あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

豆粒ほどの小さな使い魔-17




シルフィードが、つい口を滑らせたこと。
タバサのお母さんが、重い病気に掛かってるって。
思わず振り返って、こちらに気づかずに話してるタバサとルイズを見た。
私はルイズが病気のお姉さんのことで心を痛めていることを知っている。自分を追い詰めるほどに魔法に執着してたのも、その人にこれ以上心配をかけたくなかったからだということも。
本当に優しくて、意地っ張りな二人だ。
ああ、分かってるシルフィード。言わないから。
ルイズがもどかしい思いをしているのは知ってる。本当は水の、治術魔法を使えるようになりたいんだって。
タバサも、もしかしたらそうなのかな。
奇麗に隠し切ってるつもりでも、図書館から持ち出した古い治術の本を、読みにくいと怒りながらあんなに一生懸命覗き込んで。
二人とも、心の奥底では気がついてるんじゃないかな。
「デモネしるふぃーど、るいずハ、少シズツダケド、誰カニ甘エルコトモ、悪イコト違ウッテ、分カッテクレタヨ」
「おねえさまも、ルイズさんがシエスタさんたちと一緒なの、羨ましそうに見てたりするのよ」
だから余計に見てて切ないのだと尻尾を捩る。
魔法があるのに、魔法でも治せない病気があるなんて、私の知ってる人間の世界と一緒だ。こうして大切な家族のために頑張ろうとする人がいるところも。


「るいず」
「なぁに、ハヤテ」
魔法の練習に、キュルケやタバサ、時にはシエスタまで混じるようになったおかげで、今日みたいに練習そっちのけで白熱することもある。けどルイズは口では文句を言いながらも、それはそれで楽しそう。だから私も嬉しい。
「きょむニモ、治術アルノ?」
「……知らない。分からないわ」
「ソッカ」
先生も資料が殆ど見つからないって言ってたし。
「私、治術を調べてるって前に話したっけ?」
「ドウダッタカナ? デモ、言ワナクテモ、見テタラ、分カルヨ」
ルイズは、真っ直ぐだから。
それって褒め言葉に聞こえないとぶつぶつ言ってるルイズの頬が赤い。
ふと、視線を遠くに向ける。
「見てたら分かる……か」
考えてるのは、多分、タバサのこと。
タバサも真っ直ぐだもんね。
邪魔しちゃいけないから、黙ってルイズの肩に座ってた。

頼まれたら、調べることできる。
でも、タバサはルイズの友達だから、きっと自分で話しに行くんだろうな。


* *



タバサとは、少しずつ仲良くなって来てる。本人のことはそれなりに分かってきたけど、、でも背景については殆ど知らないまま。
言いたくないのと、言えないのが混ざってるみたいで、時々口を噤む姿に、そうさせてしまったことに自己嫌悪する。
ちい姉様。他家ならどうだっただろうと想像すると、とても嫌な唾が口の中に。
家名を重んじる家なら、ちい姉様のことを家の恥として幽閉するかもしれないって。
ちい姉様はヴァリエール家からは出られないけど、それは幽閉じゃないもの!
お父様やお母様、エレオノール姉様だって、一日でも早くちい姉様に外を歩けるようになって欲しいって願ってる。
私は、タバサと自分を重ねて見ようとしてるのかな。
もうすぐ聖エヴェングルドのお祭りがある。虚無の曜日と合わせれば、五日間の連休。
生徒たちも家に帰る。二年生は家族に使い魔をお披露目する意味もあるし。
そのときに、タバサを招待したい。
ちい姉様に会って欲しい。私では届かない、悔しいけど、きっとちい姉様なら。


「カトレア姉様は、子供の時から身体が弱くて、殆ど寝たきりなの」
朝の散歩のときに、タバサをヴァリエール家に招待したいと言ったら、無言で真っ直ぐな視線を向けられた。
「私が治術を調べているのは、もう知ってるでしょう。私に何ができるか分からないけど、でも何かをしたいから」
何も言わなくても、タバサが共感してくれてるのが分かる。
無表情で何を考えてるのか分からないとか冷たいとか陰口を叩かれてるけど、そんなことない。
「ちい姉様は、私たちに不満をぶつけたことは一回もないし、ありがとうといつも言ってくれる。だけど家族以外とは殆ど会えないから、きっと本当は寂しいんだと思うの」
だから、タバサに来て欲しい。
「……キュルケとシエスタは?」
言外に、私をゼロと呼ばない人を、と言うのが伝わったんだろう。
「もちろん呼ぶわ。来てくれるかどうかは分からないけど」
滞在は無理でも、寄り道はしてくれるかもしれない。キュルケなんて隣領なんだから。
「返事は今じゃなくてもいいから。考えておいてくれると嬉しいわ」


手を差し出すのは、勇気がいる。
もしも、撥ね退けられたらどうしようとか、色んなこと考えちゃうし。
もっと違う言い方した方がよかったかな。何も祭りの時期だからって焦らなくてもよかったんだし。
「ハヤテ、私のはお節介だった?」
窓辺で笛を吹いていてくれたハヤテが、ぴょんと机に跳んで来る。
「るいずハ、ヨクバリダカラ、全部イッペンニヤロウッテ頑張ッテルンダネ」
かくんと頬杖を着いていた手が外れる。ちょっと、それどう言うことよ!
「スゴイナッテ、思ッタンダケド」
欲張りなんて、褒められてるような気がしないわよ。
「るいずハ、オ姉サンノコトガ、大事デショウ?」
「当たり前じゃない」
「ソレニ、たばさノコトモ好キ」
い、言い切らないでよ。そりゃ嫌いじゃないけど。で、それとどういう関係があるのよ。
「ダカラ。るいずハ、好キナ人ミンナニ笑ッテ欲シインダネ」
私は、そんなハヤテが言うみたいな良い子じゃないのに。
頑張ってるときに、よく頑張ったねって、褒められたみたいで、目がちょっと、潤みそうになった。
ちい姉様のことを考えてるときにタバサのことが頭から離れなくて、タバサのことを考えてるときにちい姉さまのことを、
二人を蔑ろにしてるみたいで、罪悪感みたいなのを感じてたんだ。
「欲張りでも、いいのかな」
あの二人に悪いなって思ったのは、きっと、私が魔法の階梯を一歩登ったから。
自分がゼロから抜け出したのはもの凄く嬉しい。でもだからこそ、ちい姉様が部屋に閉じ込められてるのが、タバサが一人きりで頑張ろうとしてるのが、見てるのが痛くて、何かしたかったんだ。
欲張りで、我侭だ。こんなのちっともタバサのためじゃない。
「るいずハ、恥カシガリヤ、ダネ」
うるさいっ
「モシるいずガ、ころぼっくるダッタラ、アダ名『恥かしがりや』ニナッテタト思ウヨ」
やだっ もう見ないでよー
制服のままだったけど、ベッドに逃げ込んだ。シーツを頭から被る。
違うんだから。私は我侭でタバサを誘ったの。その方がちい姉様が喜ぶから、だから――
ふわ、と。本当に軽い感触、小さな手が、私の頭を撫でてくれてる。
子ども扱いされてるのに、振り払う気にならない。
制服、しわになっちゃうなってちょっとだけ思ったけど。今日はこのまま……


「行く」
「本当? よかった、ちい姉様きっと喜ぶわ!」
キュルケとシエスタも、帰郷を一日遅らせて、ヴァリエール家に来てくれることになったし。
何だかピクニックの延長みたいねとキュルケが言ってたけど、実際そんな感じだ。
手紙、書かなきゃ。ちい姉様に。

友達を紹介します って。




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