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はだしの使い魔 1


東京には人が集まる。
全国から才能を持った様々な人間が集まり、日々切磋琢磨しているのだ。
そんな世界へ挑戦してみないか。
お前は年を取ったわしとは違う。お前には若さがある。
若さとは力。冒険心。可能性への挑戦。歳月を経て懐かしむ得難い宝。
かの老人はそう言った。少年はそこに自分の未来を見た。
そして東京へ行ってみたいと考えた。己の身一つで何処までやれるのか。
行く道には幾多の困難があるだろう。それでも逃げずに精一杯ぶつかってやる。

少年のこれまでの人生。それは、贔屓目に見ても幸福とは呼べないものだった。
だが彼は挫けなかった。屈しなかった。前を向いて歩き続けた。

踏まれても、蹴られても、石を投げつけられ、唾を吐き掛けられても。
心無い者達の嘲りや誹りを受けても、折れる事無くまっすぐに。



それは まるで 厳しい冬を乗り越え 太陽の下 青麦が実るように



 はだしの使い魔


「あんた、誰?」

気がつくと、目の前に少女が居た。
少年は首を傾げた。ついさっきまで、彼は汽車に乗っていたのだから。
それとも、うたた寝してしまい、気がついたら東京に着いていたのか。
……東京。ここが?

「のう」
「何よ?」

状況が分からないので、現地の(?)人間に訊いてみる事にした。

「ここは東京か?」
「トーキョー? ここはトリステインよ。って、そんな事はどうでもいいわ。
 あんたねえ、私が質問してるんだから先に答えなさいよ。あんたは、誰なの?」

――トリステイン?
目の前に居る桃色髪の少女が口にした、トリステインという地名。
彼は混乱した。どう考えても外国の地名だ。ついでに少女も外人だ。

「のう」
「……何よ?」

自分の問いに答えず、逆に続けて質問された少女はむっとした表情になる。
というか、何故か最初から不機嫌なのだが、少年の方はそれどころではなかった。

「わしゃ、何で、こんとなところにおるんじゃ!?」

訳が分からなくなり、少年は声高に叫んだ。
東京行きの汽車に乗っていたら外国に着いてしまった。意味不明だ。
焦る少年の周囲には少し離れて人だかり。目前の少女と似た服装の男女の集団。
目に映る景色は、夕暮れ時の草原。遠くには御伽噺や歴史書にあるような城。

「何でって、私が「サモン・サーヴァント」で呼んだからよ」
「呼んだ……じゃと?」

呼んだ、とはどういう意味だろう。そして聞き覚えのない単語。
説明を聞いた分だけ、新たな謎が増えていく。
そんな風に、彼は深まる疑問に頭を抱えていたので、
唇に触れる生暖かい感触に反応が遅れた。

「……んうわあーっ!」

少年は驚いて真後ろに2メートルくらい飛び退った。
口吸い。ちゅー。チッス。所謂KISS。
桃髪の少女が自分にくちづけをしてきたのだ。

「お、お、おのれはいきなり何をするんじゃ。
 わしには光子さんがおるけえ、そんとな誘惑にゃ負けんぞ」

既に亡き恋人を思い浮かべ、顔を真っ赤にしながら邪念を振り払う。

「うるさいわね、私だって初めてだったのよ!
 うぅ、いやだって言ったのに……」

抗議する少年に対し、逆上する少女。あまりにも理不尽だ。
泣きたいのは自分の方だ、と彼は溜息を吐いた。
と、その瞬間、彼の身体中を熱と痛みが駆け巡る。

「グググググ!」
「少し我慢しなさい。使い魔のルーンが刻まれてるだけだから」

また、分からない単語。彼の心にふつふつと怒りが込み上げてくる。
方法は知らないが、自分をここへ呼んだのはこの少女。
戸惑う暇もなく、ファーストキスを奪われた。想い人とすらしてなかったのに。
そして、この原因不明の痛み。目前の少女の、横柄な物言い。
納得のいかない事が多すぎる。

やがて、身体を巡っていた熱は収束し、左手の甲へ集まり、紋様となって消えた。
少年は痕の刻まれた手を見て、わなわなと震える。
その様子を見届けた、一団の中でただ一人の頭頂部の禿げ上がった中年男は、
満足そうな顔で前へ進み出て桃髪の少女に語りかけた。

「どうやら、コントラクト・サーヴァントも上手く出来たようだね」

男は少女を褒め、痛みで蹲っていた少年に近づいて手の甲の紋様を確認する。

「ふむ、これは珍しいルーンギエェェーーッ!!!」

呟きは途中から絶叫に変わった。
少年が、突進し頭突きで男の股間を打ち砕いたのだ!

「はおおおお…………っ!」

苦しみにのたうち回る四十男。周りの男子達も思わず何かを堪えた顔になる。
女子達はあまりの事態に手で顔を覆って、でも指の隙間からしっかり覗いていた。

「お、お、おどりゃ、よくもわしの手ぇに彫り物してくれたのう。おどれら、
 わしを捕まえて鉄砲玉にでもする気か、わしゃお前らの言いなりにはならんぞっ!」

彼は理解した。こいつらは、自分を拉致し、入れ墨を施した上、
体のいい遣い走りとして扱き使うつもりなのだ。

……そして、その認識は悲しいかな、強ち誤解とも言い切れないのであった。

だから、彼は吠えた。獣のような雄叫びだったが、
それはまさしく彼の人間としての尊厳を賭した、魂の叫び声だったのだ。


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