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魔法少女リリカルルイズ25


ゴーレムの肩に乗るフーケはいつになく高揚していた。
ロングビルと名乗り、秘書を続けて、おまけにオスマンのあの行為に我慢してまで調査を続けた成果がこれから出るのだ。
それに今日はいつになく魔力が充実している。
それは気のせいかもしれないが、心躍らずにはいられない。


ジュエルシードは脈動するように明滅を始める。
明滅とともに魔力が少しずつ湧き出していく。
魔力は宝を願う者のためにゴーレムの中に広がっていく。
それはジュエルシードの力の正しい現れ方でもあった。


巨大なゴーレムの腕が宝物庫の壁にめがけて振り下ろされた。
その壁は強固なはずであった。
建築に使われた材料、技術、そして固定化の魔法。
いずれをとってもこれ以上の物はハルケギニア中を探してもそうはない。
その壁がいともたやすく砕け散り、大穴を開けた。
「なんだい。見かけの倒しの噂だけかい。これならとっととやるんだったね」
そうは言いながらも、フーケは自らの魔法の威力に満足する。
もっとも、その原因はゴーレムの中にあるジュエルシードが原因なのだが、彼女にはそれに気づく術はない。
周りには予想通り衛士はもちろん人影すらない。
とはいえ、ここでぐずぐずしているとすぐに見つかるのは目に見えている。
フーケは慣れた様子で円柱状のゴーレムの腕の上を走り、壁に開いた穴から宝物庫の中に走り込んだ。
中には様々な宝があるが、フーケのねらいはただ一つ。破壊の杖だ。
ロングビルとして目を通した資料の中には、宝物庫の図面もあった。
その図面を思い出しながら、壁を順番に見回したフーケは目当ての物を見つけた。
青い紋章入りの長方形の箱。それには『破壊の杖。持ち出し不可』と書かれたプレートが下がっている。
間違いない。この中に破壊の杖があるはずだ。
フーケはそれを抱え上げ、急いでゴーレムの元に戻る。
穴から外に出る前に一度振り返り、杖と降った。
『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
魔法が壁にそう刻んだ。


ルイズは走りながらゴーレムが壁から腕を引き出す様子を見ていた。
素早く首を見回し、周囲を確認する。あたりには誰もいない。
ルイズはレイジングハートを手にし、小さくつぶやいた。
「レイジングハート、セット・アップ」
「stand by ready.set up.」
瞬きする時間もかけずにルイズはバリアジャケットで身を包む。
その横では人間の姿に変身したユーノがルイズと歩調を合わせている。
ルイズは足下にフライアー・フィンをつくり、ユーノとともに空に飛んだ。
空を飛べばゴーレムにはすぐに追いついた。
「ジュエルシードは、まだ暴走していないみたいだ。今なら被害も少ないはずだよ」
「そうね。早く回収しましょう」
レイジングハートと視線を塔から離れていくゴーレムに向けた。
「大きい……」
上空から見下ろした方がゴーレムの巨大さがよくわかった。
身長はおよそ30メイル。
以前ギーシュが暴走させたゴーレムよりずっと大きい。
暴走させずにあれを作り上げているのだとしたら、そのメイジはギーシュとは比べものにならない腕の持ち主なのだろう。
その巨体の中にジュエルシードがあるのは、広域サーチを使うまでもなくわかる。
あとはゴーレムの中からジュエルシードを取り出すだけだ。
「ディバインバスターを使えばいいんだけど……どうしよう」
ゴーレムを砲撃魔法で粉砕すればジュエルシードは見つかるだろう。
問題はゴーレムの肩に乗っている深くローブをかぶった人だ。
おそらくゴーレムを使い、宝物庫から何か盗み出した盗賊なのだろう。
──いいのかな
人間をミッドチルダ式の魔法でジュエルシードの怪物同様に砲撃していいかどうか逡巡がある。
ユーノの顔をちらっと見る。使っていいかどうか聞きたいが、うまく切り出せない。
そんなルイズにレイジングハートがアドバイスを送った。
「No problem.Shoot Buster.Master.」
「それなら、そうしましょう」
問題がないのなら、それでいい。
「ルイズ、慎重にね」
ユーノはそう言うが撃っていいのなら盗賊だし、ゴーレムごと撃ち抜いてもかまわないだろう。
方針の決まったルイズは、ためらうことなく呪文を唱える。
「リリカル・マジカル」
ゴーレムもそれに乗った盗賊もルイズを気にすることなく、壁に向かって歩いていく。
その間にもルイズは魔力を溜めていく。
レイジングハートに魔力が満ち、その先に作られた魔力球がまぶしいほどに輝く。
「ディバイン・バスターーーー、シューーーーートっ」
光となった魔力が一直線に飛び、ゴーレムの頭部に直撃する。
爆発を起こしたゴーレムは少したたらを踏んで、その場に止まった。
吹き飛んだ頭部の跡には、青いジュエルシードが光っていた。


フーケに残された仕事は学院から逃げることだけだった。
塀を乗り越えて、少し行ったところでゴーレムをおとりにすれば誰にも見つかることはない。
上空に白い服を着たメイジがいるが、手をこまねいているだけだ。
あの距離で、しかもフライを使っているのなら攻撃魔法を使えるはずもないし、森の中に入ってしまえば簡単に隠れることもできる。
「さて、と」
独りごちるフーケは突如、いやな予感を感じた。
根拠はない。だが、今まで盗賊を続けてこられたのは、この予感というやつを軽視しなかったためでもある。
フーケは空に顔を起こし、目をむいた。
そこにはピンクの、明らかに魔法で作られた球体が輝度を増しつつあるのだ。
「なんだいあれは」
フライを使いながらの魔法、しかも輝きからわかるようにただごとでなく強力な魔法を使おうとしている。
見ているうちに球体はさらに輝きを増し、ついにはゴーレムに向かって降ってきたのだ。
光はゴーレムの頭部を押しつぶし、粉砕し、そして爆発を起こした。
巨大なゴーレムが頭部だけとはいえ、たった一撃で粉砕されたのだ。
「どんな魔法よ」
見たこともない魔法だ。
トリステインにあるアカデミーが開発した新式の魔法かもしれない。
いずれにせよ、上空にいるメイジが油断できない相手であることは間違いない。
「どうすりゃいいんだよ。いったい」
ゴーレムの一番大きな破損は頭部だけだが、動けるように修復するには少し時間がかかる。
その間に学院の衛士や王女の護衛が駆けつけるはずだ。
そっちは何とかなっても空のメイジがいる。あのメイジがまたさっきの魔法を使ったらどうしようもない。
「あいつから何とかしないとね」
だがフーケにはその手段がない。
フーケにはあの高さまで届く魔法はないのだ。


新たな願いを受けたジュエルシードは強く脈動を始める。
願いを叶えるには、このゴーレムだけでは難しかったが、ジュエルシードはその手段をすぐに見つける。
だが、それを使うにはさらに魔力が必要なはずだ。
そのためにより強く、より多くの魔力を作り出していく。
そしてジュエルシードは暴走した。


ゴーレムの頭部があった場所でジュエルシードの輝きが増す。
「これは?」
それに気づいたフーケはジュエルシードに近寄り、それをとろうと手を伸ばした。
泥が動く音がした。
フーケの周りで泥が波を打ち、盛り上がっていく。
ゴーレムの頭部が急速に修復していっているのだ。フーケを巻き込んで。
フーケは泥の波から逃れるために走ろうとしたが、泥を強く踏んだとたんに膝まで沈んでしまう。
「こ、この、何が起こってるんだい!」
フーケは、徐々に泥の中に埋まっていく。
膝から、腰へ、腰から胸へ、胸から首へ。
「この、この」
もがくたびに沈んでいく。
沈むたびにジュエルシードの輝きが増していく。
「こいつが……まさか」
フーケにはジュエルシードが何かはわからないし、何をしているのかもわからない。
それでも青い光を放つ宝石が、この異変の元凶だということは疑いようもなかった。
これをどうするのか、どうやればいいのか。そんなことはわからない。
わからないが、フーケはジュエルシードに手を伸ばした。
それをつかめばどうにかできると信じて。
その動きがさらにフーケを泥の中に埋めていく。
──もう少し。
指先がジュエルシードにかかった。
フーケは目まで泥に埋まる。
──もう少し。
フーケの頭が泥に埋まる。
そして、フーケの全ては泥の中に沈んでいった。
最後までもがき続けた腕もジュエルシードをつかむことなく、泥の中に消えた。


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