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とある魔術の使い魔と主-52


「うー、お腹が減ったんだよ」
 可愛いお腹の音が、ご飯を食べさせるようインデックスに命ずる。
 ここはとある船室、物置場であるが故に人の気配が感じられない。目的地にたどり着くまで、ここで身を隠そうと思っていたが、どうやらその考えは危うくなっている。
 確かに時刻は昼過ぎ、朝食も取っていない分余計に空腹感が襲ってくる。
「そう言われてもにゃー……」
 土御門は、そんなインデックスの願いに対して、困った表情を浮かべた。
 この物置場はガリア王国とやらに売り出す交流品だとは思うが、残念ながら食糧らしき物は置いてない。
 ならば、食糧がある場所に向かえばよいという発想も出て来るが、その案もすぐに却下となる。
 もともと無賃乗船している身。他の船員に見つからず、昼食を有り難く頂戴できる自信はあいにく持っていない。
 となると、このまま我慢しなければならないのだが……、
「空腹でもう一歩も動けないんだよー」
 ドテー、と体力がなくなったインデックスが床にへばり付く。腹ぺこシスターにとっては、どうやら一分一秒を争う問題なのだ。
 長い銀髪が、インデックスの周りに散らばる。なんとなく、腹の音が激しくなったような気もする。
 これがあのインデックスなのか? と土御門は思う。
 今まで幾多の魔術師から逃れてきたプロであったはずだが、まさかこんな腹ぺこシスターだとは誰が予想できるだろうか。
 もしかしたらあの幻想殺しがいろいろと彼女を変えてしまったのでは、と考えながらも、土御門は口を開く。
「仕方ないにゃー。目的地にたどり着かないとここから動けないんぜよ」
「くうくうくうー! 何か食べないとこのまま飢え死にしちゃうんだよ!」
 バッ、と咄嗟に土御門はインデックスの口を塞ぐ。
 二人は、誰にも気付かれずにこの場をやり過ごさなければならない。
 もし見つかったら犯罪者として捕まるであろう。異世界で牢屋に放り込まれるのはお決まりのパターンではあるが、そんなのは願い下げだ。
(待てよ?)
 土御門は、むがむがと動かそうとするインデックスの口を未だに塞ぎながらも、ある事に気付く。
 そう、自分達は何故このような状況に陥っているかだ。
 考えれば考える程その辛さがわかってくる今回の任務。一発はぶん殴るであろうアレイスターがこの場にいない事を憎みながらも、大きなため息を一回吐いた。
「どうして俺は損な役しかまわってこないのかにゃー?」
「フゴ?」
 どうしたの? と言ったつもりなのだろう。インデックスはキョトンとした目で見つめた。
(……こいつはどう思っているんだろうな)
 天然、と言ったら怒るだろうが、とてもじゃないが事の重大さに気付いているとは思えない。
 おそらく、上条当麻という少年をただ助けたい一心なのだろう。
 三沢塾陥落戦、絶対能力実験阻止、御使堕し。幾多の戦いにおいてインデックスが関わっていない事件も多い。だから、今回自分が関わる事ができてうれしいのだろう。
 その気持ちは土御門にはなんとなくわかる。

 この世で絶対に守らなければならない義妹を持っている土御門だからこそだ。

 瞬間、自然と笑みがこぼれた。
 少し自分は考えすぎなのかもしれない。別に急ぐ必要性はないし、あの上条当麻の事だ、なんとなくうまくいっているに違いないと感じられる。
 ならば、少し好きにやらしてもらおうではないか。
 その時だ。
 突然ドン! と扉が開くと、がたいのいいお兄さんを筆頭に、ぞろぞろと人がなだれ込んで来た。
 その数、五人程だ。
『テメェラ! なに人様の船に勝手に乗っているんだゴラァ!』
 今にも飛び掛かりそうな勢いで怒鳴ってくる。もっとも、土御門には彼がなんと言っているかはさっぱりだ。
のへー、と腹を空かしているためか、緊張感が全くないインデックス。それに対し、土御門は至って冷静に、まるで第三者としての目線から様子を眺める。
『おうおうあんちゃん、澄ました顔しやがって生意気なんだよ!』
 そんな態度に手前の船員がキレたのか、自分の手に持っている剣を思いきり振り上げた。
 リーチが多少ある両刃の剣、一メートル強はあるなと土御門は判断する。
 轟ッ! と空気を切り裂きながら、そのまま侵入者を一刀両断しようとした。
 しかし、
 土御門は別段気にする事なく、インデックスを抱えて後ろにへと下がった。
 バキッ! と剣が木で出来た床に刺さる。つまり、敵は床から剣を取り出すという余分な動作を行わなければならない。
 その隙に、土御門は周りを見渡す。元より物置場、それなりにスペースのある空間は、荷物で半分ぐらい埋まっている。
「甘いな」
 土御門の口調が変わった。三馬鹿の一人『土御門元春』から、必要悪の教会『土御門元春』へと変わった瞬間だ。
「侵入者には有無を言わさず最初から殺すべきだ」
 まるで船員に評価を与えるかのように、冷たく言い放つ。今自分達が襲われているのにも関わらず。

「まっ、これから倒れる人間には関係ない話かにゃー」

 日本語、という聞いた事もない言葉を耳にして、一瞬面食らう船員。しかし、その僅かな時間が土御門を彼の懐へと運んでくれる。
 瞬間、
 ゴッ! と土御門の拳が船員の顎を捉え、その右足が鳩尾を狙おうとした。
 敵を文字通り粉砕するには十分な攻撃だ。
「ふん、わざわざ二撃目を放つ必要もなかったな」
 二発目の蹴りが寸前の所でピタッと静止する。一撃で意識が飛んだ屈強そうな男は倒れ込んでしまった。
 後ろにいた他の船員を黙らせるのには、今ので十分過ぎる効果を与えたようだ。誰もが土御門から一歩以上後ずさる。
「ほらインデックス、早くお前の頼みを言うんぜい」
 土御門達は何も持っていない。つまりは無一文。至極冷静に考えれば、そんな自分達に飯を好意で与えてくれる場所などかなり限られてくる。
 しかし、どうやらこの腹ぺこシスターは我慢する余裕がないようだ。家事を全て舞花に任せている彼は当然料理はできない。
 時間をかければ策などいくつか見つかるであろうが、めんどくさい。

 いっその事、実力行使でここから食糧と通貨を手に入れようと。
 それが一番楽であった。

 が、あいにく土御門にはこちらの言語は未だにわからない。
 ここはインデックスの出番だとくるっと後ろを振り返り、助けを求めようとしたのだが、
 その光景にあんぐりと口を開けるしなかった。
 いない。べったりと床に預けていたインデックスが、忽然と姿を消していた。
「…………………………………………………………」
 またかにゃぁぁぁあああああ!? と絶叫するのに数秒かかってしまった。
 その声を攻撃する合図だと思われたのか、船員達は物置場から我先と言わんばかりに逃げ去っていった。


「お腹ー……減ったー。早くありつきたいんだよー」
 キュルルル、と可愛い音を抱えて、インデックスはゆったりとした歩幅で船内を進んでいく。
 彼女のご飯に対する嗅覚は敏感だ。居候してもらってる少年の作る料理をフライングしようと何度も死闘を繰り広げた努力の賜物である。
 本来なら歩く力も残されていないのだが、後少しでゴールにたどり着くと聞いて頑張ろうとする想いと同じだ。
 目的地に近づくにつれて、香ばしいニオイも少しずつ、はっきしと感じてくる。
 そして何十分にも感じられた時間を経て、彼女はようやく香りの出所にたどり着いた。
「つ、着いたんだよー」
 ガチャリとドアを開き、そのまま崩れ去る。
「ん?」
 突然の来訪者に、その場にいた一人のコックらしき男が怪訝な表情を浮かべた。
 ここは部屋の面責こそ小さいが、どうやら厨房である。時刻は既にお昼を廻っていたのだろうか、本来なら腹を空かせた船員達が料理にありついているのだが、とある事情により今はがらんとしていた。
 当然だがこのコックは外で何が起きているかはわからない。ただ、小さい白いシスターが恐らく空腹でいるだろうその姿を見過ごす程悪ではない。
「お、おい! なんでこの船に乗っているんだ? というか大丈夫か?」
「も、もうダメかも……。早くご飯という名の補給が欲しいんだよ……」
 ちなみに言語は違うのだが、なぜか互いに何を言っているかは理解しているようだ。耳ではなく、心で感じるとはこの事なのかもしれない。
「飯……だよな? まぁシスターさんの願いとなりゃあ断るわけにはいかないな」
 インデックスは知らないが、彼はよく寺院に身を運ぶ人だ。そのため、幸いな事にも、シスターの助けになるなら喜んで手を貸すような人でもあった。
 そういうと、コックは机に並ばれてある料理の一品をインデックスに差し出した。
 これが土御門であったら違った展開になったかもしれないが、生憎彼は腹を空かしていない。
 なぜなら、彼は追っ手から絶賛逃亡中であり、そのような余裕などかましている暇なんてなかったからだ。
「ちっ、めんどくさいのに追われてるな」
 人数は一人。先の人間より強いやつはあいつだけなのかもしれない。
 そこそこできる奴かもしれない追っ手に追われる土御門は、不利な要素が多々あった。
 一つに地形。
 飛行船という名の檻に閉じ込められているのに加え、迷路のように複雑に入り組んでいる廊下。とてもじゃないがうまく振り切るのは不可能であり、行き止まりになったらおしまいだ。
 一つにツレ。
 空腹で倒れている(であろう)インデックスを敵の手に渡すわけにはいかない。おそらく食糧がある場所にいると思うのだが、どこに食糧があるかまではわからない。
 故にそれらしきと思う部屋の扉を開き、誰かいないかを確認するという時間が必要となっていく。下手すると、そのまま敵に捕まる可能性もあるからだ。
 そしてもう一つは、
 敵が紡ぐ、呪文の詠唱である。
「!?」
 魔術が発動したのか、ちらりと後ろを見ると、
 轟ッ! と通常ではありえない空気の圧力が土御門目掛けて襲ってきた。
 正確に言うならば魔法だ。しかし、そんな事は関係ない。
 左右の幅をちらりと見る。狭い廊下に逃げ場は存在しない。
 しゃがんだり、飛んだりして避けようとも考えたが、敵の攻撃の範囲がどの程度のものかは判断がつかない。
 となると残された道は一つ。もとよりそれしかやる気はなかったが。
 土御門はドン! と全身を使って横の扉をぶち破った。そこはとある船員の部屋らしく、色々な物が辺り一面散らばっている。
 瞬間、廊下を渡っていく風の刃が視界に入った。通常の空気とは違う圧力が、目に映る存在へと変わる。
 同時、バネのように溜めていた力を爆発させる。もとより長居するつもりはさらさらない。向こうからも敵が追って来ているのだから、このタイムロスは出来るかぎり小さくに、だ。
 扉がないドアをくぐり、一歩で再び廊下へと舞い降りる。その踏み込み足にかかっている力の向きを真横に変更し、サイドステップのように横へと飛ぶ。
 その際に敵の位置を確認する。距離は大体数メートルと判断した。
 男がまた杖を振り、呪文を紡ぐ。何を言っているかはわからないが、先と同じリズム、発音から同魔法だと予測する。

 時間にしておよそ一秒。振り返り、反撃し気絶させる時間としては十分である。

「魔術ばっかに頼って身体ができてないんだにゃー」
 ダン! と足に釘を打ち付けたかのように床をへこませ、動きを止める。男も慌てて急ブレーキをかけようとしたが、その前に彼の視界は土御門の足で埋まった。
 ゴッ! と鈍い音がしたと思いきや、男が横に吹っ飛び、壁にめりこんだ。
 カラン、と床に落ちた杖を土御門は拾いあげ、そのまま折ってしまう。
「どうやらこいつで魔術を発動してるようだが……」
 どうやら強度の方は微妙だな、と感想を述べた所で、

 廊下にぎりぎり入るくらいの大きさの炎球が、迫って来た。

 気付くのがワンテンポ遅かった。
 今から逃げ込める扉はない。
「ッ! 青キ木ノ札ヲ用イ我ガ身ヲ守レ!!」
 素早くポケットから折り紙を取り出すと、叫ぶ。何もない空間から主を守るべく盾が形勢される。
 ドゴォン! という爆発音が鼓膜を刺激すると、炎球が盾に弾かれるように散らばっていき、壁を燃やしていく。
「……燃えてる?」
 メラメラと燃え盛る炎は止まる気配がない。早々にこの場を去るため、呆然と立ち尽くしている男に目もくれずに走り去る。
 つー、と土御門の唇から一筋の血が流れた。
 超能力者である土御門には魔術が使えない。無理矢理に魔術を使うと、自身の身体が傷つかなければならない。
 が、いつもの事だ。むしろそれよりも気にしなくてはならないのは背後から迫り来る炎だ。
 おそらくこのまま全域に広がって航行不能となる。
「ったく、自分達の船なんだからもう少し考えて欲しいかにゃー!?」
 まだ、インデックスは見つからない。


「ぷはー、生き返ったんだよー」
 そんな中、わりと物置場から近い場所に位置した厨房で、インデックスの機嫌はよくなっていた。
 言って気付く。つい日本語で言葉を発してしまった。料理を作ってくれたコックが首を傾げてるのを見て、ハハハと苦笑いをとる。
「え、えっと。とても、おいしい、料理を、ありがとね」
 覚えているとはいえ、今まで使った事のない言語だ。手違いがないように、一言一句丁寧に伝えてみた。
 すると、コックは求めていた答えを貰えたのか、笑みを浮かべる。
「おう! そういってくれてサンキューな。つかなんでこんな所にいるんだ?」
 ギクリ、とインデックスの背中から嫌な汗が吹き出る。本来土御門とインデックスは招かざれる客――侵入者なのだ。
 自分がシスターであるというのが幸いしたのだろう。下手に詮索されてしまっては困る。
(あれ?)
 そういえば土御門はどこにいるのだろう。
 無我夢中でご飯を求めた自分だが、その足取りは遅かったはずだ。何かついていけない理由でもあったのだろうか。
「ちょっと、迷い込んじゃってね……。もう一人いるから探しにいくんだよ」
「ん、そうか。まぁ気をつけるんだな」
「うん、ご飯を食べさせてくれてありがとね」
 ぺこりとかわいらしくお辞儀をして、そのまま立ち去ろうとする。
 しかし、
「おい! 侵入者が火をつけやがった! 緊急着陸して逃げるぞ!」
 先程自分が静かに開いた扉がドバン! と勢いよく開かれ、そのまま一人の男が声を荒げてズカズカと入ってきた。
 瞬間、
 インデックスはすれ違うように全速力で駆け出した。
「あ、おい……」
「あいつも侵入者か! お前は荷物運びを任せる!」
 何か言葉を出そうとする前に、仲間の声が先に割り込む。
 再び走り去る男。沈黙が支配する厨房。
 一体何が起こったかわからないコックは、呆然と立ち尽くしてるしか他なかった。


 この船は密輸船であった。
 故に、他の船にはいないメイジや兵士がいた。もっとも、それらはただの素人レベルであるが。
 メイジは杖がないと魔法が発動できない。
 故に、炎球を使ったメイジが見た光景は不可解であった。
 杖も持たない、青く輝く不思議な眼鏡をつけているただの少年が炎球を打ち消したのだ。
 そんなのがありえる事など一つだけ。
 即ち、先住魔法だ。
 こうして土御門はエルフと認定され、逆に逃げられる対象となった。

「ハッ、ハッ。もとはるは一体どこなのかな……」
「くそっ! あいつなんであんな早いんだ……」
 他の者は皆、物置場に置いてある色々な物を甲板にへと運んでいる。本来なら自分も参加しなければならないのだが、侵入者にやられっぱなしも釈に触る。
 なんとしてでも捕まえたい一心なのだが、小柄なシスターはしかし、自分と同じぐらいのスピードを出している。
 が、男はそれでも笑みを浮かべていた。
(甘いな! あっちは確か火が出ている場所!)
 その証拠に、煙がもくもくと上がっている。それは、進めば進ほど大きくなっていく。
 相手もわかっているに違いないが、追われているこの状況により反転することは不可能だ。
 そして、行き止まりは思っていた以上に近かった。
「くっ!」
 轟ッ! と燃え盛る炎に、インデックスが急停止。そのまま後ろへと後ずさる。
 そこに、男がガシッ! と両脇の下から腕を通して身体の自由を奪う。
「なっ……離してよ!」
「へへっ、離せと言われて離す奴がいるかってんだ」
 じたばたと暴れるが、所詮は子供。大人の前には成す術がない。
「こっちは船すらも失おうとしてるんだ。大人しくついてこいよ」
 ニヤリと獰猛な笑みを浮かべた男は、そのまま炎バックにインデックスを連れ去ろうとする。
 そこに、
「黒キ色ハ水ノ象徴。其ノ暴力ヲ以テ道ヲ開ケ!!」
 ジュゥゥウウ! と水で火を消す特有の音が後ろから聞こえたと思うと、そのままドン! とバットでも打ち付けられたかのような衝撃を男は味わった。
 数メートルは吹っ飛んだであろうその男は気を失っている。もそもそと力を失った腕から脱出したインデックスに、手が差し延べられた。
「まさか行き止まりで引き返さなければならないとはな……。流石に全部は消化しきれなかったにゃー」
 同時、ごぷっ、と血の塊を漏らす土御門であった。


「ホントに大丈夫なの?」
「平気平気だにゃー。一応肉体再生という能力を持ってるから大丈夫なんぜい」
 インデックス達が甲板に出た時には、もう船は緊急着陸していた。
 おそらく他の船員は去ったのだろう。人の気配がまるでない。
 とりあえず気絶させた男と共に、船から脱出する。後数分もすれば全域に燃え広がるのかもしれない船とおさらばだ。
 場所は森の中、このまま連れていくのもどうかと思い、男を適当な所で捨てた。その際、彼のポケットマニーから半分程頂戴したのはお約束だ。
 そんな彼らの視界に村が見えてきた。
ぽつんとある小さい村。最初にこの地に降り立った村と似たような場所である。
 結局降り出しか、と落胆な表情を土御門は浮かべる。
「仕方ない……あそこで一晩泊まるんぜい」
「うん。わかったんだよー」
 正しい道からではなく、裏山から突然とお邪魔する二人。村の入口であろうその看板には、『サビエラ』と書かれていた。


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