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ルイズと無重力巫女さん-03




「ふぅむ…つまり君はミス・ヴァリエールが召喚したのは伝説の『ガンダールヴ』だと言いたいのかな?」
双月が濃くなり始める時間に学院長のオールド・オスマンはコルベールとある話し合いをしていた。
「はい。何回も何回も調べ直しましたが、あれは間違いなくガンダールヴのルーンです!」
興奮したコルベールがつまりそうな早口で言った。
『ガンダールヴ』とは…伝説の系統である『虚無』の使い魔で、ありとあらゆる兵器や武器を使いこなせるという。
コルベールや長寿のオールド・オスマンでさえ見たこともない伝説の使い魔が召喚されたのだ。
探求心豊富なコルベールが興奮するのは仕方がない。
「まぁまぁ落ち着きたまえミスタ・コルベール。興奮するのは仕方がないがちと声が大きすぎるぞ?」
オールド・オスマンは人差し指で口を押さえてコルベールに静かにするように合図をした。

「とりあえずしばらくは様子見じゃ。どこに耳や目があるかわかんからのう…。」
そう言うとコルベールはハイ、と返事をし。軽く頭を下げて退室した。
彼が退室した後、オールドオスマンは口にくわえていたパイプを机の引き出しの中に入れると右手を地面に置き、足下にいたハツカネズミを手の上に乗せた。
「ふぅむ、今日はこんな時間にまで起きておいて良かったのかも知れんのぉ。」
そういってオスマンはハツカネズミを机の上に置くと軽く頭を撫でた。
「モートソグニル、今日はどうじゃったか?……ふむ、今日のミス・ロングビルは白だったか…いやはや。見るのをすっかり忘れるところじゃったわい。」
そう言ってオスマンは仕事をこなしてきた自らの使い魔にナッツを五つ食べさせた後、寝巻きに着替えて寝ることにした。




ルイズは夕食を食べた後ネグリジェに着替え、霊夢には予備に持ってきていた少々大きめのパジャマを貸してあげた。
一緒にベッドに寝るかとルイズは聞いてヒラヒラが多く付いたパジャマを着終わった霊夢はそれに甘えることにした。
「寝床なら明後日くらいにはなんとかするわ。それじゃあ先におやすみ…。」
そういってルイズはベッドにダイブして目を瞑ろうと思ったがふと目を開けて椅子に座って紅茶を飲んでいる霊夢の方に顔を向けた。
「そういえばアンタは使い魔として扱われるのがいやなんでしょう?だったらどういう風に接すればいいのかしら?」
それを聞いた霊夢はティーカップを机に置くと少し頭をウンウン捻った後に言った。
「そうね…じゃあとりあえず゛同居人゛とかそんな感じでお願いしようかしら」
その言葉を聞いたルイズは同居人ねぇ…、と言って目を瞑った後すぐに寝息が聞こえてきた。余程疲れ切っていたのであろう。
その数分後に霊夢もポットの中に入っていた紅茶を全て飲み終えたので寝ることにした。


「……さい、ルイズ。」
安眠していたルイズは目の前から聞こえてきた声と手で体を揺すぶられる感覚で目を開けた。
「いつまで寝てるのよ。もうすぐ朝食の時間でしょ?」
その言葉遣いにルイズはエレオノール姉さんかと思ったがそれはルイズが召喚した少女、霊夢だった。
既に袖が別離している紅白服(本人が言うには動きやすさを重視した為らしい)を着ていた。
「あぁ、そぉだったわねぇ…。ふぁぁぁ…」
ルイズはまだまだ寝たいという体に鞭打ち、大きなあくびをしてベッドから飛び降りた。
目を擦ってベッドの横に置かれた椅子を見てみると椅子の上に綺麗に洗濯されて畳まれた制服が置いてあった。
恐らく霊夢が朝イチにやってくれたのだろう。その霊夢はというと鏡を見ながら頭につけてるリボンを整えている。
ルイズは霊夢に自分の服を着せようと思ったが彼女は『使い魔』ではなく『同居人』なので、自分で着ることにした。

ルイズの着替えが終わり、丁度リボンを整え直した霊夢と一緒に部屋を出ると隣の部屋のドアが開いた。
その部屋の中から出てきたのは『微熱』の二つ名をもつキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーであった。
「あらおはようルイズ。夕食の時に食堂にはいなかったけどちゃんと夕食は食べたのかしら?」
キュルケはルイズを小馬鹿にするような目で話しかけてきた。
「大丈夫よキュルケ、夕食は部屋で食べたから。」
ルイズはキュルケの小馬鹿にするような目と言葉に耐えて返事をした。
そのあとキュルケはそう、と言って霊夢の顔を見た。
「何よ?何か私の顔に付いてるの?」
負けじと霊夢もジト目でキュルケの顔を睨む。
目には目をの要領で睨んできた霊夢に、キュルケは年下の人間に諭すかのような感じでこう言った
「いやね、こんなかわいい顔なのになんか目が冷たいなーって思っただけよ。」

キュルケの言葉に霊夢は顔を顰め、一言。
「余計なお世話よ。」
その言葉を聞いたキュルケは途端に腹を抱えて笑い出した。
「あははははは!『ゼロ』のルイズと無愛想な『使い魔』!なんかいけるわねこれ!」
キュルケの『使い魔』という言葉に反応した霊夢は人差し指でキュルケの鼻先をつついた。
「勘違いしないで頂戴。私はルイズの『使い魔』じゃないわ。『同居人』よ。」
「……同居人?」
ムスッとした表情を浮かべる霊夢の言葉にキュルケは顔を怪訝にすると彼女の後ろから火を吐くトカゲ、サラマンダーがヒョコッと出てきた。
「確かそれ、アンタの呼び出した使い魔…だっけ?」
ルイズが欲しそうな目でそのサラマンダーを見つめる。
「そうよ、名前はフレイム。これはきっと火竜山脈のサラマンダーに違いないわ。」
キュルケはフレイムの頭を2、3回撫でた後、ルイズと霊夢に手を振ってフレイムと一緒に食堂へと向かっていった。

「フン、なによキュルケのやつ…自慢しちゃって!」
しばらくして、ルイズはキュルケの態度を思い出し、内心の苛立ちを露わにしていた。
霊夢はと言うと、そんなルイズを後ろから冷たい目で見つめていた。
「あんなトカゲの何処がいいの?ただ体が赤くて火を吹くだけじゃないの」
「一応教えとくわ…召喚した使い魔はね、そのメイジの器量と強さを表してるらしいのよ。いわばそのメイジの強さ…魔力…そして才能!!」
そこまで喋ったとき、ルイズの足が止まりその場で悔しそうにギリギリと握り拳を作った。
霊夢はそれを聞きながらも足を止めずそのままツカツカとルイズの前まで来ると、彼女の目の前でこう言った。
「ならアンタの方が強いんじゃないの?」
ルイズがその時見た霊夢の顔は、どこか無愛想漂うがその中に小さな微笑みも混じっていた。気のせいだと思うが。
その言葉を言った当の本人はツカツカと食堂へ向かって歩き出し、ルイズは首を傾げながらもその後を付いていった。






「さぁついたわ、ここがアルヴィーズの食堂よ。」
ルイズはそういって食堂の方を指さした。
そこは正に大聖堂と言って良いほどの大きさで、大きな入り口から多数の生徒が中に入ってゆく。
「ここには有名なシェフ達が働いているからいつもバランスと栄養が整っている食事が取れるの。」
「……なんか食堂にしてはでかすぎない?」
霊夢は頭を上げ食堂を見上げながら言った。

太陽が後ろでサンサンと光っているため誰も言わなければ何処かの大聖堂と間違えてしまうくらいに立派である。
ルイズは霊夢の言葉など無視してさらに説明を続けていた。
「………その外装にさることながら中もすごく、料理人は全て超一流よ!!!」
食堂の入り口で熱弁をふるうルイズに視線を戻した霊夢を含めそれを聞いていた数人の生徒は拍手を送った。

「ねぇギーシュ、あれは何かしら?」
「おおかた、ゼロのルイズが自身の使い魔に熱弁を振るってんだろ?気にするなよ。」



食堂の内部は思ったより大きく、数百人の生徒達が椅子に座って雑談をしている。
そして長いテーブルの上には純白のテーブルクロスがしかれ、その上には綺麗に彩られた料理が置かれている。
ルイズは真ん中のテーブルに行き、椅子を自分で引くと座った。
その後をついてきた霊夢はルイズの足下に置かれている野菜と鶏肉が均等に入ったスープと、湯気を立てているパンと空のティーカップがあることに気づいた。
「料理の方は結構良くしたけど…流石にテーブルの上では食べる事は許されないから床で食べてくれない?」
「まぁ別に良いわよ。元の世界でも椅子に座って食べるとかそんなのはあまり無かったから。」
霊夢は別段何も感じられない瞳でルイズの顔を一瞥してから床に座った。


『………大なる始祖ブリミルと女王陛下よ、今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことに感謝致します。』
(食堂の中も結構凄いけど、食事の味も結構良いわねぇ…)
霊夢は生徒達が呟く祈りをBGMにして一足先に朝食を頂いていた。
生徒達の祈りが終わった後、奥の厨房からメイドが二、三人ティーポットを持ってやってきた。
どうやら生徒達に紅茶を入れているらしい、トクトクトク…という音が食堂のアチコチから聞こえてくる。
やがて一人のメイドがルイズの所にまでやってきて紅茶を入れると地面に座って朝食を食べている霊夢と目が合った。
最初メイドは霊夢を見て不思議そうな顔をしたが何か思い出したのかすぐに笑顔を振りまいた。
「あ、おはようございます。あなたも紅茶が欲しいんですか?」
「うん、入れてくれる?」
そう言って霊夢は空のティーカップをメイドに渡すとメイドは慣れた手つきで紅茶を入れ、紅茶が入ったティーカップを霊夢に渡した。
紅茶は綺麗な色をしており、見ただけで満足してしまう。一口飲んでみたらこれがまた美味しい。
「ありがとう。あなたの入れた紅茶、とってもおいしかったわ。」
メイドは礼をすると隣の生徒のティーカップにお茶を入れていった。




朝食が終わり、霊夢とルイズはとある広場に来ていた。
広場には二年生になったばかりの生徒達と使い魔がおり、今日は召喚した使い魔とコミュニケーションを取る日である。
「いつもなら午前の授業があるんだけどね、今日は使い魔との交流会があるから潰れたのよ。」
「ふーん…」
霊夢は素っ気なく返事をすると紅茶を飲みながら辺りを見回した。
周りは全て哺乳類や爬虫類、鳥類だらけで、その中には目玉の化け物やドラゴン等がいた。
(妖怪…?はたまた悪魔か何かかしら?なんかよくわからないのがいるわね。)
自分やあの目玉と竜以外は蛇や蛙、フクロウといったよく見かける生物がいたがなぜか一匹だけ違和感のある生物が視界に入った。
「………モグラよね?」
霊夢は自身の視線の先にある巨大なモグラを見て思わず呟いてしまった。
それを聞いたルイズは霊夢の視線を追い、そのモグラを見た。
「え?ああ、あれはギーシュの使い魔よ。」
「ギーシュ?誰よそれ。」
「ほら、あのモグラの近くにいる派手な服装の。」
大きさが小熊くらいあるモグラの主人と思われるギーシュは薔薇の造花を片手に持ち、金髪ロールの女子生徒と話しをしていた。

「どうだいモンモランシー、僕の使い魔ヴェルダンデはなかなか可愛いだろう。」
ギーシュはヴェルダンデの頭を膝に乗せて頭を撫でながら言った。
「かわいいけど…今度からわたしと一緒にいるときは出さないでね。」
金髪ロールのモンモランシーは少し引いているような感じでギーシュに言った。
当然である、あんなでかいモグラをかわいいとか言ってる人は普通の人が見れば相当引く。
愛嬌はあるが体の大きさがそれをはね除けていた。普通のモグラサイズだったら万人受けしていただろう。




その後、トイレだからとルイズが席を立って数分後…
なにやらギーシュの方から騒がしい声が、霊夢の耳に入ってきた。
「ギーシュ様、はっきりしてくださいよ!!どうして嘘などつくのですか!」
「待ってくれよ、君たちの名誉のために…」
「そんなのはどうでも良いのよ!今大事なのは一年生に手を出していたのかしていないかの事よ!!」


振り返ってみるとギーシュはモンモランシーと茶色のマントを着た女の子に何か言い詰められている。
「僕は二股なんかしていないよケティ、モンモランシー。薔薇は女の子を泣かせないからね。」
「ギーシュ様!それ答えになってません!」
(自分を薔薇と思ってるのかしら…。)
霊夢は聞こえてくるギーシュの言葉に呆れているとふとギーシュの懐から十枚を紐で一束にまとめた手紙が落ちた。
それを見たモンモランシーがその手紙をギーシュよりも早く手に取ると顔を真っ赤にしながらも満面の笑みを出した。
「…ギーシュぅ?この手紙全てに一年や二年なんかの女子生徒の名前が書いてるんだけどこれってイッタイどういう事かしらぁ?」
「そ、そんなまさか…酷いですギーシュ様!!二股では飽きたらず十股していたなんて。」
「え、あ、あのぉ…だからこれは…。」
「「このウソツキ!!乙女の敵!!!」」
ギーシュが言い終わる前に二人の平手打ちが炸裂してギーシュは空中で綺麗に4回転し、地に伏した。

二人の少女が怒りながら広場から姿を消すと他の生徒達がドッと爆笑した。
「ギーシュ!おまえ見事に振られちまったな!?」
太った少年がギーシュに向かって言うとギーシュは立ち上がり服に付いたホコリを払うと一回転した。
「はは、僕にとってはもう慣れっこさ!」
このギーシュという男、たいそうな女たらしであった。ちなみに過去の最高記録は十五股である。
その光景を見ていたルイズは生徒達と同じく笑っていたが霊夢は立ち上がるとギーシュに近づいていった。
そしてギーシュの傍によるとポンポンと肩を叩いた。
「ん?誰だい君は……あぁ確かルイズに召喚されていた娘か。何の用だい?もしかして僕と付き合いたいのか?」
「何勘違いしてるのよ。私はアンタの恋愛運でもあげてやろうと思って来たのよ。」
実際ギーシュは恋愛運が良いとはお世辞にも言えない。むしろ逆に恋愛関係の災難にあう確率が多い。
先ほどの光景を見た霊夢は気まぐれに、たまには巫女らしく御祓いしてやってもいいだろうと思ったのだ。
「僕の恋愛運を?それは有り難い、ならば早速…ん?」
ギーシュは突自目の前に出された霊夢の手に不思議そうな顔をした。
「この手は一体何だい?」
「賽銭よ、あんたの運をあげるんだからアンタもそれ相応の何かを出しなさい。」
ギーシュは頭に?を浮かべて顔を傾げる
「賽銭…何それ?」
彼の反応も当然である、何せこの大陸には賽銭を入れる賽銭箱はおろか、神社すらないのだから。
「知らないの?御祓いをする人にお金などを出して運勢を占ったり祈祷などをしてもらうことよ。」

「金」という言葉を聞いたギーシュは明らかに不機嫌な顔で霊夢を睨んだ。
「それはつまり…恋愛運を上げてやるからお金をくれという意味かい?」
「そうだけど?でもそんな言い方はしてないわよ。」
その言葉を聞いたギーシュは数歩退くと薔薇の造花を霊夢に向けた。
「このトリステイン貴族にタダで金品を要求するとは…なんたる無礼、即刻僕に謝罪したまえ。」
いきなり大声で叫んだギーシュに霊夢は少し驚きながらも答えた。
「貴族だか平民だかなんだか知らないけど要は…―――ってイタ!」
喋っている最中にいつの間にか彼女の後ろにいたルイズに頭を叩かれ、霊夢は頭を押さえた。
「あんた私がいない間に何してんのよ!?さっさと謝りなさい!」
「貴族がなによ?あいつも魔法を使わないとただの人間でしょ?それに二股してた方が悪いし。」
霊夢はこの世界で貴族という存在がどれ程高位なものとも知らず。ギーシュを馬鹿にするような目で見ている。
「…………どうやら魔法の才能が無い『ゼロ』のルイズに召喚された君は、貴族に対する接待の仕方を知らないようだね。」
ギーシュがそんなことを言った直後、霊夢の左手が闇夜でしか認識できないくらいの薄さで光った後、霊夢が目を鋭くしてギーシュにこういった。
「…………お生憎様、私はあんたみたいな『孤立無援な女の敵』に持ち合わせる態度はないわ。」
惜しげもなく出たその言葉は、ギーシュを激昂させるのには十分な代物であった。


「!?………君に決闘を申し込む!」
完璧に吹っ切れたギーシュは高らかに宣言した。
「別にいいわよ。ティータイムの後には丁度良いわ。」
「ヴェストリの広場で待っているよ!」
ギーシュはそう言うとマントを翻し颯爽と去っていった。
その後霊夢はハッとするとふと左手の甲を見ようとしたがルイズが後ろから激しく肩を揺すった。
「あんたなんて事したのよ!?貴族に決闘を申し込まれるなんて…!」
「わわわわわ……あんた馬鹿にされてたのによく怒らないわね…というか目がまわるぅ~…」
「あんたもしかして私のために……あんなのいいのよ!貴族はあんなことで怒るなってお母様に言われたのよ!」
必死な顔で霊夢をみているルイズは尚も肩を揺する。
とりあえず霊夢はルイズの手を肩から外すと、太っている少年に声を掛けた。
「はぁはぁ………ねぇ、ヴェストリ広場って何処かしら?」
「こっちだ、着いてこい。」
ルイズはほほえんでいる太った少年、マリコルヌに着いていこうとした霊夢の手を引っ張った。
霊夢が苛立ってルイズの方に顔を向けた。ルイズの顔にはうっすらと恐怖の色がにじみ出ていた。
「ねぇ、お願いだからやめて!グラモン家を怒らせたらただじゃすまないわよ!?下手に勝ってしまったら何をされるか…」

霊夢は静かにルイズの手を振り払い少し先にいるマリコルヌの後を着いていった。
「もう………バカァ!!」
ルイズの叫びは、空しくも霊夢の耳に届くことはなかった。


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