あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロと聖石-01


 私が召喚したものはたった一つの石だった。


 周囲からは『ゼロ』と囃し立てられ、私が再召喚の申請をしても監督の教師はそれを認めなかった。
 契約の儀式を済ませると、その石に一つの模様が刻まれる。
 ルーン文字とは違うその模様が、私の人生に影響を与えるなんて今の時点の私にはわからなかった。



 私は悔しくて、悔しくて、涙で枕を濡らした。
 私をゼロと罵る声が。
 今まで応援してくれた先生の期待を裏切ってしまったこと。
 なによりも、魔法が使えないこと。
 それら全てが悲しくて、涙を流した。



 石が、光を放った。



 寝てしまったのか、目を覚ますとそこは廃墟だった。
 いや、魔法陣の中に入った記憶がある。
 つまりここは現実、感覚も全てはっきりしている。
 ポケットの辺りが熱い。
 取り出してみると、あの石がほんのりと光を放っている。
 甲高い音を響かせながら光は私を導き出した。



 最初に異変に気が付いたのはメイドのシエスタだった。

 仕事が終わり、眠ろうかと思ったが女子寮の一室が光っていた。
 魔法を使った新しいランプかと思ったが、それは即座に否定できた。
 青い光など見たこと無かったから。
 すぐさま寮監の下へと走っていった。



 もともとは栄華を誇っていたのであろう廃墟は、王都を丸ごと入れてもお釣りがくる位の広さだ。
 おおよその測距で王都の端から端まで歩いた距離以上を歩いたからだ。
 それでも先は見えてこない。
 そう思って更に歩き進めると桟橋と思われる部分に出た。
 そこには、朽ち果てた飛行船が泊まっていた。



 寮監がオールド・オスマンほか優秀なメイジを集め、ルイズの部屋に突入する。
 床に、壁に、天井に広がる見たことも無い魔法陣。
 ルーンとも違う言語で書かれた文字は淡く光を放つ。
 見とれていたのは一瞬、すぐさま魔法陣の解析を始めた。

 朽ち果てた飛行船の上に立ち、辺りを見渡す。
 桟橋からは気が付かなかったが、辺りには無数の朽ちた飛行船が転がっていた。
 ああ、墓場なんだな。と理解した。
 この廃墟自体が死んだ都市、死してなおさまよう魂たちが住む死都なんだと。
 石が振るえ、私の手を離れて浮く。


 ―――聖石を持つものよ、我と契約を結べ
    汝の深き悲しみが我を呼び起こした
    さあ、我と契約を結べ


 石から聞こえる声が、私に問いかける。
 「……契約?」
 私は意志に問いかけてみる。


 ―――さすれば汝の魂は我が肉体と融合し、永遠の生を得ることができよう…


 石の回答は人間の欲望を解りやすく表現したものだ。
 だから、私は言った。言ってやった。

「そんなものは要らない。私はただ魔法を使えるようになりたいだけ」

 そう答えた瞬間、石はまばゆい光を放ち、周囲を包む。

 ―――我は聖天使アルテマ。清らかなる汝の魂に宿り、汝の願いを聞き届けよう

 強制ですか、かなり強引だなこの聖天使は。
 青い光が、アルテマの魂が私の体内に入り込む。
 そこで私の意識は途絶えた。







 魔法陣が光を強めた。
 オスマンが全員をかばう様に障壁を作り出し、有事に備える。
 光は激しく唸りを上げ、そして急に収まった。
 魔法陣はすでに消えうせ、魔法陣の中心、部屋の中央にルイズが倒れているだけだった。

 目が覚めると、医務室だった。
 先生の話によると昨日起こったことが原因で今日は休校。
 食事を済ませたら学長室まで来るようにといわれた。
 やはり、あれは夢なのだろうか? いや、アレは夢なんかじゃない。
 聖石は今もこの手の内に。
 そこで違和感に気が付く。


 毎日手入れを欠かしていない髪の毛が白く見える。
 いや、殆どはいつものピンク色なのだが、ちょうど一房分が白く染まっていた。
 そこの部分だけが光を強く反射して光っている。
 これは一大事、すぐさま部屋に戻る。
 化粧箱を引っ張り出し、リボンを取り出す。
 前髪は仕方が無いのでそのままにしてポニーテールに、白い部分はポニーに巻きつけるようにしてまとめる。
 即席だが何とか見栄えする姿にまとまった。
 と、そこでお腹が唸りを上げたので朝食にすることにした。



「つまり、その廃墟で君はその石、聖石と契約をしたんじゃな?」
「はい、始祖の名に誓って嘘は言っておりません」

 オールド・オスマンから発せられるプレッシャーに満ちた発言に嘘偽り無く答える。
 普段はミス・ロングビルのスカートを覗き見することしか興味が無いようなスケベ爺さんという認識を改めよう。
 ここで嘘をついたら殺す、口調はともかく目がそう言っている。

「あい分かった、お疲れ様じゃのミス・ルイズ」
「それでは、失礼します」

 そのまま退出し、裏庭に向かう。
 自室は検査の真っ最中で、契約で思い出したことがあったからだ。
 あの夢の通りなら魔法が使えるかもしれない。
 だけど失敗は怖い。
 そうなると必然的に裏庭での練習になるわけで―――




 結論から言っておこう。
 全身煤けています。
 あたりは破壊の限りを尽くしたかのごとく地面が抉れている。
 四系統はおろか、コモンですら失敗の嵐。
 ああ、もう! せめて空ぐらいは飛びたいとか思った私が馬鹿だった!

 ―――唱えるべき言葉が違う
    自身の内から湧き出る言葉を紡げ―――

 不意に聖石の声、いや、アルテマの声が響く。
 その通りに意識を自身に埋没させる。

「慈悲に満ちた大地よ、つなぎとめる手を緩めたまえ…」

 周囲に魔力が満ち、私の足元に空気が集まる。

「レビテト!」

 空気が圧を持ち、体が持ち上がる。
 大よそ30サントくらい。

 …………これ、レビテーションとしては失敗の部類に入るんじゃないだろうか?

 一抹の不安を残しつつ、使える魔法を確認するために自身の意識に埋没して魔法を確かめる。

 火を発生―――ファイア
 稲妻を発生―――サンダー
 氷を発生―――ブリザド
 障壁を発生―――ウォールかマバリア
 傷の治療―――ケアル
 そして、対象の破壊―――アルテマ

 今のところ浮かんできた魔法はこれだけ。
 さすがに物理的・魔法的障壁に加え、継続治療に気絶時の強制意識回復を発生させるマバリアが一番魔力を消費する。
 一番破壊力があってアルテマだろう。
 利便性では系統魔法に近い四つ、いやケアルは系統じゃないから3つが一番良いかもしれない。
 ただ、問題が有るとすれば―――

「完全自動追尾は嬉しいけど即効性が無いのよね…」

 ある意味致命的な問題だった。
 指定範囲に魔法を発動させたり、動いている目標に対し追尾発動する。
 しかし、即座に作り出せるフレイムボールなどと違い、詠唱にどうしても時間がかかる。
 早口の練習でもしようかな?
 そう思いつつ、寮へ歩き始めた。いつもより30サント高い目線のまま。
 こうして休校の一日は過ぎていくのだった。

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