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KNIGHT-ZERO ep03


           エッチな犯罪、許しません!

           「魔界天使ジブリール」より




学院の中庭に椅子やテーブルを並べたオープンカフェのようなテラスを、KITTが静かに進んでいた
ルイズが召喚したこの奇怪な使い魔は、他の召喚獣同様に学内の大部分で行動の自由を与えられていて
KITTはこの新しい居場所に精通するため、生徒の邪魔にならぬよう慎重に学院内の各所を回っていた

その召喚儀式以来、彼女が人目憚らず行動を共にするこの奇怪な使い魔の存在を多くの生徒は知っていたが
生徒達はKITTを普通の召喚魔より劣等な正体不明のゲテモノとして、一様に「見て見ぬふり」をした

訝しげな生徒達を縫ってゆっくりと進むKITTは、進路監視スキャナーが障害物を感知したため停止した
小さなガラス瓶、周囲を常時撮影しているカメラの画像をリプレイし、ある生徒が落とした物だと知った
個体認識システムで対象のデータを検索する、由緒正しい元帥の子息、成績劣等、対人関係に少々難あり

テラスの椅子に座る落とし主はルイズの同級生ギーシュ・ド・グラモン、何人かの女生徒に囲まれていた
女ったらしのギーシュ、デートの掛け持ちがバレて女達に詰めよられる風景はいつもの事だった

KITTは外部スピーカーを起動させ、その対象が聞き漏らさず、かつ耳障りでない音量に調整した

「ギーシュ様、あなたのポケットから瓶が落ちましたよ、内容物はアルコール97%、麝香2%、その他
香水と呼ばれる液体であると推測されます、清掃する方々の手を煩わせる前に回収する事をお勧めします」

ギーシュを囲んでいた女子生徒の一人が騒ぎ始めた、どうも原因はKITTが発見した香水の瓶らしい

「その瓶はモンモランシー様の香水ですわね!やっぱり二人はお付き合いをしてらっしゃったのね!」
「待ってくれケティ!誤解だ!僕の心に居るのは君だけだ、この香水はただの預かり物で・・・」

離れた席に座っていた巻き髪の少女が足音荒くギーシュに近づき、熱いお茶を頭からかけて歩き去った

「モンモランシー!僕の愛しのモンモランシー!ケティとはロシェールの森に遠乗りに行っただけで・・・」

一斉に離れていく女生徒達に放置されたギーシュは、この人語を発する黒い機械を恨めしげに睨む

「そこの使い魔、君が不用意に香水を見つけたせいで私と淑女達の名誉が損なわれた、どうしてくれるんだ」

KITTは小声でぼやいた、ギーシュにはフロントの赤い光が発するヒュンヒュンという音のみ聞こえる

「・・・ロシェール森林地帯など私とルイズなら16分で往復できます、朝食前の散歩にもなりません・・・」

以前のパートナーであるマイケルとの活動で、ハイスクールが事件の現場となった事は何度かあったが
アメリカが早々に捨てた貴族文化を残すこの世界の学生もまた、祖国と同じような青春を送っているらしい
KITTにとって若者の未熟さと非合理は、己の論理的なプログラムより劣った関わる価値の無い物だった

しかし、ここで「ツカイマ」なる物をしているKITTの知能回路はトラブルを回避する方法を模索した
他者との関係を円滑に保つため、そしてウィルトン・ナイトがこの機械に託した「人間との対等」を守るため

「貴殿の人間関係に関して不利益になりうる情報を公表した事については心より謝罪いたします
しかし貴殿は私を責めるより、まずは自分自身の周辺の人間への不誠実について猛省すべきでしょう」


実はKITTの人工知能は人間の感情における機敏の『穏便な解決』をあまり得意としていなかった





KITTの青臭い正論にその場に居た多くの年若い生徒達が頷いた、この件の当事者である一人を除いて

周囲の同級生からの無言の同意に居たたまれなくなったギーシュは、KITTの前に立ち唾を飛ばした

「どうやら貴様には貴族への敬意というものを教える必要がありそうだ・・・決闘だ!私と決闘をしろ!」

「私はそういったつまらぬ遊興を行うために存在し稼動しているわけではありません、お断りします」

勝った気になったギーシュは周りの目を意識しながら、芝居っ気たっぷりにKITTをに指を突きつける

「逃げるのか卑怯者よ、やはりゼロのルイズは使い魔までも出来そこないのウマ無し馬車なのか」

バックしてその場を離れようとしたKITTの動きが止まる、ヒュンヒュン・・・と作動音が響いた

KITTはウィルトン・ナイトがその夢と残り少ない生命を注ぎ込んだ自分自身の体を誇りに思っていた
少なくともKITTの故郷で脅迫罪に抵触する発言は、犯罪を憎むナイト財団の一員として看過できない
誤った認識は正す必要がある、主人たるルイズがこの軽慮な男に貶められた事にも、ついでに腹が立った

「決闘は野蛮で前時代的な解決方法です、しかし我々は場所を変え冷静に話し合う必要があるでしょう」

ギーシュとKITTは連れ立ってヴェストリの庭に出た、生徒達が見守る中、広い庭の中心で正対する

騒ぎを聞き駆けつけたルイズとキュルケが、決闘は禁止されているとギーシュに抗議するが、彼は

「貴族が相手でないのならその限りにあらずだ、これは平民ですらない馬車の紛い物ではないか」

止めようと前に足を踏み出す二人を制するように、KITTは平静を僅かも乱さぬ声で返答する

「私に蹴りや拳や、剣を叩きつけて貴方の怒りが治まるなら、そうしなさい、若いギーシュ君」

その言葉で顔に朱の差したギーシュは、胸に差していたバラの造花を掲げると、呪文を詠唱した
バラの花びらが散り、一枚一枚の花びらはゴーレムと呼ばれる操り人形、青銅の女戦士となった

「行け!わたしの戦乙女達よ!わたしの名誉を汚したこの物体に礼儀というものを叩きこんでやれ!」

7体の青銅人形はめいめいが剣や大槌などの武器を持ち、KITTを取り囲むと一斉に撃ちつけ始めた
その一方的な破壊行為らしき物は、その実行者の自称する名誉とか礼儀とかとはほど遠い有様だった




KITTは青銅のゴーレムに滅多打ちにされていた、その様子を見たギーシュは哀れむように笑うと
造花を振り、青銅の剣を実体化させた、KITTの故郷では不要な携帯を法で禁じられた長いサーベル

「使い魔よ、まだ戦う意思あらばこの剣を取りたまえ、平民が貴族にせめて一矢報いようと磨いた剣だ」

体を張って止めようとするルイズをキュルケが後ろから抑える、ルイズは「KITT!」と悲鳴を上げた

KITTは青銅人形に囲まれ、武器を叩きつけられながら、いつもと何ら変わらぬ口調で言葉を発した

「私は人間を傷つけるようプログラムされていません、しかし目の前に犯罪の脅威が存在するならば・・・」

グッドイヤーのタイヤが白煙を吐いた瞬間、KITTの前に立っていた2体のゴーレムが吹っ飛ばされた
高く撥ね上げられた青銅人形の体は粘土のように千切れ飛び、2体分の瓦礫となって地に叩きつけられる

「私は自らの機動システム及びその帰属する共同体を犯罪から守るため、実力をもって脅威を排除します」

蹴飛ばされたように加速したKITTが土を巻き上げてターン、後ろのフェンダーでゴーレムを撥ねる
KITTの後部が白光を発したと同時に、後ろ向きに急発進したKITTのリアバンパーでもう一体
撥ね飛ばされたゴーレムが別のゴーレムに激突し、イビツな青銅のひと塊となってその動きを止める
そのまま後進をしたKITTは「ブートレッグ」と言われるバックターンで2体のゴーレムを宙に舞わせた

時間にして5秒にも満たぬ内に7体のゴーレムを破壊し尽くしたKITTはギーシュに向けて急発進する
地面に突き立てていた青銅の剣がひん曲がって跳ね飛びギーシュの隣に刺さる、ギーシュは腰を抜かした
目を固く閉じたギーシュの体を強力なエネルギーが突進する風圧が襲う、恐る恐る開けた目に映ったのは
自分の体から5ミリほどの位置で停止したKITTの、左右に動く赤いフロント・インジケーターだった


「ギーシュ・ド・グラモン!貴方を器物破損及び連邦武器取締法違反の現行犯で逮捕します」




ギーシュには理解できない言葉だったが、その語調には正義を信じそれを行う者が持つ威厳を感じさせた
彼は肩を落とし、バラの造花を投げ捨てた、戦意を喪失したギーシュはKITTに力なく述べる

「・・・・・・まいった・・・・・・」

KITTはしばらく赤い光が往復する音を響かせていたが、やがて車体を静かに後退させた

「この世界にはFBIもATFも存在しないようですね、私には私人逮捕権が無い、釈放しましょう」


気絶したギーシュが倒れ、生徒達が喝采の声をあげる中、ただ一人顔色を青くしたルイズが跳び出す

ルイズはKITTに駆け寄った、しかし青銅のゴーレムの持つ剣や槌、大斧で袋叩きにされたKITTの
その漆黒の体には傷ひとつなく、焼き上げた青磁のような肌は召喚直後と変わらぬ光沢を保っていた

「私のボディは分子結合殻で守られています、この世界のいかなる物も私を傷つけることは出来ません」


異世界から来た、決して傷つかない『自動車』、ルイズは畏怖よりも底知れぬ心強さで胸が一杯になった

「心配させるんじゃないわよぉ!ご主人様に無断で何してんのよぉ!わたしのKITT!あんた、凄いわ!」

黒いボディを平手でバンバンと叩く「痛いです、ルイズ」、ルイズはボンネットの上で腹を抱えて笑った



・・・・・・・・・これは・・・・・・わたしの・・・・・・使い魔・・・・・・・・・


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