あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

KNIGHT-ZERO ep06


                だけど…大好きだったな……


                                     伊藤誠





ルイズは苦悩していた

幼い頃を一緒に過ごした旧友であり、敬愛するトリスティン王女であるアンリエッタは婚姻を控えていた
ルイズは学院を訪れたアンリエッタから、誓いの場で祝詞を詠み上げる大役を仰せつかってしまったのだ
祝詞の文言は詠み手であるルイズが草案する慣わし、しかし彼女は詩の素養にはあまり恵まれなかった

学院の宝物庫にある始祖ブリミルの祈祷書がルイズに預けられた、中は白紙で何ひとつ文字が書いてない
製本職人によって数多く複製された祈祷書の内のひとつで、婚姻の儀式における小道具に過ぎないらしい
しきたりに従ってルイズの指に嵌められた宝石、この水のルビーの指輪の方がよほど価値のあるものだった

アンリエッタの結婚は多分に王家の思惑の混じったものだったが、それについては深く考えないようにした
姻戚を結ぶこともまた外交の手段だったこの時代、国家のための結婚はとても名誉あることとされていた

ルイズは学院の近隣にある草原で始祖の祈祷書を閉じると、KITTのドア下部にある物入れにしまった
公式資料に多いA4ファイルに合わせ設計したドアポケットは、この祈祷書の為に誂えたかのようだった
ひとつため息をついたルイズは目をこすり、KITTのドライヴァーズシートを倒して伸びをする
KITTに助言を頼んでみたが、「その神に帰依していない私には関与できません」と、釣れない返事

傾けたKITTのドライヴァーズシートに寝転がりながらドアポケットから出した祈祷書をもう一度開く
白紙でも眺めていれば何か思いつくんじゃないか、と思い、青いルビーの指輪が輝く左手でページを繰る
ルイズが開いた瞬間に何か文字が浮かび、アンリエッタから贈られた指輪の青い石が光ったように見えた
きっと目が疲れているんだろう、と思ったルイズは、祈祷書を閉じて再びドアポケットに放り込むと
ルイズにとってのお気に入りの時間である、静かな草原でのKITTとの昼寝を楽しむことにした

KITTはルイズが祈祷書を開いた時の奇妙なエネルギー反応について彼女に報告しようと思ったが
シートに頬をすりよせながら眠るルイズの幸せそうな寝顔を見ている内に、その案は却下された





ルイズとシエスタ、KITTを巡っての二人の女の意地をかけた鞘当てと諍いは未だに続いていた

かつてKITTがシエスタと密会?していた夜の時間を、KITTを部屋に持ち込んで一緒に寝る事で
独占していた思っていたルイズは、自分が授業を受けている昼間にKITTとシエスタが会ってる事実を
学院の昼休みに食堂で給仕をするシエスタ自身の口から聞いた時、怒りの余り「かはっ」と息を吐いた

「KITTさん、わたしのひい爺さまと同じ世界から来たんですって、それでわたしの午前の休み時間に
わざわざわたしの所まで会いにきてくれたんです、わたしにKITTさんの故郷の愛の歌を聞かせたいと」

シエスタのその言葉にもだいぶ誇張があった、彼女もまた背中にKITTへの独占欲の炎を燃やしていた

KITTは内部のメモリーに数曲入っていた日本の歌について、シエスタに幾つかの質問をしたいと思い
日本語など判る訳ないのにそのリズムを何度も聞きたがる彼女の求めに応じて日参していただけだった


ただ、雨の中でシエスタと聞いた「天城越え」を自分のメモリーから消す事は決して無いだろうと思った


マルトー親父の計らいでメイドの仕事を午後に集中させる予定を組んだシエスタは、ルイズの授業時間と
重なるくらいの午前休みを貰っていて、その時間にしばしばKITTとのドライブを楽しんでるらしい


ルイズは自室に帰ると、激情に駆られて金切り声を上げながらKITTのドアをガンガン蹴りまくった

「ルイズ、おやめなさい、私にこんな真似をしてもあなたの名誉と靴裏を無駄に減らすだけです」

慇懃な物言いに余計腹がたったルイズは、攻撃を蹴りから拳に切り替えてKITTのボンネットを
ゴンゴンと叩いていたが、手の痛みに何だか悲しくっなたルイズはKITTの前で泣き出してしまった


「KITTはなんでわたし以外の女にプレゼントあげるの?なんでわたし以外の女に優しくするの?
あんたはわたしの使い魔でしょ?わたしだけ見るの!わたしだけを乗せるの!嫌い・・・だいっきらい!」




KITTはただ泣くだけのルイズを前に成す術なく困り果てた、かつてのパートナーであったマイケルに
心の中で助けを求めた、女性の誘惑に弱いマイケルが得意げに語ったアメリカ人らしい単純な口説き方

女の機嫌を直すのは、プレゼントともう一つ、後者に関してはKITTの体では不可能な事だったので
KITTは前者の方法を選んだ、ケンカに効く薬、とても単純で、そして投与のさじ加減の難しい物

「ルイズ、あなたにこの装備を教えるのはもう少し先と思っていましたが、少し予定を早める事にします」

KITTはコントロールパネルの右下にある、組成分析装置を兼ねた引き出し状のボックスを開けた
中には兵隊が腰に巻き、銃や剣を吊る革ベルトをうんと小さくしたような物が入っていた、黒く柔らかい

「ルイズ、あなたにこれをあげます、そろそろあなたはこれを使うようになってもいい頃でしょう」

黒い合成樹脂のリストバンド、ナイト財団の研究所がカシオ社との協力で開発したKITTの付属装備
初期Gショックに似た外観、マイケルとの活動中に欠点だった筐体強度と通信距離を大幅に改良されていた

「これは・・・・・・腕輪?・・・なんか柔らかいのに硬い・・・ヘンなの・・・時計?・・・腕輪に時計がついてるわ」

懐中時計の存在するこの世界では、回転盤で時刻を表す機械式のデジタル表示時計も既に作られていた
それは時計職人の腕を誇示する見世物だったが、ルイズは幼い時に訪れた王都でそれを見た事があった

「時計は機能の一部、それはコミュニケーター・リンクです、離れていても私と相互の通信が出来ます」


今度はシエスタがそれを部屋の戸口からこっそり見ていた、無遠慮にルイズの部屋に駆け込んでくる

「あーっ!ミス・ヴァリエールずるいです!、KITTさん!わたし以外の女にプレゼントなんてひどい!
あの素敵な夜に、私がマイケルと同じ魂を感じるのはあなただけ、って言ってくれたじゃないですか!」

早速そのコミュニケーター・リンクを手首に巻いたルイズは、シエスタに一歩も引かず薄い胸を突き出す

「何よ!KITTはわたしの使い魔よ!夜は一緒に寝てるの!色々してんのよ!心だって通じてるの!」
「わ・・・わたしだって!・・・・・・その・・・怒んないでくださいよ・・・・・・舌、入れました・・・排気管に・・・」

ルイズは赤面した、今すぐ同じことをKITTにしてやりたかったが、それだと負けを認めたようになる
シエスタも赤面した、私はいやらしい女かも、でも"敵"はもっといやらしいことをしてるかもしれない

それぞれがお互いに向けていた敵意を、くわばらくわばらとばかりに沈黙していたKITTに向けた

「KITT!」「KITTさん!」

二人は声を合わせて詰め寄った

「「ハッキリして!」」

「え・・・・・・それは……ルイズとは契約を交わし・・・シエスタさんには優しくしてもらい・・・その・・・私は・・・」




赤く光るフロント・インジケーターは、人工知能の優柔不断な心を表すかのように左右に揺れていた


新着情報

取得中です。