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豆粒ほどの小さな使い魔-9




ガッコウの中庭、こんなに朝早くから、人間の中では小柄な少女が、サクサクと草を踏み分けて歩いてるのを見つけた。
ルイズと同じ制服だし、顔も見覚えがある。青色の髪。ルイズもそうだけど、ここには色んな髪の色をした人間がいる。
どこに行くんだろうと考えるほどもなく、大きな羽音を立てながら、空からどらごんが舞い降りてきた。
水色の鱗。怖さよりも、きれいだと思う。目がなんだか優しそう?
彼女の使い魔だったのか。
多分私は一番小さな使い魔で、あのどらごんは、ガッコウ一番大きな使い魔だろう。そう思うと、全然違うのに仲間みたいな気がして。
だから、もう少し近くで彼らを見たいと……


……動物って、話せないんじゃなかったっけ?

* *


ハヤテは、不安を抱えていた私に喜んで……ああ、少しニュアンスが違うんだけど、上手く言葉にできない。
とにかく、私は自分ひとりでハヤテの本質に気がつけたってことで、それはとても凄いことなんだとか。
それから、真面目な顔をしたハヤテが、言ってくれたのだ。
トモダチになって欲しいって。
不安なんて、いっぺんに消し飛んだ。
ご主人様を試してただなんてどういう使い魔なんだと怒ることはできない。
考えなしに口にしていたら、間違いなく将来は政治に、それもあまり口にできない方面に関る羽目に。
ハヤテは、そういうのから、私を守ろうとしてくれてたんだと思う。
だけどね、メイジっていうのは、貴族は、守られる存在じゃないのよ。
逆に先頭に立って、みんなを守る存在なんだから。
思い浮かぶのは、凛々しいお母さまとエレオノール姉様。
見てなさいよ。ハヤテが心配なんてする必要がないくらい立派なメイジになってみせるから。
それとね、
カトレア姉様がすごく優しい理由、姉様の側が居心地がいいわけも、少しだけ分かった気がするわ。
ハヤテは、三人目のお姉さんね。
ちゃんと紹介したいんだけど。無理かなぁ。

そんなことを考えながら、ベッドの中でごろごろと、ハヤテが起こしてくれるのを待つの。朝の贅沢な楽しみよね。


ハヤテに気持ちよく起こしてもらって、食堂で朝食を取る。
いつの間にか、ハヤテったら自分用の食器、小さな木のフォークとスプーンを用意してた。
器もスープ用と飲み物用の二つになってるし。飲み物用の方が一回り小さいから、重ねられるんだ。フォークとかも全部一つに纏めてたから、食卓につくまで分からなかった。
ナイフは流石に木では作れなかったって。そりゃそうよね。でも本当に器用だわ。
ハンカチの衣装は、シエスタにも好評だった。明日、虚無の日に人形の家具を見に行くつもりだって言ったら、
「あの、私もご一緒してよろしいでしょうか?」
私にとってハヤテはお姉さんなんだけど、シエスタには、妹に見えてるらしい。私と二人だけじゃそんなに心配?
「あっ いえ、そういうことではなくて、ただ、お二人とお話をしていると、タルブの妹のことを思い出してしまって」
何となく分かる。私もハヤテと話してると、よくちい姉様のこととか思い出すから。
ハヤテが、ルルルッて。言い直さなくってもちゃんと分かるわよ。
「だけど、シエスタは休日でも仕事はあるんでしょう? 大丈夫なの?」
「はい、明日は夕方までお休みを頂いてるんです。家族に手紙を書くつもりだったんですけど、それ以外に予定も立ててませんでしたし」
「だったらいいわ。朝食の後出かけましょう。馬車を借りておいて貰えるかしら」
シエスタは嬉しそうに微笑んで、仕事に戻って行った。
「あのね、今のは別に、いじわるで言ったんじゃないのよ。平民がメイジと、その……友達みたいに出かけると、後で色々言われたりするの。だから」
御者を命じたという形にするの。
私たちには当たり前のことでも、ハヤテにどう見られてるのかと思うと、何だか落ち着かない。
貴族であることに不満はないけれど、窮屈に思えることは確かにある。ハヤテの住む辺りには、メイジも貴族もいないそうだから。


放課後のいつもの練習に、何故だかキュルケが顔を覗かせた。一人じゃなくて、もう一人小さいのを後ろに連れてきてたけど、
無口でただ立ってるだけなんだもの。キュルケに引き摺られて来ただけみたい。
留学生って、変な人ばっかり。
魔法の実力は凄いけど。あの小さい子も、魔法で失敗したの見たことないし。
……一応、聞いてみようかな。
「それにしても、よく飽きないわね」
「煩いわよっ……あ、ねえ、ミス・ツェルブストー」
「なぁに? それとキュルケでいいわよ。いい加減付き合いも長いんだし」
長いって、ずっとからかわれてただけじゃないの。反射的に言い返しそうになったのを抑える。
「じゃあ、キュルケ。火のトライアングルの貴女に聞きたいんだけど、私のこれって、再現できる?」
「はぁ? 私にわざと失敗しろって言うの?」
「そうじゃなくて、ああ、確かにそうなんだけど……わ、私、自分がどうして失敗するのか……自分で分からないから」
恥ずかしくて悔しい。よりによってキュルケにこんなこと言わないといけないなんて、言葉が胸で詰まる。
「ごめんっ やっぱり今のなし! もうどっか行ってよ! まだ練習するんだから、あんたたちだって怪我したくないでしょ!」
だめ、限界。
こんなの気の迷いだ。コルベール先生にちゃんと頼むって決めたのに。キュルケになんて言うんじゃなかった。どうせまたからかわれるんだからぁ
どかんと思いっきりふっ飛ばしちゃった。今のは全部ダメな例。うん、分かってる。
キュルケが何か向こうで言ってるけど聞こえない。聞かない。
ハヤテ、見ててね。
深呼吸をして、頭を冷ます。
「……今度は呪文を一節ずつ分割して、少しずつ力を込めていくから」
ハヤテには意味が分からなくても、聞いてくれるだけでも全然違う。
「途中までは、魔力が通る感触があるの。だからどこで狂うのか見極めたいの」
ファイヤーボール。初めて杖を持った子供みたいに慎重に、ゆっくりと、氷の上を爪先で確かめるみたいに、
「……くっ!」
また、ダメだった。
途中から変な風に引き摺られちゃう。
教科書を引っ張り出して、呪文の載ってるページを開く。
「さっきよりもゆっくり唱えたから、誤差は少なくなってるはず……第8節から次の詠唱に差し掛かる、ここ。多分『火』の属性に転換するところ……だったら、発火は呪文の最初に属性定義があるから、すぐに爆発しちゃうのかしら……やってみるわ」
一緒に教科書を覗き込んでくれてるハヤテに声を掛けてから、火の初歩の初歩の呪文を、ゆっくりと唱え――
爆発した。やっぱり。ただ、付加がされていない分、威力もそんなに強くないし、散漫だった気がする。
杖を吹き飛ばされた右手が痛い。
「もう一回やるから、ハヤテしっかり見ててね」
これ、4回も5回もは無理だ。
「いたた……どうだった?」
「見エナイケド、手ノスグソバデ、爆発シタト思ウ」
「私もそんな感じだったわ、じゃあ次は……なに、キュルケ、まだいたの?」
一年生だってとっくに覚えてる呪文で火傷してるのなんて、見てたってつまらないでしょ。さっさと行きなさいよ。お友達だって待たせてるんだし。
変な顔をしてるキュルケ。何か文句があるのかと思ったら、小さい方が近付いてきて、私の右手に呪文を掛けてくれた。
ひりひりとした痛みが引いていく。
「あ、ありがとう」
表情が今ひとつ読み取れないけど、治療してくれたのよね。握っても痛くない。
「ルルッ るいず、今日ハ、終ワリニスル?」
「そうね、何か気が抜けちゃったし。ええと……タバサ、だったっけ? 助かったわ」
火傷は、水薬を塗っても、すぐには治らないから。
「……いい……あまり得意じゃないから、薬もちゃんと塗ること」
心配、されちゃった?
「う、うん」
怒ってるんじゃ、ないわよね?
怒鳴られるとき以外で、こんなに近く誰かと顔を合わせるのは久しぶりだから、ちょっと焦っちゃう。
「前よりは無茶はしてないみたいだけど、女の子があんまり肌に傷つけるんじゃないわよ」
「うう」
だからっ 嫌味とかなら慣れてるんだけど、こういうのは。
キュルケに取られた右手を、引っ込めていいんだか、どうしたらいいのか。
「頑張るのはいいけど、ほどほどにね。行くわよタバサ」
ぽいと手を放り出されて、勢いでたたらを踏む。戸惑ってた私が、何だか馬鹿みたい?
「ルイズも、夕食の前にその格好どうにかしなさいよ。埃だらけじゃないの。貴族たるもの、常に優雅たれ、なんでしょ?」
「っ 分かってるわよっ」
ああもうっ
急いで荷物を集めて、寮に向かって走り出すその肩にハヤテが飛び乗ってくれる。まだ数日なのに、これがいつものだと錯覚しちゃう。
「オナカ、スイタネ」
「あのねハヤテ、貴族はたとえそう思ってても、そのまま口には出さないものよ」
「るいずモ、オナカスイタンダ」
「だからぁっ ああもう」


ベッドの中。
目を閉じて、子守唄に耳を澄ます。
今日は、そんなにいやじゃなかった一日だった……かな……




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