あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロとヲタ少女 04


 居候であるルイズの一日はこなたを起こす事から始まる。
 本とフィギュアとDVDが所狭しと置かれた部屋のベッドで、こなたは熟睡中であった。構わずに布団を剥がす。

「起きなさい、学校に行くんでしょ」
「………あと五分~…」

 ベタな返答をして再び布団を被ろうとするこなた。ルイズは懐から杖を取り出す。

「黄昏よりも昏きもの、血の流れより紅きもの―――」
「…んぎゃあぁ!? それは止めてー!!」

 パソコンに杖を向けて朗々と呪文を詠唱するルイズを見たこなたが、血相を変えて飛び起きた。
 すっかり眠気が吹き飛んでしまったこなたがルイズに非難の目を向ける。パソコンの喪失は彼女にとって死活問題だからである。

「ホントに飛び起きたわね。おはようコナタ」
「…ルイズさ~ん、その起こし方はシャレになってないような気が…。って言うかド○スレの呪文誰に聞いたの?」
「カガミよ。あんたなら一発で目が覚めるだろう、って」
「かがみってば余計なことを…」
「あんたがちゃんと起きれば済むことよ。どうせ夜更かししてたんでしょ」

 肩をすくめるルイズに、こなたはずいっ、と身を乗り出す。

「ルイズさん、わたしにとってネットサーフィンとネトゲは空気と同じなんだよ、なくてはならないものなんだよ。前に壊されてから環境が復帰するまで禁断症状で死ぬかと思ったし」
「あ、あれは謝ったじゃない。って言うかそんな事力説しないで、規則正しい生活をしなさい」
「なんだか、かがみが二人になった気がするよ~」
「うるさいわよ。だいたいあんた、私が朝起こすの喜んでたじゃない。もえ、とかなんとか言って」
「う~ん。最初はさ、ギャルゲーの定番シチュだから嬉しかったんだけど、すぐに飽きちゃった。女同士じゃ萌えは長続きしないんだね」
「…わけわかんないこと言ってないで、さっさと起きなさい!」

 かくて渋々寝床から這い出し、制服に着替えて居間へと向かう。すでにそうじろうがテレビを見つつ食事をテーブルに並べていた。夜更かしがデフォルトのこなたでは朝食の用意などできるはずもなく、そうじろうが作るのが泉家の慣例である。

「おはようございます、ミスタ・イズミ」
「お父さんおはよー」
「おー、二人ともおはよう」

 三人で朝食を並べ、「いただきます」の後、食べ始める。

「いやぁ、ルイズちゃんが来てからこなたが早起きするようになって、お父さん嬉しいぞ」
「厄介になっている身ですから、そのくらいは安いものですわ」
「早起きって言うか、早起こされなんだけどね。ただ」
「ん?」
「結局睡眠時間は足りてないわけだし、授業中にそれを補う確率はかなーり高いと思うんだよね」
「…わかってるんならもっと早く寝なさいよ」

 暢気に笑うこなた。そうじろうは苦笑し、呆れ顔のルイズ。テレビを見つつ食を進める、和やかな朝食風景である。

「む、今日の運勢あんま良くないなー」
「ふーん…あ、チャンネル変えて。「今日のにゃんこ」の時間だわ」
「おっけー。ふむ、今日は三毛猫かぁ」
「可愛いけど、そこらの猫と変わらないわね。名前は変わってるけど」
「楽器の名前だよ。猫を材料にした」
「…凄いネーミングセンスね」
「それより、この三毛猫オスだって。激レアだよ」
「そうなの?」
「えっと、確か何万分の一の確率とかなんとか…みゆきさんに聞いとくよ」
「こなたー。そろそろ仕度しないと遅れるぞー」
「うーい」


 こなたが学校に行き、ルイズも自室で勉強を始めた。日本語の勉強であるが、使うのは小学三年生の教科書と問題集。名前の欄に「ひいらぎ つかさ」と書かれている。物持ちが良いつかさから借りたものだ。

「う~ん、やっぱりニホンの言葉は難しいわ」

 勤勉な彼女でもゼロから全く別の言語を習得するのは容易ではないらしい。使い魔のルーンの恩恵などない身でもあるし。
 予定の内容には一通り目を通したがわからないところが多い。後でカガミかミユキに聞くことにする。

「さーて、とっ」

 勉強の次は、遊びの時間。ルイズはウキウキしながら居間に行き、ゲーム機のスイッチを入れる。プレイするゲームは某最終幻想の第四段(S○C版)。平仮名及び片仮名は何とか読めるが漢字は読めないが故のチョイスだ。

「なるほど、ここでジャンプすればカ○ン即死しないのね…。あ、リ○ィアが復帰した。くろまほうのフレア、っと………ふっ、楽勝ね!」

 黒い甲冑の敵キャラを悠々撃破し、ルイズ得意満面。ぐーっ、と伸びをする。

「いやー、こっちの世界の遊びは面白すぎだわ。でも、なんで竜に乗らないのに竜騎士なのかしら?」

 ささいな事である。
 ゲームに興じている間に昼食の時間になった。内容はそうじろうが頼んだ出前のラーメンだ。

「それにしても…」
「ん? なんだい?」
「こちらの世界は色々な料理があるのですね。トリステインのものに近い料理もあれば、このように見たことのないものまで」
「ラーメンは口に合わなかったかな?」
「いえ、そんなことはありませんわ。食べたことがなかったので最初は戸惑いましたけど」
「それは良かった。多分、ルイズちゃんの世界にも地域によって色々な食文化があると思うよ」
「そうですね。東方には風変わりなものがあると聞きますし」

 ルイズはまだ箸が使えないのでフォークでラーメンを食べる。パスタの要領でもってフォークで麺を巻き取り、レンゲですくって食べるのである。
 音を立てて食事をするという行為に抵抗のあるルイズ。そうじろうは普通にすすって食べているが、ルイズは音を立てないのでなんとなく落ち着かない。
 二人は内心、こう思っていた。

(理解はできるけど、落ち着かないなぁ…)

 少しだけ、微妙な空気漂う昼食であった。


 午後は家事をしたり、テレビを見たりしてまったりと過ごし、夕方になってからルイズは外出した。行き先は柊家である。
 玄関でチャイムを鳴らすと、かがみとつかさが出迎えた。

「おー、いらっしゃいルイズ。そろそろ来る頃かなと思ってたわ」
「いらっしゃい、るいちゃん」
「お邪魔するわ。カガミ、ツカサ」

 三人でかがみの部屋へ上がり、テーブルへ各々用意したものを広げる。かがみは今日の宿題、ルイズはつかさから借りた教材と書き取り用のノート。
 かがみがルイズの解いた問題に軽く目を通す。

「ふむ。まだまだ先は長いわね」
「ニホンの言葉は複雑なのよ。ひらがな、かたがな、かんじ…って覚える事も多いし」
「まあまあ、頑張れ。私は宿題やるから、解らないところがあったら声かけて」
「解ったわ。なるべく自力で解くけど」
「うんうん、その意気や良し。ところでつかさ」
「?」

 いそいそと宿題を広げる双子の妹に、かがみは問う。

「なんでいるの?」
「お姉ちゃんひどっ!?」
「いや冗談よ。あんたまで私達に付き合う事ないのよ?」
「あのね、一緒にやればわたしもちゃんと宿題できると思う。そういう雰囲気だし」
「微妙に後ろ向きね…。まあいいけど」

 そして勉強開始。

「お姉ちゃん、この問題が…」
「どれどれ、これはね…」

 ルイズ は勉強している。
 かがみ は勉強している。
 つかさ は勉強している。

「カガミ、この字の意味が解らないんだけど」
「ああ、それは動物の犬の事よ」
「………」

 ルイズ は勉強している。
 かがみ は勉強している。
 つかさ は眠っている。

「こらつかさ、寝ないの。あとちょっとでしょ」
「ばるさみこすー………ふぇっ!?」

 つかさ は目を覚ました!
 などとあったものの、各々課題はやり遂げた。伸びをするつかさに、かがみは苦笑する。

「つかさぁ、人様の手前ってものがあるんだから、居眠りは我慢してよね」
「ご、ごめんお姉ちゃん。居眠りと言えばね、今日こなちゃんが授業中ずっと寝てて、先生に怒られてたっけ」
「あいつ、本当に今朝言った通りになったのね…」
「え、どういうこと?」
「あー、それがねぇ」

 ルイズが朝のやり取りを二人に聞かせると、つかさは苦笑し、かがみは呆れて溜息をついた。

「こなちゃんらしいね」
「まったくあいつは…」
「わたしがどうかしたの?」
「うおっ!?」

 かがみの背後に、いつの間にかこなたが立っていた。バイト帰りにルイズと合流して帰るので、柊家に寄ったのである。

「入るんなら一声掛けなさいよ」
「いやー、サプライズは必要かな、と」
「いらん!」
「あ、宿題終わったんだ。かがみ―――」
「見せないわよ。自分でやれっての」
「めんどい」
「こいつは~…」
「こなちゃんこなちゃん」

 相変わらずやる気ゼロのこなたに、かがみ顔をしかめる。そこへつかさが声をかけた。何やら得意そうな表情で。

「良ければわたしの見せてあげよっか? 今終わったところだから」
「つかさ…」

 かがみはつかさを胡乱な目で見詰め、この子、今回は終わってるからって余裕見せてるわね…と内心で一人ごちる。
 提案にこなたはんー、と思案し、

「なんかさ、つかさに見せてもらうのは負けかなって気がするからいいよ」
「なんですとーっ!?」
「…そろそろ帰らない? 時間的に長居するのもマズいし」

 切り出したのは、こなたを生温かい眼差しで眺めていたルイズだ。

「そうだね。遅くなるとお父さん騒ぐし」
『心配するって言いなさいよ…』

 こなたの言い草にルイズとかがみがハモってツッコミを入れた。


「むはーっ、これで宿題はバッチリだよ」

 泉家への帰り道、こなたは足取りも軽やかに歩いていた。帰る直前、難色を示すかがみを口説き落として宿題を速攻で写したのである。なんだかんだで友達には甘いかがみであった。
 ルイズは呆れて声もない。無言で歩む。

「ねえルイズさん」
「なに?」

 夕焼けが照らす帰路の途中、唐突にこなたはルイズに声をかける。ややぞんざいな声でルイズは応じた。くだらない内容だったらシカトするつもりで。

「こっちの暮らしには慣れた?」

 ルイズの予想に反して、こなたの問はまともなものだった。しばし思案し、答える。

「…そこそこ、ね。最初はかなり戸惑ったけど、慣れれば色々便利だし」
「そっか」

 こなたは短く、それだけを返した。
 話が途絶え、お互い無言で歩くが、その時間は長くは続かなかった。
 こなたがチラチラとルイズを窺っていたからである。

「なに? まだ聞きたいことがあるの?」
「あー、うん。あるにはあるんだけど、ちょっと聞きづらくて、ね」
「あんたが、ねぇ」

 ルイズから見て、泉こなたという少女は裏表がない人物である。欲望に忠実で、言いたいことをズバズバ言う、という意味においてだが。
 横目でこなたの顔を眺める。眠そうな眼差しは相変わらずだが、いつも浮かべている口元の笑みは引っ込んでいた。
 どうやら真面目な話らしい、そう思ったルイズは先を促した。

「いいわよ、言ってみなさい」
「いいの?」
「話聞かなきゃ判断しようがないでしょうが」
「それもそっか」
「それなりに真面目な話題みたいだから。ふざけたら承知しないけど」

 ひどいなー、とこなたはぶーたれる。が、その笑いもすぐに引っこめ、こなたは尋ねた。

「元の世界に帰りたい?」

 そうきたか。ルイズは内心で一人ごちる。

「そうね…」

 ルイズにとって、こなた達との生活は新鮮そのものだった。魔法が使えない彼女をバカにする者のいない世界。同年代の友人と他愛ない、しかし飽くことのない楽しいおしゃべり。ハルケギニアではついぞ縁のなかったものだ。
 それでも、望郷の念はある。帰りたいか? と聞かれれば帰りたいに決まっている。いかに便利な道具があっても、周囲の人々がよくしてくれても、ここには家族も故郷もないのだから。
 しかし帰る方法は現状で見当も付かないのだ。時折、どうしようもない不安に苛まれることもある。気丈で、人一倍意地っ張りな彼女がそれを表に出すことは―――本人が自覚している限りでは―――皆無だが。
 それでも、はっきりしていることは一つ。

「ハルケギニアに帰りたいわね」

 キッパリと、胸を張ってルイズは答えた。
 最後の手段は考え付いている。もう一度サモン・サーヴァントを使い、開いた門に飛び込むのである。今度はどうなるか解らないのでまさに最後の手段である。
 まずは文字を覚えて、それから社会的基盤を確保。後は神隠し等の超常現象の記録をかたっぱしから調べて帰る方法を探る。この世界の事を調べつつ、ルイズはそう計画を立てていた。かなり大雑把ではあるが。
 その計画からすればまだまだ先は長いのだ。先行きは見えなくても、やることは分かっている。それがルイズの不安を緩和していた。

「だから帰る方法を探すわ。どれだけかかっても、ね」
「そっか」

 先ほどと同じく、こなたはそれだけ答えた。真剣さは鳴りをひそめ、口元には笑みが戻っている。
 ルイズにはその笑みが、いつものものとは違う気がした。

「まぁ、いざとなったらウチに嫁ぐといいよ。わたしの嫁」
「ばっ、バカ言ってんじゃないわよ!? アンタ女でしょうが!!」
「冗談だよー」
「アンタねぇ…!」

 雰囲気が一転、喚くルイズと受け流すこなた。
 泉家まで、あと少し。少女二人は姦しく歩いていった。


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