幅広の包帯のように切り取った布を、胸から腰に巻きつけていく。あまりきつくすると動きにくいし、緩いと動いてるうちにずり落ちてしまうから、結局三回やり直した。
端を結んだら、後は簡単、大きな一枚の布を左肩から掛けて、帯を縛れば出来上がり。
剣と、昨日作った草笛を帯に差す。呼笛とかは、一まとめに包んで、反対側にぶら下げた。
本棚から飛び降りて、鏡台で自分の姿を確かめてみる。
ルイズのハンカチで作ったから、白一色。靴だけが茶色のまま。この色だと、外を走ると目立ちそうだ。染めたら怒られるだろうか。後で聞いてみよう。
後ろを向いて背中を映す。右肩を肌蹴てるから、剣を使いやすい。ちょっと女らしくないかもしれないけど。
布にまだ余裕があるから、これならもう二着分は作れるだろうけど、防護の意味で不安だから、早めにちゃんとした服を作れるようにならないと。
あ、染布の工房がないんじゃ、もの凄く手間かもしれない。虫避けの薬草の煮汁とか、どうやって調達しよう。
一人だと、もの凄くできることが少ない。
端を結んだら、後は簡単、大きな一枚の布を左肩から掛けて、帯を縛れば出来上がり。
剣と、昨日作った草笛を帯に差す。呼笛とかは、一まとめに包んで、反対側にぶら下げた。
本棚から飛び降りて、鏡台で自分の姿を確かめてみる。
ルイズのハンカチで作ったから、白一色。靴だけが茶色のまま。この色だと、外を走ると目立ちそうだ。染めたら怒られるだろうか。後で聞いてみよう。
後ろを向いて背中を映す。右肩を肌蹴てるから、剣を使いやすい。ちょっと女らしくないかもしれないけど。
布にまだ余裕があるから、これならもう二着分は作れるだろうけど、防護の意味で不安だから、早めにちゃんとした服を作れるようにならないと。
あ、染布の工房がないんじゃ、もの凄く手間かもしれない。虫避けの薬草の煮汁とか、どうやって調達しよう。
一人だと、もの凄くできることが少ない。
ルイズは、いつ気がつくだろう。使い魔の役割、三つ。
今は自分の魔法のことで頭がいっぱいみたいだけど、あの子は頭がいいから、切欠さえあれば気がついちゃうと思う。
その前に、自分から言うべきなんだろうか。
今は自分の魔法のことで頭がいっぱいみたいだけど、あの子は頭がいいから、切欠さえあれば気がついちゃうと思う。
その前に、自分から言うべきなんだろうか。
ルイズは、それをどう使うんだろう?
* *
昨日は一日時間を無駄にしちゃったから、今日からがんばるぞと、気合を入れて顔を洗う。
ハヤテが草笛で起こしてくれたおかげで目覚めもすっきり。明日からもお願いしちゃおうかな。
髪を撫で付けてると、ぴゅぅと後ろから指笛で呼ばれた。
「ん? なに、ハヤテ」
振り返って鏡台の方に目を向ける。最近、ハヤテがどこにいるか大体分かるようになってきた。ほら、やっぱり
「着替エタ。ドウ、カナ?」
うわぁ、お人形さんみたい!
「可愛いじゃないの、え? もしかして、私のハンカチで作ったの? へえ」
顔を寄せたら、ちょっと照れながら、くるりと回って見せてくれた。
ハヤテが言ってた通り、シンプルな作りだ。右肩がむき出しなのが、ちょっと気になったりもしたけど。それは言わないでおく。
縫製しようにも、コロボックル用の針と糸がないんじゃ仕方ないだろうし。
「布がごわごわしたりしない?」
「ヘイキ、柔ラカイヨ。アト、布ヲ染メタラダメカナ?」
「ええ? 染めちゃうの」
何だか、もったいない。
「外ヲ走ッテテ、獣カラ隠レルトキ、白ダト目立ツ」
ああ、じゃあ、しょうがないか。ぺらりとスカートみたいになってる後ろを捲ったら、ちゃんと下は布を巻いてあった。
「わざわざ染めなくても、色付とか柄物を使ってもいいのよ?」
「本当ハ、布ヲ、虫ノ嫌イナ草ノ汁デ染メルノ」
「へえ、コロボックルの服ってそうなんだ。そういう薬草なら探せばすぐ見つかると思うわ」
奇麗なお洋服とは、求めるものが違うんだ。
話しながら制服に着替えて、教科書を片手に部屋を出たところで、
「あら、ルイズ? 昨日は風邪だったんですって?」
嫌な奴に出くわしちゃった。
最近タイミングがずれてたから安心してたのに。
「ええもうすっかり大丈夫よ、ミス・ツェルブストー」
こいつとははっきり言って、反りが合わない。いつも何かとちょっかい出してくるし、こっちが怒るのを楽しんでる気がする。
どうせまた何か自慢するつもりなんでしょう。
知らん顔して行こうとしても、ゼロと言われたら反応しちゃう私は、格好のおもちゃなんだろうな。
「昨日も私待ってたのよ。だって貴女ったら、いつまで経ってもその使い魔さんを紹介してくれないんですもの」
「紹介ならしたじゃないの。誰かさんったら不調法にも捉まえようとしたけどね」
「あ、怒らないでよ。だってちゃんと自分の目でよく見たかったんですもの。ね、ハヤテって言うんでしょう? 後で私の部屋に来ない? 色々聞かせて欲しいこともあるし」
「おあいにくさまっ 話がしたければ、ボーイフレンドたちとしてればいいでしょう」
付き合っていられない。背中を向けて走り出す。行儀が悪くったって、これ以上気分が悪くなるのはごめんだ。
何か後ろで言ってたって、聞こえないもの。
ハヤテが草笛で起こしてくれたおかげで目覚めもすっきり。明日からもお願いしちゃおうかな。
髪を撫で付けてると、ぴゅぅと後ろから指笛で呼ばれた。
「ん? なに、ハヤテ」
振り返って鏡台の方に目を向ける。最近、ハヤテがどこにいるか大体分かるようになってきた。ほら、やっぱり
「着替エタ。ドウ、カナ?」
うわぁ、お人形さんみたい!
「可愛いじゃないの、え? もしかして、私のハンカチで作ったの? へえ」
顔を寄せたら、ちょっと照れながら、くるりと回って見せてくれた。
ハヤテが言ってた通り、シンプルな作りだ。右肩がむき出しなのが、ちょっと気になったりもしたけど。それは言わないでおく。
縫製しようにも、コロボックル用の針と糸がないんじゃ仕方ないだろうし。
「布がごわごわしたりしない?」
「ヘイキ、柔ラカイヨ。アト、布ヲ染メタラダメカナ?」
「ええ? 染めちゃうの」
何だか、もったいない。
「外ヲ走ッテテ、獣カラ隠レルトキ、白ダト目立ツ」
ああ、じゃあ、しょうがないか。ぺらりとスカートみたいになってる後ろを捲ったら、ちゃんと下は布を巻いてあった。
「わざわざ染めなくても、色付とか柄物を使ってもいいのよ?」
「本当ハ、布ヲ、虫ノ嫌イナ草ノ汁デ染メルノ」
「へえ、コロボックルの服ってそうなんだ。そういう薬草なら探せばすぐ見つかると思うわ」
奇麗なお洋服とは、求めるものが違うんだ。
話しながら制服に着替えて、教科書を片手に部屋を出たところで、
「あら、ルイズ? 昨日は風邪だったんですって?」
嫌な奴に出くわしちゃった。
最近タイミングがずれてたから安心してたのに。
「ええもうすっかり大丈夫よ、ミス・ツェルブストー」
こいつとははっきり言って、反りが合わない。いつも何かとちょっかい出してくるし、こっちが怒るのを楽しんでる気がする。
どうせまた何か自慢するつもりなんでしょう。
知らん顔して行こうとしても、ゼロと言われたら反応しちゃう私は、格好のおもちゃなんだろうな。
「昨日も私待ってたのよ。だって貴女ったら、いつまで経ってもその使い魔さんを紹介してくれないんですもの」
「紹介ならしたじゃないの。誰かさんったら不調法にも捉まえようとしたけどね」
「あ、怒らないでよ。だってちゃんと自分の目でよく見たかったんですもの。ね、ハヤテって言うんでしょう? 後で私の部屋に来ない? 色々聞かせて欲しいこともあるし」
「おあいにくさまっ 話がしたければ、ボーイフレンドたちとしてればいいでしょう」
付き合っていられない。背中を向けて走り出す。行儀が悪くったって、これ以上気分が悪くなるのはごめんだ。
何か後ろで言ってたって、聞こえないもの。
まともに話せるのが、ハヤテとメイドのシエスタだけって、学生として相当歪んでるな。
こっちから話しかけなければ、クラスメイトたちも積極的に関ってこようとなんてしない。飽きもせず絡んでくるのは、そう言えばキュルケくらい。
ハヤテに対しての興味が盛り上がらなかったのは、召喚したのが私だからっていうの、あると思う。
自分の悪名が、ハヤテをアカデミーから守るのに役立つなんてね。
だけど、やれることがまだあるから、腐ってなんていられない。ヒントの一つは、ハヤテが言ってくれた、魔力を減らす方法だ。
思えば、ヴァリエールの実家にいたときから、派手に爆発させてたし、次こそは上手くやろうと、気合を思いっきり込めてた。
先生の話が、右から左へと抜けていく。
杖を持たないまま、口の中で呪文を唱える。まだ力が篭ってるかな。
「ハヤテ、お昼休みにちょっとだけ試してみたいから、昼食は急いで食べるわよ」
「ダッタラ、しえすたニ頼ンデ、オベントウニシテモラウ?」
どうやって伝えるのかと思ったら、教室の窓から飛び降りるって。三階なのに大丈夫なの?
「壁ヲ蹴リナガラ降リルカラ。今言ッテオケバ、しえすたモ、時間アルト思ウ」
ハヤテって、伝令もこなせるんだ。
考えてみたら言葉が話せるんだから、手紙を運ぶだけのフクロウやネコなんかより、ずっと応用が利く。
「ジャア、行ッテクル、ネ」
辺りを窺ってみたけれど、ハヤテがいなくなったことに、教室の誰も気がついてないみたい。
小ささと素早さ……ハヤテって、もしかして、密偵としたら最高なんじゃないだろうか。
確かに小さいから何も持って来れないけど、それが情報なら……
ごくりと、唾を飲んだ。
ハヤテを使い魔にした私は、ここにいながらにして、どれだけのことができる? ハヤテはどれくらい速く、どこまで走れる? その小ささでどこにでも忍び込んで、
身体に震えが走る。
気づかなかったことにしよう。危険すぎる。
だって、ハヤテを完全にモノとして使うってことだもの。絶対にハヤテは嫌がる。
一見無力に見えて、使いようによってはメイジの何倍も危険なことができるハヤテ。使い魔は、メイジに似合ったものが呼ばれる。
じゃあ、私は……?
ほんの一瞬だけ、無能なゼロと呼ばれてる間が安全かもしれないって。
ゼロのルイズか、それとも、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールか。
私は、どちらを選んだらいい?
こっちから話しかけなければ、クラスメイトたちも積極的に関ってこようとなんてしない。飽きもせず絡んでくるのは、そう言えばキュルケくらい。
ハヤテに対しての興味が盛り上がらなかったのは、召喚したのが私だからっていうの、あると思う。
自分の悪名が、ハヤテをアカデミーから守るのに役立つなんてね。
だけど、やれることがまだあるから、腐ってなんていられない。ヒントの一つは、ハヤテが言ってくれた、魔力を減らす方法だ。
思えば、ヴァリエールの実家にいたときから、派手に爆発させてたし、次こそは上手くやろうと、気合を思いっきり込めてた。
先生の話が、右から左へと抜けていく。
杖を持たないまま、口の中で呪文を唱える。まだ力が篭ってるかな。
「ハヤテ、お昼休みにちょっとだけ試してみたいから、昼食は急いで食べるわよ」
「ダッタラ、しえすたニ頼ンデ、オベントウニシテモラウ?」
どうやって伝えるのかと思ったら、教室の窓から飛び降りるって。三階なのに大丈夫なの?
「壁ヲ蹴リナガラ降リルカラ。今言ッテオケバ、しえすたモ、時間アルト思ウ」
ハヤテって、伝令もこなせるんだ。
考えてみたら言葉が話せるんだから、手紙を運ぶだけのフクロウやネコなんかより、ずっと応用が利く。
「ジャア、行ッテクル、ネ」
辺りを窺ってみたけれど、ハヤテがいなくなったことに、教室の誰も気がついてないみたい。
小ささと素早さ……ハヤテって、もしかして、密偵としたら最高なんじゃないだろうか。
確かに小さいから何も持って来れないけど、それが情報なら……
ごくりと、唾を飲んだ。
ハヤテを使い魔にした私は、ここにいながらにして、どれだけのことができる? ハヤテはどれくらい速く、どこまで走れる? その小ささでどこにでも忍び込んで、
身体に震えが走る。
気づかなかったことにしよう。危険すぎる。
だって、ハヤテを完全にモノとして使うってことだもの。絶対にハヤテは嫌がる。
一見無力に見えて、使いようによってはメイジの何倍も危険なことができるハヤテ。使い魔は、メイジに似合ったものが呼ばれる。
じゃあ、私は……?
ほんの一瞬だけ、無能なゼロと呼ばれてる間が安全かもしれないって。
ゼロのルイズか、それとも、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールか。
私は、どちらを選んだらいい?
シエスタにお弁当を貰って、お礼を言うとき、顔が引きつりそうになった。
爆発を弱める練習は、全然上手く行かなかった。上手く行かなくて、ほっとした。
ハヤテが多分気がついてて、それでも言わないでいてくれたこと。
私の失敗魔法は、どこまで大きな爆発を起こせるのか。
「ドウカ、シタ?」
「ううん、このくらいにしとこうかなって」
私がなりたいのはメイジ。
バケモノじゃないもの。
爆発を弱める練習は、全然上手く行かなかった。上手く行かなくて、ほっとした。
ハヤテが多分気がついてて、それでも言わないでいてくれたこと。
私の失敗魔法は、どこまで大きな爆発を起こせるのか。
「ドウカ、シタ?」
「ううん、このくらいにしとこうかなって」
私がなりたいのはメイジ。
バケモノじゃないもの。