あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと聖石-03


 ギーシュは怯えていた。
 目の前のゼロに、先ほどまで格下だと疑わなかった存在に。

 ルイズはしらけていた。
 試したいことの半分も消化しないうちにギーシュが杖を手放したから。

 杖を突きつける者と突きつけられる者の彼我が逆転した瞬間だった。





 ギーシュが去った直後、私は部屋に駆け込む。
 装飾された儀式用のきらびやかな杖、ヴァリエール家の家紋を象った杖を取り出す。
 アルテマの知識が教えてくれた大切な事項。

 ―――魔法とは杖によって発動するのではなく、
    武器や大気に篭った魔力を糧として自身を媒介にして放つもの―――

 その観点から引っ張り出したのがこの杖だ。
 どこかの霊木に水のメイジが精霊からもらった水で磨き、土のメイジが加工した銀を聖水で加護をした特注品。
 そりゃもう魔力ならいくらでも篭っている。
 ついでにマントも黒に赤い裏地の物を羽織る。

 よし、これで後方防御も40%プラス。
 魔法も20%防げる。
 制服とバレッタでHPもMPもバランスよく、状態異常も無効。
 ―――いけない、また変な思考が。

 装備品を整え、ヴェストリの広場へ。
 この姿を見た生徒達は後にこう語った。

「ゼロがゼロじゃなくなった瞬間」と。

「逃げずに来たのは誉めておこうか、『ゼロ』のルイズ」
「おあいにく様、逃げる理由が無いもの。ギーシュ・ド・グラモン」

 無粋に無粋で返したところで無粋の極みだ。

「もっとも、あなたは地べたを這い蹲る運命なのだけれどね」

 こちらはせめて、小粋に返そうではないか。

「こちらは武器として魔法を使わせてもらうよ、まぁ『ゼロ』は『ゼロ』なりに逃げ惑ってくれたまえ」

 そう言ってギーシュがワルキューレを召喚する。
 その数は1体、これで十分だと言わんばかりだ。
 呼び出された瞬間にこちらに駆け出してくるワルキューレ。
 その拳が私の眼前に迫ったとき、一つの魔法を発動させた。

 空振るワルキューレの拳。
 次の瞬間にはワルキューレの真後ろに立っていた。

「甘い、そして遅いわよ」

 ワルキューレが振り向きざまに裏拳を放つ。
 その攻撃もかすることなく私はワルキューレの真横に。
 矢継ぎ早に繰り出される攻撃を右に左に後ろにあるいは正面に『跳んで』回避する。


 ギーシュには悪夢のような光景だった。
 何しろルイズが消えたと思ったら次の瞬間には別な場所にいる。
 しかも、その距離がどんどんワルキューレに対して遠くなっているのである。
 いつこっちに現れてもおかしくない、そう思って二体目のワルキューレを防衛にまわすのはまともな判断だった。
 ルイズ以外の相手には。


 ギーシュがワルキューレの2体目を出したのを確認。
 こちらはテレポの実験を終了する。
 距離が離れると失敗するという説明だったが、今の状態なら100%跳べる。
 ある程度ギーシュに近づいた瞬間、詠唱を開始。
 使う魔法は三属性。
 まずは、目の前の防衛用に対して目標をセット。
 追いかけてくるワルキューレに対して思いっきり跳んで距離をとる。

「岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち。集いて赤き炎となれ! ファイア!」

 跳び終わった瞬間に詠唱終了。
 突然現れた炎にワルキューレはなすすべなく熔かされる。

 そのことに驚きながらもギーシュは防衛に1体、攻撃にもう1体を追加。
 これで3体。最大数は7だったはず。
 向かってくる2体に狙いを定め、詠唱。

「闇に生まれし精霊の吐息の、凍てつく風の刃に散れ! ブリザド!」

 突然出現した氷塊がワルキューレ2体を砕く。
 観客がどよめくが、気にしない。
 テレポで徐々に距離を詰める。

 ギーシュも近づけさせなければいいという精神で作り出せる限界数、7体のワルキューレを作成する。

 そこまで密集されるとやりたくなるのが人の性である。
 足を止めてワルキューレの一番前にいるやつに狙いをセット。
 さすがにあのアルテマは死ぬだろう。
 というわけで、

「虚栄の闇を払い、真実なる姿現せ。あるがままに! アルテマ!」

 若干威力を抑えたアルテマを放つ。
 威力は失敗魔法と同じくらい。
 それだけあれば十分だ。
 一撃で守りを固めていたワルキューレが吹き飛び、粉々になる。
 その爆煙が晴れる前にテレポでギーシュの後ろへ跳び、足払い。
 さらに正面に跳んで杖を突きつける。

 爆煙が晴れる。
 彼我関係が覆され、地面に這い蹲る形のギーシュに、杖を首に向けるルイズ。
 ギーシュの目は恐怖に怯えている。
 その恐怖で杖を手放している。
 誰かがギーシュの手元に目が行く前に詠唱を終了させる。

「残念ね、降参してくれればこんな目にあわずにすんだのに」
「ま、まい「もう遅い。まばゆき光彩を刃となして地を引き裂かん! サンダー!」

 ギーシュにどこからか落ちてきた雷が着弾。
 全身をこんがりとさせてギーシュは意識を失った。

 さすがにやりすぎを反省し、詠唱。

「清らかなる生命の風よ、失いし力とならん! ケアル!」

 ギーシュを緑色の光が包み、雷で焼け爛れた皮膚が再生する。
 相変わらず気絶したままだったが、これなら問題は無いだろう。

「それじゃあね、ギーシュ・ド・グラモン。今度はもっと腕を磨いてきなさい」

 そのままギーシュに背を向けてヴェストリの広場を後にした。

 遠見の鏡からオスマンとコルベールが決闘の様子を眺めていた。

「アレが、ヴァリエールが契約した聖石の力…」
「多分、あれはほんの一部分に過ぎんな。あの悪魔には程遠い」

 オスマンが遠見の鏡の発動を止め、空をにらむ。

「わし等も、覚悟せんといかんの。場合によっては殺さねばいかん」
「彼女を、ですか?」

 その言葉にオスマンは答えず、緊迫した空気だけが流れていた。

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