「一体なんだったの?」
砂煙が未だに立ち込める中キュルケが呟いた。
「ルイズさん大丈夫ですか?」
アンジェリカがケホケホと咳き込むルイズの側に寄る。
「ええ何とか大丈夫よ。それよりもアンジェ、怪我はない?」
ルイズはアンジェリカの服についた埃を払いながら聞いた。
「私は何ともないです」
砂煙が晴れてくると辺りが急に騒がしくなる。ようやく衛兵や教師達が集まり始めた。
そして周りが見渡せるようになって彼女達はあることに気付いた。
そして周りが見渡せるようになって彼女達はあることに気付いた。
「ねえキュルケ。これって…」
ルイズはそれを見つけ手に取るとキュルケに見せた。
「確か宝物庫にあった代物じゃないかしら?」
キュルケは首を傾げながら答えた。
「…M16」
ポツリとアンジェリカが呟いた。
「アンジェちゃん、これ知ってるの?」
キュルケがアンジェリカに話しかけているときルイズはふと気付いた。
「似てる…アンジェが持ってたアレに…」
「ルイズ、何か言ったかしら?」
「ルイズ、何か言ったかしら?」
ボソッとルイズが呟いたのを耳ざとく聞いたキュルケはルイズに聞き返す。
「別に何も言ってないわ。アンジェこれ知ってるのね」
ルイズはキュルケの問いかけを無視してアンジェリカに手に持ったそれを渡した。
「はい…」
それを受け取ったアンジェリカは大事そうに胸に抱えた。
「ちょっとあたしには話が見えてこないけど…取り合えず場所を変えない? 騒がしくなってきたわ」
キュルケに促され、彼女達はその場を後にした。
Zero ed una bambola ゼロと人形
昨夜の騒ぎから一夜明け、オスマンにより学院の教師達が集められ、事件の目撃者としてルイズとキュルケの二人も呼び出されていた。
だが集まった教師達は互いに責任を押し付け合い建設的な話ができていない。オスマンの苛立ちが募っていくばかりだ。
だが集まった教師達は互いに責任を押し付け合い建設的な話ができていない。オスマンの苛立ちが募っていくばかりだ。
「オールド・オスマン」
そんな中小さな声でオスマンに話しかける者がいた。
「何かね、ミス・ロングビル」
オスマンは鋭い視線で話しかけてきたロングビルを見る。
「土くれのフーケの居場所が分かりました」
ロングビルがそう報告すると驚いたように眼を見開く。
「ほう! もう居場所が判明したのか。相変わらず良い仕事をするのう」
オスマンは満足気に頷くと未だ騒がしい教師陣に向き直る。
「あーちょいと静かにしてもらえんかのう?」
オスマンが話を進めようとしても未だに責任を擦り付け合って騒がしい。オスマンは溜息を吐き口を開いた。
「いいかげんにせんか!」
オスマンが一喝すると場は一気に静まり返る。
「よいか! 土くれのフーケがこの学院の宝物庫に侵入した。この責任は全て責任者であるわしにあるのじゃ!」
オスマンはギロリと力のこもった視線で教師達を睨む。
「そして土くれは宝物庫の宝を盗み出したがこの生徒の妨害によってほとんどの宝物を取り返すことができた」
「あの、わたしたち別に…」
ルイズが自分達は何もしてないと言おうとしたがオスマンに睨まれ沈黙してしまう。
「だが破壊の杖は戻ってこんのじゃ。そうやつは破壊の杖だけは持って逃げおった!」
オスマンは苛立ち気に机をドンと叩いた。ルイズはもとより教師達、ロングビルまでもが見たこともない彼の姿に誰もが驚きを隠せないでいた。
「王宮の者達には任せてはおけぬ! 何としても我々の力で破壊の杖は取り戻さなければならんのじゃ!」
オスマンはどこか遠くを見つめながらも話を続ける。
「ここにおるミス・ロングビルが土くれのフーケの居場所を掴んだとのことじゃ。そうじゃな?」
オスマンは話をロングビルに振る。
「え? あ、ええその通りですとも。フーケはこの近くの森の廃屋に逃げ込んだとのことです」
少し慌てながらも答える。
「それはここから近いのかね?」
オスマンはロングビルに確認する。
「はい。徒歩で半日、馬で四時間といったところでしょうか」
オスマンはそれを聞き、再び教師達へと向き直る。
「聞いての通りじゃ。それでは土くれのフーケの捜索隊を結成する。我はと思うものは杖を掲げよ」
オスマンがそう言うものの誰も杖を掲げず、辺りは静まったままだ。
「おらんのか? 誰もおらぬのか? 全く…情けない」
だが一人、恐る恐る杖を掲げる者がいた。
「ミス・ヴァリーエル! 何をしているのですか!」
教師の一人、シュヴルーズが悲鳴のような声を上げる。
「だって他に誰も掲げないじゃないですか」
ルイズは真剣な目をして言い放った。
「ここは教師に任せて、あなたは…」
「では君が行くかね? ミセス・シュヴルーズ」
「では君が行くかね? ミセス・シュヴルーズ」
シュヴルーズはルイズを引き止めようとするがオスマンに遮られる。シュヴルーズは何も言えず後ろに下がっていくのだった。
それを見ていたキュルケもスッと杖を掲げた。
それを見ていたキュルケもスッと杖を掲げた。
「ミス・ツェルスプストーだったかね? 君も行くというのじゃな?」
オスマンは確認するように言った。
「ええ、もちろんですわ。ヴァリエールには負けられませんもの」
「そうかね。うむ何とも勇気のある生徒達じゃ。わしは誇りに思うぞい」
オスマンは嬉しそうに何度も頷くと呆れた顔でその場にいる教師達を見回す。
「それに比べて君達は何という様じゃ…」
しかしそんなオスマンに対してコルベールが異を唱える。
「オールド・オスマン。まさか生徒達に任せるつもりですか?」
コルベールはオスマンの前に出てくるなり口を開いた。
「仕方あるまい。他に誰も杖を掲げないではないか」
オスマンの言葉にある種の不快感を示しながらもオスマンに詰め寄る。
「あの事件を引き起こしたかもしれない相手ですよ? それを生徒達だけに任せるなんて危険すぎます!」
コルベールは必死になってオスマンに生徒達に任せるのを止めさせようとオスマンに食らいつく。
「わかっておるとも…わしもそこまで馬鹿ではない。ミス・ロングビル」
コルベールの言うことも最もだと頷きながらロングビルを呼ぶ。
「彼女達と一緒に行って来てはくれんかね?」
「もちろんそのつもりです」
「もちろんそのつもりです」
ロングビルは待ってましたとばかりにそう言った。
「では僕も一緒に行かせて下さい」
すかさずコルベールも名乗りを上げた。
「ミスタ・コルベール、君にはやってもらいたい事がある。残念だがここに残ってくれたまえ」
コルベールはわかりましたと力なく返事を返した。
「ミス・ヴァリエール! ミス・ツェルスプストー!」
「は、はい!」
「何かしら」
「は、はい!」
「何かしら」
大きな声で名前を呼ばれ、吃驚しながら返事をするルイズと冷静に受け答えるキュルケ。そんな二人に向かってオスマンは頭を下げた。
「大変危険な任務を任せることになってスマンのう。 破壊の杖はわしの命の恩人の形見なんじゃ。是非とも取り返して欲しい」
急に頭を下げられて慌ててながらもルイズは答える。
「えーと、その…何とか頑張ります」
「ええ、お任せください」
「ええ、お任せください」
キュルケは髪をかきあげながら自信たっぷりに答えた。
「うむ、期待しておる。ミス・ロングビル。彼女達を任せたぞ」
オスマンはロングビルに念を押すように言った。
「はいお任せください」
「うむ。では馬車の用意をさせよう。準備が出来次第、中庭に集まりたまえ」
「うむ。では馬車の用意をさせよう。準備が出来次第、中庭に集まりたまえ」
それではこの場を解散する。オスマンがそういうとまるで蜘蛛の子を散らしたようにその場から人がいなくなっていく。
「ああ、ミス・ヴァリエールは少し残ってくれ」
コルベールがルイズを引きとめた。そしてその場にはオスマンとコルベール、ルイズが取り残された。
「宝物庫にあったあの変わった鉄砲を今持っておるな?」
オスマンは何かを確認するように威圧感たっぷりにルイズにたずねた。
「は、はい。持ってますけど…」
ルイズはしおらしく小さな声で答えた。
「ミス・ヴァリエール。君はあれがどのようなものか知っているのかい?」
コルベールは優しく尋ねた。
「あの、わたしじゃなくて、使い魔のアンジェが…」
まるで何か悪いことをして尋問されているような……そんな気分にルイズはなってきた。
「知っておるのじゃな」
オスマンはじっとルイズを見る。
「は、はぃ…」
ルイズは泣きたくなってきた。何か悪いことをしたのだろうか?
「ミス・ヴァリエール。君はそれを使えるかね?」
コルーベールがそう聞いてくる。
「アンジェ…わたしの使い魔なら使えると思います…たぶん」
ルイズの言葉を聞いてオスマンは何やら考え込み、徐に口を開いた。
「過ぎたる力は災いをもたらす…そうは思わぬかミス・ヴァリエール」
突然話を振られても返答に困ってしまう。
「す、過ぎたる力ですか? あの、すいません。よくわかりません」
オスマンはルイズの返答を無視するかのように話を続けた。
「あの鉄砲も破壊の杖も…わしの命の恩人の形見なんじゃ…」
遠い昔の友人を懐かしむような声でルイズに語る。
「君はこれを正しく使えるのかのう?」
恐らくオスマンはルイズの答えなど必要としないのだろう。彼の中で答えはもう決まっていたのだ。
「ミス・ヴァリエール。君にあの鉄砲を与えよう。その力…正しく使いたまえ」
ルイズはオスマンの言っていることが良く理解できなかった。
「……はい」
ルイズの返答を聞き届けその場を後にしたオスマン。コルベールはルイズをフーケ捜索へと送り出す。
「ミス・ヴァリエール。破壊の杖は取り返せなくてもいい。だが必ず無事に帰ってきなさい。オールド・オスマンも同じ気持ちということを忘れないでくれ」
その言葉を背に受け、ルイズはフーケ捜索へと踏み進むのだった。
Episodio 23
Organizzazione, una festa di ricerca
結成、捜索隊
結成、捜索隊
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
Intermissione
「ミスタ・コルベール」
ルイズが去った後、オスマンはコルベールに話しかける。
「これでよろしかったのですか? オールド・オスマン」
不安げにオスマンに問う。
「傍から見れば茶番かもしれんが…」
オスマンの答えに納得できないでいコルベール。
「ですが彼女が牙を剥くとも限らないのですよ」
「大丈夫じゃよ。伊達に年を喰ってはおらぬ。これでも人を見る目には自信があるんじゃ」
「……」
「彼女の目は死んではおらん。まだこの世が捨てたものではないという目をしておる」
「わかりました。僕も信じて彼女達の帰りを待ちます」
そしてオスマンとコルベールは宝物庫の片付けに取り掛かるのだった。
「なんで誰も手伝ってくれんのじゃ?」
「僕が手伝ってるじゃないですか。それにあんたが自分の責任といったからでしょう…」
「僕が手伝ってるじゃないですか。それにあんたが自分の責任といったからでしょう…」