あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと聖石-11


聖堂。
テンプルとも言うニューカッスル城のそこは、城にふさわしい規模を誇っていた。
絢爛豪華に造られた其処は、アルビオンにおける生誕から葬儀まで喜びと悲しみを見届けた場所。
ここだけ空気が澄んでいる気がする。
同時に死者の臭いも感じることが出来る不思議な空間だ。

そんな神聖な場所の祭壇前にウェールズ皇子が祈りを捧げていた。
私もそれに習い、始祖に祈りを捧げる。
祈るのは私にとっての平穏な日常。
ちょうど、あの時のやさしい夢。
全員がほほえましく笑いながら過ごしたあの夢を。

不意に、ウェールズ皇子が立ち上がり、指から指輪を抜いた。
それを私に握らせ、

「これを、アンに。これを渡せば分かってくれるはずだから」

泣きそうな私を叱責し、その指輪を懐に収める。
必ず、アンリエッタ様に、何があっても渡そう。そう決心した。
そして、ワルド様遅いなとか考えていたら―――
空を裂く音が響く。
私は反射的にウェールズ皇子を弾き飛ばした。
音は聞こえない。
私の体に風の刃が食い込む。
痛みを堪え、詠唱をしようとした瞬間、私はワルド様に抱えられていた。

「私の目的を何か教えよう、プリンス・ウェールズ」

次の瞬間、ワルド様が三体現われる。
風の偏在だ。

「一つは密書の奪取、もう一つは君を殺すことだ!」
「貴様、レコンキスタか!!」

私を抱えたまま偏在をけしかけるワルド様、いや、ワルド。
おそらく、聖石とその使い手を同時に手に入れて手柄としようとしているのだろう。
そんな彼に気が付かれないようにケアルを詠唱。
止血程度に傷が回復。同時に私はある一つの魔法を詠唱。

「ひるがえりて来たれ、幾重にもその身を刻め…ヘイスト!」

対象を地点に設定し、ワルドに掛からないように私だけ時間の流れが速くなる。
即座にテレポで脱出し、アルテマで偏在を一体消す。

「やってくれたわね、そう簡単に死ねると思わないことね、ワルド!!」

その言葉に反応したのかは分からないが、偏在が二体追加、これで五対二、いや、

「コイツ偏在か? おでれーた、こんなに偏在見たの久しぶりだぜ」

偏在の一体にデルフが刺さっている。
背後のステンドグラスにヒビと剣一本分の穴。
その穴を中心にステンドグラスが割れる。
降り注ぐ乱反射した光とガラス片。
シエスタがデルフを床から引き抜いて構える。

「さぁて、皇子様を狙う悪役を倒すヒロイン様の登場だぜ!」
「あ、あの、お助けにきました!」

以前やった大跳躍で飛び込んできたのだろう。
それにしてもなんてタイミングのいい。
ワルドも一瞬だけ驚きの表情を浮かべ、すぐに余裕を取り戻す。
シエスタが一度戦い、勝利した相手だからだろう。
その自信という名の慢心を、ぶち壊そう。

三人が突撃するのに合わせ、ワルドが更に偏在を追加。
そしてシエスタにはワルド本体、ウェールズ様と私に二体が付いた。
さあはじめよう、死の舞踏を。

シエスタが盾を捨て、鎧の内側から剣を抜いてワルドの剣を受け止める。
私は瞬発的な詠唱でサンダラを詠唱、牽制しつつテレポで隙をうかがう。
ウェールズ皇子は剣に真空の刃を纏わせ、偏在と打ち合っている。

シエスタに向かって風の刃が飛ぶ。それをデルフで打ち消しながらワルドを追い詰める。
偏在が詠唱したのに合わせてブリザラで障壁を作り、ウィンドブレイクを弾く。
さすがに二対一は厳しいのか、防戦一方のウェールズ皇子。

そして、シエスタがワルドを壁際に追い詰める、これで詰みだ。
こっちも仕上げとばかりにウェールズ皇子が苦戦している偏在の真後ろにテレポ。
それを追いかけるように私について来た偏在が射程に入る。
その直後にテレポ、一気に指定範囲から離れる。

「鏡なす心に問いて魔の流れ鎮めん…ミュート!」

魔力を失った偏在が掻き消え、シエスタが剣を突きつける。
そしてワルドの杖を落そうとして、

後ろから現われた偏在に腹部を刺される。
声を上げる暇すらない。
駆け寄ろうとして、ウェールズ様が偏在に杖を破壊され、刺される。

怪我自体は深くなさそうだが、戦闘に参加できるような状態ではない。

髪をかきあげ、更に偏在を二体追加。
これで形勢は逆転。
私の魔法は発動が遅いから唱えても先手は確実に向こう。
覚悟を決めるしかない。
突進してくる偏在に私は、あの時の訓練を思い出す。


―――サンダラを外してしまい、シエスタが突撃してくる。
   私は本能で詠唱を必要とせず、即座に効果があり、威力が高い魔法を選んでいた―――


突進してくる偏在の杖にはエアスピアーという接近戦用の魔法だ。
アレに刺されたら確実に傷はえぐられるだろう。
だから、私は迷わなかった。
たとえ、これを使った事で再び、

「ゼロと呼ばれようが、私は生きるのよ! 錬金!!」

錬金の魔法が偏在の杖に作用、昔のように魔法が失敗し、爆発。
衝撃は凄まじく、偏在をかき消す。

「やはり君の魔法は聖石の力か、残念だが君を殺して聖石をいただいていくよ!!」

偏在が三方向から襲い掛かる。
幸いにも偏在に力を注いだのか魔法は使ってくる気配は無い。
私はコモンマジックで偏在の一体を爆破。
そのままその偏在に近づいて杖ごと爆破。
残り二体。
振るってくる剣にタイミングを合わせ、杖でガード。
お返しとばかりに帽子を錬金。
偏在はそれに反応、即座に帽子を投げて回避。
もう一体がこちらに対して振りかぶってくる。
テレポで跳び、更に追加で偏在の手袋を錬金。
手を中心に偏在が吹き飛ぶ。
残り一体。
即座にテレポで飛びながらワルド本体に向かってテレポ。
一瞬で目の前に来たことに驚いたかどうか知らないが、即座に範囲指定して離れる。
タイミングを伺い、再度ワルドに接近。今度は真横。
杖で脛を思いっきり叩く。
横に偏在が迫ったところでテレポ。
そこでミスしてしまった。

跳んだ先は先ほどワルドから離れるときに跳んだ場所。
そこにテレポで着地。
目の前には新たに作られた偏在。
エアスピアーで思いっきり腹部を刺される。
同時に錬金で爆破。
これで、ワルドの偏在は残り一体。
しかしこちらは重傷。
あのワルドがこちらの詠唱を許すわけが無い。
錬金を警戒して、ある程度の距離をとって、エアニードルを連打。
急所はかばったが、このままだと確実に死ぬだろう。
そこで偏在を解除し、悠然と歩み寄ってくる。
朦朧とする意識の中で、私は必死に呟いた。

「君は確かに強かったよ、ルイズ。しかし、『ゼロ』ごときが『閃光』に挑むなど無謀だった。
 あのメイドもたかが平民のくせに貴族に歯向かうからこうなった。我々レコンキスタに歯向かうとこうなるのだよ」

「―――恨み、あります」

「まぁ、ゼロごときにこの石はもったいないな」

「―――呪い、あります」

ワルドが私の体に手を伸ばす。

「レコンキスタが有効活用してあげよう。なに、君は尊い犠牲となるだけだ」

「―――貴方にあげます! ライフブレイク!」

間一髪で詠唱が間に合う。
ルイズの体から放たれた暗い魔力の波動がワルドを包み込む。

「こ、これは!?」
「貴方が散々いたぶってくれたおかげでこの術の効果は抜群よ、
 私が受けた痛みを、この恨みを、すべて受け止めろ! ワルド!!」

その魔力波動は容赦なくワルドの体を蹂躙しつくす。
圧倒的な破壊の渦に飲み込まれたワルドは、立っていた。

「こ、の…ゼロがぁああああ!!」

残った魔力を振り絞った偏在なのか、若干存在感の無い偏在が三体。
私に襲いかかろうとした瞬間、

「大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならん! 無双稲妻突き!」

凛々しいシエスタの声が、響く。
偏在が、地面から空に落ちる雷の刃に突かれて消え去る。
そのことに驚いている間も無く、ワルドの左腕が切り落とされる。

「これが、平民が戦うために鍛え上げた、牙の力です―――!」

更に冥界恐叫打で杖を破壊する。

「く、引くしかないのか―――貴様だけはこの私が倒してくれる、平民!!」

そう言って、シエスタが割ったステンドグラスから外へと飛び出していった。

「覚えておけ! 私はシエスタ。シエスタ・デュライ! 貴様の首を貰い受ける者の名だ!
 そして、刻め! 私は幾多の騎士の頂点に立つ『剣聖』を目指すものだと!!」

そう、シエスタは叫んでいた。

「覚えておきなさい! 私は『ゼロ』にして全てを極めんとする無限の知識の体現者!
 『ゼロのグランドマスター』ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! その使い魔聖天使アルテマの名を!!
 私達二人が、貴方と『レコンキスタ』に無間地獄を見せるものだと!! 心に刻め!!!!」

この場において、『ゼロ』と呼ばれたメイジも、平民の給仕など居なかった。

其処には、勇壮なまでの騎士と、全ての知識を極めようとするメイジが二人で立っていた。

その直後、二人は仲良く床に仰向けになった。


新着情報

取得中です。