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異世界BASARA-10


「よく逃げずに来たね。それは褒めてあげよう」
「真剣勝負において相手に背を向けたとあっては武士の恥。この幸村、逃げも隠れもせん」

ヴェストリの広場…
魔法学院の「風」と「火」の塔の中間にある中庭である。
今ここで、1人の貴族と召喚された使い魔が決闘を始めようとしていた。

「目が随分と赤くなっているが…寝不足かい?調子が悪くて負けました、なんて言わないでくれよ?」
「お主こそ、顔に随分と痛手を負っているが戦えるのか?」
ギーシュの眉がピクリと動く。
「…フン、心配は無用だよ。なぜなら…」
ギーシュは薔薇の造花を取り出し、それを振って花びらを一枚落とす。
「戦うのは、僕じゃないからね」

花びらが地面に落ちた瞬間、その周りに光の輪が出来た。
そしてその光の中から、青い色の人形が現れたではないか。
「こやつは…」
「僕は"青銅"の二つ名を持つメイジだ。だからこのワルキューレが君の相手をしてくれる」
そう言い終わると、ギーシュは薔薇を幸村に向けた。
それが合図であったのだろう、ワルキューレは素早い動きで幸村の鳩尾に拳を打ち込む。
「さて、君はどのくらい耐えられるかな!?」
そしてギーシュは容赦ない攻撃を開始した。



「それでの、あの若造はわしにあんな固いもんを食わせようとしたんじゃ」
「おぉ~それは何とも、酷い話じゃの~」
場所は変わり、ここは魔法学院の学院長室である。
普段この部屋には学院長のオールド・オスマン、彼の秘書のミス・ロングビルしかいない。
ところが今日は誰かが来ているようで、もう一人老人の声が聞こえてくる。
「まったく最近の若いもんは!老人を労ろうという心が足りんわい!」
今まさに騒ぎの中心になっているギーシュの使い魔、北条氏政であった。

「だからといって、自分の主人を窮地に追い込むような行いはどうかと思います」
氏政がついさっきやった事に対し、ロングビルは鋭いツッコミを入れる。
「ほっほっほ、まぁ良いではないかミス・ロングビル。んー…」
オスマンが指をクイクイと動かすと、1匹のハツカネズミが彼の足元にやって来た。
このネズミがオスマンの使い魔、モートソグニルである。

「おぉ我が使い魔モートソグニル、よく戻ってきたの。して…今日の色は?」
耳を近づけるオスマンに何かを呟くモートソグニル。
「ほほぅなるほど!純白か!今日は黒だと思ったんじゃがのぉ」
「な!?」
ロングビルは慌ててスカートを押さえた。
これがオスマンの日課となっている。
黙っていれば貫禄のある老人なのだが、このせいで周りから…特に彼女からはただのスケベと捉えられているのだ。

「穿いているなら別に見られてもいいじゃろうが、わしの世界じゃ穿いとらんぞ?」
モートソグニルとのやり取りを見ていた氏政がとんでもない事を言った。
この一言を聞くやいなや、オスマンは目をカッと開いて振り返る。
「な、何じゃとお!?それは真か?おっぴろげとな!!もも、もちっと詳しく話しを…」
氏政の世界に興味を持ったのか、オスマンはググッと詰め寄ってきた。
それはもうそのまま接吻しそうな勢いで……だがそこでオスマンは2つ異変に気づく。

1つは氏政の顔が青くなっている事。
そしてもう1つは、背後から殺気が感じられる事…

オスマンは氏政と同じように青い顔をしながら振り返った。そこには…
「こ…こ……この…」
そこには、真っ赤な顔をしたロングビルが仁王立ちしていた。
「ま、待てミス・ロングビル。冷静に…」

「このスケベジジイ共おぉぉぉーっ!!」

ドカッバキッゲシッ!
「ひえぇぇ~ままま待って!わしが悪かった!ごめんなさい許して~!」
ガシッボカッゲシッ!
「こ、こりゃ!何でわしまで蹴るんじゃ!わしを誰と心得ておる!わしは天下の北条…」
キーーーーン
ヒョワアァァァァァ!ロウジンハタイセツニ!!


「失礼します、オールド・オスマ…おや?」
と、そこにコルベールが入ってきた。
「そんな所で…何をしておられるのですか?」
床で痙攣しているオスマンと氏政を見てコルベールは怪訝な顔をする。
ちなみに、ロングビルはちゃっかり自分の机に戻っていた。

「い、いや気にするでないミスタ・コルベール。何用じゃ?」
「それが…ヴェストリの広場にて生徒と使い魔が決闘をしているようでして…」
「決闘じゃと?禁止されている筈じゃがの…どれ…」
さんざん蹴られた尻を擦り、オスマンは「遠見の鏡」を覗く。
そこには人の輪の中に2人の男が戦っている光景が映っていた。
最も、一方は自分の呼び出した青銅のゴーレムが戦っているのを見物し、一方はそのゴーレムに無抵抗のまま殴られ続けている。

「1人はグラモン家の子息か、もう1人は……ふむ、ミス・ヴァリエールの使い魔か?」
決闘の様子を観察しているオスマンの横から氏政が顔を出してくる。
「何じゃあの若造ではないか、一体誰と戦って…」
と、それを見ていた氏政にギーシュの相手の顔が目に入る。
赤い鉢巻に、首に掛けた六文銭…彼の世界ではその名を知らぬ者はいない。
「こ、こやつは……真田幸村!」

(あの馬鹿者め!相手がどんな男か知らんと勝負を挑んだな!)
鏡を覗くのを止めると、氏政は栄光槍を手にする。
「止めに行くのかの?」
「当たり前じゃ!あやつはわしの家来じゃからな!!」
そう言って、ヴェストリの広場に向かう為に彼は学院長室を飛び出した。



その頃、広場ではまだギーシュの攻撃が続いていた。しかし、幸村はまったく反撃しない。
「どうしたんだい?勇ましかった割に手も足も出ていないじゃないか」
この状況にギーシュは勝利を確信したのだろう。
「何だよあれ、全然反撃しないじゃないか」
「結局ただの平民ってわけか…」
その様子に周りからも声が上がる。
ほとんどの生徒がギーシュが勝つ…そう考えていた。

キュルケもまたその1人である。
「トシイエ…あなた、彼が強いみたいな事言っていたけど、あれじゃ駄目そうじゃない」
キュルケは2人の決闘を見ている利家に言った。
「キュルケ殿にはそう見えるか?」
「そうよ、だってさっきからやられっぱなし…」

「効いていない」
「………え?」

何時の間にか、タバサもこの戦いを見ていた。
彼女にしては珍しく本を読むのを止め、2人の戦いを観察している。
タバサは気づいていたのだ。ギーシュのワルキューレは人1人を吹き飛ばす程の力を持っている。
そのワルキューレの攻撃を受けていながら、幸村は膝を折っていない。
それどころか……最初に立っていた場所から1歩も動いていないのだ。
「……あの人が勝つ……」


「ギーシュ!いい加減にして!」
自分の使い魔がやられ続けているのを見てられないのか、ルイズが間に割って入ってきた。
「ここまでやればもういいじゃない!大体、決闘は禁止されてるでしょ!?」
「彼は平民だよ?禁止されているのは貴族同士の決闘だ」
確かに貴族同士では禁じられているが、平民となら禁じられてはいない。というより、前例がないのだ。
何も言えないルイズに、ギーシュはさらに続ける。
「そもそも君が彼に身の程というのを教えておけばこんな事にならなかったのではないかい?」
これにも、ルイズは言い返せなかった。
そして調子に乗ったギーシュはさらに屈辱的な言葉を浴びせる。
「まぁ、何も出来ない愚かな君にはお似合いの使い魔だがね!」


「…今、何と言った…」


突然、黙っていた幸村が口を開いた。
「お主は…ルイズ殿に何と言った…」
顔を伏せたまま、静かにもう一度言う。
「ならもう一度言ってあげよう。彼女は何も出来ない愚か者だと言ったんだよ!」
言い終わるやいなや、ギーシュは薔薇を再び振るう。
「行けワルキューレ!これで最後だ!」
命令を受けたワルキューレは動き出した。そして幸村の顔面目掛けて拳を突き出す。
ギーシュはこれで勝負は決まると確信した。
所詮は平民、貴族に対する無礼の報いであると、そう考えていた。

………だが今度の攻撃は幸村に届かなかった。


ギーシュは一瞬、我が目を疑った。
顔に当たる直前に、彼は右手で迫ってきた拳を止めてしまったのである。
ワルキューレは止められた拳を引き離そうとする…が、動かない。
何とかして掴まれている腕を自由にしようともがく。
「…お館様の…」
しかし幸村はそれを許さなかった。
金属の軋む音が聞こえ、ワルキューレの腕がどんどん潰れていく。


「お館様の拳は!もっと強いぞおぉぉぉぉぉ!!!!!」


ドガアァァァン!!
ワルキューレの腕を完全に潰すと、胴体に幸村の拳が打ち込まれた。
その攻撃を受けたワルキューレの体は、衝撃に耐えられずバラバラになってしまう。
「な……な……」
ギーシュは今起こった事を信じられなかった。
自分のワルキューレがただの平民に、しかも素手で殴り壊されたのである。
この光景にルイズも、キュルケも、周りの生徒も皆驚愕していた。
「拙者は…この世界の事など何も知らぬ…」
全員が沈黙している中、幸村が喋り出す。
「故に、拙者が馬鹿にされても、それは仕方なき事……だが!!」
ワルキューレの残骸を踏みつけ、ギーシュを睨みつける。

「この世界で拙者に住む場所を、飯をくれた恩人を……ルイズ殿を馬鹿にするのだけは許せぬ!!」


「う…う…うわあぁぁぁぁー!」
ギーシュは持っていた薔薇を振り回し、6枚の花びらを落とす。
するとさっきと同じような青銅のワルキューレが6体、地面から現れた。
先程と違うのは、それぞれが剣や槍で武装している事である。
「い、行けワルキューレ!あいつを倒すんだ!」
ギーシュの命令で、6体のワルキューレは一斉に行動を開始した。

「そのような木偶人形共に、この幸村!敗れはせん!!」

相手が獲物を持っているのを見て幸村は自慢の二槍を構える。
と、幸村が槍を構えると左手が輝き始めた。
しかし彼は興奮していたのか、この事に気づいていないようである。
先ず、真正面から4体が幸村に攻撃を仕掛けてきた。
一度に仕掛ければ大丈夫…そう考えたのだろう。その考えはあっけなく破れた。

「おらおらおらあああぁぁぁぁぁぁっ!!」

「烈火」…目にも止まらぬ速さで突きを何度も繰り出す幸村の得意とする技の1つである。
ワルキューレ4体はまともにこの突きの嵐を受けてしまい、蜂の巣のように体に穴が空いていく。
やがて体が維持出来なくなり、ボロボロと崩れていった。

先鋒を倒した所に、空中から残り2体が襲い掛かってくる。
それを確認すると、幸村は体を回転させながら飛び上がった。
「大!車輪!!!!」
2体はこの回転に巻き込まれ、そしてギーシュの目の前に落ちてきた。
体を真っ二つにされた状態で…


「そ、そんな…僕のワルキューレが…全滅…」

こんな馬鹿な……ギーシュはこの状況を理解出来なかった。否、したくなかった。
ほとんど数分…いや、もしかしたら数十秒かもしれない。
それだけの間に自分のワルキューレが、平民に撃破されてしまったなどと…

ドシャアァッ!!
そこに、飛び上がっていた幸村が地上に着地した。
その音にギーシュはビクッと身を震わせる…勝敗は決したのだ。
もはや降参するしかない…
「ま、まいっ…」
参った。そう言おうとした瞬間

「うおおおおおおおおおー!!!」

それを言うよりも早く幸村が駆け出したのだ。
興奮すると周りが見えなくなる…彼の悪い癖である。
ワルキューレとの戦いと、何よりルイズを馬鹿にされた事で頭に血が上り、ギーシュが戦意を失った事に気づかなかったのだ。

「ば、馬鹿!ダメ…」
「覚悟いたせええぇぇぇぇ!!」
「ひいいいいいーーっ!」

情けない悲鳴を上げるギーシュに、「朱羅」が繰り出された。


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