あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

豆粒ほどの小さな使い魔-15




私には妹はいないけど、近所には小さな子供もいた。
けど、ルイズのような女の子はいなかったと思う。
靴下のハンモックに揺られながら、目を閉じても中々眠りは訪れない。
ルイズは、とても不安定だ。
見ていてはらはらする。ああ、目が離せないというのが一番近いかも。
そして、恥ずかしいことに、かなり私に似てる。
まだ頬の火照りが治まらない。本当に気がつかなかった。私も、周りからルイズみたいに見えてたんだろうか。
一生懸命なルイズを可愛いと思ってたのは……だめだじっとしてると変なことばかり考えちゃう。もう一度服を着て、窓から外に飛び出した。
月明かりと、夜気の肌寒さに目が冴える。腰の剣を確かめた。
マメイヌも、他の隊員たちもここにはいない。
怪我をしても、誰も助けてくれない。
ルイズなら感じてくれるかもしれないとちらりと思ったけど。
死にたいのかな、私。
ルイズに無茶はいけないって言った後で、夜の中に走り出そうとしてる。体が、足が走りたがってる。
自棄になってるのとは違う。
地に伏せるように上体を低くして、目ではなく皮膚で感じることを意識しながら。
ぞくぞくする。ルイズが変わっていくのをこの目で見ていると。だけどその影で、悔しいと思ってなかった? 羨ましいと、私だってまだ変われるはずだって。
一人きりだから、慎重になってた。それは間違いじゃない。でも、萎縮しちゃだめだったんだ。
爪先から髪の毛の先まで、ぴんと張り詰めてる。この感覚がいい。
いつか、矢印の先っぽの国に帰ったとき、今よりも大きくなっているために。
それに、
「るいずノ、オ姉チャンデイタイ」
ルイズに甘えられるのは、くすぐったくて、とっても嬉しいんだから。
妹より怠けてるようじゃダメだ。
ああ、やっぱり私、ルイズと似てる。

私もすごく、負けず嫌いだ。


* *



「ひぅっ!」
飛び起きた。何か、すごく怖い夢を見たような……う、早く起きないと、たべちゃうぞぉって、あれは……
「るいず、オハヨ」
「あぁ、おはようハヤテ」
頭を振って眠気を払う。今日は笛で起こしてもらえなかったのか。でも自分で起きれたからよしとしよう。
まだ空は薄暗い。だけど、二度寝はしない。
外を見て思い出したから。
タバサに会いに行くって。
わざわざ早起きしなくても、食堂でも教室でも会える。それは分かってるけど、そこだと、いやな私が出そうだから。
ぐちぐち考えてたってしょうがない。
気合を入れて、でもまだ他の部屋は睡眠中だろうから静かに、部屋を出た。
空が白みかけたこの時間の光景は、ちょっと新鮮。タバサって、結構いい趣味してるじゃない。
「それで、どの辺りだって?」
「アッチ」
いるかどうかハヤテに確かめて来てもらえば確実だけど、何となく無粋な気がしたし。
それにあちらはメイジと使い魔の二人でいるんだろう。だったら私たちも、二人一緒に会いに行くのが対等でしょう。


「あ、いたわね」
風竜だから、この距離からでも見える。タバサは影になってるのか見えなかった。あの子小柄だし。
大きな使い魔と、小さなメイジ。私たちとは反対ね。
すいと、風竜が顔をこちらに向けた。
ハヤテに気がついたのもあの竜だったっていうし。ただの竜とは一味違うのかな。前に見た竜騎士隊の竜よりも、何て言うんだろう、表情がある気がする。
私が近付くのを、タバサは表情も変えずに待っていた。
「おはよう、タバサ」
返事は無言。辛うじて頷いたと分かる程度に顔が動いただけ。
これでも、キュルケの友達なのよね。キュルケ以外と一緒にいるとこ見たことないけど。
「この間は本当にありがとう。いいって言うかもしれないけど、でももう一回言わせてね」
あの時は頭が混乱してたけど、ああいう風にしてくれる人って、学院に来てからは初めてだった。
私が意地っ張りなせいもあるけど。例えばモンモランシーがいても、本当に重症でもなければ、笑われて終わり、だと思う。
タバサの左腕に巻かれてる包帯。いなくなってた数日、どこで何をしていたんだろう。
気になるけど、そこまで踏み込めるほど私と彼女の距離は近くない。今はまだ。
「左腕、痛くない?」
ハヤテが会った時には、腕を吊っていたと言うから、昨日の内に治術師に見てもらったんだろうけど。
こうしてみると、タバサが無口なのは、とってありがたかった。
気にしないつもりでも言葉につい反応しちゃう私が落ち着いて話そうと思ったら。
「それと昨日も、うちのハヤテを風竜と遊ばせてくれたんですってね。嬉しそうに話してくれたわ」
竜か。見上げると、目が合った。やっぱり羨ましいって思っちゃうな。ハヤテが最高なのは絶対だけど、誰からも一目で分かるわけじゃないもの。
「……シルフィードに会いに来たの」
「違うわ。貴女たちに会いに来たの」
あ、今ほんの少しだけ、首をかくんって傾げた。栗鼠みたいで可愛い。
よく見てないと分からないだろうけど、もしかしたら、タバサって顔以外はわりと素直?
直感だけど、当たってそうな気がする。
「ねぇタバサ、貴女の風竜に触れてもいいかしら」
「かまわない……あなたの使い魔も」
大きいけれど、すらりとしているせいか、威圧感よりも優美さを感じるわ。
竜の首筋に、そっと手を伸ばす。
強さとしなやかさ。健康な命の脈動。つい撫で摩ったら、風竜がきゅいきゅいと思いの外甘い声で鳴いた。
怒っているというよりは、くすぐったがってるみたい。一瞬、タバサをくすぐったら、こんな風に笑ってくれるかなって。
「ごめんなさいね。ありがとう、とても素敵な使い魔だわ」
毎朝会いに来たくなる気持ち分かるわ。
「あなたのも……」
お世辞、じゃないわよね。この子がそんな気の回し方をするとは思えないし。
だとすると、タバサは、ちゃんとハヤテのことを見てくれたんだ。ただ小さいだけだとそれで終わりにしないで。
一年間、私は何を見てきたんだろう。
どれほどのものを見落としてきたんだろう。
今からでも遅くない?
「私の使い魔は、ハヤテと言うの。コロボックルのハヤテ。貴女に名前で呼んでもらえたら、彼女もきっとその方が喜ぶと思うわ」
指し出した手のひらの上で、ハヤテがタバサに、ルルル、ヨロシク と。
タバサの表情は変わらないけど、右手の指が、ぴくぴくしてる。
「なら……あなたたちも、シルフィードと呼んであげて」
ごめんなさい。吹き出しそうになっちゃった。タバサって、意外と負けず嫌い?
何だろう。
魔法の実力や、先生や周りの評価でも、タバサは私よりはるかに上。だけど、今ここにいるのは、私よりも本当に小さな女の子に見える。
キュルケも、きっとタバサのこういうところを知ってるんだろう。
あれ? だとすると、キュルケも意外といい奴?


それほど長い時間話してたわけじゃないし、会話と言うにはぶつ切れだったけど、でも私たちの距離は、随分と近くなって、タバサの周りの空気もとても柔らかくなったと思う。
「じゃあ、私たちは部屋に戻るわ。また遊びに来てもいいかしら」
タバサはほんの少しだけ頷いて、シルフィードも翼と尻尾を嬉しそうに振ってくれた。
きゅいきゅいという鳴き声にも結構バリエーションがあって、タバサとハヤテが静かにお話してる横で、私たちもそれなりに会話を成立させることができたのだ。
主人と違って、かなりおしゃべりらしい。これで言葉が話せたら、さぞ賑やかになるだろう。


「ハヤテの言った通りかもね。タバサって、私とちょっと似てるかも」
トゲトゲで自分を覆って、それで誤魔化してた私と。
その内側まで入ってこられると、どうしようもなく子供になってしまうところも。
勿論、タバサの方がずっと優秀だから、
「だから、多分、私よりも子供のまま」
今日は楽しかった。だけど、楽しいままでそれでばいばいしたら、きっとタバサは、私をただそれだけの人と見るだろう。
きっと怒ったりはしない。最初から期待してなければ、失望も怒りも感じないだろうから。
むかっとした。
やっぱり無鉄砲だな、私。
無関心になられるくらいなら、怒らせたいとか思ってるし。
コルベール先生で懲りるどころか、味を占めちゃったのかも。
「友達ガ、増エルネ」
「ともっ? ああ、そう、友達、ね」
ハヤテにしてみたら、シエスタもコルベール先生も、それからシルフィードもタバサも友達になるんだろう。
「そうね、きっとそうだわ」
一人で我武者羅になってたときより、強くなれた気がする。それに、前よりもずっと、欲張りになったと思うしね。
「ああ、でも流石に早起きし過ぎたかも。シエスタに朝のお茶濃い目にしてもらわないと」
今日中にレビテーション完成させて、ついでにもう一つ二つ覚えちゃおう。そのくらいできそうな気がするから不思議だ。
「ハヤテ、だけどまたぐちゃぐちゃしちゃったら、ばしっと叱ってね」

頼りにしてるからね。お姉ちゃん。




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