクロプスは?ねえ何処っ!!」
 頭に疑問符を一杯に浮かべながら、気になる単語を拾う。
 戦士でサイロプス?もしかして、こいつ実はすんごく強くてサイクロプスをやっつけたところとか?勝利の証としてーとかで探してるのかしら?そんな考えが浮かび、サモンジを見る目に興味の色が混じる。
 そういえばベッドに寝かしたときに色々変な道具を持ってたが、コートの下に剣が差してあったと思い出す。
「えっと、あんた戦士?とりあえず私が呼び出したのはあんただけよ。その、あんたのサイクロプスは呼び出してないから無いわよ、残念ね」
 それを告げた瞬間、ようやく事実を受け入れたサモンジは、まさしく世界が滅んだかのような顔でずるずるとルイズの体から床までへたり込んでベッドからずり落ちる。そしてそのままうずくまってしまう。
「とほほ~失機者になっちゃた……またなっちゃった……メックが、ない……人生で2回もメックを無くすなんて……」
 一気にテンションが下ったサモンジが心配になり、屈んで顔を起こそうとすると、がばり、と飛びつかれた。
「ルイズちゃん?メック戦士はね、メックで戦うからメック戦士なんだよ、メックがないとメック戦士廃業だよ、国から領地取り上げられて一家取り潰しだよ、一家離散だよ!?君が不用意に私を誘拐するからだよ!!」
「おおおおお、落ち着きなさいよあんた!うわっ、汚っ!!」
 半泣きで迫るサモンジ、逃げ惑うルイズ。ある意味形勢は逆転している。事態は全く好転していないが。
「ル゛イ゛ズぢゃ~ん、君、貴族で魔法使いだって言うならこれ、解るよねぇ……メックの無いメック戦士なんて、売り物の無いお店、魚がいない釣堀、剣のない剣士だよお~」
「ちょっと、ちょっと、あんたさっきから変なテンションで喚くわ泣くわ…私の使い魔なんだからもっとシャキっとしなさいよっ!」
「もうホント、魔法の使えない魔法使いみたいなもんだよー、こけおどしにもならない、張子の虎以下の邪魔な置物ですよぉぉぉおーいおいおいおい……」

 ぶちり。

 とりあえずまた花瓶でぶん殴った。
 そしてひびの入った花瓶を提げて、ルイズは大きくため息をついた。よりによって人間、それも杖を持たない平民である。役立たず以外の何者でもない。どうせこんなことだろうから、とコルベール先生にも何度もやり直しをさせてもらうよう頼み込んでいたのに、と少々八つ当たり気味にコルベールへ呪いの言葉を呟く。どうやら特殊な能力を持っていない、単なる平民の傭兵か何かのようである。自分が魔法を使うまでの壁にしからならい出来損ないの召使。そう思うと涙がにじんでくる。
 私の人生は、今日劇的に変わるはずだった。それが、今になって思えば根拠のない妄想だったと思い知らされる。これが私の現実なのだ。平民でも召喚できただけまし、留年しなかった。でもそれだけ。
 ふるいから落ちなかっただけで、次のステップに進む生徒たちを未だふるいの上で見送るだけ………
「だめよ、弱気になるな!だったら私が、私の魔法で見返すのよ…」
 そうだ、使い魔の力で皆を見返そうなど弱気もいいところだ。明日からは、なめられないようにこいつを私に従わせて、あとは私の実力で勝負よ!そう自分に言い聞かせ、無理矢理にテンションを上げて心を奮い立たせる。そうだ、こんなのに頼れるものか!
「よし、まずはこいつのせいで恥をかかないように躾けることからよ!ちょっと、途中になっていた使い魔の心得を………」
 返事がない。
 見れば、目をぐるぐるにして完全に気絶している。サモンジは体力度を基準より下げてるので気絶しやすいのだ。
 ルイズは、使い魔の使えなさに魔法使いの道のけわしさを思い知り、大きくため息をついた。

「と、とほほ、とほほほほ~……じ、人生で2回も失機者になろうとはあぁぁぁ~」
「だから、それはもういいって!ふ、ふん、あんたが前の国の貴族だろうと関係ないわ。あんたが自分で言っちゃったんだもの、こんな遠くじゃ国の迎えも来れないどころか、一生故郷に連絡できないってね。これで私が平民のあんたを一生奴隷にしたって問題ないわ」
「横暴だー、アレス条約を遵守せよー」
 やけくそ気味にぶーぶー文句を言う使い魔を後ろに連れて食堂に向かう。使い魔は自分が目を覚ましてもまだ寝ていたので叩き起こした。着替えを手伝わせようとしたが、なんかこいつに下着を見られるのは気分が悪かったので自分で着替えた。
 あと、自分のことをやたら子ども扱いする。朝、自分に向かって「ルイズちゃんおはよー」などと言いやがった。しかも、なんど言っても子ども扱いをやめない。確かにこいつの方が相当年上だが、ご主人様に向かってこれはあるまい。
 確かに、自分で言ってもなんだが人間を誘拐して奴隷にしているというのは気分が悪い。だがヴァリエール家の三女である自分が留年などという汚点を残すわけにもいかない。おまけに、この男が故郷に連絡できないとなれば誘拐の事実は発覚しない。
 そう、この男は孤立無援である。逃げ道は無い。それをいいことに自分は………そこまで考えて、ますます気分が悪くなる。そうだ、こいつが悪い。こいつが召喚されなければ自分がこんなことで悩まずにすんだのに。
「しかも拉致って奴隷って……私、何か悪いことしたかな……サイクロプスは置いたままだけど、誰か家を継げるメック戦士なんていないからなぁ……」
 しかも愚痴ばっかりだ。どうやら、こいつはメック戦士という傭兵だったらしい。強いのか、と思ったが「メックが無いとただの人」「メック戦士は生身だと弱いものだよ」などとしゃあしゃあと言われた。
「私だって愚痴りたいわよ、こんなハズレを……まあ、ヴァリエール家のメイジの使い魔になれるってのは光栄なことよ。感謝しなさい。それと、他の生徒に会うまでには立ち直っておきなさい。そんなみっともない姿をさらしたら朝ごはん抜きよ」
 そういって先を急ぐ。が、廊下の先に嫌なものを見つける。
「止まりなさい、サモンジ」
「へ?どうしたの、ルイズちゃん」
 サモンジが問い返すが、その目をじっと前に据えたまま言葉を発しない。視線の先にいるのは、宿敵ツェプルストー家のキュルケである。少なくとも、いきなり遭遇戦はまずい。向こうは見る限りサラマンダー、こちらは平民のおっさん。勝ち目はその名の通、ゼロだ。
「どうしたの?遅れるよ。私もお腹空いてるし、さっさと朝飯にしようよ」
 それに気づかずのんきに自分をせかすサモンジ。まだだ、あれが食堂に入った後、なるべく離れた席に座る。遭遇は授業の時にすればまだ………
「あら、おはようルイズ」「……おはよう、キュルケ」
 挨拶を交わす二人。あまり空気がよろしくない。サモンジは居心地が悪そうに視線をそらすと、キュルケの使い魔と目が合う。
「やあ。おはよう」「(グルグル)」
 挨拶を交わす一人と一匹。サモンジが握手をするように右手でサラマンダーの喉をなで、左手を頭に当てておじぎをする。サラマンダーは喉を鳴らして応える。
 爆笑するキュルケとますます不機嫌になるルイズ。
「あっはっは、ほんとに人間なのね。しかも愉快な」「うっさいわね!」
 そう言ってひとしきり笑ってからサモンジを見る。上から下。下から上。ちゃんとすればそれなりに見れるのだろうが、いい加減な服の着こなしにしまらない雰囲気……
「ほんと、あんたにお似合い………お名前は?」
「ん?ああユージン・サモンジですお嬢さん。よろしく」
 お嬢さんときやがった。ルイズの目がさらに釣りあがる。しかも、頭を下げながら胸をガン見している。それを知ったキュルケに軽く笑っている。
「じゃあお先。急がないと遅れるわよ」
 去っていくキュルケとサラマンダー。キュルケのお尻を視線でホーミングするニヤケ面のサモンジ。蹴りを放つルイズ。そして
「あんた飯抜き」
「はぁ!?」
 いや、あれは不可抗力で……と言い訳するサモンジを置いて、ルイズはさっさと食堂に行ってしまった。

 食事を終えたルイズとサモンジは教室に向かった。教室の扉を潜ってすぐにサモンジは周囲の常識外れの生き物たち驚きの声をあげ、その様子をルイズが呆れたように見ていた。
 隣の席に漂っている空飛ぶ目玉という非日常にビビっているサモンジの気も知らず、最初の授業の担当であるシュヴルーズが教壇に立ち当たり前のように授業が始まる。授業は順調に進み、シュヴルーズ教師の錬金の実演が行われる。赤土を真鍮に変えるというもので、さりげなく自分がトライアングルと自慢している。ムカつく。
 それを見ていたサモンジがひどく驚いてルイズの肘をつつきながら妙な敬語で質問をする。
「あの、ルイズさん。あの人、粘土を真鍮の塊にましたけど…どう見ても重くなってますよね?どういう原理なんですか」
「原理も何も、組成を司るのが土の魔法よ。当たり前じゃない」
 さも当然のように答えるルイズと、質問の意図が全く通じないことに頭を抱えるサモンジ。これでは話にならないと思ったのか、やおら立ち上がると手を上げる。
「はいは~い、先生しつもーん」
「サ、サモンジ恥ずかしいからやめなさい!」
 能天気に手を上げて質問するサモンジ。平民の使い魔が授業に口出ししたということよりも、そのひょうきんな姿に生徒達は大笑いしている。慌てたのはルイズである。自分への質問をやめたと思えば、こんなまねをしでかすとは。
「?あなたはミス・ヴァリエールの使い魔……まあいいでしょう。魔法が使えないとしても知識欲があるのは良いことです。どうぞ」
「はーい、黄金は不可能ということでしたがー、錬金の難易度は周期表に従うんでしょうかー。というか黄金より重い鉛の錬金は黄金より簡単なんでしょうかー」
「し、周期表?まあともかく、黄金と比べれば鉛のほうが簡単に錬金できますね。これは金属としての格が錬金の難しさに……」
「ふむ……卑金属と貴金属で分かれるのかな?てことはやっぱり結合しやすい方向への錬金なら簡単ってことなら、段階的に錬金すれば……でも赤土を一発で真鍮ってことは不純物が多すぎるから何度も処理が……」
 シュヴルーズの説明に真剣に聞き込み、ぶつぶつと独り言を言いながら考えるサモンジ。置いてきぼりのルイズ。ぶっちゃけサモンジの質問の意図と、今考えていることが理解できない。
 サモンジとしては、他にもコンマ以下の比率で合金を作り分けられるのか、質量を無視して物質を作れるか、核融合物質を容易に生成できるか、といったものも聞きたかったのだが、今の手ごたえから考えるに十分な答えは期待できないだろう。それにしてもあんな不純物だらけの土を合金に一発で変化させられるなら……などとサモンジが考えていると、ルイズがこちらをにらみながら腕をつねり上げた。
「あっだだだだだ!何すんのルイズちゃん!」
「あんたまだ覚えてないの、人前でルイズちゃんとか言うなって朝言ったでしょ!あと私に断らずでしゃばった真似しないの!」
 ルイズはなるべく顔を寄せてこっそり言ったつもりだが、サモンジの悲鳴で目を引いていたのでバッチリ目だってしまっている。当然授業中に目立つ真似をすれば、教師の行動は目に見えている。
「ミス・ヴァリエール!おしゃべりする暇があるのなら、あなたにやってもらいましょう」
 その言葉に教室中が騒ぎ出す。何事か、と思うサモンジをよそに周囲のざわめきはどんどん大きくなる。
(ひそひそ……また失敗…ゼロが……ルイズ考え直して……隠れろ、吹っ飛ぶぞ……)
 何のことだ、とサモンジが思っていると教卓の前でルイズが杖を構え、それに合わせて他の生徒は慌てて机の下に隠れ始める。直後

爆発。

 ものの見事に周囲のものを吹き飛ばし、教室内は大混乱になる。爆心地にいた教師は気絶しているため静止する者もいない。暴れる使い魔、逃げ惑う生徒とそれを鎮めようとして返り討ちに会う主人、そしてルイズへの罵声。
「ゼロのルイズが!」「成功率ゼロがでしゃばるなよ!」「お前、さっさと退学しろよ!」
 それで、ゼロか……それを意識の片隅に残し、今日もサモンジは気絶した。

「な~んだ、魔法使えないんじゃない。メックの無いメック戦士と魔法の使えないメイジ、いいコンビじゃない私たち」
 罰掃除を手伝いながら、能天気に話しかけるサモンジ。あっはっはーと笑いながら大きなゴミをひとまとめに集めている。目が覚めてみれば、ルイズが罰掃除を言い渡されたそうで一人で掃除を行っていたので手伝うことにしたのである。まあ、手伝うと言い出さなくても手伝わされたような気がしないでもないが。
 気楽に掃除しているサモンジに、ルイズが毒づく。
「何勘違いしてるのよ、私とあんたが同類ですって……馬鹿にすんじゃないわよ、私はヴァリエール家の、三女……」
 言葉を詰まらせながら、それでも心が挫けない様にと言葉だけでも強気でいようとするルイズに、サモンジは相変わらず明るい調子で言葉を続ける。
「はっはっは、そういう意味じゃなくって。足りないものがある者同士、いろいろフォローし合える様に頑張ろうってことだよ」
 そこまで言って、こんどは逆にサモンジのテンションががた落ちになる。
「そうだ~私は失機者~失機者の失は失うの失~失機者の機はメックの機~」
 変な歌を歌いながら真っ暗な陰を引きながら箒を引きずる。まだ失機者とか言うのを気にしているらしい。
 はぁ、とため息を着いた後、勢いよくルイズは立ち上がる。そうだ、この程度で落ち込んでられない。この男はメックというのをなくしたらしいが、私はまだ失っていないではないか!
 気合を入れて声を上げる。
「サモンジ!落ち込んでないでさっさと掃除するわよ。今度はちゃんとお昼あげるから」
 そうだ、負けるものか!まだ、私は魔法使いになる道の途中なのだ。
 自分の気合に釣られてか、サモンジも失機者モードから立ち直る。
「そうだね。ま、私も気に病みすぎか……いつもどおり、気楽にやりましょうか。ま、それはともかく一息入れようか。ルイズちゃんもひとつどう?」
 そう言ってサモンジはポケットから何かを取り出すと、パキリ、とそれを割ってかけらをこちらに渡す。チョコレートか?珍しいものを持っている。所詮平民が持てる代物だろうが、せっかくの使い魔の気遣いだ。うけとってやろう、そう思って一息に口に入れる。

……
「なにこれ!!おいしい!こんなものどこで手に入れたの!そ、そういえばメック戦士は貴族みたいなものって言ってたわね、信じるわ!」
「へ?こんななことで信じてくれたの?私の今までの努力は何なのさ……」
 軽くへこむサモンジ。と、そこにさらにルイズが突っ込む。
「サモンジ。そういえば今のチョコレートの包み紙、ずいぶん減ってたみたいだけど……」
「ぎく」
「あんた、私が朝飯抜きって言った後、それ食べてたのね………」
「いや、チョコレートを非常食ってのはよくある話だろ?レーションだよレーション」
「罰よ!全部よこしなさい、というか使い魔のものはご主人様のものよ!」
 そう言って飛び掛ってくるルイズ。避けるサモンジ。しかし、31世紀(とはいえ文明は星間連盟時代に比べれば後退しているが)のチョコレートの持つ中世レベル調理技術とは比較にならない、ミルクと砂糖とカカオマスの生み出す神秘を知ったルイズの食欲には適わない。
 ついに右手にしがみつかれ、そのまま一気にルイズが噛み付く!
「あ」
 サモンジが制止しようとしたが、一歩遅かった。ルイズは『銀色の』包み紙ごとサモンジの右手からチョコレートを食いちぎり、かみ締めた。



「昼飯抜きよっ!!」
「またぁ!?」


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