「アンジェ、あのステアー何とかっていう鉄砲あったでしょ? あれだして」
ルイズは部屋に戻るなりアンジェリカに向かってそう言った。
「ルイズさん、弾がありませんよ?」
ステアーAUGの入ったヴィオラのケースを出しながらアンジェリカはそう言う。
「弾ならこの間買ってきたじゃない。ほら、デルフリンガーだっけ? あれと一緒に買ったわよ」
ルイズはアンジェリカに以前武器屋で購入した弾と火薬を手渡した。だがアンジェリカはそれを見て首を傾げる。
「これは使えませんよ?」
アンジェリカはルイズに弾と火薬を突き返した。
「え? でも鉄砲の弾ってこれじゃないの?」
ではどのような弾が必要かとルイズはアンジェリカに尋ねる。
「薬莢に入ってるやつです。ルイズさん、知らないのですか?」
「薬莢?」
「薬莢?」
ルイズはアンジェリカの言っている単語の意味が理解できないでいた。
「ねえ、どんなのがいいの? 見せて頂戴」
ルイズの問いにアンジェリカは困ったような顔を見せる。それもその筈、AUGの弾は全て撃ちつくし、薬莢もすべて捨ててしまったからだ。
どうしよかとしばらく悩むアンジェリカ。だが彼女はあることを思い出した。
どうしよかとしばらく悩むアンジェリカ。だが彼女はあることを思い出した。
「ルイズさん。M16はありますか?」
ルイズはアンジェリカに言われるままにM16を手渡す。
M16を受け取ったアンジェリカはマガジンを取り外すと弾を一発取り出しルイズに渡した。
M16を受け取ったアンジェリカはマガジンを取り外すと弾を一発取り出しルイズに渡した。
「AUGの弾はこんな感じです」
ルイズは物珍しくそれを繁々と眺めた。
「アンジェ、これを使えばいいじゃないの?」
オスマンもこの鉄砲……M16を使っていいといっていたことを思い出し、ルイズはさも当然のごとくそう言ったのだ。
「ルイズさん、規格がちょっと違うので……使えないこともないと思いますけど、暴発したりジャムったりするかもしれません」
アンジェリカの言ってることがよく分からないルイズ。
「ジャムとか何か知らないけど使えないならそれを使えばいいじゃない」
M16を指差すルイズだが何やらアンジェリカの顔が浮かないようだ。
どうしたのかと声をかけようとしたがドアをノックする音に遮られる。
どうしたのかと声をかけようとしたがドアをノックする音に遮られる。
「ルイズ、そろそろ行きましょう」
キュルケがドアの外から呼んでいる。
「アンジェ、いいからそれ持って行きましょう」
ルイズはアンジェリカの手を引いてドアを開いた。
「ルイズさん、何処に行くのですか?」
アンジェリカの問いを聞いたキュルケは少し呆れる。
「ルイズ、説明してなかったの?」
ルイズはムッとしながらもアンジェリカにフーケの捜索に行くと伝えた。
Zero ed una bambola ゼロと人形
ロングビルは馬車の前でルイズたちを待っていた。しばらく待っていると彼女達の姿が見えてきたが一人見知らぬ女の子を連れているのが目に付いた。
「ミス・ヴァリエール。その子は?」
わからなければ本人に聞いてみるのがいいとロングビルはルイズに尋ねる。
「この子は私の使い魔のアンジェリカです。アンジェ、挨拶なさい」
ルイズに言われてアンジェリカは小さく頭を下げた。
「始めまして。アンジェリカです」
使い魔というルイズの言葉に少し驚きはしたが、すぐにアンジェリカが噂になっていた平民の使い魔だと思い出した。
「ええ始めまして。わたくしはロングビルです。この学院長の秘書をしています」
ロングビルは頬を少し緩めアンジェリカの頭を優しくなでた。
「そろそろ行きません?」
キュルケがルイズたちを急かす。
「そうですね。ところでミス・ヴァリエール。まさかこの子を連れて行くつもりですか?」
馬車に乗り込もうとしていたルイズは答える。
「もちろんそのつもりですけど…どうかしましたか?」
ルイズの返答にロングビルは眉をひそめる。
「相手はあのフーケですよ? 危険な任務に連れて行くなんて…」
ロングビルはアンジェリカを置いていくことを薦めた。
「大丈夫ですよ。それに何かあってもオールド・オスマンが貸してくれた鉄砲がありますし…」
そういってルイズはM16を掲げた。それを見たロングビルは息を呑む。何せ彼女が盗もうとして盗めなかったものの一つだったからだ。
「では仕方がありませんね。なるべく危険が及ばないように努力しましょう」
内心しめたものと思いながらアンジェリカの同行を許可したロングビル。三人が馬車に乗り込んだのを確認してから馬車の手綱を取った。
目的地までの道中ルイズたちはロングビルを含め雑談に興じる。
しかしアンジェリカは始終黙っていたままだった。
ルイズはそんなアンジェリカの様子にようやく気付いた。
しかしアンジェリカは始終黙っていたままだった。
ルイズはそんなアンジェリカの様子にようやく気付いた。
「アンジェ、調子悪いの?」
ルイズはアンジェリカの顔を覗き込む。
「いえ…大丈夫です」
いつもと変わらない調子で言葉を返した。
「ミス・ロングビル。後どれくらいで着きますか?」
ロングビルは前を向いたままルイズに答える。
「もうすぐです」
馬車は鬱蒼とした森に入って行く。辺りは昼間だというのに薄暗く気味が悪い。
唐突にロングビルは馬車を止めた。
唐突にロングビルは馬車を止めた。
「あら? 目的地はまだでしょ」
キュルケはロングビルに聞く。
「ええ。ここからもう少し行った先に廃屋があります。ここからは徒歩で行きましょう」
一向は少し先にある廃屋を目指して歩いて行く。三人は先に廃屋を目視できるところに着いたのだがアンジェリカが少し遅れている。
「アンジェリカさん、大丈夫ですか?」
少しふらつきながらも追いついたアンジェリカだったが顔色が悪い。
「アンジェちゃん大丈夫? 馬車に酔ったのかしらね」
キュルケはアンジェリカを木の根元に座らせる。
「ミス・ロングビル。あの廃屋にフーケがいるのですか?」
ルイズはアンジェリカに構うことなくロングビルに情報を再確認する。
「ええ、あの廃屋に逃げ込んだということです」
ロングビルの言葉を聞いたルイズは手に持つ杖に力が入る。
「あの廃屋に行ってフーケを捕まえてきます」
ルイズはそう言葉を残すと廃屋へ走っていった。
「ちょっとルイズ! 待ちなさい! あ、ミス・ロングビル、アンジェちゃんを頼みますわ」
キュルケもルイズを追って行き、その場にアンジェリカとロングビルが取り残された。
本来ならロングビルはルイズたちを追うべきなのだが彼女の正体は土くれのフーケ。願ってもいないチャンスだった。ロングビル、いや土くれのフーケは笑みを浮かべる。
本来ならロングビルはルイズたちを追うべきなのだが彼女の正体は土くれのフーケ。願ってもいないチャンスだった。ロングビル、いや土くれのフーケは笑みを浮かべる。
「アンジェリカさん。その鉄砲…M16だったかしら? 見せてもらえない?」
フーケは本心を悟られぬよう笑顔をアンジェリカに向ける。
そしてアンジェリカはそれを虚ろな目で見詰めた。
そしてアンジェリカはそれを虚ろな目で見詰めた。
Episodio 24
Alle profondita della foresta…
森の奥へ…
森の奥へ…
Intermissione
学院長室ではオスマンとコルベールが一人の生徒を待っていた。
コンコンというノックの音と共にタバサが部屋に入ってくる。
「おお、待っておったぞ。君に頼みがあるのじゃがいいかね?」
オスマンの問いにタバサは小さく口を開く。
「内容次第」
オスマンは話を続ける。
「先ほど土くれのフーケ捜索隊が出発した。メンバーは誰か知っておるかね?」
タバサは首を横に振る。
「メンバーはミス・ヴァリエールとその使い魔。そしてミス・ツエルプストーじゃ。ミス・ロングビルも一緒に行っておる」
名前を聞いたタバサの表情が険しくなる。
「それでじゃな、君の使い魔に乗って上空から彼女達を見守っていて欲しいんじゃ」
タバサには当然のことながら疑問に思う。
「何故?」
タバサの問いにはコルベールが答える。
「すまないが理由は教えられない」
タバサの顔がさらに険しくなった。
「もし彼女達が危なくなったら助けて欲しい」
理由もいわず虫のよい話だとコルベールは思う。
「わかった」
だがタバサはこの話を受け入れ部屋を後にしようとするのだ。オスマンはタバサの背中に向かって声をかける。
「スマンのう。報酬についてだが…」
「いらない」
「いらない」
オスマンの言葉を遮りタバサは言葉を吐き捨て、乱暴に扉を開けて部屋を出て行った。
「彼女には面倒をかけるのぅ」
「ええ、彼女の母親が大変なのに…」
「ええ、彼女の母親が大変なのに…」
オスマンとコルベールは呟いた。
「わしら大人は無力なものじゃな…」