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ZEROのスペシャリスト-02


2a. 報告 ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール

わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、トリステインの由緒正しきヴァリエール公爵家の三女にして虚無の担い手。
魔法学院二年目の春。
あの日を思い出すたび、なんとも言えない気分になる。
いまだに整理ができていない。

鳥の中から現れた、レミー・デンジャー。
危険という名の使い魔の記憶を。


◇◇◇

「あ、ああ、あんた誰よ?」
なんとか喋れるようになったものの。
「いいいったい何者?アルヴィー(小魔法人形)?」
うわずった自分の声が情けない。

目の前に立つ身長20サントほどの小人は、暗い緑の変な服を着て、頭には緑の丸い兜、ブーツも緑、おまけに顔の肌まで淡い緑と、見事に全身緑色。
緑じゃないのは黒い髪と、黒い手袋だけ、徹底している。

「レミー・デンジャー、身分はUSOのスペシャリスト、階級は少佐だ」
小さな声だが、ゆっくりと、はっきりとした声で小人が喋る。
「ミス・ヴァリエールの行為、いわゆる使い魔の召喚だが、私を狙って故意に行った訳ではないことは理解している」
はっきりと聞き取れるけど、その内容はいまいち理解できない。
「転移ゲートを意図的に目標を定めて開く技術はまだ存在しない、この推測は正しいと思うが?」
疑問のくせに疑問でない。
「自己紹介を兼ねて、私が所属するUSOについて説明――」
うん。
言葉はわかるのに意味がわからないのは、別にわたしのアタマが悪いからじゃないと思う。

「――なので表沙汰にする意志もない。だが既に述べた諸要素により、ハルケギニアの為にも君には――」
調子が出て来たのか、どんどん加速する小人の口を眺めてるうちに、上の姉を思い出す。
「エレオノール姉さまみたい」
速すぎて開閉が目にも止まらなくなっていた小人の口がとまる。
「あの、もう少しやさしく説明してちょうだい…お願いだから」
エレオノール姉さまを連想したせいか、自分でも意外なくらい弱気な口調だった。



何度も質問を繰り返して、レミーという小人についてある程度わかった。

スペシャリストと呼ばれる、高い地位をもった専門家だということ。
その仕事は国々の戦争を防ぎ、犯罪を取り締まること。トリステインでいう魔法衛士隊のようなものかしら。

レミーだけでなく、シガという国の住人はみんな小さい。
けれどシガに引っ越す前の、テラという国に住んでいた先祖や、今もテラに住んでる人は普通の大きさ。

そしてシガやテラがある場所は、ハルケギニアから遠く離れた星々の間。
信じられないけどレミーはそう説明した。
星空の彼方からサモン・サーヴァントの魔法による事故で召喚されたと。

そう、事故で。

この小人はどうしても事故だと言い張る。
神聖な召喚の儀式で呼び出された使い魔のくせに。

「残念だが、君の使い魔として一生を共にすることは出来ない」
「なんでよ」
「私には何としても帰還する義務がある。それはハルケギニアにとっても重要なことだ」
「あんたの仕事より、使い魔という運命の方がよっぽど重要よ!」
「運命じゃない」

いやだ。

「外交問題にしたくない」

わたしの、はじめての魔法。

「あれは、あくまでも事故」

それをゼロにする小人を黙らせようと、乱暴に手を伸ばした瞬間。
閃光が走った。

椅子から崩れ落ちる。さっきも驚いて倒れたけど、すぐに起き上がれた。
今度は違う。からだがしびれて動けない。

先住魔法?
そうかも知れない。

とん、と軽い音。
横になった顔の前に小人があらわれる。
「すまない」
なぜか悲しそう。
謝るなら、素直に使い魔になってくれればいいのに。

「故郷のシガには…」
小人は窓を見上げて呟く。
「愛する妻と三歳になる子供が待っている」
はっとした。

心臓が早鐘を打つ。
「だから私は帰る。帰りたい」
当り前のこと。
でも、わたしはそのことに気付こうともしなかった。
「私は小さい。力尽くで隷属させることもできるだろう」
なぜ?
魔法の成功に浮かれ上がっていたから。
「でも、それで君が幸せになれるとは思えない」
今すぐレミーに謝りたい。
なのに口も舌も自由にならない。

「鳥の私への素直な気持ちを聞いてね、その程度には君のことを買っているんだよ」
やさしい笑み。
レミーはわたしなんかより、きっと、ずっと年上。
「使い魔を一生やることは出来ないが…」
見た目は若いけど雰囲気からそんな気がする。

「一生の友人にはなれる。どうかな?」
こわばって動かないわたしの顔。

だけど涙は流れてくれた。

しびれがとれてから夜がふけるまで、レミーと色々な話をした。

星の世界にも、オーク鬼みたいに危険な連中もたくさんいるらしい。
ハルケギニアが悪い奴らに目をつけられたら、
「魔法を使える貴族は全員奴隷にされるだろう」
だ、そうだ。
「仕組みを調べる為、様々な実験で大勢が命を奪われる」
星の世界にもアカデミーみたいな組織があるらしい。
「ふむ、私も気をつけた方が良さそうだな…」
うん、たしかに。
レミーみたいな小人なんて、おとぎ話の中でしか聞いたことがないもの。
鳥の魔法人形もあわせて、アカデミーにとってみればかっこうの研究材料。
エレオノール姉さまに知られでもしたら確実に「没収」されちゃう…自分でも怖くなって来た。

レミーと相談して、普段は鳥の姿で生活してもらうことに決めた。
言葉をしゃべる使い魔はいるけど、猛禽類でしゃべるのは珍しいので、なるだけ片言ですごすことに。
不便をかけてごめんなさいと謝ったら、レミーは笑って返してくれた。
「何週間も黙って暮らしたこともある。大丈夫、ルイズという友人も出来た」
そう、いつまでも「ミス・ヴァリエール」じゃくすぐったい。
わたしもレミーって呼ぶ。友達なんだし。

わたしたち二人の目標も決まった。レミーを故郷に帰すか、せめて連絡を取る。

あらためて説明されてわかったけど、これはハルケギニアにとっても重要なこと。
いつ星の世界のオーク鬼に襲われるかわからないなんて、どうにも冗談じゃない。
急いでトリステイン王家に相談すべきだと思ったけど、レミーに首を振られてしまった。
なんでも星の世界には厳格なルールがあって、星の世界を知らない地上の国にかかわってはいけないらしい。
「我々が公然とルールを破ってしまえば、星の世界のオーク鬼だって黙っていない」
だから国じゃなくて、わたしや学校の先生といった個人の力をあてにしたそうだ。

でもこれは大変なこと。
実技はてんでダメだけど、魔法の知識だけは誰にも負けないつもりだ。
そんなわたしだからこそ、自信を持って、落ち込める。
「そうか…」
召喚に対応するような、送還の魔法なんて聞いたこともない。
その言葉にレミーもうつむいたけど
「とにかく、この世界に関する知識が必要だ」
すぐに顔をあげる。
「慌てるつもりはない。何年かかろうが、目的を達成すればそれでいい」
その表情を見て、わたしは母さまを思い出した。

レミーに言ったら怒られるかしら。
でも説明したらわかってくれると思う。
マンティコア隊の元隊長、その苛烈なる意志の強さと、わたしの敬意を。




2b. 報告 レミー・デンジャー

怒ったルイズが手を伸ばして来たとき、私にはパラライザーを撃つことしか出来なかった。
避けることは簡単だが、背後には脱ぎ捨てた鳥マシンがある。
そう壊れることはないだろうが、少女であってもでかぶつだ。その力は侮れないし、孤立無援のこの世界で余計なリスクは冒せない。

だが、どさりという音を立ててルイズが倒れると、すぐに後悔の念にかられる。
己の言動を顧みて、いったい誰がこの私を弁護出来よう。

ゼロと馬鹿にされて、それでも歯を食いしばって頑張っていた少女が、生まれて初めて成功した魔法。
その喜びは如何ほどのものであったか。
それを、あろうことか、召喚した使い魔そのものに否定されたのだ。
彼女の絶望は考えるまでもない。

自分の吐いた言葉を思い返す。
「義務」
「事故」
何という無思慮な言葉か!

鳥の姿で両腕に抱かれ、レミー・デンジャー、少女の何を聞いた。
今の我々に必要なのは理性ある論理ではない。
人間としての真実の叫びだ。
たとえ身体は小さくとも、シガの小人はひとりの人間だと、ハルケギニアの少女に伝えねばならない。

この身を焦がす、シガに残した愛妻ミトラと幼い息子ボジルへの思いを。


私の見込んだ通り、ルイズは友人と呼ぶに足る心の持ち主だった。
麻痺した状態で私の為に泣いてくれたのだ。
躊躇いもせず銃撃した私の為にだ!

彼女が回復するのを待って、本格的に情報交換をする。

科学技術や星間政治に関する語彙が欠けているので、どうしても説明は曖昧にならざるを得ないが、比喩表現の多用はむしろ理解に役立ったようだ。
ハルケギニア語の知識はどうやらサモン・サーヴァントによる転送時に付与されたらしい。
あの一瞬で精神を損なわずにこれだけの情報を焼き付けるとは、いよいよ怖ろしい能力だ。

この世界のオーク鬼がどんな存在であっても――ほんの数年前、銀河を騒がしたブルー族とその哀れな奴隷を思い浮かべる。
恐怖の芋虫ホルンシュレッケや、その成虫シュレックヴルムといった化け物。
自然の中で暮らすオーク鬼とは比べ物にならない脅威だ。
彼らに目をつけられていたら、ハルケギニアはすっかり食い尽くされた死の星となっていたはず。
悪党に見つかる前にUSOとの連絡を急がねばならない。

しかし、使い魔として召喚した存在を、単純に送り返す方法は知られていないとのこと。
「普通なら野生の生物が召喚されるだけだし、呼び出した主と呼び出された使い魔は、普通なら死ぬまで一緒に過ごすし…」
なので送還なんて誰も考えない、そうだ。

予想はしていたが、がっくりとくる。
前途多難だ。
しかし私は友を得た。
状況は決して悪くない。

ふたつの月に照らされた、ルイズの顔を見て笑ってみせる。


私はレミー・デンジャー。数多の困難な任務を成し遂げた、USOのスペシャリスト。


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