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ゼロの使い魔~我は魔を断つ双剣なり~-10

ヴェストリの広場とは真逆の日当たりの良い広場、そこに大の字になり
九朔は空を見上げていた。
給仕や調理場の手伝いも今の時間帯は生徒が授業中でありやることがない。
ルイズもまた授業を受けているのでこの場にはいない。
よって今の時間は休み時間であり、完全なる手持ち無沙汰状態。
あい仕方なしと、他の使い魔やメイド達が休んでいる日あたりの良いここで
少々仮眠を取ることにしたのだが、
「きゅい、きゅい」
「………」
さきほどから寝ようとしている自分のマントの裾をぐいぐい引っ張るこの
青色の竜の存在はいったいどうしたものか。
「きゅい」
「……………」
無視を決め込み寝返りを打つがそれでも諦める気配はない。
遊び相手ならば側で寝ているギーシュの使い魔やあの赤毛の少女のサラマンダーが
いるというのに、しつこく九朔だけを突っついてくる。
「きゅいきゅい」
「…………」
「きゅいきゅい、きゅい」
「…………」
「きゅい、きゅきゅきゅいきゅい。きゅいきゅいきゅい!」
「…………………………………」
「きゅい、きゅいきゅいきゅいっきゅいきゅいきゅ~~~~い~~~~~!!」
「でえええええええええええい!!! いい加減にせぬか、汝ぇ!!」
しっかり咥えられたマントの端を取り上げ立ち上がる。
そして感じる重さに眼をやれば口で引っ張ってられていたせいか涎やらで
ぐしょぐしょになった自前の紅の外套。
なんだか欝だ。
「きゅい!」
だが、そんな九朔などお構いなしな様子で目の前の竜はまん丸の黒いつぶらな瞳を輝かせ
こちらを嬉しそうに見下ろしている。
「シルフィード……汝、先ほど飯を食ったばかりだろうが」
溜息をついて九朔は目の前の竜を見上げる。
シルフィード、先日自分に何者かと尋ねてきた少女タバサの使い魔の竜。
マルトーの手伝いで使い魔達の食事の世話をしているおかげで覚えた。
ちなみに一回の食事量はざっと通常の三倍、青色なのに理不尽である。
「きゅい! きゅい!」
と、腹が空いたわけではないと言いたげにシルフィードが首を大きく横に振った。
使い魔は時に人語を解するという。なるほど、犬が主人の命令どおりに
アーカムアドバタイザーの朝刊を庭先から拾ってくるのとは訳が違うというわけか。
「きゅいきゅい!」
つまらない事を考えていると今度は上着の肩口を食まれた。
いい加減涎だらけになるのは勘弁したいというのに。
「分かった! 分かったから我の肩口を食むのを止めろ。一体何の用だというのだ汝は……」
今度は逆を食もうとするシルフィードの鼻先を制して九朔が叫ぶ。
「きゅい!」
ようやく聞いてくれたとでも言いたげに嬉しそうに鳴くと、シルフィードは頭で自分の背中を
指した。
「乗れ、とでも言う気か?」
「きゅい!」
首を大きく縦に振るシルフィード。
さて、自分はこの竜とたいした面識がなく、これの主人とも一言二言言葉を交わしたに
過ぎない。それが、何故こんなことを?
「きゅいきゅい!」
「ああ、ああ、わかった。わかったから止めろ」
またもそんな事はお構いなしと襟口を食もうとする口を押し留め、仕方なしと九朔はその背に
乗る事にする。
こうもしつこく食まれるのは堪ったものではないというのもあるが、悪意を感じられぬ者に
いらぬ詮索は不必要であるし、用があるならそれはそれで付き合うのも暇つぶしになるかも
しれないと思ったからだった。
何かしらの問題が起きればその主人に言えば良いことだろうし。
どうにも牧歌的な空気に毒されたのか危機感が欠如している九朔であった。
「乗ったぞ」
背にあぐらをかき九朔がシルフィードに声をかける。
そしてきゅいと一鳴き、両者は空へと舞い上がった。

クザクがシルフィードと空へと舞い上がる様子をタバサはしっかり窓から見ていた。
いったい何をするつもりだというのかと考えるが、いや、考えるまでもなかった。
『きゅいきゅい! わたしみつけた! 精霊のちからをつかえるおとこのこ!』
『はなしたいーはなしたいー。あの子とはなしたいー』
『ずっとにんげんに変化できるなんてすごい! だからはなしたい!』
『はなすーはなすー、はなしたいー』
『ずっとずっと遠いところならおはなしー』
『人のいないところならおはなしー』
『仲間だよ、仲間なかまー。とおいところでおはなしー』
『雲のうえでおはなしー』
以上、シルフィードの独り言百選より抜粋の後導き出される答えは一つしかない訳で。
授業をしている教師に気づかれないようにタバサは教室を抜け出す。
同じ使い魔同士の会話をタバサは禁じていない。
しかし、彼に関しては別だ。
他の使い魔とは人語を使わずに会話できるであろうが、彼は人だ。
絶滅したといわれる古代種の韻竜それこそが彼女の真の姿、人語を解し先住の魔法を使う
幻獣である。
そんなシルフィードの正体がばれれば、ひどく面倒な事になるのは確実である。
それはダイジュウジクザクも例に漏れない。
はっきりいって、そんな面倒ごとを抱えるのはまっぴらごめんだ。
ああ、こんなことなら彼との会話を禁じておけばよかったと今更思う。
ガリア北花壇騎士らしからぬ失態である。
風竜の飛ぶ速度は馬とは比較にならないので追いかけるならば早いうちに
しておかないと取り返しのつかないことになる。
馬屋へと早足で駆けるタバサだったが、その肩をいきなり後ろから掴まれ行動を阻まれた。
「どこに行くのかしら、タ・バ・サ?」
振向けばにまにまと楽しそうな笑顔をこちらに向けるキュルケの顔。
頭痛の種が増えた。
「トイレ」
「うそばっかり」
笑顔で即答。
「だめよタバサ。あなたってば、そういう嘘をつくのって下手なんだから」
ちっちっち、と指を振るキュルケが更に楽しげな笑顔を浮かべる。
そして、
「アンタ達、授業を抜け出して何のつもりなの?」
「あらら、ヴァリエールじゃない。授業を抜け出すなんて悪い子ね」
「それはアンタもでしょツェプルストー!」
桃色の髪の少女を見て更に厄介な頭痛の種が追加された。
ダイジュウジクザクの主人、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。
なんなのだろうか、今日の自分はとことんツキから見放されているのではと考えたくなった。
そんな彼女の目の前にキュルケの笑顔がやってくる。
「で、どこに行くの?」
「外」
「へえ。使い魔を追いかけるんだ?」
どうしてばれてる? そう言いたげな視線を送るとにこりと邪気を感じさせないような笑顔で
キュルケが微笑んだ。
「うふふ。私もダーリンを見てて気づいただけよ。さ、目的は一緒だし外へと
 出かけましょうか」
そういうことかと得心するが、いざ行かんと肩を抱き寄せぐいぐい引っ張るのは勘弁したい。
そういうのはシルフィードだけで充分だ。
「ちょちょちょちょっと待ちなさい! まだ授業中だって言ってるでしょ!」
そんな目の前にまたもルイズが立ちふさがる。
だが、それもまたお構いなしとキュルケがふっと笑んだ。
「仕方ないじゃない、恋しちゃったんだもの」
「はぁ?」
キュルケの言葉に嫌な予感再び。キュルケは自他共に認める恋多き女だ。それは彼女の友人を
している自分が一番良く知るところであるが、見上げた先にある彼女の瞳はまさしく
その恋する時の瞳の色である。
先ほどの『ダーリン』発言と、目的が一緒だということから考えうる答えは一つしかない。
「そう……ダイジュウジクザク。私、彼に恋しちゃったの」
ああ、やはり。
「ななな、なんですって!? ツェプルストー、あんたってばまたなの!?」
「良いじゃない。それに今の彼は空の上、タバサの使い魔と一緒。彼を追いかけるなら
 絶好のチャンスね」
「待ちなさい、私も行くわ」
今日は厄日だ、タバサは確信した。そんな彼女の頭の中では道化師の格好をして
踊る自分の姿があった。





森林を下に臨み九朔は感嘆の溜息をこぼす。
しかしそれは初めて見る景色に対しての感慨ではなく懐かしい風景に出会えた郷愁の
ようなもの。
それが失われた記憶に関係するのかと考えるが、穴抜けにしか出てこないイメージのそれから
類推できる単語は何もない。
ウィンフィールドは執事だが、誰に仕え、そして誰のためにあの拳を振るっていたのか
思い出せない状況と同じだった。
「まったく……中途に記憶を失った我はあれか? 虫食いの書物か? 呆れる事この上
 ないではないか」
自嘲してみるが誰もその言葉を返す者はここにいない。
いや、いることにはいるが相手は人語を解せども喋る事かなわぬ幻獣だ。
愚痴をこぼせる相手がいないことがこうも空しいとは。
やるせない溜息がこぼれる。
「きゅい、自分をせめるのだめ。心がずーんって重たくなっちゃうのね」
「ん? ああ、確かにそうかもしれんな」
「うん、くらいことを考えたらずっとずっとくらくなっちゃうのね。だからそういう時は
 ごはんとか楽しい事をかんがえよう、きゅい」
「飯のう………そういう問題ではないのだが―――ん?」
そこでようやく気づいた。
「シルフィード、汝しゃべれるのか」
「きゅい? わかっててお話してくれたんじゃなかったの?」
「いや、自然と会話が成立しておったから気づかなんだ」
「えっとそれはつまりシルフィの正体とかわかってないとか……」
「正体? 汝は喋る竜であろう? 珍しくもないものかと思ったが」
「え゛!?」
「ん?」
両者の間に沈黙が流れた。
シルフィードは羽ばたきを止め、ゆっくりと下へ下へと下降していく。
薄雲を潜り抜け、魔法学院をやや後方数キロに臨み、人里離れた森の中へと更に降りていく。
そして着地。沈黙したまま硬直するシルフィードに異変を感じ、九朔はその背から降り
彼女の目の前に立った。
見た目にはまるで良く出来た蝋人形の様に静止したままのシルフィード。
気になり声をかけようとするが、その前に首がこちらへと向けられシルフィードの口が
開いた。
「すこししつもんします」
「ああ、構わぬが」
「クザクは韻竜ですか?」
「『いんりゅう』? なんだそれは?」
「ク……クザクは精霊の力をつかえますか?」
「世界が世界であろうし精霊はいるのであろう。が、我は精霊ではないな」
「ぅ……クク、クザクは、変化の魔法を使ってます」
「変化の。我は妖怪変化や魑魅魍魎、ましてや百鬼夜行の類ではない」
「………………」
「どうした、シルフィード?」
首をぐいっとあげて空を見上げるシルフィードの様子にさすがに何かおかしいもの
を感じ取るが、一体全体先ほどからの質問の意図が掴めずどうしようもない。
「クザクはうそをついてるのね。うん、だだだだってシルフィの勘はどこまでもまるっと
 お見通ししちゃうものね」
「いや、嘘などついておらぬが」
「ううう、うそをつつつ、ついてもだめなのねっ! うんうん、シルフィがみつけたなかまが
 違うとかありえなーい、なーいなーい……」
「自信満々に言うのは良いが木に頭をぶつけるのは止めるのが良いかと思うぞ」
頭を胴の肥えた古木にぶつけるシルフィードをたしなめるが届いた様子はない。
約一分ほど続いたであろうか、哀れ古木の表面はぼっくりと凹んでいた。
「落ち着いたか?」
「うん」
「そうか。では、ここに我を連れて来た理由をだな――」
「我をまといし風よ。我の姿を変えよ!」
九朔の言葉を遮り流れた唄の調べ、シルフィードを中心に森の中を空色の風が渦を巻いた。
「な、何だっ!?」
吹いた風が地面の落葉を巻き上げ、九朔を巻き込む。
落葉に視界が遮られ目の前のシルフィードを見ることが出来なくなる。
いったい何が起きたのか、皆目見当つかず混乱するがしかし風は突然吹き止み、葉は
力を失い再び大地へと落ちていく。
「なぁっ!?」
そして九朔はその落葉の雨の中にあるものを見て、絶句した。
白い肌、青い髪、青い瞳、すらりと伸びた腕、脚線美。
豊かなふくらみ、艶やかなくびれ、引き締まった臀部。
彫像のような美しさを持つ全裸の女が九朔の目の前に立っていた。
しかも生まれたばかりの子じかのようにおぼつかない足取りでこっちに向かって来る
ではないか。
「っ!」
さすがに刺激が強すぎた、顔面に熱を感じ九朔は後ろを振向き耐える。
しかし、
「きゅい! せっかくクザクとおんなじになったのに見ないとはひどいのね!」
あろうことかわざわざ目の前にその女はやってきた。
いやおう無しにその翡翠の瞳に裸身をしっかりと眼に焼き付けてしまう九朔。
しかも全裸だ、本来隠れているはずの部分まで丸見えだ。
ああ、子女との付き合いなど終ぞない九朔にそれは余りにも厳しすぎた。
幼少より女性に囲まれて育った身ではあるがこういった部類には滅法弱い。
強引に押し倒されたりとか、無理矢理キスの嵐を受けたりとか、突然素っ裸を見せられたり
とか、とにかく色々。
記憶から失われた半身の色々なアレに散々な目にあうのも仕方ないのかも
しれない…がもしかすると父親譲りのマゾ体質のせいなのかもしれない。
とにかくだ、目の前の女がシルフィードと同じ声をしているというのにも気づかず突然の
艶事まがいの事態にでくわした九朔の末路は如何かと言えばだ。
「きゅい! クザク鼻から血が出てるのね!!」
鼻血だった。
なんと微笑ましく悲しいことだろうか、嗚呼それは男の性。

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