あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ZEROのスペシャリスト-01


ZERO. プロローグ

仕事とは言え、風を切って飛ぶのは楽しい。
眼下に広がるのは無人の原生林。
ここ数年、休む間もなく敵地での任務に携わっていたのだ。
それを考えれば休暇も同然、リラックスして故郷の妻子に思いを馳せる。

だから、とは言わない。

突如目の前に現れた銀色のゲート、それを避けるのは物理的に不可能なことだった。


爆発の煙が晴れる。
度重なる爆発で、散々に痛めつけられた大地。そこに、鳥がいた。
力なく伏せたそれは、体長半メイルのワシ・タカによく似た猛禽。

そばで張り詰めた、泣きそうな顔をしていた少女の目が驚きに見開かれる。
桃色がかったブロンドの長髪を振り乱して駆け寄り膝をつき、恐る恐る抱き上げ、その体温と微かな胸の動きを確かめて。
その少女はようやく笑顔を浮かべた。

「ルイズが成功した!?」「でも爆発してたぞ?」「ゼロじゃなかったのか」「明日は嵐…」
周囲の声に反応を示さぬ少女に中年の男が声をかける。
「ミス・ヴァリエール、契約を」
「あ、はいっ」
びくっと背筋を伸ばし呪文を唱え始めたその時、膝の上の鳥が息を吹き返す。
戸惑ったように周囲を見渡したあと、少女を威嚇するかのように大きく嘴を開ける。
「――この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
その大きく開かれた嘴の間に、ルイズは躊躇わず口付けした。


ルイズの足取りは軽かった。
これまで失敗に失敗を重ねてきた魔法が、16年の人生で初めて成功、連続で成功したのだ。
召喚されたのはカエルとかヘビとかのヌメヌメした生き物じゃなく、貴族のペットとして見ても十分に立派な猛禽。
フライが、レビテーションがどうこうなんて悪口なぞ聞こえる訳がない。
残りの授業だってどうでもいい。
再び気絶した己の使い魔を抱いてゆっくりと歩き、語りかける。
「コントラクト・サーヴァントは爆発しなかったし」
ルーンを確認できずコルベールは不満そうだったが、使い魔の様子を見れば契約に成功したことは間違いない。
そもそも嘴や足など確認しやすいところにルーンが刻まれるとは限らない。
そして鳥の羽をむしってまでルーンを調べる馬鹿もいない。
「わたしね、貴族のくせに魔法が使えなかったの」
使い魔をなでる。
「今日だって、何度も、何度も失敗してた」
ふと立ち止まる。

「召喚に応えてくれてありがとう」



自室に戻ったルイズは机の上にハンカチを敷いて使い魔を寝かせ、窓の鍵を確認してから部屋を出た。
扉を閉めて走り出しそうになるのをこらえ、足早に厨房へ向かう。
「エサは生の肉でいいのかな?」
すぐ上の姉のことを、動植物に溢れたその部屋を思い出す。
「かごはともかく止まり木は必要よね」

色々と手配して、水と肉を手に部屋へ戻ったのは夕暮れ時だった。
バスケットには自分の夕食も入れてある。
パンの他にはチーズとワイン、簡素だが食堂で無駄な時間を過ごす気にはなれなかったのだ。
使い魔はハンカチの上で身を起こし、ルイズを見つめている。
少し離してバスケットやらの荷物を置き、椅子に座って。
「ルイズ」
まずは名前を決めないとね、と首をかしげる。
「――ミス・ヴァリエール!」

びくりとして目の前の鳥を見つめるルイズ。
「しゃべった!?」
使い魔として召喚された動物が人語をしゃべるのはそれほど珍しいことではない。
事実、ルイズの実家にもトゥルーカスというしゃべるフクロウがいる。
しかし決してありふれたことでもない。
これってアタリ?アタリよねぇ、わたしってスゴイ!
とあっちの世界に行きそうになるルイズをよそに、ぱちりと小さな、聞きなれない音が机に響く。

そしてルイズの目の前で。

鳥の胸元が縦に大きく裂け、中から2本の棒、いや人の足が、胴体が、ひとりの人間があらわれ。
身長20サントぐらいの緑色の小人がハンカチの上に降り立ち、非の打ちどころのない動作で敬礼をする。

「わたしはレミー・デンジャー少佐。USOのスペシャリストだ。ミス・ヴァリエールに頼みがある」

ルイズは椅子から崩れ落ちた。




1. 報告 レミー・デンジャー

わたしの名はレミー・デンジャー、USOのスペシャリストとして名を知られた存在。
階級は少佐だがその肩書きにあまり意味はない。スペシャリストの方がはるかに貴重だから。
わたしは同年代のシガ星人ではヘビー級となる身長222.11ミリメートル、体重852.18グラムの体躯を誇るが、それすら馬鹿にするような品の悪いでかぶつ達も、わたしがUSOのスペシャリストだと知ると態度を改める。

我が母星シガとシガ星人の同胞についても語りたいところだが、残念ながら時間がない。
次の機会に譲ろう。

 ◇◇◇

休暇の前に指示された仕事は新型マスクの運用試験だった。
年単位での長期潜入任務に耐えられるよう、さまざまな工夫を凝らしたプロトタイプ。
さすがに1年とはいかないが、2ヶ月程度はかかりっきりになる。
故郷の妻と子供を待たせることになるが、普段世話になっているUSO技術部の同胞に頼まれたのでは嫌とは言えない。
装備の完成度が仲間やわたし自身の生死に直結するのだ。

無人の惑星に小型艇で降り立つと、テラのワシを模した新型マスクに収まって飛び立つ。
各種装備を限界まで積載した身体は2キログラム近いうえ、この惑星の重力は1.3Gとノーマルより大きいが、それでも飛行に支障はない。
上昇気流を捉え、翼のメカニズムを停止させて滑空しながら上昇する。
計測機器に目をやるがエネルギー反応は小型艇の他には何もない。
リラックスしてはばたき、十分に高度をとったことを確認して急降下に移る。
ぐんぐん近づく樹木の海。
ぎりぎりのところで機体を引き起こし、木々をかすめるように飛行する。
感触は良い。
満足して仲間に無線コンタクトを取ろうとした瞬間、目の前に何の前触れもなく鏡面状のフィールドが発生した。


複数の人間の声で目を覚ます。
避ける間もなく正体不明のエネルギーフィールドに突っ込み、強烈なショックに意識を失ったことを思い出すが、時計を見る限り気絶は数十秒で済んだらしい。
機器をチェックすると予想どおり構造走査機が故障、というか溶け落ちている。
そう、ここはさっきまでの惑星とは違う。
計器を見るまでもない、なにしろ重力がノーマルなのだ。
あれは転送機のゲートだったらしい――しかも何もない空間にだ!まるで伝説のフィクティヴ転送機ではないか。
かつて不死者「それ」からローダンが譲り受けたという、既に失われて久しい超技術の産物を思い出す。200年も前の話だ。

首を振り、気を取り直して周囲を見回す。
ノーマルサイズのヒューマノイド達に囲まれているようだ。なるほど呼吸可能な大気があったことも頷ける。
テラナーもしくはアルコン人の派生種族か、外見に目立った特徴はなく判断は保留しておこう。
身につけている衣装は独特だが素朴で、技術レベルはそれほど高くなさそうだ。退化した植民惑星だろうか?
しかし、それにしても。
少女の膝の上に抱かれているこの状況に改めて困惑する。
ルイズと呼ばれているこの少女を傷つけずに飛び立つのは難しい。もう少し腕を緩めてくれればいいのだが…
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン――」

驚愕する。彼女はインターコスモをしゃべっているのではない。
まったく未知の言語をしゃべっているのに、それをわたしが理解しているのだ!

多彩な装備を搭載した新型だが、翻訳機なんてものはついていない。
そもそもこんな短時間で完璧な翻訳を実現する翻訳機なんてあるはずもない。
そうなのだが。
混乱していたのだろう。わたしはどうしても生の音声を自分の耳で確認するという無意味な衝動を抑えきれなかった。
マシンの嘴を開くと偽装咽喉を引き上げて隙間に己の頭を突っ込む。

目の前には、少女の巨大な唇が。
避ける間もなかった。

でかぶつ達とのコミュニケーションには様々な困難があるが、これはかなり酷い方だった。
ずぶ濡れになった訳ではないが、鼻から口にかけてべったりと粘液、少女の唾液が付着している。
慌てて頭を引っ込めて偽装を元に戻し、少女が顔を離したことを確認してから嘴を閉じる。

何か拭くものはないかと戦闘服のポケットを探ろうとした瞬間、全身に強烈な痛みが走った。
身体が熱い。
感染症?いや急性症状から神経毒の類か、ここで意識を失っては致命的だ。
効果のありそうな薬品は何がある?
考えはめまぐるしくまわるが、身体は痺れてまったく動かない。
幸いなことに苦痛は1分もせずに治まったが、そのまま身動きせずに様子を窺う。
少女には害意があったのか。
そもそも彼らは何者なのか。
情報が不足していた。


マシンを布の上に横たえると、少女は部屋を出て行った。
慎重に起き上がり羽を広げ軽く動かして異常がないことを確認する。
今のうちに情報を整理しなければ。
子供達の発言と行動、そして少女、ルイズの言葉から集めたピースをわかる範囲で組み上げる。

この世界ハルケギニアには貴族と呼ばれるミュータント集団が存在する。
彼らは超能力を魔法という形で系統立てられた技術として学び、行使する。
計測機器によれば核エネルギー反応はなし。つまり科学技術は発展していない、おそらく支配者階級である貴族によって抑制されているのだろう。
無線機もハイパーカムも沈黙していることから宇宙とのコンタクトも難しい。
こちらから一方的に救難信号を発することは可能だが、現状でそのような行為はためらわれる。

貴族。

これが恐るべき存在であった。
彼らはサモン・サーヴァントという力により転送機を用いずに転送ゲートを成立させるのだ!
色々と制約は厳しいらしいが、とてつもない脅威だ。我々にも、彼らにとっても。
その存在を知ればアコン人やバアロル教団、いや銀河中のならず者がよってたかって、己の支配下に置こうと大艦隊で押し寄せることになりかねない。
第三者の注意をこの世界に引き寄せることは最優先で避けねばならない。
そしてその一方で、なんとしてもこの世界の情報をUSOに伝えるのだ。
銀河の火消したるUSOのチーフ、政務大提督のアトランならハルケギニアという名の火薬庫もうまく片付けてくれるはずだ。

溜息をつき、水を飲んで火照った頭を冷やす。
その手段がない。
窓越しに輝き始めた星空を見上げるが、見慣れた星座はひとつとしてない。
この星のポジションがまったくわからないのだ。

通常の技術的手段での目的達成は不可能と考えてまず間違いはない。
なにしろ科学技術によって作られた製品は、この世界にはわたしが持ち込んだものしか存在しないのだ。
どうしても貴族の、魔法の助力が必要だ。
つまり味方を作らねばならない。
しかし法は、このような未開惑星への干渉を禁じている。
現地人とのコミュニケーションがすべて違法となる訳ではないが、慎重に行動せねば禍根を残す。

貴族でありながら政治的なバックボーンがない存在。
貴族でありながら柔軟に信じられないような事実を受け入れられる存在。

少女、ルイズを思い浮かべる。

この世界におけるわたしの身分は彼女の使い魔だ。
彼女にばれないように行動する方が難しいし、現時点では使い魔としての地位を破棄して単独行動するだけのメリットはない。
学校の生徒である以上、各方面の研究者との接触もしやすいはず。
ハルケギニア人と接触するなら、彼女がもっとも条件に即してはないか?
未成年であることだけが気がかりだが、別に危険なことをさせるつもりはないのだ。

わたしは彼女に、自分の正体を明かすことを決意した。


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