あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と炎髪灼眼-01

「サイト」
泣き出しそうな声で、ルイズが呟く。
「助けて。サイト、助けて」
迫る魔法人形の足音が大きくなる。
理性が語りかける、サイトは死んだのだと。
いくら自分が信じていても、サイトは死んだのだと。
自分を助けるために、七万のアルビオン軍にたった一人で立ち向かい、サイトは死んだのだと。

諦めろ――わかってる。
諦めろ、諦めろ――わかってる、わかってる!
お前の使い魔は死んだのだ!――わかってるって言ってるでしょ!
ぎりっと唇を噛むルイズ。
「なによぉ……」
ルイズは叫んだ。
「なによ!なによなによ!」
死んだと囁く、自分の理性を許せない。
「どいつもこいつも死んだ死んだ死んだって……、わかったわ!死んでるわ!」

呪文を、唱え始める。
ルイズの口からこぼれる呪文、それは古代のルーンではない。
メイジなら、誰もが使えるコモン・マジック。
ルイズが初めて成功した、あの魔法。
サイトとの絆を作った、最初の、大切な、大切な魔法。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
わかってる。
これは、こんなときに唱える呪文じゃない。
本当に唱えるべき呪文は『虚無』だ。
でも、自分は信じると決めた。
だったら、頼るのだ。
命をかけて、全てをかけて、その名前に頼るのだ。

わたし、信じてる。
「五つの力を司るペンタゴン!」
絶対、信じてる。
サイトを、信じてる!
「我が運命に従いし、使い魔を召喚せよ!」
サイト―――――――――――――――!




「悠二―――――――――――――――っ!!!!」




開かれたゲート、そこから刹那の時をもって飛び出したのは、見慣れた黒髪ではなかった。
「へ……?」
口をぽかーんと開けて放心するルイズ。
彼女の前に現れたのは黒衣を纏った、小柄な人影であった。
その髪は、まるで燃え上がる炎のうな朱色。
そしてその瞳もまた、灼熱の劫火のような赤。
炎髪、灼眼。



あの『決戦』のイブの日、坂井悠二は現れなかった。
駅前、ショッピングモールの、北の出口。
ちらつく雪の中で、シャナは待っていた。
悠二に自分の気持ちを伝えるために。
現れることのない、消えてしまった少年を待っていた。

翌日、シャナの許に一つの届け物が届いた。
封を切られた、薄桃色の封筒。
シャナが悠二に届けた、手紙だった。
他には、何もなかった。


夜の闇、明りも灯さぬ部屋の片隅に、小さく蹲るシャナの姿。
消えてしまったミステスの少年。
どこにもいない、坂井悠二。
その意味を心の何処かで理解しながらも、考えないようにする。
「……悠、二」

「食事をここに置いておくのであります」
そう言ってヴィルヘルミナが置いていった食事にも手をつけていない。
ただ、中空を見つめる、幼い少女。
「考えても、どうしようもないことも時にはある」
神器コキュートスから遠雷のように響く、紅世の魔神アラストールの声。
父親のように慕うその声を聞いても、シャナはぴくりとも動かない。
そうして如何程の時がたった頃か。
世は寝静まり、静寂のみが支配する刻。
不可思議な現象が彼女の前に出現した。
光り輝く、不思議な鏡。それが突然シャナの目の前に現れたのである。
「気をつけるのだ!敵の自在法やもしれぬ」
アラストールから警戒を促す言葉が飛ぶ。
けれど、シャナの耳には入ってこない。
彼女の耳に届いたのは……。

――『これは……』
――『はぁ、どうやら、お前さんはあの娘ッ子の使い魔になる運命みたいだね』
――『でも……』

鏡の向こう側から聞こえる、二つの声。
一つは知らない声。でも、もう一つは紛れもない、
「悠二―――――――――――――――っ!!!!」
アラストールの静止も聞かず、シャナはゲートへと飛び込んだ。



「悠二!悠二!?返事をして!悠二―――――!」
突然現れたルイズよりも更に小柄な少女は、全身から火の粉?のようなものを振りまきながら血相を変えて誰かを呼んでいる。
一方でルイズの頭は真っ白だ。
サイトが呼び出されるはずだった、使い魔の少年を呼び出すはずだった。
それが、なぜ?どうして?こんな子が呼ばれているの?
それはつまり、やっぱりサイトは死んでいるということで……
「あんた誰よ!?サイトは!サイトはどこ!?サイトをどこにやったのよ!?」
抑えることもなく、見栄も醜態も無く、ルイズは泣きながら叫んだ。
「うるさい!悠二は!?悠二はどこ!?悠二―――――!!」
「サイト!サイト!サイト―――――!!」
「悠二!」
「サイト!」
「悠二―――!!」
「サイト―――!!」


あまりの事態に混沌の坩堝へと落ちていく戦場。
必死になって別々の名前を呼び続ける二人。
流石にこの光景にはシェフィールドも動揺を隠せない。
しかも
(同じ声に聞こえるわ……)
そうなのである。どうも同じ声が叫びあってるように聞こえるのである。
森の残響か、何かの魔法か、それとも自身の耳の変調か……
シェフィールドは一度耳をほじほじしてから、気を取り直して再び魔法人形に命令を下すことにした。
「行きなさい!ガーゴイル!」

二人へと飛び掛る魔法人形の群れ。
「!!」
だがそれらは、シャナが横薙ぎに払った大太刀、贄殿遮那によって両断されて地に落ちた。
「何こいつら?燐子?それにしても力が弱いけど」
例え取り乱そうともフレイムヘイズ、世界の均衡を守る守護者。一度戦場であると認識すれば、どれだけ異常な状態であろうともやることは変わらない。
「こんな奴ら、すぐに――ッ!」

それからは、シャナの言ったとおりであった。
二十体はいたはずの魔法人形達は秒の時間で全て破壊され、今は残骸を周囲に散乱させていた。
正に鬼神の如きとはこのことか、彼女は魔法一つ使わず、剣一本でこの難敵たちを打ち滅ぼしたのであった。
「アラストール、どういうこと?こいつら燐子と全然違うけど。それに、ここは……どこ?」
「むう、これはもしや……」
何かを言いかけたアラストールだったが、思索に耽るようにして口を閉じた。

あれだけ動き回って息一つ乱さない少女に驚きながらも、ルイズは自分が呼び出した少女へと猛然と近づいた。
「ちょっとあなた!どこの誰!?何でサイトじゃないのよ!?」
「何だ、おまえまだいたのか。こっちは今取り込み中だからどこへなりとも行きなさい」
「ちょっ!何よその口ぶり!少しくらい剣が使えるからって調子に乗ってるんじゃない!良く見たら私より年下みたいだし!それにさっきから何よ、ユウジユウジってオウムみたいに」
「! そうだ!悠二!確かに悠二の声がした!悠二、悠二―――!」
「だからそれはもういいって言ってるでしょ!サイトはどこ!サーイートーはああああ!?」
「うるさいうるさいうるさい!!おまえの声を聞いていると耳がキンキンする!口を閉じろ!悠二―――ッ!」
「うるさいうるさいうるさい!!何よ!そっちこそキンキン頭に響く声のくせに!頭が痛くなるわ!サイト―――ッ!」


二人がぎゃんぎゃんといい合いを始めたそのとき、その近くの茂みががさごそと動いた。
そして、そこから飛び出した声は

「おーい!ルイズ、無事かー!?」

「サイト!?」
「悠二!?」


こうして、同じ声に左右から語りかけられるという、ある意味幸せな平賀才人の新たなる日々がスタートしたのだった。

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