アンジェリカはフーケに言われるままにM16を手渡した。
「これは…」
フーケは笑みを浮かべてそれを繁々と眺める。後は破壊の杖を回収するだけだと考えをめぐらす。
だがそんなフーケの左手がアンジェリカにグイっと引っ張られる。
だがそんなフーケの左手がアンジェリカにグイっと引っ張られる。
「アンジェリカさん、どうかしましたか?」
まさか正体に気付いたわけではあるまい。なら何故腕を掴むのか。
「どうかしましたの?」
再びフーケが問いかけるもアンジェリカは俯いたままだ。冷や汗をだらだらと流している。
「ぐっ!?」
掴まれた腕に激しい痛みが走る。アンジェリカは掴んだ腕に力を入れているようだ。
痛みに思わず小さな悲鳴をあげたフーケ。その力はとても子供の力とは思えない。
痛みに思わず小さな悲鳴をあげたフーケ。その力はとても子供の力とは思えない。
「あ、アンジェリカさん? いい子だから放して…そんなに握ったら痛いわよ」
フーケにはアンジェリカが必死に助けを求めているように見えた。腕を掴む手を振り払おうとも考えたが優しく、諭すようにアンジェリカに話しかけた。
だがアンジェリカは耳を傾けない。それどころかますます力を込めらてくるだ。遠くからルイズたちの声が聞こえる。
だがアンジェリカは耳を傾けない。それどころかますます力を込めらてくるだ。遠くからルイズたちの声が聞こえる。
『このままでは拙い』
業を煮やしM16を地面に捨て杖を掲げたフーケ。だがそれを振り下ろすことができない。
何故だろうか。アンジェリカの姿が似ても似つかぬ、故郷に残してきたあの子のことを思い出させるのだ。
何故だろうか。アンジェリカの姿が似ても似つかぬ、故郷に残してきたあの子のことを思い出させるのだ。
『何をしているの! このままじゃお宝を奪えない!』
自分を叱責するも掲げた右腕が動かない。やがてフーケは静かに杖を下ろした。
「何やってるんだか…」
フーケは自らの行為を自嘲する。このままでは何も盗めやしない。
アンジェリカに掴まれている腕がますます痛み、ついにパキリという乾いた音が響き渡る。
アンジェリカに掴まれている腕がますます痛み、ついにパキリという乾いた音が響き渡る。
Zero ed una bambola ゼロと人形
「ミス・ロングビル! 廃屋には誰もいませんでした。それと破壊の杖も取り返しました!」
ルイズが嬉しそうな声を出しながら戻ってきた。
そしてルイズの声を聞いたアンジェリカはようやくフーケの腕から手を放した。
そしてルイズの声を聞いたアンジェリカはようやくフーケの腕から手を放した。
「ミス・ロングビル、どうかされましたか?」
青い顔をしているロングビルにキュルケが気付いた。
「いえ…何でもありませんわ。それよりもアンジェリカさんを…」
左腕を押さえながらアンジェリカへと視線を移す。
「アンジェ! どうしちゃったの?」
見るからにおかしいアンジェリカにルイズが駆け寄る。
「ルイズさん。お薬…お薬下さい」
アンジェリカはうわ言のように呟いた。
「薬? 薬って何よ!」
ルイズは混乱して怒鳴り始めた。
「ルイズ落ち着きなさい! 怒鳴ってもどうにもならないわよ」
キュルケがルイズを窘める。
「ともかく…学院に戻りましょう…」
フーケではなくロングビルとして口を開いた。
「ミス・ロングビル、何かあったのですか?」
苦しそうなロングビルにアンジェリカを抱きかかえたルイズが尋ねる。
「何でもありません…そう悪いのはいつだってわたくしたち大人なのですから…」
ロングビルは朦朧とする意識の中故郷に残してきた妹を思い浮かべた。
「ミス・ロングビル! ルイズ、あたしが馬車の手綱をとるわ。早く戻りましょ」
Episodio 25
Abbandonato oltre la gentilezza
捨てきれぬ優しさ
捨てきれぬ優しさ
Intermissione
ルイズたちの上空をシルフィードが飛ぶ。
タバサはじっとルイズたちを眺めていたが馬車に乗り込むのを確認し、シルフィードの頭を学院に向けさせた。
タバサはじっとルイズたちを眺めていたが馬車に乗り込むのを確認し、シルフィードの頭を学院に向けさせた。
「アンジェちゃんが心配なのね」
「…」
「…」
シルフィードがタバサに話しかけるもタバサは何も答えない。
タバサは一足早く学院に戻るのだった。
タバサは一足早く学院に戻るのだった。