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ゼロのしもべ17



17話

トリスタニアの南。
山の中にラ・ロシェールという港町がある。
こういうと奇妙に思うだろうが、これは浮遊大陸アルビオンの周期経路近くにある町ゆえ、そこに行き交う人々が自然と集まりだし、
往復連絡船等が就航し始めたことに由来する。
桟橋には多くの船が係留され、大陸の接近を今かと待ちかねている。
そのラ・ロシェールから北東に70リーグばかり行った土地に、最近奇妙な噂があった。
土地の人間や旅人、商人が神隠しにあうのである。
もともと何もない荒れ地で、一種天然の要害と言ってよい地形だった。
そのため近道をしようとする人間ぐらいしか寄るものは居なかったが、こんな噂が立てばますます人気が失われる。
あるいは眼がうつろな集団がその土地に向かって行ったというけったいな噂もあった。
今では誰もその土地に近づこうとしなくなってしまった。
領主であるメイジが退治をしてやろうと意気込んで出かけたが何も出ず、どうせ噂に過ぎぬだろうと放っておかれた。
が、その後も行方不明者は出つづけた。
なぜならばそこには確かに魔物がいたのだから。
それは一見洞穴が多いだけのただの山に見える。
だが、良く見れば洞穴は人工的に掘りぬかれた穴であり、中から熱光線の銃口が侵入者に備えているのがわかるだろう。
近くには赤外線監視装置が近づくものに眼を光らせ、ネコの子一匹寄らせぬ鉄の防衛壁を築いていた。
その要塞は、この時代の科学技術では想像もつかぬまさに化け物であった。

「ご報告いたします!」
その要塞の奥深く、指令センター。そこに急いで入ってきた二人の男が、メインモニターに映る人影に叫ぶように言う。
改めて二人並び、姿勢を正す。
「報告します!」
どうやらモニターを通して会議でもしていたらしい。メインモニター横にいくつもあるサブモニターらしきものに映る人々が、2人に気づき
視線を来る。
この基地からその会議に参加していたのだろう、司令官らしき額に刺青を入れた男が顔を向ける。
「いったいなんだ」
「我々はGR計画について会議中だ。」
「それを妨げてまで報告すべき内容なのだろうな。」
この基地の司令官らしき刺青男をはじめ、サブモニターに映る人間が口々に詰問を始める。だがそれは、
「よい。何事だ。」
というメインモニターからの一言で停止する。ただそれだけで、全ての画面に緊張感が張り詰める。
「はっ。」
白仮面が一歩前に出る。いやな汗が仮面の下に浮き出ているようだ。
「バビル2世がとうとう現れました。」
ごおおお、と全ての画面がゆれたような衝撃。一瞬でその言葉を聞いた人間から血の気が引き、顔が引きつった。
「ま、間違いないのか!?」
「またもや赤の他人ではないのか?」
「間違いありません。」ざわつく画面を制するように、告げる白仮面。刺青男はいつの間にか下に降りて、2人の傍に来ている。
「それらしき人物が現れたとの報告を受けて、今回内密に調査を行ってきました。
その人物が3つのしもべをあやつったことから、結果バビル2世に間違いないという結論に達しました。これが証拠です。」
和服の男――ジャキが懐から小型のスパイカメラを取り出し、刺青男に渡す。急いでコンピューターにセットすると、現れたのはまぎれもない
バビル2世と3つのしもべ。
「とうとう、とうとう危惧していた日がやってきたか。」
メインモニターに映る男――長いあごひげを蓄え、ゆったりとした黒い服に身を包んだ男。顔の真ん中に×の字に傷があるものの、それは
まごうことなくバビル2世の宿敵ヨミであった。


ことの詳細を受け、完全にバビル2世対策会議へと姿を変えた会議は、依然として続いていた。
ただ白仮面は詳細情報の報告のため急ぎヨミの元へ向かったため、ジャギと司令官が報告を続けていた。
「以上がバビル2世出現についてのことのあらましです。」
学院にとつじょ出現したこと、フーケにゴーリキを提供したがバビル2世と3つのしもべにより破壊されたこと、情報漏えいを防ぐためフーケを
始末したこと、そしてバビル2世の前に敗北したことを包み隠さず報告するジャキ。
「すると、バビル2世はすでにわしに気づいてしまったというのか。」
「はっ。おそらくは始末が間に合わず、フーケの思考を読みとられたかと。」
「ならば何も殺すこともなかったな。バビル2世の怒りに火を注いでしまったかもしれん。」
恐縮するジャキ。奇妙なことだがバビル2世に敗れたことを批難する意見は誰の口からも発せられない。
「勝敗は兵家の常。」という認識が周知徹底されているからだ。
もちろんそれ以外の部分は厳しく追求される。それはヨミが元の世界にいたころからのルールであった。
「バビル2世が現れたとなると計画の見直しが必要かもしれませんな。」
「すくなくともV2号計画は早期実戦配備の必要があるだろう。」
「いや、ここは先手を打ってトリステインを先制攻撃してはどうか。」
「バビル2世の手が光っていたというのは?」
「残る3人の少女というのも気になるな。」


「ところで一つ訊きたいのだが。」ヨミが口を開く。全員に鋭い緊張が走る。一言も聞き逃すまいとするように神経を集中している。
「この青髪の少女とやらが、最後に死体となったところで燃やすよう促したとあるが、なぜ無事だったのだ?」
「それは、バビル2世が早くロプロスに乗るように促したからです。」
眼を見開き血相の変わるヨミ。こころなしか顔が青ざめている。
「な、なんだと!?」
叫ぶヨミに、いっせいに疑問符を浮かべる一同。
「それは本当か!?」
「は、はっ。たしかに、「今は学院に破壊の杖とフーケの正体を知らせることが先決」と言い残して消え去りました。」
うむむむむ、と脂汗を浮かべるヨミ。
「今すぐその基地の警戒レベルをレベル4にあげろ!重要データはすぐに消滅できるようにし、いざというときは全員を避難させる準備をす
るんだ!」
手を振り上げ司令官に指示をする。真意を掴み損ね、ぽかんとする司令官はじめ一同。
「ええい、わからぬか!」拳を握り締め立ち上がるヨミ。
「バビル2世がわざわざおまえに止めを刺さなかった意味を考えろ!」
「ま、まさか…」
「そのまさかだ!おそらくすでにバビル2世はその基地に侵入している――」
言うが終わるか否か、かき乱される画面。基地が大きく揺れ、爆発音が響き渡る。
異常を示すランプが点滅し、エマージェンシーコールが基地中に鳴り響く。
「動力系統に異常発生!」
「冷却装置が完全に破壊されています!」
「通路が落ちてきた瓦礫で塞がれています!何名か生き埋めになった模様!」
大混乱に陥る基地。あわてて指示を出す司令官。
「ま、まさか…。わしをあそこで殺さなかったのは…」
「そうだ。この基地まで案内をしてもらうためだ。」
そして爆発音と粉塵の中、バビル2世が姿を現したのであった。

「げぇっ!バビル2世!」
指令センターにいた人間の顔色が変わる。とっさに飛び掛った人間もいたが、あっという間に弾き飛ばされ気を失う。
「とうとう現れたな、バビル2世よ。」
長く登場を予感していたせいか、妙に落ち着き払って言う。
「まさかこの世界にまでキサマが現れるとはな。」
「それはこっちの言う台詞だ。」
「ふっふふ。どうやらワシときさまはどうあっても戦う運命にあるようだな。」
「この世界でもあいかわらず悪事をはたらいているようだな、ヨミ。」
すでに改造人間手術室は破壊させてもらった、と言いバビル2世はヨミを睨みつける。
「あのとき北極でおまえを信じて見逃してやったのがつくづく惜しまれる。そういえば、どうやったのか知らないが身体が元に戻ってい
るな。」
北極で全ての力を使い果たしたときのヨミは、エネルギーを使い果たし髪も抜け皮膚もたるんだ白髪の老人であった。
今のヨミは顔の傷こそ残っているものの目も治り、すっかり全盛期の姿に戻っている。
「この姿に戻るのに5年を有したのだ。だがもう以前の力は完全に戻った。今ならキサマにひけはとらぬぞ、バビル!」
「ご、5年だって!?」
驚愕するバビル。あの北極での戦いからまだ1週間足らずしか経っていないはずだ。
そんなバビルを不思議そうに見ていたヨミだったが、はっとした表情で、
「そういえばあれから5年後にしては様子が…」
「ちょっとー!」
その瞬間、指令センターに入って来たのは破壊の杖を抱えたルイズであった。
「なによこれ!一回しか使えないの!?」
後ろを見るとタバサとキュルケの2人も揃っているようだ。体中埃まみれでときおりせきこんでいる。
「しめた!」
隙がないためバビル2世に飛び掛れないでいたジャキがルイズめがけて襲い掛かる。
あっというまにルイズを拘束すると、司令官が銃を構えてルイズに突きつけた。
「動くな、バビル2世!動けばこの娘の命はないぞ!」
おお、と声を挙げるヨミ一同。これで圧倒的に有利になった。


「よくやったぞ。さあ、バビル。これでこちらが有利になったな。大人しくつかまってもらおうか。」
ヨミが画面の向こうで椅子に座る。こころなしか笑みを浮かべているようですらある。
「な、なによこれ…」
突きつけられているものが何か良くわかっていないらしいルイズ。しかし本能的に武器だとはわかっているのだろう。声が震え、顔が青ざめ
ている。
「そっちの2人も動くなよ。動けばこのお嬢さんの顔が吹っ飛ぶぞ。」
しかし、バビル2世は……笑っていた。
「な、何がおかしい!」
「ちょっと!なに笑ってるのよ、使い魔のくせに!ご主人様のピンチよ!」
だがバビル2世は余裕たっぷりに
「ヨミ、ぼくがなにも準備せずここに来たと思っているのか?」
「なんだと!?」画面の向こうで再びヨミが立ち上がる。
「さっきぼくは地下の部屋に、途中で見つけたおまえの部下を集めて閉じ込めておいた。そして途中でみつけた時限爆弾を、自爆装置に
とりつけておいた。
ぼくが命じれば、ロデムは時限装置のスイッチを入れる。時間は30分しかないぞ。その間に部下を見つけて、救出しなければ間に合わない。」
くぅぅ…と歯軋りをするヨミ。顔はひきつり、脂汗を浮かべる。
「形勢逆転だな、ヨミ。あの3人の無事を保障しろ。そうすれば今すぐスイッチを入れるのはやめてやる。」
「よ、ヨミ様!」
青ざめた顔で叫ぶ司令官。
「構いません!どんな犠牲を払ってでもここでバビル2世をしとめるべきです!」


長い時間が経った。実際の時間はほんの数秒であったろう。
「く………、わ、わかった。無事を保障しよう。そして緊急脱出路を教える代わりに、部下を閉じ込めた場所を教えてくれ。」
うなだれて椅子に座るヨミ。
「ヨミ様!」
「ヨミ様!」
「さあ、ヨミはああ言ったぞ。早くルイズを解放しろ。」
苦渋に満ちた表情で銃を降ろす司令官。震えながらルイズを自由にするジャキ。
そしてルイズはバビル2世に近寄り、
「こ、この犬ー!」
ばちこーんと豪快に平手打ちをかました。
「な、なに人を取引材料に使ってんのよ!私はご主人様よ、ご主人様!何考えてんのよこの人でなし!犬!犬!」
どこから取り出したのか鞭でバビル2世を殴打するルイズ。頭を押さえて逃げるバビル。ぽかーんとそれを見つめるヨミ一同。
「………。それで、そろそろどこに部下を閉じ込めたか教えてくれないか?」
「あ、ああ。」
ルイズを手で制し、顔をヨミに向ける。
「地下の兵器製造所の隣、火薬類保管庫だの横の使っていない部屋だ。入り口に戦車やロボットの残骸を置いて閉じ込めてあるからすぐわか
る。」
ヨミが「ゲイフ!」と叫ぶと、司令官が慌てて部下を連れてすっ飛んで行った。
「バビル2世。今日のところは部下とその娘の顔に免じて勝負は預けておこう。だが、次はないぞ。」
ジャキ、と命じるといつの間にかコンピューター近くに移動していたジャキがしぶしぶ前に進み、着いてこいと4人を促す。
4人が消えた後、メインを残し全てのモニターが消える。指令センターからはすでに人がいなくなり、無人となる。
「やはりきさまをたおさねばわしの野望は達成できぬようだな。いいだろう、バビル2世よ。おまえとこの世界で完全に決着をつけてやる。」
やがてメインモニターも消えた。あとには不気味に鳴動する音だけが残った。

「ここが脱出用エレベーターだ。」
案内された先の、大広間でジャキが言う。エレベーターが2基並んでいる。横には非常口マークつきの階段も用意されている。
「さあ、乗れ。約束は果たす。」
そしてルイズたちと、バビル2世の間に割って入る。
「なんの真似だ?」
バビル2世を睨みつけるジャキ。腰の刀の鯉口を切る。
「このままおまえを逃してはわしの気が済まぬ。さきほどこの基地の自爆スイッチを押させてもらった。残念だが、この基地もろとも
わしと心中してもらう。」
片目を開き、刃を晒すジャキ。
「ちょ、ちょっと!」とルイズ。
「約束が違うわよ!」
「そうよ!」とキュルケ。
「さっきあのヨミってやつと約束していたじゃないの!アナタのボスに逆らうの!?」
「ヨミ様とお前たちが交わした約束は、3人の無事を保障するというものだった。バビル2世、お前は勘定に入っていない。」
「なるほど。」
バビル2世の左手が輝く。構えをとって間合いを取る。
「ビッグ・ファイア!」
ルイズが叫んだ。
「ルイズたちは脱出してくれ。ぼくはこの男と決着をつける。」
ルイズたちの目の前が盛り上がり、包み込んでエレベーターに突き入れる。ロデムであった。
ロデムは即座にスイッチを押して、エレベーターを起動させた。
「な、何考えてるのよ、バカ…」
ルイズの眼から水が一滴こぼれた。



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