あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ルイズさんとハヤテくんよ-5

ルイズ達がゴーレムの姿を見つけたのは、三回目に壁を殴った後だった。流石にあれだけの轟音を何度も鳴らせば、誰かが聞き付けるとはフーケは予想していた。
だが、出て来た人間が魔法を使えない事で有名なあのメイジと、ただの平民の使い魔であった事から、無視した。
ゴーレムを前にして息巻いているが、あの調子では偶然近くにいて、特別な準備もないまま来たというところだろう。
まあ実力から見ても、学院でぬくぬくと暮らしている貴族のガキどもにゴーレムがやられるとは思えない。それよりも教師連中に来られて邪魔される方が厄介だ。
だから、フーケはゴーレムの肩の上に飛び乗って指示を出し、土巨人は彼等に見向きもする事なく、再び壁に向かい鉄球を振り回し続けた。


一方、その30メートル程もある土のゴーレムの足元にいるルイズ達は、敵を前にして動きあぐねていた。蛇に睨まれた蛙のような威圧感に、ハヤテのこめかみを一筋の冷や汗が冷やす。
「えっと……お嬢様? この、中からスーパーロボットでも出て来そうな土人形は何でしょうか?」
相変わらず使い魔のスーパーだかロボットだか言う奇妙な言葉は分からないが、ルイズはここ暫くの付き合いでスルーしても構わないと学習した。
「あ、そういえばハヤテはまともな魔法を見るのは初めてよね。
 あれは土属性魔法の一つ、ゴーレムよ。これだけの大きな物を造れるって事は、相手は相当実力のあるメイジって事ね」
30メイルはゆうに越え、蟻とカマキリぐらいの比で見下ろされながらも、ルイズは敵に向かって歩み始める。脚を震わせながらも、一歩、また一歩と。
そうしてある程度の距離まで近づき、それでも立ち向かう意志だけは失わないと言わんばかりに瞳でギッと睨み付け、杖を振り上げて魔法を放ち始める。
「ファイアーボール!」
何度か杖を振りかぶって呪文を唱えるが、効果は全て爆発の一種類。おまけに明後日の方へ行ったり、当たったかと思えば土の欠片を落とさせるだけだったりと、全く効いている様子が無い。
「お嬢様、一度引いた方が……相手が無視しているうちに」
「追いかけて来たなら好都合よ。あんな騒音を出してれば、じきに誰か駆け付ける。むしろ矛先が私に向いてくれれば、学院がそれだけ壊されずに済むわ。
 それに……」

それに、この犯人を捕まえれば、もうゼロだ何だのと蔑まれずに済む。貴族としての正しい誇りを、使い魔たる彼にも与える事が出来る。
そう言いたかったが、何故かはばかられてしまい、口に出せない。きっと、それを言ってもハヤテは笑顔でやんわりと、要らないというだろう。
それでも、私がやりたいからそうする。
「それより、あんたこそ逃げなさい。平民はメイジには勝てないんだから、先生でも呼んでそのまま逃げてなさい!」
「そういわれましても……」
暫く一緒にいて、ハヤテはルイズがよくも悪くもプライドが高く、誇りを大切にしようというタイプだと分かった。相手が明らかに間違っている事をしているのが、許せないのだろう。
確かに先人の素晴らしい歌にも、敵わぬ敵にもひとまず当たれとあるが、今回みたいにこうかはいまひとつどころでは無い場合はその限りでは無い。
しかし、今の主は逃げろと言っても聞きそうに無い為、ならば自分は自分の使命を果たすしかない。
「ダメです。僕は使い魔なんでしょう?
 主人を守らずに逃げるわけには行きません」
使い魔を守りたいルイズの意思と、恩義から主の命を守りたいハヤテの意思が視線で交錯するが、先に根負けしたのはルイズだった。
今は、そんな事に時間を割いている暇は無い。
「……ああ、もう勝手にしなさい!」

早く目の前の凶行を止めなければいけないのだが、攻撃が効かない、動きも止められないのでは、いったいどうすればいいのか想像がつかないでいた。


一方、フーケはとうに二人を相手にしておらず、むしろ心配事は持参した鉄球の耐久力にあった。


ゴーレムの百万パワーに鉄球の百万パワーで二百万パワー、二倍の遠心力で四百万パワー、更に三倍の気合いで振り下ろして千二百万パワー……とは考えなかったが、楽観視していた事は否定は出来ない。
だが、一発もしくはニ発でひびをいれるぐらいは予定していたのが、三発撃ち込んでひびが入ったのは鉄球の方だ。
流石は魔法学院、防御も万全か。もって後一発……そう思っていた矢先、フーケに幸運が転がり込んで来た。
「ファイアーボール!」
いい加減雑音になっていたメイジの娘の、魔法の一発が宝物庫の壁に当たる。それを先程までと同様に見過ごそうとして、

「ひび、だって?」

事前に錬金をかけた時も、今こうして殴っても、恐ろしく高度な固定化に護られて何の変化も見せない壁が、たった一発の、しかも失敗魔法にひび割られるとは?
果たしてどんなからくりか。実は当たれば威力だけは高いのか、はたまた失敗なりに思わぬ効果を発揮しているのか興味はあるが、今は思考のごみ箱に捨て置く。
「破壊の杖、貰ったよ!」
蟻程の穴があれば堤防はたやすく崩れ去るという。目の前に突破口が生まれたなら、もはや時間の問題!

もう鉄球は要らないと適当に放り投げ、拳の部分だけを鉄に変えてひびの部位に叩き込んだ。
あれだけの苦労が嘘のように壁がパカリと割れ、フーケはローブの下でほくそ笑んだ。
腕伝いに穴に飛び込み、宝物庫に入り込む。目標のブツ、破壊の杖は早くも見つかる。
どう見ても魔法の杖の形に見えず、見た事も無さそうな金属で出来ていたのが只でさえ人目を引くのに、下にかけられたプレートに『破壊の杖。持ち出し不可』と書かれていては駄目押しである。
こんな簡単に手に入っていいのかと疑問はあるが、最初に苦労した分を思えばそれも問題は無いだろう。
ともあれ、目的のブツを手に入れたフーケは、毎度おなじみの盗みの証明を壁に魔法で刻む。

『破壊の杖、確かに領収致しました。土くれのフーケ』



「……と、いう訳です」
翌朝になっても学院が盗賊騒ぎで嘘や真実の噂が飛び交う中、ルイズとハヤテは目撃者として学院長室に出頭した。
オスマンはある程度の証言を聞いた後、現場に着いて来るよう要請し、壁に開いた穴の前に集う教師達の前で再び証言させた。
「私達の力が足りず、黒いローブを着たメイジはゴーレムの肩に乗って逃げられてしまいました」
「いや、命があって何よりだ、ミス・ヴァリエール。貴族としては立ち向かった事を褒めるべきだろうが、教師としては生徒に危険な事にならなかった事の方に安心している。
 余り、危ない事はしないでおくれ」
「……はい、ミスタ・コルベール」

「しかし、盗賊のフーケがこの学院まで襲うとは!」
「さっさと捕まえて、貴族の力を見せてやらねば!」
「衛兵は何をしていたのだ!」
「落ち着きたまえ、諸君」
方々にて騒ぎ立てるだけで、その実全く自分からは動こうとしない教師陣の口を黙らせる為に、オスマンは先んじて口を開いた。
「今更騒いだところで、どうなるものでもあるまい。それに、そんなに慌てる事も無いのじゃ。
 今我々がすべき事は、穴を塞ぐ事。そして、何故破られたかを早急に調査する事じゃ」
「余裕ぶっている暇はありませぬぞ、オールド・オスマン! フーケが破壊の杖とやらで暴れ回りでもすれば、それこそ学院の責任問題にもなりましょう!」
「ああ、それは有り得ぬ。安心したまえ、フーケがそうする事は絶対に不可能なのじゃ」

その場にいた全員の喉から、ゴクリと音が聞こえる。何故余裕があるのかの理由を聞くべく全員が見守る中、オスマンは重々しく口を開いた。

「あれは―――」
「オールド・オスマン!」
口を開こうとした矢先、今までどこにもいなかったロングビルが慌てた様子で駆け寄って来る。
この事態にいったい何をしていたのかと叱責が飛ぶが、
「申し訳ありません。今朝方、いきなりのこの騒ぎを聞きつけまして。
 フーケの仕業と中のサインで分かりましたので、調査していたのです」
「ふむ……その様子じゃと何か分かったようだが、後で聞こう。
 今はちょうど破壊の杖の正体を語っておったところじゃからな、それを言わんと周りの皆も落ち着かんじゃろうて」
渡りに船。盗んだはいいがちっとも使い方の分からない為、事前に作戦を立てて戻って来たが、それをするまでも無くなった。
教師達とともに聴衆の一人に変わるロングビルは心中でニヤリとしたが、次のオスマンのセリフに度肝を抜かれる事となる。

「あれ、破壊の杖の偽物じゃもの」

あまりにも酷い答に、全員が口を塞げなかった。続いて、その場の思考は二つに別れる。
杖を見た事のある人間は、いつも飾っていたあれは偽物だと? 見た事の無い人間は、何故偽物を飾るのだ? と。
そしてフーケは、偽物をつかまされた屈辱に歯噛みした。
尤も、魔法学院の宝物庫にこれみよがしに飾られている、という価値だけで盗んだのであり、効果は二の次だったが、それでも偽物は盗賊としては不覚だった。

「いやなに、本物は別の場所にあるだけじゃ。それだけじゃよ。さあ、皆は壁の修理を頼むぞ。
 ……ふむ、ミス・ロングビルにミスタ・コルベール、そしてミス・ヴァリエールとその使い魔よ、せっかくじゃから本物の破壊の杖を見せてあげよう」


フーケの開けた穴から宝物庫に入り、杖を飾っていた台座の前に5人が集まる。
ここで何をするのか注目が集まる中、オスマンは台座の高さまで屈み、小さめの杖を取り出す。
「この台のように見える箱はマジックアイテムでの、特定の魔力を流した杖をこの穴に差し込めば……ほれ、蓋が開くのじゃ」
上部の板が後ろに持ち上がる。オスマンが中から取り出したものは、杖と言うには奇妙な、太くて取っ手のついた金属の棒だった。

(ちっ……)
昨晩盗んだものとは太さと色、そして形が違っていた。
だが、本物と言うからには何ができると言うのか、破壊の杖と名づけられた所以があるはずだ。
そんなフーケの疑問は、横からの少年の言葉によって解明される。
「あれ? それって……ロケットランチャーみたいですね」
「ろけっとらんちゃあ?」
疑問顔のルイズを置いて、ハヤテは破壊の杖にピタピタと触れる。
左手に輝くルーンにオスマンが気づいた時、何かに思い当たったように呟くが、それは気づかなかった。
(まさか、これは……)

「これは……やっぱり、M72ロケットランチャーですね。特別な効果は無いようです。
 装備できるのは―――」
「はいはい、そのルーンの効果はいいから、簡単に言えば何なの?」
「僕のいたところにあった物なんですが。重火器……いえ、強い銃と言ったら分かるでしょうか?」
『とあるカナダの高齢女性がやったような区分けだが、ハヤテはこれでも分かってもらう為に懸命に考えたのである』
だがその努力も空しく、ルイズ達は「?」と首を傾げていた。
銃そのものは知っているが、魔法を使えない平民が中距離用に使う、弓程度の攻撃力だと認識しており、それが強いと言われても理解できない。
いや、オスマンだけが成程と頷き、
「銃、銃か。ならば、あの平民の恩人が使えたのも頷ける」
「オールド・オスマン、よもやこれが使われた所を見たのですか?」
「うむ、まさにこの目で目撃したぞ、ミスタ・コルベール」

それは約30年前、オスマンが森でワイバーンに襲われた時の事。
その時現れた恩人はもう一本の破壊の杖でワイバーンを吹き飛ばし、元からの怪我のせいで倒れた。
結局恩人は看護の甲斐無く死んだが、オスマンは 使われた杖を彼の墓に埋め、残りの1本を恩人の形見として宝物庫にしまい込んだという。

「ワイバーンが一撃で粉々になる程の威力じゃ。悪用されるのを防ぐ為に、というのも仕舞った理由ではあったが」
「それで、わざわざその箱にしまいましたのね」
ロングビルが納得いったとばかりに問いかけると、予想に反してオスマンは苦々しい顔をした。
言いたくない腹を探られたように唇を噛み締め、聞こえるか聞こえないかの声で呻く。
「それは別の話で、若さ故の過ちからの教訓だったんじゃ。
 ……おのれアヤサキとか言う詐欺師め」
思わぬ固有名詞の登場に、少年少女は氷を背中に突っ込まれたような驚いた。ハヤテに至っては、何もしていない筈なのに冷や汗が止まらない。
(アヤサキって、あんたの家名じゃなかった? 何したのよ! 主を犯罪者にする気!?)
(ぼ、僕は無実です! ほら、名前が違うかも知れないじゃないですか!)
「オ、オールド・オスマン? その詐欺師の名前は……」
「そんなものが知りたいのかの?
 ……まあええじゃろ。片方はアヤサキシュンとか言う、男と女の二人じゃ」

(あの馬鹿両親かー!)
(な、なんですってー!)

あのスチャラカ二人組はこんな所まで来て迷惑をかけているのか、と絶望に襲われる。
今のハヤテはどうして二人がこっちに来たか、何をしでかしたのかより、二人が自分の関係者である事をばれないようにする事が最重要課題となった。
向こうで散々親の尻拭いをしてきて、こっちでぐらいはそれから解放されたい。
(お願いします、この事は内密に……)
(分かったわ、私も管理不届きで捕まりたくないし)
「……どうしたのかね、ミス・ヴァリエール?」
「い、いえ! 何もありません」
どう見ても何かありそうな動揺具合だったが、オスマンは特に追究しなかった。
代わりに、何があったかも語ろうとしなかったが。


一方、フーケは脳内で算段を立て直していた。
彼の言う事が確かなら、魔法無しでワイバーンを一撃とは恐ろしく、そして素晴らしい武器だ。破壊の杖なる名前も頷ける。
銃だから魔力が弱くとも扱え、おまけに魔法学院の宝物庫にあったというネームバリューが重なれば、ちょっとした儲けになる。
改めて窃盗手段を考え直さなければ―――場合によっては此処で強奪するか―――ならないが、売ればその金をあの子達に―――。

と考え、引っ掛かりを覚えた。銃、そうだ、銃だ。ならば、必ずあの問題がある。
「ミス・ヴァリエールの使い魔、貴方はこれを銃と言いましたね?」
「は、はい」
『名乗って無いとはいえ、その呼び方は疲れないかなあとは突っ込まないのが大人の優しさであった』
「これは、何発でも撃てるのですか?」
「いえ、単発です」
「たん、ぱつ?」
「はい。一発撃てば終わりです」

あとは、弾とか火薬とか部品の問題とかとハヤテは呟くが、フーケはとうに聞いていなかった。これでは最大のセールスポイントが消滅してしまった。
セクハラに耐え、我が儘な貴族のガキどもに耐え、つまらない雑用に耐えたのも全ては宝の為だったのに、宝自体がゴミと言うオチはフーケの精神を大きく沈ませた。
よかった点は、秘書の給料が思いの外良く、蓄えを貯められたぐらいだ。

(しばらく、盗みもやめてあの子の所に帰ろうかしら。最近、顔も見てないし)

『この後、ロングビルが暇を申し出て、強引に学院を出た事、そして引き止めようとしてオスマンが胸をわしづかみ、ボコボコに蹴られたのは別の話である』



さて、ルイズ達はフーケを今度こそ捕まえようと思っていた矢先に、後は学院の教師達に任せなさいと言われ、流石に居場所も分からない相手は追い掛けられず、仕方なく食堂へと向かっていた。
「いや、あのゴーレムを倒せそうに無いですけど……諦めません?」
「目の前で逃げられて、悔しくないの?」
「うーん……そう言いたいのは分かりますけど、どこかのサングラス長官みたいに人間があんな大きな物を壊す事なんて、出来ませんし」
「破壊の杖を借りて撃つのは? 一発だけでもワイバーンを一撃なら、ゴーレムに効きそうだと思うけど」
「って、人の形見を使っちゃ人間的に問題ありますよ!」
「冗談よ、もう。けど、何であれを知ってたの? それもその変なルーンの効果なの?」
「いえ、あれは僕のところにあった武器なんです。
 何度か逃亡生活で使ったことありますし」
「あんた、ほんとどんな生活してたのよ」
ようやく、談笑する余裕が出て来た二人。そのまま、何事も無い普通の学生生活へと移行しようとしていた。

『だがしかぁし! それ所では無い事態が、二人をを待ち受けていたのであったぁ!』

「ルイズ、ルイズ! こんな所にいたの!」
「探した」
食堂の入口で、キュルケとタバサとばったり出会った。
双方ともどれだけ走ったのか、汗の跡が見え隠れし、普段からは想像出来ない真面目さを瞳に覗かせていた。
「どうしたのよ、二人とも。そんなに慌てて」
「あんたの実家から急を要する知らせがあったって、手紙があったのよ!」
「これ」
タバサが差し出す手紙を、理由が想像つかないながらも受け取って封筒の中身を見ると、みるみるうちにルイズの顔色が変わっていく。
「何が、書いてあったんですか?」
その尋常ではない気配を察知したものの、文字を読めないハヤテは恐る恐る尋ねるが、返事は無い。代わりにキュルケ達に尋ねると、こう教えてくれた。

手紙曰く、カトレアと言うルイズの姉は以前から病弱であったが、最近容態が急変、暫くは持たせるつもりだが至急帰ってくるように、との事らしい。
それは確かに大変だ、と思う一方で、あれ、と疑問。
「お二方は、先に手紙をご覧に?」
尋ねると、何故かキュルケは明後日の方を向き、
「手紙の配達係の人が、隣の人は何処へ行ったかって聞くから、あたしは友達ですから渡しとくって言って。それで宛先がヴァリエール家って書いてあったから、つい」
良い子は真似しちゃいけません。そんなナレーションを想像しながらも、今回は事情だけにキュルケに突っ込むのは後回しにし、主に伺いを立てる。
「お嬢様、早くその家に行きましょう」


ルイズは、手紙を持ったままわなわなと震えていた。
目の前の文字の羅列が信じられなくて、何度も視点を上から下へ、左から右へと動かし、裏返したりもしてみるが、書いてある文字は変わらない。
無論、やらなければいけない事ははっきりしている。それなのに、こんな時に限って頭の中がぐるぐると混ざり合って思考が言う事を聞かない。
ちいねえさまが、ちいねえさまが……。

「お嬢様、早くその家に行きましょう」

その時、使い魔の言葉が暗闇を切り開く光のように、ルイズのやるべき道を照らす。
事情を分かってないながらの暢気さが、今はありがたい。
「そう、ね。今は動くときだわ」
「家の場所は、どこですか?」
「今から出ても、馬車で丸二日かかるわ。早く行きたいんだけど、どうしようかしら……」
ルイズは何かに躊躇うような顔を見せ、ハヤテに振り向き、視線を逸らし、また振り向いては逸らし、それを何度か繰り返した後、ようやく決心を見せた。
「し、仕方ないのよ?
 怖いとかそういうんじゃないんだけど、本当ならジテンシャなんかに乗りたくなんてないけど、あんたの方が早く着くから、本当に仕方無いんだから」
「お嬢様、支離滅裂で何を言ってるか分かりません」
「相棒の自転車ってえ変な乗り物の方が馬より断然速いから、乗せてくれって言ってんのさ」
「なるほど……って、さっきまで静かでしたね、デルフ」
「なあに、空気の読める剣って言いな」

『最近は空気の読みすぎで、一巻まるまる台詞の無い時もある』
「うるせぇ」

「じゃあお嬢様、お姉さんに会いに急ぎましょう。
 僕も、兄がいた事がありますから……」
その時微かに陰が射したのを、ルイズは見逃さなかった。
いつもハヤテは諦めの表現を使っていた事から、彼の家族は酷い人間だと思っていたが、この口ぶりでは兄はその範疇から外れるらしい。
もしかして、その死に目に逢えなかったとか、そういう過去があるのだろうか?
だがそれ以上は何も話そうとせず、ハヤテはそっとルイズの手を取る。
それで彼女も自らのやるべき事を思い出し、一旦心の引き出しに閉まって置くことにした。
「タバサのシルフィードに送って貰ったら?」
「一秒でも、速く行った方がいい」
「心配ありがとう、けど大丈夫よ。
 けどタバサはともかく、キュルケって近頃具合悪くない?」
変に私の心配するしと言外に含みを入れると、キュルケはあんたが張り合いが無いとつまんないのよと笑って返す。
「教師達にはちゃんと言っとくから、さっさと行きなさいな」
「ん、ありがとう」

他に考える余裕が無かったからか、珍しく素直に礼を言える自分に少し驚きつつも、ルイズは同じく礼を言うハヤテを引っ張ってその場を去る。
後に残るは、友人二人。
「ルイズって、最近少しゆるくなったわね。目つきも性格も」
「多分、あれのせい」
「ハヤテって使い魔ね」
もしかして、彼は彼女の普段の頑張りに、始祖ブリミルがもたらした褒美なのかも、と少し空想めいた考えが浮かんでしまう。
主を受け止め、守り、癒す理想の使い魔。
「使い魔なら、あたしのフレイムには敵わないけど」
「……シルフィード」
「使い魔が可愛いのは人それぞれって事? まあ、そうよね。
 さて、あたし達も早く朝食にしましょ」



『ルイズ達は、果たして間に合う事が出来るのか?
 次回は、変態と動物の群れ、そしてライフセイバーと戦いまっすぅ!』

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