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KNIGHT-ZERO ep02


ロボット工学三原則


第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。



                          アイザック・アジモフ「われはロボット」より









「はい、ルイズ、ブレーキを踏みながらセレクターをPからNへ、一息置いてDに入れてください
NからDに動かす時にはロックボタンから指を離してくださいね、シフトミスの元になりますから」


「うっさいわね!あんたを早駆けさせる時はこの棒を『1』ってのにブチこんで『あくせる』を踏んづければ
いいんでしょ!んで止まる時は左足でこの『ぶれーき』って板を力いっぱい蹴る!それで充分じゃないの!」




異世界の昼下がり

トリスティン魔法学院、標高が高く冷涼で快適な高原に設けられた貴族子女のための全寮制学院

授業を終えたルイズと、彼女が召喚し使い魔としての契約を交わした、言葉を話す異世界の機械KITTは
学院の敷地がある高原から街や王都とは反対方向に20リーグほどの、人里離れた広大で平坦な草地に居た

その一帯の山々を所有する公爵が趣味の牧羊に励み、公爵の病没以来長らく放置されている広い牧草地

KITTの居た異世界の基準で10キロ四方の平坦な草地が、ルイズがKITTを乗りこなす練習場だった


ルイズが異世界から不思議な機械を召喚してから数日、彼女はその機械の『調教』に傾注していた
ヴァリエール家に居た幼少の頃から親の目を盗んで屋敷の馬に跨り、馬車を操っていたルイズにとっても
その奇妙なウマ無し馬車の『操縦』は未知の物であり、また乗馬や竜乗りとは異なる興奮を与える物だった




人語を解す異世界のウマ無し馬車、感情を有する機械はルイズに自身の操作法を根気よく理論立てて教え
ルイズはもっぱら勘と力技、そして「習うより慣れろ」の経験則でその機械を乗りこなしていった
理論と経験則のバランス 少なくともそれに関しては荒馬の調教と同じようなものだとルイズは思った
きっと世界が違い、馬がそれに替わる別の物になっても、決して変わることのない事だと信じていた

「ひとつわかったわ、あんたは本当に異世界から来たってこと、馬車や船じゃないし、獣でもない」
飼い葉もニンジンも石炭もランプ油も、水や食事も、風石さえいらないなんて、どうかしてるわ」

「私は私の世界における最新の動力技術、水素核融合によって機動および制御のエネルギーを得ています
私の内部に封入された水素燃料が尽きるのは、あなたの孫の孫のその孫が老婆になったその後でしょう」

加硫合成ゴムの無いこの時代の馬車に装着されていた木製の転輪はこまめな手入れと交換が必要だったが
KITTが履いていたグッドイヤーのタイヤはいくら不整地や石畳で酷使しても磨耗や損傷とは無縁だった

その機械は単なる馬車ではなく、他に様々な能力を秘めていることにルイズは何となく気づいていたが
KITTは「それはあなたに然るべきが技量が身についた時、その都度お教えしましょう」とだけ言った
世界の各所に真贋入り混じり存在するという始祖ブリミルの祈祷書に似たものかな、とルイズは思った



KITTを操作する上で必要となる様々な数値をKITTの従来基準であるインチ・フィート表示にするか
ハルケギニア公用のサンチ・メイル表示に修正するかについてはKITTとルイズの間でひと悶着あったが
結局、目方はハルケギニアと同じながら名称は地球準拠であるメートル法ということで双方が妥協した

KITTの各種表示に用いられている異世界の文字、ルイズはアラビア数字の表記法則を一日で覚えた
アルファベットなる未知の文字で記された単語類については、使用頻度の多い順から紙に書いて記憶した
強引に自分を操るルイズの生真面目な一面はKITTにとって意外で、それは魅力ともいえるものだった



ルイズはもう一度KITTを急発進させる、後方確認などというものは彼女の思考回路には無かった

「ウィルトン・ナイト氏、私の操縦システムをオートマティックに設計してくれたことに感謝いたします
願わくば私を丁寧に扱うに足る技術と思慮を持った人間に恵まれる『幸運』を装備して欲しかった物です」

「始祖ブリミル・・・・・・こんな理屈っぽくてイヤな奴を私の使い魔として授けたことをお恨みします」




ルイズはこの機械の調教練習を切り上げる事に決め、草地から森の木々の間にKITTを乗り入れた
景色の綺麗な池のほとりを選び、教えられた通りにセレクターをPレンジに入れると、シートを倒した
さっきまで腹にしみる轟音を響かせていた水素核融合エンジンはV8のアイドリングに似た音を発する

ルイズの知らぬ低く力強い音、なんだか少しロマンチックな気分になったルイズはKITTに囁いた

「・・・・・・ねぇ・・・・・・なんか・・・お話しして・・・あんたの居たっていう異世界のことでもいいわ、聞いたげる」
「私が居た世界についての情報を開示することは、私と貴女、双方に悪影響を及ぼす可能性もあります」
「あ・・・あんたは使い魔のくせにお茶も入れられない、洗濯もできない、せめて話相手くらいしなさいよ!」

KITTは少しの間、「話相手」なる非常に高度な処理能力を要するプログラムに必要な演算をしていた

「それならば・・・私の世界の音楽でもお聞きになりますか?以前に私のパートナーだったマイケルは
とても素晴らしい方でしたが、私には不快な雑音にしか聞こえない音楽を嗜好する困った癖がありました
しかし貴女と私は趣味が合いそうです、私の世界が誇る至宝、後期バロック音楽をお楽しみ頂きましょう」

KITTの室内全体を振動させる独特のサウンドシステムが、バッハの管弦楽組曲を演奏し始める

聞いたことのない旋律、しかしその楽曲の持つ雰囲気は、ルイズが慣れ親しみ、飽きの来た物だった

ルイズはその「まいける」とかいう奴への奇妙な感情を覚え、KITTのコンソールを軽く拳でつつく

「・・・その・・・あんたが不快な雑音とかいう、異世界の音楽とやらを、聞いてやろうじゃないの」

KITTはボイス・インジケーターをひん曲げた口の形にして唸ると、内部のコンポを作動させた
そして、マイケルがとても好きだったローリング・ストーンズの初期ヒット曲を大音響でかけ始めた


ルイズは最初、その刺激の強い高音と重低音に耳を塞いだが、聞きなれた宮廷音楽では感じられぬ音に
次第に陶酔し、やがてKITTのダッシュボードを平手で叩き、桃色の髪を激しく振り、歌い始めた


学院周辺の野原を走り回る運転教習の時間と、その後の音楽とお喋りの時間はルイズの午後の日課となった


ルイズはKITTのメモリーにあるハードロックの中ではジャニス・ジョプリンを最も気に入った

メイジとして、ヴァリエール家の娘としての人生を開きつつあるルイズと、それに伴するKITTを
ジャニスが命を削り歌った「MOVE OVER」が包む、悲鳴を上げるように、救いを求めるように

自らのコンプレックスに苦しんだジャニスの人生とその最期は話さないほうがいい、KITTは思った


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