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虚無界行-5

第4章 爆裂授業

食事を終え、南雲はルイズの部屋へと戻ることにした。
「いけすかねぇ貴族のガキの傍に居るなんざ、災難になぁ・・・」
「秋人さん、あの、頑張ってくださいね?嫌な事あっても、ちょっとだけ我慢して―――――」

マルトーとシエスタが、憐憫と励ましをそれぞれかけてくる。
シエスタのは途中から、姉が年下の弟に言って聞かせるような感じになっていた。
      • 実年齢でいえば、親子以上に離れている2人なのだが。

苦笑を浮かべながら改めて礼を言い、厨房を後にする。
日は完全に昇っている。異界での―――――ハルケギニアでの2日目が始まった。

数分で女子寮のルイズの部屋へ到着した。ノックをしたが返事は無い。
内部には確かに気配がある。ということはまだ寝ているのか。
見れば鍵も開いたままだ。中に入って起こすべきかどうか・・・

『そこまでする義理も無い。寝坊するのは当人の問題だ』
すぐに結論を出すと、向かいの壁に寄り掛かって待つ事にした。

ちなみに室内のルイズはというと。
制服のままベッドに横たわり、「うーん、うーん・・・」と唸りながら現在進行形で悪夢を見ていた。
言うまでもなく、昨晩南雲から受けた鬼気が原因である。
汗は渇くこと無く全身を濡らし、昨日から穿きっぱなしの高級なシルクのパンティまでベトベトであった。
彼女の不幸に同情するべきか・・・それとも、南雲を相手にしてこの程度ですんで良かったなと言うべきか。

それはともかく。
南雲が窓から外を眺めていると、隣の部屋のドアが開いて人が出てきた。女子寮なので無論女だ。

女にしては背が高く、170サントはある。
褐色の肌に匂い立つような色気を纏わせた、プリミティブな艶やかさを持っている。
髪と瞳は、炎を結晶化して植え付け、嵌め込んだかのような真紅。
制服を着ているが、白いブラウスの第一と第二ボタンが外されている。
理由は簡単だ。抑え込められないのだ、そのサイズのせいで。
服からはみ出したその褐色の脂肪の塊は、ベッドでは男を狂わせる凶器と化すであろう。

オスの本能に訴えかける要素を、全身に散りばめて生まれたかのような少女であった。

この学園が、厳密に年齢で区分けしているのかは知らないが、ルイズとは確実に5歳以上は離れていそうだ。
ちなみに南雲がルイズの歳をいくつだと思っていたかは・・・・まぁ、書かずとも良かろう。

「あら、あなた・・・?」
こちらに声をかけてきた。話しかけられたからには答えねばならない。
「南雲秋人―――――そこの部屋のに召喚された者だ」
ルイズの部屋を指し示す。

「ああ、そういえば・・・・・あっはっは! ほんとに人間なのね!」
何がおかしいのか突然笑い出した。小バカにした様子である。
そういえば、人間の使い魔とやらは例がないのだったか。
こちらは使い魔などになった気は微塵もないが。

口を開きかけ、次の瞬間南雲は少女が出てきたドアに目線を向ける。
原因は、ドアからのっそりと姿を現した、トラほどもありそうな巨大なトカゲであった。
これが目の前の少女の使い魔だろう。

女に合わせたかのような鮮烈な赤い体色。
尻尾の付け根から炎が燃えており、口からはこれまたチロチロと炎が漏れている。
南雲の知識の中に、類似した生物がいた。これは―――――

「サラマンダー、か」
「そうよ。よく知ってるわね。どう?この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、
 間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ? ブランドものよー。好事家に見せたら値段なんかつかないのよ?」 

南雲は無表情のまま、長々と始まった自慢話を聞きつつ、必要な情報を取捨選択していった。

サラマンダー。
西洋の四大元素説においては『火』の元素を司る精霊であり、燃え盛る炎や溶岩の中に住んでいるとされる。
しかし目の前のは、少女の口ぶりからしても精霊というより生態系の中で生きる野生動物の扱いであった。

野生であれば簡単に人に懐くわけはなく―――――契約の儀式を行い―――――
そしてとある考えに思考が及ぶと、南雲は軽く眉を顰めた。
少女はそれを見逃さず、膨れ面を作る。
色気のある顔と子供っぽい表情がミスマッチであった。

「あら・・・なぁに?私にサラマンダーは似合ってないとでも?」
「そんな事はどうでもいい」
1秒と間をおかぬ・・・そして、嘘偽りなく本心からどうでもいいと思っている事が伝わる返答だった。
これには少女の方が閉口した。

主の不快を感じ取ったか、サラマンダーが這ってきて南雲を睨んだ。
南雲も視線を返す。向けられた相手以外には知覚できぬ、針の如く細く絞った殺気が混ざった視線を。
主が自慢をするほどの、この世界の獣に対する「試し」のつもりだった。

―――――視線の交錯は、すぐに終了した。
「きゅる、きゅる・・・きゅぅぅぅ」
サラマンダーが頭を下げ、鳴きながら南雲に擦り寄ってきたのである。

少女は眼を見開く。
「・・・驚いた。初めて会った相手にフレイムがこんなに懐くなんて」
召喚したばかりだが、主人だけに己の使い魔の性格はキチンと把握していた。
(このサラマンダー、フレイムと言うらしい。シンプルな名だ)

フレイムは、別に南雲に懐いた訳ではない。
南雲と視線を交えて―――――1秒で呼吸が詰まった。2秒で全身の筋肉が痙攣した。3秒で死を覚悟した。
本能が知らせた・・・この相手には勝てぬと。絶対に敵対はするなと。

野生のままであれば、フレイムはそれこそ死ぬ気で逃走を図っただろう。
だが今は主と共にある身。
逃げる事もできず、さりとてこのままでもいられない・・・それゆえ、フレイムは
彼なりの「服従」の姿勢を取って、敵対しないと伝えたのである。

南雲は無言でフレイムの頭を撫でた。ほんのりと熱が伝わってくる。
こうして主も気づかぬままに、新たな力関係の構築は終了した。

「―――――それでは、な」
いつの間にか随分と時間が経っている。南雲は背を向けて歩き出した。
少女も慌てて後を追う。

「ちょっと。ルイズは?」
「まだ寝ている。目覚ましの役目は仰せつかっていない」
「・・・どこへ行くの?」
「授業が始まるまで教室の前で待つ。もう朝食の時間だろう。行ったらどうだ」

それで会話は終了した。少女と南雲の距離が離れていく。

少女―――――キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは
自分の格好を見直した。変な所は無い。おっぱいが多少はみ出ているのは、気にする事ではない。
むしろ男たちの反応を見るのが楽しいくらいだ。
手鏡で確認すれば、化粧もバッチリだ。なのに・・・・・

溜息を一つし、
「何て男なのかしら。これだけ間近にいて、私の名前も訊き出そうとしないし、
 ちっとも反応しないし・・・」
怒りというより、むしろ呆れが濃く混ざった言葉を吐くキュルケであった。

―――――ちなみに、南雲はおろかキュルケにも忘却され、起こされずに眠り続けるルイズであるが。
彼女は、悪夢のマラソン上映に引き続き参加していた。
今は「シンジュク」と呼ばれる魔界の如き都市を一人で徘徊するという夢の最中であった。合掌。

生徒の朝食も終わり、最初の授業を控えた教室へと南雲は足を踏み入れた。
教室は、大学の講堂とよく似ている。壁も床も全て石造りなのが違う点か。

南雲に向けられる生徒たちの困惑の視線。
「ほら、ゼロのルイズの・・・」という言葉があちこちで囁かれると、
向けられる視線は、蔑みや嘲笑といった不愉快な類のものに変化した。
大勢を見る限り、貴族というのは概ねこんな物らしい。

南雲は特に気にした風もなく、後ろの壁に寄りかかって教室を一望した。
教室にいるのは生徒たちばかりではない。
猫がいる。フクロウがいる。カラスに大蛇もいれば蛙もいる。
使い魔である・・・だが、普通の生き物の他に、目を見張るようなモノ達がいた。
バシリスク、バグベアー、スキュア―――――その他バリエーション豊かな、
元の世界では幻想世界か、テレビゲームの中にしか居ないとされる生き物の数々。
      • まぁ、南雲の戦闘経験の中には、それこそ悪夢のごとき化け物共も大勢いたのだが。
アレらと比較すればどれもこれもまだ『可愛らしい』範疇に入るだろう。

それらを確認し、南雲はフレイムを見た時に感じた懸念を、更に深く意識せざるをえなかった。

先日まで野生だったモンスター達が、これほど大量に、召喚主に素直に従っている。
理由は明らかだろう。
『コントラクト・サーヴァント』とやらに、「精神をそのように変える」効果が有るとしか思えない。

―――――自分は、どうだ? 左手を見る。
こうやってその事に気付き、脅威を抱いている、ゆえに「人間」には効果がないのかもしれない。
だが、今も契約は成されたままであり、人間が使い魔となった前例は無いという。

      • これからも、今のままでいられるという保証など何所にもない。

バイオニック・ソルジャーの訓練時代に教え込まれた対洗脳・精神操作用マニュアル。
その後の実戦の中で遭遇した魔術師・呪術師との戦闘経験。

自然と南雲は、それらを基に自己診断と防御のための手段を頭の中で構築し始めていた。
―――――それで防ぎきれぬならば、どうする?
一瞬、ルイズの顔が浮かぶ。
そして最も手っ取り早い解決方法も・・・それを明確に意識するのは、まだ止めておいたが。

やがて、扉を開けて教師が入ってきた。
ふくよかな頬がやさしい雰囲気を漂わせる中年の女性メイジ。
『土』系統の魔法を教える『赤土』のシュヴルーズであった。

「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、
 様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみ―――――」

教室を見回す視線が、南雲の所で止まった。
困惑した様子のシュヴルーズに、生徒の一人が「ゼロのルイズが召喚した使い魔です」と言うと、
彼女は一応の納得を見せた。コホン、と咳払いを一つし、自己紹介の後授業を開始した。

まずは復習として、この世界の魔法の基礎―――――属性について簡単に説明し始めた。
火、風、水、土。そして失われた属性、『虚無』。

南雲の知る四大元素説では「物質は、火、水、土、空気(風とも言われる)の四元素からなる」とされていた。
近いといえば非常に近い。だが遠いといえば非常に遠い。

「あちら」では、四大元素以外の物を含め魔術を扱える者は、歴史を見渡せばそこそこ居る。
だが、絶対数が少ない上に殆どの者が、己の術を厳重に秘匿していた。
ある者は異端狩りを避けるため。ある者は己の秘術を誰にも渡さぬために。

ハルケギニアでは違う。
金属を作り出し、加工する。大きな石を切り出して建物を立てる。農作物の収穫を補助する・・・等々。
『土』系統の説明だけでも、この世界において魔法が生活と密接に関係している事が伺えた。
言いかえれば、科学技術の代わりを魔法が行っているのだった。(メイジの数の違いもあろう)

やはり、元いた世界とはかなり異なる。1・・・いや、『0』から覚えるつもりで居なければなるまい。
情報とは何よりも大事だ・・・特に生死のかかった戦いにおいては。
侮っていても、知ることができなくとも、生かしきれなくとも、その先には死しか待っていない。
―――――このような思考をするのも、南雲が戦いの中で生きてきた男だからか。

一通り説明が終わったころだった。
「すみません、遅れました!」
慌てて扉を開けて入ってきた生徒がいる。ルイズだった。
結局ルイズが目覚めた頃には朝食は終わっていた。それどころか最初の授業が迫っている時間であった。
涙ながらに朝食を諦め、湯で体を簡単に奇麗にし、予備の制服を着て・・・結局遅刻した。合掌。
シュヴルーズは、遅れないようにと注意をすると、席に着くよう促す。

ルイズは教室を見渡した。南雲を発見。目が合う。睨みつけかけて―――――思いとどまった。
ルイズは確かに南雲へと契約のルーンを刻んだ。
だが、同じように南雲も昨晩ルイズの心に刻みつけた物がある。

頗るつきの、真の恐怖であった。

とある理由から、ルイズは周囲の者達よりも『貴族らしくある』事に拘っていた。
誇り高く、身分の違いを厳然と決め接し―――――
だが、魂まで凍りつく恐怖の前には、付け焼刃は通用しない。いとも容易く皮は?げる。
戦争に出たこともない少女の身では、尚更であった。
それゆえ、ルイズは南雲と再び睨みあう事などとても出来そうになかった。

「・・・クゥ」
あと、空腹でもあったし。無茶したらまた倒れる。

ルイズが前に向きなおったのを確認した南雲は、やはり無表情のままだった。
睨み返す手間が省けた、ぐらいは思ったかもしれない。

それから授業は『土』系統の魔法の一つ『錬金』へと移った。
生徒によっては一年生でできる様になる基礎だ。

シュヴルーズは小さく呪文を唱え、机の上の石ころを光る金属に変えてみせた。

「ゴゴ、ゴールドですか?ミセス・シュヴルーズ!」
身を乗り出した生徒がいる。キュルケだった。

「いいえ、ただの真鍮ですよ。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。
 私はただの『トライアングル』ですから―――――」

南雲はそれを見て感心した。『錬金術』・・・実際に目にするのは初めてだった。
『トライアングル』、『スクウェア』とはメイジのランクであろうか。

同時に疑問も湧く。
金と真鍮。どちらも金属であり・・・いや、真鍮の方が銅と亜鉛の合金である分
精製―――――『錬金』の難易度は上がるようにも思う。
まぁ、つまるところ魔法とは、人間の精神から力を引き出し行使する技だ。
人間全体の普遍的な価値観が、精神に影響してそうなるのだとしても不思議はないのかもしれない。

「それでは皆さんの内の誰かにもやってもらいましょう・・・。

 そうですね―――――ではミス・ヴァリエール。遅れてきた罰としてあなたにやってもらいましょう。
 ここにある石を好きな金属に変えてみてください」
「え・・・私・・・?」

その途端、教室中に動揺が走った。巻き起こる不満、不安、絶望、遺言(?)の声。
      • 罰と言われてルイズが嫌そうにするなら分かるが、周りの連中がこんなに騒がしいのはなぜなのか?
その中から、キュルケが代表して立ち上がった。何やら本当に嫌そうな顔をしている。

「先生、止めておいた方が良いと思いますけど・・・その、危険ですから。いや本当に」
ルイズを止めたいのは本心だったろう。
だがそれならば、キュルケはここでもっと言葉を選ぶべきであった。
ルイズのあの性格で、こんな反応を示されれば、一体どんな行動を取るのか。

「や、やりますっ!」
案の定であった。他の生徒から巻き起こる悲鳴。

(召喚が上手くできたんだものっ・・・きっと成功するわ!
 これであの使い魔の奴を見返して・・・・見返、して・・・・)
教卓へ歩きながら、南雲の方をチラリと見て、

(み、見返せるのか、なぁ・・・・)
早速意識が挫けかけた。ついでに空腹を改めて意識するルイズであった。

「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」
シュヴルーズの言葉に頷き、石の置かれた机に向け、小さな杖を構えるルイズ。

朝の光の中で、ルイズの桃色の髪が光っている。あたかも幻想的な色の滝のようであった。
艶やかな唇はしっかりと結ばれ、鳶色の瞳には強き意志が宿る。
透き通るような白い肌が、うっすらと紅潮して染まっている。
伝説の泉のユニコーンの守護と愛を受け取れるであろう美少女が、今儀式へ向かう。

今正に錬金を行おうとするルイズの姿は、確かに万人が息をのむであろう美しさであった。
      • まぁ、空腹を堪えているのは否めないが。

それを見ることもなく、次々に机の下へと体を隠そうとする生徒たち。一目見れば皆必死だと分かる。

そして、南雲自身の<抽象感覚>は、それより遥か前から警報を鳴らしていた。
南雲の第六感―――――すなわち勘は、常人が及びもつかないレベルまで高められている。
一瞬が生死を分ける銃撃戦の中で新たな敵の出現を正確に探知し、長距離からの弾丸すら観念的な
「嫌な予感」として回避を促す。狙撃も不意打ちも彼には無効であった。

のみならず彼の超絶の勘は、今までの経験とを組み合わせることで、
「予感」の詳細すら瞬時に脳に浮かび上がらせる事がある。

例えばダイナマイトであれば、「危険」「火薬」「大量」「炸裂」「茶の円筒」「炎の赤」といった具合にである。

そしてこの時彼の脳裏をよぎった言葉はただ一つ・・・・『爆発』!

ルイズは目をつむり―――――短くルーンを唱え―――――杖を振り下し―――――、
南雲は疾風の如く駆け―――――扉をくぐって安全圏へ退避し―――――教室の方を振り向き―――――、

次の瞬間、机ごと石ころは大爆発を起こした。

術者たるルイズと見守っていたシュヴルーズは、
爆風を至近距離で食らい、2人して勢い良く黒板に叩き付けられた。

被害はそれのみに留まらず、轟音と爆風が教室中を蹂躙する。
驚いた使い魔達が暴れ出す。人が押し倒される。机が体当たりで倒れる。
窓ガラスが割れる。ある使い魔が別の使い魔に襲いかかる。

阿鼻叫喚。地獄絵図。大暴れの大騒ぎ。

いつもなら、ダメージを負いつつもムクリと起き上がって
「ちょっと失敗したみたいね」くらいは言ってのけるルイズであった。

だが、今日のルイズはのびたまま立ち上がらなかった。
重大な怪我を負ったわけではない。

「・・・・グ~~、キュルル・・」
空きっ腹が堪えていた。合掌。


教室の扉から、顔が覗いた。南雲であった。
爆発現場を見ても相変わらずの無表情―――――いや、少し呆れが混じっている―――――で、一人呟く。

「石一つの失敗でこれか。一人前になるまでに死んだ貴族も大勢居そうだな」

貴族というのも中々命がけらしい・・・微妙に誤解した感想を抱きながら、
南雲は地獄の釜の底と化した教室を眺めていた。


第4章―――――了

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