あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの(オンドゥル)使い魔-5

決闘はあっさりと幕を引いた。
 「拍子抜けだ・・・と言いたいが、彼も先ほどの戦いで、疲れが残っていたのだろう。この決闘、引き分けにしてやる」
 二本の足で、しっかりと地面に立っているのはギーシュ。
 彼は、正直なところ、この決闘に勝てると思ってはいなかった。
 自分を一撃で倒した派手な服装の平民は、どうやらあの後、謎の怪物へと変身したらしい。
 ギーシュは気絶していてその姿を見なかったが、自分を看病してくれていたモンモラシー曰く、「見たことがない生物」らしい。
 その未確認生物との戦闘中、給仕は一瞬で甲冑をまとった紺色の戦士になったそうだ。
 なにがなんだかさっぱりだが、あんな平民に倒されたとなっては、グラモンの末代までの恥だ。ここは、死んでも食らいついてやるつもりだった。
 名誉挽回のために。
 しかし、決死の覚悟で挑んだギーシュの予想を裏切った男がいた。
 剣崎である。彼は、好き放題殴られると、ぐったりと気絶してしまった。
 「僕には本気を出せないとは言わせないよ・・・今度、また機会があったら改めて決闘しよう」
 ギーシュは颯爽と広場をあとにする。
 にやけている顔を隠すのに精一杯だ。
 ああ、僕ってば、なんてかっこいいんだ。
 ルイズと剣崎が、広場から立ち去ったのを確認したあと、ギーシュの行動は早かった。
 急いで広場に戻り、片っ端から女の子を口説き始めたのだ。
 みんな、僕、格好よかったろう。
 僕が本気をだせば、あんなものさ。
 なんだい、ケティ?見直した?いいんだ。水に流そう。
 はははは!本当は、あの侵入者も倒せたんだ。
 だって本気を出したら、かわいそうだろう?
 仕方ないよ。たまには平民にも花を持たせる。そんな寛大な心も必要さ!
 ギーシュはいまや英雄気取りだ。その顔はとても満足そうである。
 まあ、数秒後、冷めた表情のモンモラシーに殴られ、彼は夢の世界へ旅立つことになったのだが。



 学院長室に戻ったオスマン氏は、コルベールに目をむけた。
 「どうしたものかね」
 「はぁ・・・私にはどうとも・・・・・王室に判断を委ねてみては」
 「まぁ、確かに君はあの謎の侵入者には驚いたじゃろう
      • しかし、私たちはあの使い魔の戦闘を見ていない」
 オスマン氏は、よっこらせと椅子に腰掛けた。
 ふたりは、広場で繰り広げられた剣崎とキングの激闘を見ていない。
 ルイズに呼ばれて、急いで向かうと、すでに決着がついた後だったからだ。
 「確かにそうですが・・・あれほどの防御力をほこる者を、数分間のあいだ足止めしていたことは脅威です」
 「じゃが、負けた」
 コルベールは押し黙った。
 「彼が『ガンダールヴ』だ、と決めつけるには早すぎるのかもしれんの。
もう少し、様子を見るのはどうじゃ?彼には色々聞きたいこともある」
 「・・・そうかも、しれませんね」
 「問題は・・・」
 オスマン氏はこめかみに人差し指をそえ、ため息をついた。
 「・・・問題は、召喚者じゃが」
 「ミス・ヴァリエール・・・さきほど、私たちを呼びにきた生徒ですか?
彼女の能力は・・・その、あまり優れているとは言いがたいのですが」
 「それじゃよ。仮にあの青年が『ガンダールヴ』としよう。
じゃが、なぜそんな伝説の豪傑が、能力の低いメイジに召喚される?」
 「そういえばそうですね」
 そうじゃろうて、そうじゃろうて。オスマン氏はもう一度ため息を吐いた。
 「とりあえず、このことは他言無用だ。いいか。王室なんぞに与えてみろ。いつ戦がはじまるかも分からん」
 「は、はい!」
 オスマン氏は杖を握り、窓の外を見た。
 少し、薄暗くなりつつある。あの青年はもう回復したろうか。
 ぼんやりと、青年の姿がまぶたに浮かんだ。



 ばたん、と扉が閉まる音を聞き届け、ルイズは安心したようにひと息ついた。
 やっとの思いで、気絶した剣崎を自室まで運び終えたのだ。
 と、言っても、自分の小さい体で、この使い魔の無駄に大きな体を引きずって連れて来ることなんて無理なので、適当な生徒に頼んで『レビテーション』をかけてもらった。
 「なんで、ご主人様の言うことを聞けないのよ」
 ほんとにバカだ。なんにもできないはずの平民なのに。
 ルイズは、自分がオスマン氏らを呼びに行っている間、広場でなにが起こったかを、キュルケに聞いた。
 いけ好かないヤツだが・・・今回はそんな場合ではなかった。
 自分の足元に、傷だらけで横たわる使い魔を見ると、なんだかかわいそうになってきた。
 「バカなんだから」
 軽く、蹴っておく。
 「ウェ・・・」
 妙な呻き声をあげるが、目覚める気配はない。
 仕方ない。傷ついた使い魔に、慈悲の心を見せるのも、寛大な私の役目よね。
 『治癒』の呪文をかけてもらうために先生を呼びに行くことにしよう。
 文句を言うのはそれからだ。


 剣崎は、窓からさしこむ朝の光で目が覚めた。
 どうやらルイズのベッドに寝ているらしい。
 「・・・・そうか」
 そういえば、キングと戦ったあと、ギーシュにやられたんだった。
 でも、あの後どうなったんだろう。
 必死になって、思い出そうとしていると、扉をノックする音がした。
 「あら、お目覚めですか?」
 入ってきたのは、パンと水をのせた銀トレイを持ってきたシエスタだった。
 「ああ」
 「ミス・ヴァリエールがあなたをここまで運んできたんです
      • それで、先生に『治癒』の魔法をかけてもらったようですよ」
 「『治癒』っていうと、回復の魔法?」
 「そうですね。怪我や病気を治す魔法です」
 自分を使い魔をしか見ていないと思っていたルイズが、まさか広場から連れてきてくれるなんて。
それに、わざわざ『治癒』とやらもやってくれたのか。
 あの、ルイズがねえ・・・。


 世の中には、不思議なこともあるものだ。
 「治癒の呪文のための秘薬の代金は、ミス・ヴァリエールが出してました。だから心配しなくていいですわ」
 「い、いくらするんだ?」
 「う~ん・・・少なくとも、平民で出せるような金額ではない、とだけ言っておきます」
 そんなにするのか。
 財布を確認しようとして、はたと気づく。
異世界だったんだな。じゃあ、無理。
 「三日三晩、寝ていましたね」
 「俺が?」
 「ええ」
 「みなさん、心配してましたわ」
 みなさん?
 この世界に、俺の知り合いはそんなにいたろうか。
 シエスタは、剣崎の挙動を見て微笑んだ。
 「貴族の方々です。なんでも、怖い侵入者に、勇敢に挑んだそうですね」
 「いや、勇敢というか・・・」
 無謀、というか。
 「でも、あなたのこと、みんな気にしていますよ」
 やはり、あんな大勢の前で仮面ライダーになったのは不味かったか。
 「厨房のみんなも・・・あなたのこと褒めていました。そこらへんの、貴族より数倍立派だ、ですって」
 「そ、それは・・・まぁ。相手が、俺の知り合いだったってこともあるし」
 シエスタの輝く瞳を見ると、剣崎は赤面した。
 いや、ライダーはアンデットと戦うのが義務だし。
 そりゃ、褒められたことなどあまりなかったけれども。
 今まで当然のことのように行ってきたことを賞賛され、剣崎は気分がよくなった。
 そこで、ふと疑問を口にした。
 「と、ところで。シエスタ・・・ちゃん」
 内心は呼び捨てにしていたが、この子の名前を呼ぶのは初めてだ。
 少し緊張しながら、こほん、と咳払いをする。
 「ずっと、俺を看病してくれてたのって、きみ?」
 さっき気づいたのだが、体には包帯が巻かれている。
 「いいえ。ミス・ヴァリエールが・・・」
 「ルイズが?」
 「ええ。寝る暇もなく、熱心に看病してましたよ」
 そういえば、ルイズは机に突っ伏して寝ている。
 まさか、高額な『治癒』の魔法とやらをかけてくれただけでなく、看病までしてくれるとは。
 剣崎は、いままで虐げられてきたこともあり、思わず涙を流しそうになった。
 よかった。
 俺、使い魔じゃなくて、人間扱いされるようになったんだな。
 「ど、どうしたんですか?ケンザキさん、どこか痛むんですか!?」
 「いや、違う。違うんだよ・・・」
 うれし泣きなんて、流したことあったかな。
 いいよな。今日くらい。
 祝、人間復活。



 自分が、まだまだ甘い、と実感したのはルイズが起きてからだった。
 可愛らしいあくびをしたルイズは、目覚めた剣崎に気づいた。
 まいったな。
 剣崎は、キングを単身、追い詰めたことを賞賛されると確信した。
 なにせ、剣崎は人間に戻ったのだ。
 しかし、悲しきかな。
 ルイズの口から出てきたのは、「かっこよかった」でもなければ、「よくがんばったわね」ですらない。
 「役立たず」
 であった。
 「うぇ?」
 ぽかん、口を半開きにした剣崎に、ルイズは大量の洗濯物を投げてよこした。
 「あんた、やっぱり足止め程度にしか役に立たなかったわね。しかも、私のいうこと無視して、ギーシュにボコボコにされるわ・・・『治癒』にいくらかかったと思う?」
 「そ、それは・・・」
 まるで、年末に売れ残った商品を見る店長の目である。
 「では、ごゆっくり」
 シエスタはとばっちりを恐れ、早々に出ていってしまった。
 「じゃ、これ」
 「これって・・・洗濯物?」
 「そうね。洗濯しなさい。掃除もよ」
 「怪我いたくて、動けない」
 「それだけ話せりゃ十分よ!いいから、早くしなさいっ!」
 服の袖を引っ張られ、剣崎はベッドから引きずり下ろされる
 ルイズは毛布をもはぎ取り、ベッドに、どすん、と座った。
 「・・・」
 つまり、俺はまだ使い魔なわけか。
 看病してくれたのは、ただ便利な使い魔がいなくなると面倒だったからだったのだろうか。
 非情な現実を突きつけられ、尻餅をついた剣崎は、ルイズを見上げた。
 「なに?」
 「・・・なんでもないです」
 人間にもどるのは、いつの日になるだろう。


 この世界に来て一週間。
 剣崎はルイズの傍若無人な性格にも慣れてきた。
 だんだんと、彼女の怒るポイントが分かってきたのだ。
 「ふう」
 朝、ルイズを起こしてから、着替えさせて朝食に行く。そして帰ってきたら、掃除。
 その後は洗濯。
 それらを短時間で済ませ、ルイズと教室に向かう。
 そのあいだ、ルイズのとなりを歩きながら辺りをキョロキョロと見回しキングを探す。
 キング戦での活躍もあり、前ほど剣崎を馬鹿にするような発言は聞かなくなった。
 まぁ、それでもたまにあるのだが。
 そんなある日。
 「そろそろ傷も癒えたころじゃろう。君と話をしたい」
 と、オスマン氏に呼び出された。
 ルイズは同行しようとしたが、オスマン氏に断られた。


 いかにも強そうな魔法使いに呼び出されたので、剣崎は緊張していた。
 学院長室に入ると、中には綺麗な女性がいた。同じくらいの年齢だろう。
 眼鏡をかけ、理知的なオーラを出している。
 「あの・・・話ってのは、この前のことですか?」
 「うむ。ミス・ロングビル」
 オスマン氏が名前を呼ぶと、ミス・ロングビルは一礼し、部屋を出てしまった。
 ついにこのボス的魔法使いとふたりきりである。
 「さきほどの・・・ミス・ロングビルに、頼んで、君のことを調べさせてもらった」
 「俺を・・・ですか?」
 「うむ。なんでも、広場でのいざこざで、一瞬のうちに鎧をまとい、不思議な魔法を使ったとか」
 ライダーに変身したことは、やはり魔法を使える世界といえど見逃してはくれないらしい。
 そういえば、この世界では『魔法』がある代わりに、科学に乏しいようだ。
 「・・・あの、俺が今から言うこと、誰にも言わないでくれて・・・信じてくれますか?」
 「うむ。信じよう」
 流石に、これからもずっと秘密を守り続けるのは無理だろう。
 帰れる手立てもなければ、使い魔とやらになったせいで、ルイズを危機から救い出さなくてはならない。


 いつかはばれるのだ。なら、今言ってもいいじゃないか。
 「そうですね・・・まず、俺のいた世界について話します」
 剣崎は、自分の世界について話した。
 魔法なんて存在しないこと。代わりに科学が発展していること。
 仮面ライダーという仕事に、アンデットのこと。
 ライダーについては、対アンデット用の鎧、としか伝えていない。
 科学の結晶であるそれは、こちらの文明では理解できないだろう。
 アンデットについては、なるべく真実に近いものを教えた。
 「そういうわけで、俺が戦っているアンデットは不死身なんです。だから、もしこの前の少年を発見したら、俺に教えてください。そうすれば、生徒たちの身も守れます」
 「うむ。興味深い話じゃった・・・が、君は、この前のアンデットとやらに勝てるのかね?」
 オスマン氏は痛いところをついてきた。
 確かにあれほど上手くことを運んだのに、キングを倒せないなんて思わなかった。
 でも、今度こそは封印する。
 「大丈夫ですよ。ほら、鎧をつけるための道具もあるんです」
 先日、広場に落ちているのをギーシュが持ってきてくれたのだ。
 「ふむ。なら、安心じゃな・・・時間をとらせてすまなかった。もう帰ってよいぞ」
 剣崎はブレイバックルをポケットにしまい、学院長室の扉の前まで歩くと、オスマン氏へと向き直った。
 「それじゃ、俺はこれで」
 ぺこり、と軽く頭を下げて部屋をあとにする。
 廊下に出てから、ふう、と深呼吸する。
 そして、ポケットからブレイバックルを手にする。
 「・・・変身できない・・・なんて言えないよな」
 今の自分はライダーであってライダーではない。
 カテゴリーAまで奪われてしまった。
 剣崎は肩を落とし、今度はため息を吐く。
 そして、とぼとぼと廊下を歩き出した。


 ルイズの部屋まであと数メートルというところで、部屋の前にシエスタがいるのに気が付いた。
 「シエスタちゃん。どうしたんだ?」
 「あ、ケンザキさん。あの、これがあなたに届いてましたよ」
 「俺に?」
 シエスタは白い封筒を差し出した。
 なんだろう、まさかラブレターじゃないよな。
 わずかに期待しながら封をきると、中から一枚の絵札が現れた。
 「これは・・・!」
 緩んでいた頬が引き締まる。
 絵札はラウズカードらしきものだった。
 いや、ほぼ同じと言っていい。
 異なる点といえば、見たことがない文字で記されていることだろうか。
 シエスタが覗き込むと、ぽつりと言った。
 「え~と、『進化』ですか?」
 「読めるのか?」
 「はい。これでも、貴族にお仕えする身です。文字は習いました」
 シエスタは頷いて、すらすらとカードの文字を読み始めた。
 「やっぱり・・・」
 間違いない。これはプライムベスタだ。
 しかも、そこにはそのキングが封印されたカードまで含まれている。
 「一体、誰がこんなもの・・・」
 「差出人は書いてありませんね」
 本当に、誰なんだ。
 それに、何故カードの文字が、この世界のものになっているんだ。
 キングは誰かに封印されたのか。
 どんどん頭に情報が入り込んでくる。これじゃ、頭が爆発する。
 やめよう。
 あとで、毛布にでもくるまりながら考えよう。
 ただでさえ、今は混乱しているのだ。落ち着いてからでも、いいだろう。
 「ありがとう、シエスタ。おかげで助かったよ」
 剣崎はがしっ、とシエスタの両手を勢いよく握った。
 「あ、いえ・・そんな。私は部屋までお持ちしただけですし・・・
そ、それと。私のことは、シエスタとお呼びください」
 シエスタは、はにかむように呟いた。

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