あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと聖石-14


今日来た客は、凄く変わった集団だった。

大抵酒場の儲け話に乗るのは傭兵集団やゴロツキと相場が決まっている。
しかし、今日は違った。
ガキが五人、どこかの制服を着ていたから多分メイジなんだろう。
貴族のガキが一体何を?
だから、第一声を聞いた瞬間、驚かされた。

「とりあえず、ミルクを。それと最近噂になってること聞きたいんだけど」

まさか、儲け話を探しに来た貴族がいるなんて。



トリスタニアの酒場で聞ける話は幅が広い。
些細な噂話から大局を見据えた話までさまざまだ。
最も聞ける噂はアンリエッタ様がゲルマニアとの婚姻するという話とレコンキスタに関する話題。
婚姻についてはお膝元だけあって、その手の噂は飛び交っている。
レコンキスタに関しても、次の目標はどうしてもトリステインだということで、あちこちでささやかれている。

そして、マスターに本題を切り出す。

「マスター、何かいい話無い?」
「お嬢さん方、実力者と見るからこんな儲け話があるぜ」

マスターの話に耳を傾ける。
こういった場を取り仕切るマスターがそう言うのだ、相当な話だろう。

「ラ・ロシェール周辺にあるタルブ村、その近くに森があるんだが……最近オーク並に怖い魔鳥が現われるんだと。
 その森を突っ切ると、街道を進むより道の短縮になるから重宝されていたんだが…
 今はその魔鳥、便宜上タイニーフェザーと呼ばせてもらうヤツ等がそこを陣取っていて、安心して通れないんだ。」

確かに、街道は安全だが若干遠回りになってしまう。
森は気をつけるところに気をつけておけば、最高の短縮ルートになるのだろう。
しかし、その問題となっている魔鳥が道をふさいでしまっていると。

「タイニーフェザー? 魔鳥? コカトリスとかそういった類の?」

ここでマスターが首を振る。

「いや、先住魔法とかの恐ろしさじゃなくて、物理的な恐ろしさらしい。
 命からがら逃げてきた冒険者によると、鋼鉄製の鎧に穴を開けるほどのくちばしを持ち、
 森の中なのに落石が襲い掛かってきたりと言っていたな。
 そのうえ集団で襲いかかってくるそうだ」

なんだろう、そのとても怖い鳥は。
話を聞く限りでは先住魔法を使いこなすみたいだが、遭ってみないことには分からない。

「その魔鳥を退治してほしい、もしくは新ルートの開拓をしてほしいということね」
「話が早くて助かる。どうする?」

全員に目線を合わせ、意思を確認する。
当然ながら、受けると。
なぜかシエスタ以外。

そもそもなぜ、私達がこんなことをしているかというと……
「諸君、我々にはお金が無い」

食堂でお茶していたところ、ギーシュが宣言した。
まぁ、アルビオンに行くまでの準備とか着いた後のごたごたで出費が重なっている。
私も金額換算で三十三エキューと二十スゥを使っている。

「今こそちょっとした冒険で小遣い稼ぎといこうじゃないか!」
「半分は賛成。宝探しよりも効率的な手段を探したほうがいい」

と、タバサ。
ギーシュの持っている宝の地図が目に入ったのか、それを見てからの提案。
これについてはギーシュ以外全員同意だ。

「じ、じゃあどうやって…」
「酒場に行く。儲け話の一つぐらい紹介してもらう」

なぜタバサがそんなことに詳しいのか、誰も突っ込めないままトリスタニアまで行くことになってしまった。



情報どおりに森の近くまで進む。
全員がたかが鳥、問題なく退治して終了と息巻いていた。
やっぱりシエスタ以外。
むしろ青ざめている。

「どうしたの? たかが鳥じゃない。酒場の主人が名前を大げさに言ってるだけだって」
「そうだといいんですが……もしアレだったら………」
「大丈夫だ、相棒。いくらなんでもアレが逃げ出してるわけねーよ」

「―――手紙に、つがいのアレが逃げ出してなかなか見つからないって書いてあったとしても?」
「……おでれーた。まさかマジでアレが逃げ出したのか? そうなるとヤバイなんてもんじゃねーよ」

デルフと話すシエスタの様子がおかしい。
あの剛剣無双なシエスタが怯える何かが待ち構えているというのか?

「ねぇ、シエスタにデルフ。アレってなに?」

ナイスキュルケ!
こういうときにズバズバ聞く性格が頼もしいわ!

「―――鳥、デスヨ? 話ノ通リ、クチバシデ鎧ヲ貫ク」
「―――遭えば分かる。アレと戦った話なんてしたくも無い」

何だかよく分からないまま、馬車は肝心の森へと進んでいった。




「鬱蒼としてるわね、こんな樹海があるなんて」
「地元の話によるとオークの住処」
「オークは嫌だな。臭いし、汚いし」
「―――オークの方がまだマシです……」
「止まって、何か聞こえない?」

その言葉に全員が耳を潜める。

―――プギャー!! フゴー!!

これはオークの声か。
それにしてはずいぶん痛々しい悲鳴がいっぱい上がっている様な…
―――クェー!! クァー!!

この声がタイニーフェザーというヤツだろう。
声がしたほうに、もうちょっと接近してみる。
シエスタだけ、何かを諦めたようにデルフを抜いて戦闘態勢に入る。

視界が開け、木々の隙間からぽっかりと空いた広場が見える。

数体のオークが襲われている。
噂のタイニーフェザーに。

黄色や黒の羽毛。
鳥の癖に大地を駆けるその勇姿。
頑丈な鎧でも貫けそうなくちばし。
そして、二メイルはあろうかという体躯。
どう見ても温和そうな生物がオークにくちばしを突き立てて蹂躙している。

「あぁ、やっぱり…」
「アレだけの大所帯だ。さぞかし縄張りは広いだろ」

シエスタとデルフが絶望の淵に立ったような声をあげる。
そこまで怖いものなのか?

いや、現実を直視しよう。

振り下ろされる棍棒を、すばやいバックステップで避ける。
脂肪の鎧に包まれた腹に深く突き刺さるくちばし。
謎の球体がオークに襲い掛かり、地面に打ち据える。
傷を負ったタイニーフェザー同士が寄り添って、ケアルに似た光を発して傷を癒す。

これは、一方的だ。
オークが逃げ出そうとして、背を向けた瞬間に降り注ぐ岩石。

降り注いだ岩石はオークを押しつぶして消えた。
オークの逃げようとした先から、赤いタイニーフェザーが出てきた。
「シエスタ、正直に話して。アレは一体なに?」

「お爺様が村に来たときに持ち込まれた、タルブ村にのみ生息する巨大鳥、チョコボです」
「爺さんの話によると、赤いのは先祖返りした獰猛な赤チョコボだ。
 黒いのは黒チョコボって言って、空を飛び回る。
 厳密にチョコボって言うのは一番数の多い黄色のヤツだ」

「でも、たかが鳥でしょ? どうしてそんなに……」

「野生のチョコボは、完全武装した騎士団でも討伐が難しいと言われるほど危険なんです」
「相棒も昔戦ってボロボロにされた事があるぜ」

全員が絶句する。

「でも、足はそんなに速くなさそうだし、鳥だから賢くないんじゃ?」
「馬かそれ以上の速度が出ますよ? 森の中でもない限り逃げるのは無理です」
「おまけに賢いんだよ」

そのとき、小枝が折れる音が響く。
ギーシュが姿勢を変えた瞬間に踏みしめてしまったのだ。

広場にいたチョコボが一斉にこちらを向く。

「これって、かなりヤバイ?」
「下手すると絶体絶命といった感じです」

後にルイズはこのことを『史上最悪の戦い』と言い残した。
シエスタは後の世に、『温厚な人とチョコボは怒らせるな』という格言も残した。
―――ここからが、本当の地獄だ。


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