あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロゼロ

牛よりも大きな巨体が鎮座していた。砂ぼこりが晴れると共にその姿がゆっくりと明らかになる。
人を丸呑みできそうな大きな口、骨をも噛み砕く頑丈な牙、振るうだけで大樹をなぎ倒す尻尾。
喉の奥から猛獣特有の太い声を鳴らした。
首を持ち上げ周りを見まわすと周囲に居た生徒はみな威圧され、一歩下がった。
「や……」
その巨体の前に居た少女、ルイズ・ド・フランソワーズは満面の笑顔を浮かべた。
「やったぁあ!」
普段はきつい視線で周りを威圧するように過ごしている彼女。
それが年相応の歓喜の声を上げたことで一部の生徒が珍しいものを見たように視線を向けた。
そんな視線はまるで眼中に無いようで、ルイズは巨大なモンスターに近寄った。
俗に言うオオトカゲ、いやココまでの巨大ではドラゴンの一種かもしれない。
何せ軽く人を数人乗せても平気そうな大きさなのだから。
今年の使い魔召喚儀式で最高の使い魔と思われていたミス・タバサの使い魔、スカイドラゴンとほぼ同じ大きさをしている。
翼は無いが、頑丈そうな鱗はドットレベルの魔法なら軽く弾き返しそうである。

近寄ってきたルイズに興味を持ったのか、ドラゴンは首を屈めてルイズの顔を覗き込む。
ルイズは自分に忠誠を持ったと判断し、そのままコントラクトサーヴァントを行った。
コントラクトサーヴァントも無事に終了。
そうするとあっけに取られていた生徒たちが騒ぎ始めた。
「そんなバカな」
「ゼロのルイズが?」
「でかいだけじゃないか?」
口々に何とか目の前の事実を否定しようと試みるが、それはルイズの虚栄心を満足させるだけだった。
ルイズは今、有頂天に居た。
入学してから彼女に与えられた言葉は蔑みと憐れみだけだった。それが今向けられているのは嫉妬交じりの羨望の視線なのである。
特に彼女が嬉しかった点はライバルであるキュルケの使い魔よりも高レベルの使い魔を喚んだ事だ。
キュルケの横に居るサラマンダーを見てルイズはニヤニヤと表情を隠さなかった。
それに気づいたキュルケは解散の声を聞くとさっさと校舎へ戻っていった。
(勝った)
とルイズは心の中で喜んだ。
いつも自分につっかかってくるキュルケが何も言わずに立ち去ったのである。
あまりの喜びにルイズは巨大なドラゴンの体を抱きしめた。
と言ってもあまりにサイズが違うためルイズが寄りかかっているようにしか見えないが。
「これから、よろしくね」
「グォウ……」
ルイズに話しかけられたドラゴンは否定とも肯定とも取れない鳴き声を発した。

次の日。
ルイズは人生において最高の目覚めだと感じていた。
窓の外が青空なのも世界が自分を祝福しているのだとさえ思えて、思わず歌いだしそうだ。
それと同時に自分の幸福、使い魔の姿を確認したくなったルイズは自らの使い魔に会いに行こうと考えた。
さすがにあんな巨体では自分の部屋に入れることができないので、そういった使い魔が眠る場所があるのである。
場所は馬屋の近く、基本的に食事の世話は使用人がする。馬の世話も使用人がするため機能的にそこに建っているのである。
意気揚々と服を脱ぐと制服に着替える。廊下に用意されている水で洗顔をすると宿舎の階段を降りた。
思わずスキップしそうな心を抑えて貴族らしく丁寧に歩く。だが明らかにその足取りは浮き足立っていて危なっかしい。
「おはよう、随分とご機嫌だねルイズ」
と一階のホール部で声をかけられる。そこに居たのはギーシュだった。
薔薇を口に咥え、その整った顔で笑顔を向けていた。
普段からゼロだの悪口を言う生徒の中にギーシュは居た、それが今日は他の女生徒と同じような対応をしている。
それをルイズはギーシュも自分を認めたのだと考えた。
「おはよう、ギーシュ。今日は最高の朝だわ」
「最高の使い魔を召喚したからかい?」
「そうよ、今なら魔法も成功させる自信があるわ!」
「そ、それは今後ゆっくりやっていけば良いんじゃないかな……」
ちょっとだけ顔を引きつらせるギーシュ、話題を変えるためさらに言葉を続ける。
「そんなことより、昨日のキミのアプローチ嬉しかったよ。どうだい、今度の虚無の日に遠乗りに行くと言うのは」
「……は?」
突然のギーシュの申し込みにルイズは言いづまる。
なんで急にデート、それよりも昨日って?
と言う疑問が頭の中を巡る。
「ぇえっと……確か貴方は今モンモランシーと付き合っているのよね」
「妬いているのかい、でも薔薇は皆の為にあるのさ、ボクも一緒さ」
「……」
どうにも会話が通じない。そもそも何かとんでもない勘違いが起こっているような気がしてならない。
「どうか顔を上げてくれないかい、君の可憐な顔が一瞬でも見れないのは残念でならない」
だがギーシュはルイズに考える暇を与えず、歯の浮くような台詞を続けている。

その、ややこしい状況にさらにもう一人加わってきた。
「おはよう、ギーシュ、ルイズ」
赤い髪を振り、使い魔のサラマンダーを連れて現れたのはキュルケであった。
「おはよ……」
「おはよう、今日も赤い髪が美しいね」
つい数秒前までルイズを口説いていたのに、他の女が現れたとたんそちらまで褒めるギーシュの節操のなさにルイズは不審な目を向けた。
モンモランシーの苦労がなんとなく理解できたようだ。
「あら、昨日の夜にあんなに言ったのに、まだ言い足りないの?」
「君の美貌を称えるなんて何万の言葉があっても足りな……ぇ、昨日の夜?」
それまで、まるで口を止めなかったギーシュが口を開けたまま固まった。
「あんなに情熱的に口説かれたのは久しぶりだったわ。それでいて手を出さないなんて意外だったけど」
「ちょ、ちょっと待ってくれたまえ……昨日ボクは何を言ったか教えてくれないかい」
目を白黒させ、ギーシュはキュルケに問いかける。
それに対してキュルケの口から出るのは恥ずかしい言葉の数々。
後半は捨てられた男が女に復縁を迫っているようにしか聞こえない内容になっていた。
「ギーシュ、あんた程ほどにしておかないとモンモランシーあたりに刺されるわよ」
とルイズが呆れたように言った。
それに対してギーシュは大慌てで否定する。
「待ってくれ、昨日は授業が終わった後はずっとベルダンディー、ボクの使い魔と一緒に居た。その後部屋に居たらルイズ、君が尋ねてきて……」
「待ちなさいよ、なに大嘘でっちあげてんのよ。私は昨日、誰の部屋にも行ってないわよ!」
「そんな、昨日ボクの部屋にやってきて『立派な使い魔を召喚して自信が付いたから告白する』って言ったじゃないか」
「誰がアンタみたいな浮気男に告白するのよ!」
「……どうなってんのコレ」
とキュルケが呟いた。
それを聞きたいのはルイズもギーシュも同じであったが。

「あ、おはようタバサ」
そこに現れたタバサに気づきキュルケが声をかける。
しかしタバサの様子がおかしい、いつも無表情である彼女が険しい顔をして歩いてきた。
「おはよう」
「どうしたの、何か暗いわよ」
と歯に絹をかけず話しかける。
だがタバサは気にもした様子も無く話を続けた。いつもの事なのだろう。
「キュルケ……貴女の気持ちは嬉しいけど、私は女性とは付き合えない」
「は?」
キュルケは目の前の友人が何を言っているのか分からなかった。
だが彼女が冗談を言うような性質でないのは知っている。
「タバサ、何のこと?」
「昨日の夜、私の部屋で『友達以上になりたい』って貴女が……」
さすがの事にいつもの余裕がなくなるキュルケ。

そこにマルコリヌが現れる
「タバサ、昨日は逃げてしまってゴメン。僕は、僕は君のことが好きだぁああああ!」
と一直線にタバサに飛びかかり、あっさり避けられて床を転がった。

さらにモンモランシーが現れてマルコリヌに近寄る。
「ごめんなさい、私には好きな人が居るから貴方とは付き合えないの」
「うぉおお、何だかよく分からないけど振られたぁああ!」
マルコリヌは号泣した。



どんどん現れる数珠繋ぎのような関係に、最初からその場にいたルイズは気づき始めていた。
これは誰かが誰かに告白し、告白された人が誰かに告白すると言う事を繰り返しているのだ。
しかし、そんな事をする意味も分からないし。そもそも告白した記憶が誰も無い。
だとすれば、体を奪うような魔法具が校内をうろついているのか。もしくは――

「なんの騒ぎじゃ、これは」
「学院長」
階段の上から今度は学院長が降りてきた。
「ぉお、ミス・フランソワーズ。良いところで会った、これを見てくれぬか?」
といつも咥えているパイプを差し出してきた。
首をかしげてルイズがそれを凝視すると。
ボン、と言う音と共にパイプがパーティーで使うクラッカーのように爆発した。
びっくり箱のようにパイプの先からバネが出て、その先端にピエロの顔がくっついている。
それに驚いたルイズは思わず後退し、足がもつれて尻餅をついた。
その光景が余程面白かったのか、学院長が大笑いをしていた。
その顔が歪み、白髪が徐々に桃色に、ゆったりとしたローブは短く、肌がどんどん若返っていく。
目の前で学院長は完全にルイズに変身した。
その光景に周囲に居た皆があっけに取られる。
尻餅をついているルイズと、大笑いしているルイズと二人のルイズが居るのである。

「だ、誰よあんた!」
ルイズが叫ぶ、笑いを堪えながらそいつは答えた。
「あ、あはは、わ、私は……ルイズよ」
「ふざけないで、ルイズは私よ! 貴方ね、昨日の夜に姿を変えて告白しまくった犯人は!」
危険な魔法具があるか、もうひとつは誰かが変身してイタズラをしてるとしか考えられなかった。
「あはは、は……さすがご主人様、当たりぃ!」
そう言うと同時にその姿は盛り上がり、口は裂け、尻尾が生えた。
肌は浅黒い土色に、鱗へと変わる。
そうして偽ルイズは巨大なドラゴンへと変わった。
「い、韻龍?!」
「いんりゅう? 違う違う、ボクは『シャドウゼロ』サ」
そう言うと今度は勢いよく小さくなり、人間サイズをさらに通り越して小さな人形の大きさになった。
真っ黒なヌイグルミのようになった。顔らしき部分に緑色の部位がある。
全体的に半透明でゼリー状のようだ。
「ごシュジン様はボクがランドドラゴンに変身してるトキに召喚しタンだよ」
その言葉にルイズが考えた事は『ドラゴンよりもレアな使い魔ではないか』と言う事だった。
つまり喜べば良いのか、それともイタズラを怒れば良いのか一瞬迷ったのである。
「きゅるきゅる、それじゃあちょっと散歩してくるのね」
迷ってる間にシャドウゼロはタバサのスカイドラゴンに変身するとマルコリヌをふっ飛ばし、入り口の一部を破壊して、空へと飛び去った。
その怒涛の展開に誰も付いていけず、唯一冷静だったタバサが言った。
「良いの? 逃げたけど」
「あ、あの馬鹿ドラゴンっっ!!」
慌てて飛び出し走っていくルイズ、どう考えても追いつけるはずが無いのだが。その場も誰もがソレに対して忠告する気が無かった。
全員の気持ちはひとつだった
(疲れた……)



その後、ルイズとシャドウゼロの追いかけっこは数年に続くことになった。
彼らの通った後は人間関係がぎくしゃくしたり、逆に長年のわだかまりが解けたり。
モンスターが街道を大行進したり、村々を荒らすモンスターの死骸が大量に転がったり。
さらにはアルビオンで起こった内乱、両者の内情を引っ掻き回して疲弊させたりした。
後の歴史には歴史上最悪の愉快犯テロリストとして語り継がれることになる。

――完――

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