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ソーサリー・ゼロ第二部-14

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二七四

 君は相手の警戒心を解くために名を名乗り目的を話そうとするが、そこにルイズがしゃしゃり出てくる。
 腰に手を当てて両脚をふんばり、野伏の首領の眼をじっと見据えて
「貴族相手に名乗らせたいのなら、そっちこそ先に名乗りなさい。そうすれば、名前も目的も話してあげるわ!」と言う。
 君はこれ以上事態をややこしくするなと言って、ルイズの肩をつかみ引き下がらせようとするが、彼女も意地を張る。
「戦場だろうとどこだろうと、貴族には貴族の礼儀ってものがあるのよ。『野蛮』な平民にはわからないでしょうけどね!」
 『野蛮』を強調した口ぶりからして、先刻の闘い――彼女の眼前で二人の人間を斬り殺した――の印象がよほど強烈だったのだろう。
 君たちふたりのやりとりを眺めていた首領格の男が、ふたたび口を開く。
「このアルビオンは我らの国だ。そなたらよそ者がまず名乗るべきであろう」
 口調とはうらはらに、男の射すくめるような視線は柔和なものへと変化する。
「だが、そちらの勇敢なレディに敬意を表して、私から名乗ろう」と言うと、
目深に被った頭巾を脱ぎ、覆面をずり下ろして素顔をあらわにする。
 君たちの目の前に立っているのは、端正な容貌の青年だ。
 野山を駆け巡る屈強な者たちの首領にはふさわしからぬ、白い肌と金色に輝くよく手入れされた髪をもち、
蒼穹のように澄んだ瞳からは深く鋭い知性が窺える。
「隊長、このような得体の知れぬ者どもに身分を明かすことは……」と言う野伏のひとりを片手で制し、
青年は穏やかな声で
「ウェールズと申す者だ。アルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官に任ぜられている」と言う。
「もっとも、艦隊といえども手元に残った艦はわずか数隻。それらの艦も非常時のために温存され、出撃を禁じられている状況だが。
司令長官も今やこうして、陸(おか)に上がって遊撃部隊を率いる身。空軍ならぬ『カラ軍』だ」と自嘲気味に笑う。
 青年の自己紹介を聞いた君は疑念を抱く。 
 彼は相当に有力な貴族のようだが、それでも空飛ぶ艦隊を率いる提督にしては、あまりに若すぎる。
 しかし、ウェールズと名乗る青年の態度は真剣そのものであり、冗談を言っているようには見えないし、そもそも、嘘をつくなら
もう少し説得力のある身分を名乗ることだろう。
「ウェールズ……空軍大将……も、もしやあなた様は!?」
 君とルイズの背後に立っていたギーシュが、頓狂な声をあげる。
「こ、こ、皇太子殿下……?」
「さよう、私はアルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」と言い、
青年は微笑む。
「あいにくと、証拠はこの≪風のルビー≫くらいしかないのだがね」と言い、
右薬指に嵌めた大粒の宝石が輝く指環を君たちに見せる。
 ルイズとギーシュはそれぞれ
「あれが王家伝来の秘宝……」
「おお、美しい……」と言って感嘆の息をもらすが、
君にはなんの感慨もない。
 そもそも、指環についている宝石は紅玉(ルビー)とは名ばかりで、水晶のように透明ではないか! 
 相手を皇太子と認めたルイズとギーシュは慌てて名を名乗り、それを聞いたウェールズは驚嘆して
「令名高きヴァリエール公爵家のご息女と、勇名を轟かせたグラモン元帥のご子息か!」と言う。
「トリステインの名家の子女であるそなたらが、血なまぐさい嵐の吹き荒れるこのアルビオンにどういうわけでやって来たのか、答えていただけるだろうな?」
「わたしたちは、リビングストン男爵に会うためにこの地に参りました」と、
ルイズが答える。
「しかし、男爵は叛徒どもの襲撃を受け、領地を追われてしまったとの噂を耳にいたしました。男爵の行方や安否について、
殿下よりなにかお聞かせいただくことはございませんでしょうか?」
「もうこれ以上、そなたらが旅を続ける必要はなくなったと申そう」と、
ウェールズは言う。
「リビングストン男爵は、敵に捕らわれ処刑された。一月ほど前のことだ」
 二五五へ。


二五五

 ウェールズの言葉を耳にし、君の視界は急に暗くなる。
 両脚から力が抜けその場にくずおれそうになるが、どうにかこらえることに成功する。
 この旅は無駄だったのだろうか?
「いかがした? 供の者よ」
 君のふらつく姿に気づいたウェールズが尋ねるが、君はなんでもないのでお気遣いなくと素っ気ない口調で答える。
「まだ、本当に死んだと決まったわけじゃないでしょ? それに、他にも方法があるかもしれないし」と言い、
ルイズが心配そうに君を見つめるが、君は気休めはよせと無愛想に言う。
 その言葉を聞いていつものように怒り出すかと見えたルイズだが、意外なことに、寂しげにうつむくとじっと押し黙ってしまう。
「そなたらがいかなる目的でリビングストン男爵を捜し求めたのか、詳しい話を聞かせていただきたいところだが、
ここは立ち話をするに適した場所ではないし、その時間もない」と言って、
ウェールズは周囲を見渡す。
 家々は一軒残らず炎と黒煙に包まれ、村人たちと傭兵どもの死体が転がる地獄めいた光景だ。
 この醜い内乱が起きなければ、彼らの誰ひとりとして、ここで死ぬことはなかったのだ。
 ウェールズの眼に深い悲しみの色が浮かぶが、君たちのほうに向き直ったときには、人の上に立つ者にふさわしい決然とした表情に戻っている。
「この者たちを――敵味方を問わず――埋葬してやりたいところだが、いつまた新手の凶漢どもが現れるやもしれぬ。
もうこれ以上、この村にぐずぐずしてはおれぬのだ。では、そなたたち三人、ラ・ヴァリエール嬢とド・グラモン殿、
お手数だが我らと一緒に来ていただけるな?」
 穏やかだが、有無を言わせぬ口調だ。
 三人目の人物である君の名前を呼ぶどころか尋ねようとさえしないのは、じつに王族らしい行動だと君は考える。
 高貴な王族が、一介の下賎な平民の名など知る必要もないのだ。
「あ、あの……どちらまで?」
 朝から変転めまぐるしい状況に投げ込まれてすっかりとまどってしまったルイズが、恐る恐るウェールズに問いかける。
「我らが秘密の拠点として使っている、とある岩屋だ」
 青年は答える。
「森の中を狐のように用心深く歩くことになるが、昼過ぎには着くことだろう」と言う。
 君たちはこの要望――むしろ命令だが!――に応えるほかないようだ。
 君は武器と装身具、背嚢(幸い、所持品は金貨一枚たりともなくなってはいない)を死体となった傭兵どもから取り戻しつつ考える。
 ウェールズたちから、リビングストン男爵について詳しい話を聞かねばならない。
 運がよければ、男爵は≪門≫を作る魔法の研究に関する覚え書きなどを遺しているかもしれないのだ。一一五へ。


一一五

 ウェールズ皇太子の率いる遊撃隊は直ちに出発して村を出ると、森林地帯の奥深くへと入っていく。
 彼らは間隔を開けて一列縦隊を作っているのだが、君たち三人はその列の中ほどの位置に加えられている。
 旅慣れた君はともかく、ルイズとギーシュは、腰の高さまで茂る藪を掻き分け、道なき道を歩まされることにうんざりしているようだが、
ふたりとも不満ひとつこぼさない。
 旅を始めてまだ四日しか経っていないが、温室育ちだったふたりの若き貴族は、ずいぶんと成長したようだ。 
 途中で、ウェールズ自らが申し訳なさそうに、君たち三人に目隠しをするよう――彼らは拠点の場所をよそ者に知られるわけにはいかぬのだ――
頼む一幕もあったが、それ以外にはとくに何事もなく、一行は草と石塊で巧妙に入り口の隠された岩屋へと到着する。
 そこはいくつもの松明(たいまつ)に照らされた広々とした洞窟であり、武器庫や食糧庫だけではなく、
蚕棚のような形をした寝台までもが設けられている。
「我らが隠れ家へようこそ。ここに脚を踏み入れた異国の者は、そなたらが初めてだ」とウェールズは言う。
「昼食が用意されるまで、しばし休まれよ」

 ルイズとギーシュが、ウェールズと彼の部下である四人の貴族とともに食事をとる一方、君は平民の兵士たちと肩を並べて食糧を口にする。
 互いに命を預けあう戦場においても貴族と平民が明確に区別して扱われる様子を眼にし、この世界の身分制度はじつに徹底したものなのだと
実感させられる。
 食事自体はパンや塩漬け肉、乾した果実などからなる満足のいくものであり、君は体力点二を得る。

 食事が終わると、ウェールズは君とルイズ――ギーシュは呼ばれなかった――に呼びかけ、洞窟の奥をカーテンで仕切った
個室らしき場所へと案内する。
 皇太子相手に無礼があってはならぬので、念のため君はデルフリンガーをギーシュに預け、ウェールズとルイズの後を追う。
 そこには簡素な椅子が三つ持ち込まれており、壁には小さなカンテラがひとつ掛かって、周囲を照らしている。
「さて、ここに居るのは我々だけだ。君たちがどういった目的でリビングストン男爵に会おうとしたのか、包み隠しなく教えてくれるだろうね?」
 椅子のひとつに腰掛けたウェールズは、人懐っこい笑顔を見せながら言う。
 ウェールズの口調が、一国の皇太子であり高位の軍人である人物とは思えぬ屈託のないものに変わったことに驚き、
君とルイズはぽかんと口を開く。
「こっちが本当の私だよ。部下や敵の前では、威厳のある指揮官になりきらなければならぬので口調も態度も変えているが、
あれがけっこう疲れるものでね。君たちのように曇りなきまっすぐな眼をした者が相手なら、下手な演技をせず本来の自分、
ウェールズ・テューダーをさらけ出してもよかろうと考えたのだ」
「こ、皇太子殿下のご信頼をいただき、恐悦至極に存じます!」
 ルイズは顔を紅潮させつつ一礼し、このアルビオンの地を訪れた事情を説明する。三へ。



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