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ゼロの使い魔―銀眼の戦士― 9

「そうか…フーケは見付からなんだか」
「ですが、『呪いの大剣』取り戻せたので上出来ではないでしょうか」
学院長室でオスマンがフーケ改めロングビルから報告を受けている。
今居るのは、ルイズ、キュルケ、タバサ、イレーネ、ロングビル、コルベール、オスマンの7人。
「途中、呪いを受けたと思われる者と戦い、なんとか勝利しましたが…学院長はご存知だったんですか?」
「なんと…よく無事で戻ってきたの」
あの覚醒者の姿を思い出したのか、三人娘の顔が若干青くなっている。まぁ無理も無い。
「彼女がいなければ、全員殺されているところでした」
全員の視線がイレーネに集まったが、何時もと変わらない表情だ。
「分かったじゃろう?あれが持ち出し禁止になっていたわけが」
「とても」
「すっごく」
「非常に」
三人がほぼ同時にそう答えたが、もちろん、イレーネだけは別だ。

「フーケは取り逃がしたが、『呪いの大剣』を取り戻し
  化物を討伐したからには『シュヴァリエ』の爵位申請をしておくが…王室の堅物どもがどう出るか分からん。却下されても悪く思わんでくれ」
現物を見ればそうでもないだろうが、死体は高速剣によって肉片にされてしまっている。
「代わりと言ってはなんじゃが、夜の『フリックの舞踏会』は君達が主役じゃ。せいぜい着飾っておくのじゃぞ」
「そうでしたわ!フーケの騒ぎで忘れておりました!」
少しばかり残念そうだった三人だったが、キュルケを筆頭に一気に明るくなる。
「では、私もこれで」
先に、ロングビルが退室し続いてキュルケとタバサが外に出たが、イレーネが残った。
「私は、この御老体に話がある。先に行ってろ」
「…分かったわ。ちゃんと舞踏会に来るのよ」
ルイズが外に出た後、コルベールも気を利かせて外に出ると、部屋にはオスマンとイレーネの二人だけになった。

「どれ、何か聞きたい事があるようじゃな。エルフのお方」
「この大剣…クレイモアを何処で…いや、何時手に入れた?」
オスマンが目を細めたが、構わずにイレーネが続ける。
「印がある以上、これは我々が使っていた物だ。そしてあの覚醒者」
「これは…一年ぐらい前じゃったか。私の命の恩人の形見じゃ」
一年前と言うと、キュルケがそのあたりから行方不明者が出ていると言っていた頃だ。
「森を散策し、ワイバーンに襲われたところを彼女が救ってくれたのじゃが、怪我をしている体で剣を振るい、ワイバーンを切り伏せてしまった」
「なるほど、負傷した身体での妖力解放か…」
覚醒した原因はそれだろう。
妖力から見て20前半~10後半ナンバーの戦士と見たが、そのクラスなら妖魔如きにそれ程の負傷を負うはずはない。
覚醒者狩りの直後と見て間違い無さそうだ。
「剣の呪いを受けたのか、苦しみ出しての…私に向かって『人として葬ってくれ』と言ってきた」
「だが、やらなかった…というところか」
「治療しようと学院に運ぼうとしたのだが…結果は知っておるのじゃろう?」
「よく逃げ切れたものだな。一般人が逃げ切れる相手ではないぞ」
「…美味しくなさそうって言われての…ありゃあショックじゃった…」
どこか遠くを見ているが、まぁそうだったのだろう。
「まぁいい。お前達が言う呪いだが、この大剣にはそのようなものは無いぞ」
「本当かね?だが、彼女は確かに呪いで…」
「ああ、確かに呪いといえば呪いだろうさ。違うのは剣にではなく私達に…という事だろうが」
訝しげにしていたので論より証拠。何も手にしていない様態で軽く妖力解放をしてみせた。
「これは…!」
「妖力解放。一割で目の色が変化し、三割で顔付きが妖魔に近くなり、五割で体付きも変化する
  八割を超えると限界を超えたという事になるのだが…恐らく、御老体が出会った戦士は負傷のせいで限界を超えてしまったのだろうな」
「限界とは?」
「我々、クレイモアと呼ばれる戦士は妖魔の血肉を身体の中に取り込んで作られた存在でな
  妖魔を惨殺する我々にも妖魔の力を使うと人としての精神の限界を迎え、それを越えると『覚醒』する」
「エルフではないと…?」
「見た目で判断せんでもらおう。我々の特徴としては、妖魔の血肉を取り込んだ時点で髪の色素が抜け落ち、瞳の色が銀色になる」

「そのため、『銀眼の魔女』『銀眼の斬殺者』と呼ばれていてな、皮肉な事だが、その戦士が覚醒すると妖魔よりも厄介な存在へと変貌する
  大抵は、限界を超える前に自ら命を絶つか、殺されたい仲間に黒の書というものを送り覚醒を防ぐのだが……」
もっとも、この件に関してはオスマンにどうこう言う気は無い。
向こうですら一般人に対する建前は覚醒者の事を異常食欲者という妖魔の一部という事しか知らされていないのだから。
「そもそも、私が居た場所では魔法なぞ無かったし、月も一つしか無い。生活レベルは同程度だが、これは致命的に違う事だぞ」
「ふむ…月が一つという事は別の大陸から…というわけではなさそうじゃの」
「別世界というのも陳腐な話だが…召喚という事を考えると、そう考えたほうがいいのかもしれん」
「ふむ…」
この状態なら、ナンバー6あたりまでの戦士となら渡り合えるだろうが、上位ナンバーが召喚されでもしたら少しばかり分が悪い。
そもそも、筋力は一般人並に落ちているのだ。
そこで、知っているかもしれんとして聞きだす事にした。
「剣の類を掴むと力とスピードが上がっているようになっているんだが…分かるか?」
「…その左肩の印がガンダールヴの印という伝説の使い魔の印で、ありとあらゆる武器を使いこなしたとそうじゃ。だが…私はお主が武器を使う所を見ておらんので…」
オスマンがそこまで言うと、イレーネの周りの装飾品や床が一瞬にして無数に切り裂かれる。
「技の名は『高速剣』。さっき言った妖力解放を右腕のみに使った技だ」
半分呆然としているオスマンを放置して続ける。
「これでも、力とスピードは前の半分といったところだが…再生した腕では出せる物ではない。見てのとおり、腕の強度も戻っているわけではないしな」
おかげで、持続力も大分落ち込んでいる。回復するのにも妖気を必要とするため、やがり多用できる技ではなくなってしまっている。
「やはりガンダールヴのようじゃの。剣を持った時にルーンが光っておる」
「なるほどな。まぁ、それはいいとして、頼みがある」
「言ってごらんなさい。できるだけ力になろう」
「…もし私が限界を超えそうな時は、躊躇せずに首を撥ねろ」

「それは…」
「御老体が遭遇したのより遥かに強大な化物が産まれる事になる。これでも、かつてのナンバー2だったんでな」
ナンバー2と言っても、かつてのナンバー1であり深淵の者の一人。
南のルシエラと同等の力を持つラファエラにも両腕さえ健在なら勝つことが出来る程の力の持ち主だ。
覚醒すれば、深淵の者クラスの覚醒者になるだろうという事は容易に想像が付く。
まして、対抗する他の深淵の者も居らず、組織も無いのでは国どころか、ハルケギニアが終わりを迎えかねないのだ。
ただ、それ故テレサとプリシラは別次元の存在だと認識居ているのだが。
「何時になるかは分からんが…覚醒しそうになったら、頼むぞ」
「すまんの…ただ、私はお主の味方じゃ。これだけは覚えておいて欲しいガンダールヴよ」
「そうしておこう。それと、この大剣だが…私が貰っておいても構わんな?少なくとも人が扱える代物じゃないよ。こいつは」
全長165cm、重量7Kというクレイモアをマトモに扱える一般人はそうは居ない。振れたとしても肩が外れてしまいかねない。
「恩人の形見だったが…いいじゃろ。元々お主達の物だからの
  それと、お主がどういう理屈で、こっちの世界にやってきたのか私なりに調べてみよう」
「期待せずに待ってるよ」
今のところは帰るつもりは皆無だ。
むしろ帰ると粛清されるので、こっちに居たほうが都合がいい。

部屋から出ようとした時にデルフリンガーが話しかけてきた。
心なしか、声が震えているような気がする。
「相棒…その剣なんだけどよ…」
「これか?お前なら分かるはずだ。呪いなんぞ掛かってはいないさ」
「いや、違うっつーか…なんでもねぇ」
「?…まぁいいが」
丈夫さだけが取り得のボロい錆びた剣。錆び一つ無く、丈夫でしかも使い慣れた剣。
一般的に考えればどちらを選ぶかというのはデルフリンガーにも分かった。
だが、聞こうにも何時もと同じ冷静さを保っているので逆に聞き辛く聞けないでいる。
いつもと同じに、さらりと『いらん』と言われた日には再起不能になりそうだったからだ。

食堂の上の階の大ホールでフリッグの舞踏会が行なわれていたが、イレーネは特に何もする事が無く、会場を眺めていた。
性質上、料理は食べずに済むし、ワインも飲む必要も無いからだ。
さすがに、シエスタがわざわざ持ってきてくれた料理には少し手を付けたが、それで十分だ。
デルフリンガーとクレイモアの二本を背負っているので結構浮いてたりもする。
ホールを一瞥したが、キュルケが沢山の男に囲まれ笑っている。
こういう場所は彼女の独壇場らしい。

近くのテーブルではパーティドレス姿のタバサが、小柄な身体に似合わず料理を順調に食べ進んでいく。
「正直、お前達を見ていると羨ましくなるよ。我ながら、つまらん生物だとは思うが…やはりこの手の場所は性に合わん」
戦士になる前ははどうだったかとも思ったが、今はあまり覚えていない。
戦士になってから、常に生死の境を渡ってきたので、この手の場所には全くと言っていいほど慣れていないのだ。
「…お礼」
タバサがそう言ってサラダの乗った皿を差し出してきた。
森の件での事…という事らしい。
「少し貰おうか」
特に断る理由も無かったので口に運んだのだが…危うく妖力解放しかけた。
不味い。この上なく不味いのだ。
不味いだけならともかく、体験した事の無い類の苦味が一瞬にして広がった。
顔には出さないが一杯一杯である。
なおも、皿を付き出してくるタバサが何か別の物に見えたぐらいだ。
(あら…イレーネさん…どうしたんですか?駄目ですよ…一度手を付けた物は…全部自分で食べてください…)
「プリ…シラァ…!!」
「?」
プリシラの声が聞こえたような気がしたが、多分幻聴か何かだ。
「ああ…すまん…これで十分だ」
「美味しいのに」
一先ずそれで収まったのか、再びタバサが料理に手を出し始めたが、例のサラダを苦にした様子も無く食べる姿に心底驚いた。
「私はまだ…タバサを過小評価していたというのか…?やつはまだ……やつはまだ…おかわりすらしているんだぞ…!」
一瞬、化物を見た気分にしてくれたが、思い出したくないので忘れる事にした。

「どうしたんですか?顔色が少し悪いみたいですけど」
「…分かるか?」
「ええ、イレーネさんでもそんな事があるんですね」
声を掛けてきたのは、忙しそうにしているはずのシエスタだ。他人から見ても少し顔色が悪く見えたらしい。
「何か用か?忙しい中だ。それだけではあるまい」
「あ、はい。ミス・ヴァリエールがお呼びです」
「分かった。行こう」

しばらくするとホールの扉が開きパーティドレスに身を包んだルイズが出てきた。
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな~~~り~~~!」
衛兵が到着を告げると、ホールの男子生徒の目線が釘付けになる。
その後ろに、戦士の物とは違う銀の装飾で纏められた軽装の鎧を付けたイレーネも。
はっきり言えば実戦向きではないし、邪魔なだけだったがルイズに『お願い』され承諾した形になる。
ルイズは長い桃色掛かった髪をまとめ、化粧を施し元来持つ高貴さを嫌と言うほどに出し
対照的にイレーネは、殆ど素のままだったが、銀の装飾の鎧、銀の長い髪、銀眼、と
銀一色で纏められたその全身がホールの光を反射し、輝いているようにも見えた。
エルフ的な容姿もあり、それは一層強調されている。
「まったく…邪魔な装備が多いなこれは。役に立たんぞ」
「いいのよ。飾りなんだから」

イレーネが歩く度に、銀髪が揺れ光を乱反射し、ある意味ルイズより目立ってはいるが
この場合、ルイズに付き従う騎士という具合なので、ルイズを引き立てているようになっている。
男子生徒は、ノーマークだったルイズの美貌に気付き群がるようにダンスを申し込んできたが
イレーネの場合、どちらかというと女子生徒にダンスを申し込まれていた。
長身、鎧姿、隻腕、背に背負ったクレイモアと、美しいというよりは、格好良い範疇に入るのでそうなってしまっている。
ヅカ的なノリだ。ナンバー9『ジーン』ならばイレーネより適任であろうが、この場に居ないので仕方無い。
「おい…どうにかしろ」
「いいじゃない、相手に合わせれば。訓練とか受けてるんでしょ?」
「ここまでは予想外だ。そもそも、このような場に我々が出ること自体がだな…」
「それなら、このキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーが、ダンスのお相手を勤めさせて頂いてもよろしいかしら?騎士殿」
「…勝手にしろ。片腕しかないからな。どうなっても知らんぞ」
もう諦めたようだ。どうせやる事になるのなら、知っているやつのがいいと、キュルケで妥協した。

元々、運動能力がズバ抜けているクレイモアだ。そして、そのナンバー2。
最初こそ少し慣れないでいたが、数十秒もすると完全にキュルケに合わせられるようになっていた。
「惜しいわねー…」
何時もと変わりない冷静な表情のイレーネを見てキュルケが呟く。
何が惜しいかと言うと、無論性別だ。逆なら確実に『微熱』が燃え上がっているところである。

この後、数人相手し、何故か感銘を受けたギーシュの相手を済ますとバルコニーのテラスに身を運んだ。
元の場世とは違い月光が大分ある。それを銀が反射し、近寄りがたい雰囲気を出していたが、ニヤニヤ顔のルイズが近付いてきた。
「ダンス踊ったのホントに初めて?横から見てても、初心者とは思えなかったんだけど」
「こういう扱いをされるなど…向こうでは無かったからな」
「この前言ってた、月が一つしかなくて、魔法が無いって所ね。…信じてあげるわ」
「急にどうした」
「あんなの見たら、信じたくもなるわよ…」
覚醒者を見ては無理も無い。あれに匹敵する異形の化物はこの世界には存在しないようだ。
「ねえ、元の世界に帰りたい?」
「いや、気になるやつはいるが…戻る気は無いさ。それに、こう見えても追われる身なんでな」
「何やったのよあんた…それに気になるやつって?」
「組織を抜けただけだ。別に犯罪を犯したわけではない。気になっているのは、出来の悪い弟子の事でな、生き延びていればいいが…」
「弟子って…あんたまだ若そうに見えるけど実際のとこどうなの?エルフじゃないんでしょ?」
「私達は成長はするが老化はしないんでな。死ぬまでこの姿だ」
もう一つ、覚醒し妖魔化する。…ということは伏せておいた。今言う事でもないし、なによりルイズの爆発では死にそうにない。
「やっぱり、エルフ…いえ、エルフ以上ね。それで、その弟子の名前は?」
「…クレアだ」


パーティが終わり、各々部屋に戻っていったが、学院の外を一つの影が疾駆している。
大剣とデルフリンガーを背負ったイレーネだ。
奇妙な事に、この魔剣はあれから一言も喋ってはいない。珍しいことだ。
「相棒…何処に行くんだ?てか何を…」
「少し用があってな」
ようやく鞘から出たデルフリンガーだったが、さっきより怯えている。

「どうした?剣が気分が悪いと言うのではあるまい」
「そういや…その剣、どうするんだ?」
「ああ、二刀流というわけにもいかんしな。『処理』させてもらうぞ」
『処理』。その言葉を聞いた瞬間デルフリンガーが鞘を戻した。カタカタと震えているような気もする。
無論、そんな気にしないイレーネはさらに速度を上げる。
そうして着いたのは、あの森の小屋があった場所だ。
まだ、覚醒者の血肉が飛び散り、妖気が残留している。
一月ぐらいすれば、自然に綺麗になるだろうが、それまでは人が近づける場所ではないだろう。
「さて…この辺りでいいな」
「最期に一つ言いたいんだけどよ…」
「何だ?」
「そのよ…そりゃあ俺は錆びて、そいつみたいじゃないけどよ、捨てるってのはひでぇんじゃねぇかって思う…んだけどな」
「…何を言っている?お前」
「せめて、予備でもいいから、手元に置いといてくれ!せっかく、良い使い手に出会えたんだからよぉ~~」
涙目。剣に目があるのかどうか分からないが、とにかく、そんな感じだ。
「…お前、自分が捨てられると思っていたのか。そうか、それが妙だった理由か」
そこから移動し、少し見晴らしが良い場所に着くと、大剣を抜き、堅い地面に深く突き刺した。
「へ?そいつ使わねぇのか?」
「これはな…我々が死んだ時には、それがそのまま墓標になるんだよ。
  見ろ、ここに印がある。戦士は、この印と同じ物を与えられている。あの覚醒者は、この印のはずだ」
「いや、てっきり、俺が捨てられるもんだと思ったからよ。それならそうとな?」
「私が死ねば、お前がそうなるんだからな。今のうちに覚悟しておけ」
「いや、相棒なら、そう簡単に死なねぇだろ」
「死なないか…幸運は、あの時使い果たしているからな。どうなる事やら」
あの瀕死の状態から、ありとあらゆる幸運で命を繋いだ。
幸運に許容量があるなら、恐らくもう残ってはいないはずだ。
だからこそ、限界を超えそうな時は躊躇無く首を撥ねて貰わねばならない。

大剣がしっかり刺さっているのを確認すると、学院に向かい人外の速度で再び疾駆する。
後に残された物は、限界ギリギリまで人のために生きたであろう戦士が存在したという証だけだった。

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