あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと聖石-16


その日、タルブ村は地獄だった。

逃亡したチョコボを連れ戻すための作戦。
その下準備のために集められたハシバミ草。
民家ほどの山になって積まれている。

それらが抽出され、鼻詰まりも一発で治りそうな臭いが立ち込める。
全身がハシバミ臭に犯される。

誰か、この状態を解決してください。
それだけが、私たちの望みです。

―――デュライ家日記帳・通称デュライ白書より





むせ返るようなハシバミ臭。
旅人も鼻をつまみながらこちらを見る。
私だってこんなことやりたくない。

目を瞬かせながら、一心不乱にハシバミエキスを作る。
タバサだけ嬉々として作っているのは気のせいだろう。
気のせいだと信じたい。

順調にハシバミ草が無くなり、樽にして五つ分のハシバミエキスが完成。
夕方のことだった。
どの道、村にハシバミ臭がする限りチョコボは寄ってこない。
つーか私たちも離れたい。
タバサだけはなんだか心なしかうっとりしている。
おーい、かえってこーい。




村のハシバミ臭を消すために奮闘したら、時間は夕方。
今から森に入ると危険なので、作戦決行は明日にして、今日はゆっくり休む。
シエスタの家では鶏肉を中心とした食卓で出迎えられた。
シチューやソテーを皆で食べる。
これはうまい。
今までの鶏肉とは一味違う、濃厚でコクのある味だ。

「シエスタ、この鶏肉おいしいわね。なんていう料理なの?」

私たちは思った。
世の中知らなくていいことはいっぱいあると。
昔、旅行先で蜂の子のフライを食べさせられたとき以来の思いだ。

「チョコボのシチューです。栄養がいっぱいでおいしいですよ」
ちょっと、マジですかシエスタ。
地獄を見る羽目になった動物の肉ですか。

ギーシュとタバサ、キュルケの顔色が青ざめたものに。

って、ちょっと待て。
たしか鶏肉のソテーもあったはずだが―――

「タルブ名物、チョコボ料理です。おいしいですよね」

食べてしまったものは仕方が無い。
冥福を祈りつつ、残さず食べよう。

「あー、僕はちょっと節制中でね」
「逃がさない」

逃げようとするギーシュを捕まえ、席に座らせる。
ナイス、タバサ。
キュルケは偏見を捨て、おいしく頂いているようだ。
思い出さなければ、味はいいのだ、味は。




全員がチョコボ料理で満腹になり、思い思いの夜を過ごしている中、私は散歩に出た。
外は満月、月明かりが気持ちいい。
森と反対側には草原が広がっていて、今は月明かりの舞台となっている。

「ねぇ、アルテマ。貴女はどうしてこの世界に来たの?」

「それは、貴女がヴァルゴの、血塗られた聖天使の魂を受けるにふさわしい者だったから」

背後からの声。
けれど、振り向かない。

「血塗られた聖天使って?」
「万物を支配する真理より解き放たれた存在、それが聖天使。『血塗られた』は神に逆らった際につけられた」

今までに疑問に思っていたことが、あふれ出る。

「あの、死んだ都は?」
「海中に沈んだかつてのミュロンド。死せる都ミュロンド」

彼女の姿は見ない。
一方的な質問は続く。

「じゃあ、今の貴女はアルテマなの? それとも私なの?」
「全ては虚栄の闇が払われ、力の塔の頂にたどり着いた時に解る」

聞くべき事は聞いた。
最後に、一つだけ呟く。

「魂が融合した果てに出来るのはアルテマかルイズか、そういう二択ね」
「あるいはそのどちらとも取れない、まったく新しい半人半天か」

振り向き、顔を合わせる。

赤いレオタードをイメージさせるような服。
服に合わせた赤いブーツには、羽をあしらった二本の剣。
そして、背に純白の翼と頭に生える二つの翼。

目の前にいるのは、四対の翼を持つ天使。

「初めまして、それが本来の姿なのね」
「この姿で話すのは久しぶりだ」

月明かりの下、一人の人間と天使が顔を合わせる。
お互いの表情は穏やか。

アルテマの喉元に杖が突きつけられ、ルイズの両肩に剣が乗せられる。

「悪いけど、そう簡単に負けるつもりは無いの」
「それでこそ、私が選んだ肉体だ」

ルイズが杖を引き、アルテマが剣を地面に突き立てる。

「我が魂の器が、接近戦の一つも出来ないのは腹立たしい」
「心遣い感謝します」

剣を引き抜き、柄を支点に一回転。
驚くほど軽い。

「次に会うのは、おそらく戦場ね」
「いずれ、この世界に大きな戦いが襲う。そう遠くない時に会えるだろう」

瞬きをした瞬間に、アルテマの姿は消えていた。

「あ、ルイズ様!」

代わりに、町の方向から走ってくるシエスタ。
多分、私が抜け出したことに気が付いたのだろう。

戻ろう、私の世界に。

アルテマが降り立った、幻想の舞台を後にし、シエスタの元へと歩いていった。
アルテマが存在した証の剣を持って。
翌日早朝。
朝もやのかかる森の中。
チョコボの縄張り外周に撒かれる液体。
風を起こし、液体の持つ刺激臭を縄張りの中心に送り込む。
数秒後に響くチョコボの鳴き声に、成功を確信する。

村のチョコボ農場に誘導するようにハシバミエキスを撒き、行動を徐々に限定させる。
その様子を、私は村から眺めていた。

私の予想が正しければ、あのチョコボだけここに来る。
あの赤いチョコボは、絶対に。

念のためにハシバミエキスを撒いて、寄り付かないようにしてある。
対チョコボ用の結界が張られた空間に、一匹のチョコボが入り込む。
赤い羽根のチョコボ。

お互いの姿が確認できた瞬間に、勝負は決まった。

「命に飢えた死神達よ」

チョコボが羽を振り下ろすと同時に現われる巨大な岩。
対するルイズは詠唱の大部分をあらかじめ終わらせた魔法が発動する。

「汝らにその者の身を委ねん…デス!」

岩が着弾する瞬間にシエスタが私を突き飛ばして割り込む。
私の魔法が赤いチョコボの命を刈り取り、シエスタが巨大な岩を受け止める。

シエスタのパワーで吹き飛ばされた私も、岩をまともに受け止めたシエスタも相当なダメージを負う。

倒れたまま首だけを動かして作戦の成否を見る。
チョコボ達が、チョコボ専用の牧場に入って行くのがよく見えた。

それを確認して、ゆっくりと眠り始めた。





「お、戻ってきたな。仕事の成果を話してもらおうか」

以前、仕事を斡旋した貴族の子供達が結果報告に来た。

「私達は王都トリスタニアを出発して、タイニーフェザー退治に出発したわ」
「いい予感がしてた」
「圧倒的な数のタイニーフェザーが群れを形成している中、がんばって仕事をしたんだ」
「その結果、無事に退治することと、新しい道の開拓に成功しました」
「近くのタルブ村の住民がお礼として宝箱を持ってきた」
「私がその中身を確認すると…タイニーフェザーの卵が入っていたわ!」
「よって、この仕事は大成功したと言えるわ!」
「今回の仕事の結果報告は以上よ」

成果:チョコボ(タイニーフェザー)の卵二個。
   古代の船と機関部

「おっ、凄いもの見つけたな。それは財宝って言って、とても価値があるぜ!」

とりあえず卵は大事に育てて、船はコルベール先生に復元してもらおう。
今後が楽しみな卵を抱えながら、どんなチョコボが生まれるのかを思うのだった。


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