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マジシャン ザ ルイズ 3章 (21)

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マジシャン ザ ルイズ (21)爆発

両手を広げ、今ぞ抱きつかんとしたワルド。
だがその刹那、横殴りに現れた旋風がワルドの頬を殴りつけ吹き飛ばした。
ワルドを殴り飛ばしたそれは、鋼鉄で武装した人間の腕。


ワルドの計画は九分九厘まで成功したといって過言ではなかった。
アルビオン掌握から始まり、ガリア王暗殺、傀儡の女王を擁立してその側近達を自分の意のままに操る。
軍事大国二国を手中に収め、トリステインにガリア方面から圧力をかけつつ、一方でゲルマニアを制圧。
ロマリアと交渉し、最終目標を聖地の奪還であることを盾にトリステインへの不干渉を取り付けた。
孤立無援となったトリステインを鼠をいたぶる猫のようにもてあそび、王都にいる人間達を人質にしてルイズを手に入れる。
ウェザーライトの起動を食い止めることは適わなかったが、最大の障害と目された老いぼれは無力化した。
もう何も、ワルドの前に立ちふさがるものは存在しない。
その慢心が、先の一人語りへと繋がった。
その中の一つ、ルイズに見せ付けた左手に握られた眼球。その気配が眠れる獅子を起こすことになるとも知らずに。


長身であるワルドを三メイルは吹き飛ばした腕。それは空間を渡り現れた虚無の使い魔ウルザの片腕であった。
その全身はルイズの見たこともない鎧に覆われており、左手にはデルフリンガー、背には杖を背負っている。
異様な戦装束。けれど、ウルザというこの老人が纏うと、まるでそれが彼本来の在り方であるかのように違和感を感じさせないのであった。

「無事かね、ミス・ヴァリエール」
仰向けに倒れたまま動かないワルドを、鋭く一瞥しながらウルザが言った。
「あ、ええ、勿論よっ」
心臓を鷲掴みにされたような恐怖が、いつの間にか薄れていた。
先ほどまで心臓を停止して倒れていた人間が、何事も無かったかのように現れたことに驚きを感じてはいたが、それ以上に強い安心をルイズは感じていた。
ルイズが気付いた時、ウルザの視線はルイズの手の中の『始祖の祈祷書』へと注がれていた。
「あの、ミスタ・ウルザ……これは」
けれど、ウルザは首を振って応える。聞き分けの悪い生徒に諭すように、優しさと威厳を込めて。
「君のやりたいように、すると良い」
そう応えたウルザが、体をワルドに向け、一歩前進する。

ウルザのその一歩を待っていたかのようにワルドは倒れた姿勢のまま浮き上がり、体を甲板に対して垂直に起こした。
「やはり君か、子爵」
「ご無沙汰です、使い魔どの」
ここに至って、ウルザは今出せる全力を以て目の前の敵を迎え撃つ決意をした。
今引き出せるプレインズウォーカーとしての力の総力を以て滅ぼす決意を。
ワルドの左手から感じる波動、それはまごうことなきファイレクシアの力。
かの暗黒王に察知されてしまったのなら、既にプレインズウォーカーとしての力を隠蔽する理由はなく。また、出し惜しみして屠れるほど目の前の男は弱くはないと感じ取った。
「愚かな。それほどの才能を持ちながら、何故ファイレクシアの狗に成り下がった!」
「違うな、私の力にファイレクシアが惹かれたのだ!」
同時に甲板から宙へと浮き上がるウルザとワルド。
ここから始まる戦いは、正しく人間を超えたものとなった。

「デルフリンガー!肉体の制御は任せた!」
「おうよ相棒!合点承知!」
人間以上の親和性によって放たれる、凶悪化した大量の魔法の槌。
ウルザ、いや、ウルザの体を操るデルフリンガーはこれを巧みに操り回避し続ける。
一方的に放たれ続ける風の凶器、その間隙を縫ってウルザは近づいていく。
「……来たれ第一槍!」
ウルザの召喚の呪文が高らかに響く。召喚の気配を察してすかさず距離を離そうとするワルド。
そのワルドに異変が襲う。
最初は体内の異物感、それは激痛へ変化しすぐさま外界へと飛び出した。
「があああっ!?」
ワルドの腹部を穿ちながら現れた鋸刃を持つ機械の槍。ウルザに召喚されたアーティファクトはワルドを腹部を貫きながら召喚主の手元へと飛んだ。
仕掛けたウルザは右手で機械槍を掴みながら、敵の傷の具合を観察する。
敵の手の内を知らぬ状態で攻撃を仕掛けるのは高いリスクを伴う、そのことをウルザは長いプレインズウォーカーとしての生涯で学んでいた。


腹部を貫かれたワルドは素早く牽制のウインド・ブレイクを放ちながら、左手の眼球を操作する。
果たして変化は直ちに訪れた。
ワルドの内部から光の触手が伸び、それが負傷した部分を組み替えるように動き回り、一瞬の後には何事も無かったかのように傷は完治していた。
「ミスタ・ウルザ、それがあなたのアーティファクトか。なるほど、知識で知っていても実際に目にするのとは大分違う」

「貴様のそれは……ファイレクシアのスフィアコアかっ!?」
ウルザの分析眼はアーティファクトに限定するならば多次元宇宙世界ドミニアの中でも最高位に属する。
その彼にとっても既に数度目にしたことのあるアーティファクト、多層構造を持つファイレクシアスフィアの各層を管轄するスフィアコアユニット。
かつてナインタイタンズが精神爆弾をもって破壊しようとしたファイレクシアの核の一つ。それこそがワルドの手に納まっているものの正体であった。
稀代のアーティフィクサーウルザをもってしても、そのスフィアコアにどれほどの知識が納められているのか推し量ることはできない。
だがしかし、ウルザは誰よりもそのコアの危険性を理解していた。

「それはお前を蝕む毒だ」
先駆者として、最も新しい後輩への助言を与える。
「毒ならば、食らい尽くして力に変えてやろう」
だが、逸る若輩にはその言葉は届くことは無い。
「……ならば取り込まれる前に私が引導を渡すまでだ、プレインズウォーカー・ワルド」



月光の下、ウルザとワルドの空中戦が行われる一方で甲板ではルイズの朗々とした詠唱の声が響いていた。
――ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシュラ
今のルイズには前方に広がる大艦隊も、空で戦う二人のプレインズウォーカー達も見えてはいない。
彼女に見えているものはただ己の内側のみ、彼女に聞こえているのはただ自分の心臓の音のみ。
彼女の戦いは、自分自身との戦いであった。


ところ変わって、ブリッジの操舵席。
そこに腰を下ろしたギーシュと、その横にモンモランシーが立っていた。
「ねぇギーシュ!もう良いじゃない!あなたは良くやったわ、逃げずにここまで頑張った、でももう無理よ。敵があんなに近づいて……もう目と鼻の先よ!
ルイズは失敗したのよ。そう、きっと上手くいかなかったのよ。だからギーシュ、もう……」
引き返すようにギーシュに言うモンモランシー、その言葉にギーシュは頑なに首を左右に振る。
「ルイズは、ルイズはここで僕がフネを動かすことが、僕の戦いだと言った。何をやっても中途半端で、大した力が無いくせに自分を大きくばかり 見せたがる、この僕を見て、これが僕の戦いだと言ってくれた。
そんな彼女が自分の戦いに向かったんだ、だから……僕は何があっても、彼女を信じる」
これが決意、ギーシュ・ド・グラモンの決意。
自分は自分の戦いをする、ただそれだけの平凡な、そして彼らしい決意。
そして二人に訪れるしばしの沈黙。

充血するほどにかたく操舵環を握ったギーシュの手に、そっと柔らかな手が添えられた。
「モンモランシー?」
「馬鹿、そんな意地に女の子を巻き込むなんて、ホント最低、自己中心的だわ」
「……ごめん」
「そんなことじゃ、絶対女の子に嫌われちゃうんだから」
「……」
「そんなあなたについて行ってあげようって言うんだから、大切にしてよね」
「え、モンモ……」
彼はそれ以上続けることができなかった、なぜならその唇を彼女が塞いでしまったから。
一瞬のキス、けれどそれは、永遠よりも長く切なく。
名残惜しそうに離れていくモンモランシーのうっすらと朱をひいたような顔。
それを見たギーシュは、これまで目にした女性より、どんな彫刻より、どんな夜空の星の煌きよりも彼女こそが世界一美しいと、心底思った。
「最後かも、しれないから、ね」
「いいや……そんなことは無いさ、こんなところで終わってなるものか。僕達は、きっと生き残る!」


タバサがうっすらと目を開けた。
経験豊富なシュヴァリエは、まずは現状の把握に努めた。
空中で戦っている使い魔ウルザと魔人ワルド、フネは進路を変えずに正面の大艦隊へと向かっている。そしてルイズは、祈祷書のルーンを読み上げていた。
体は――動かない。

――ジュラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル

独特の韻を踏んだ古代ルーンによる詠唱。
それがどのような呪文であるのか、タバサには分からない。
けれど、その始めて耳にするはずの呪文を、タバサはなぜか懐かしいと感じた。
まるで母の子守唄のような、意識ではない、もっと深いところで覚えている郷愁を感じさせる不思議な詠唱。
そして直感的に理解した。これこそがルイズにとって本当の、自分の系統魔法なのだと。
そう思いながら、タバサの意識は再びまどろみへと落ちていった。


長い詠唱が終わり、遂に呪文が完成した。
その瞬間、ルイズは己がこれから放つ呪文の威力を理解した。
この呪文は巻き込む、全てを巻き込む。
だが同時に理解した。
自分が放つ呪文の範囲、生きているのはほんの数名。
ワルド、そしてその使い魔である一人と一匹。
それ以外は全て、全て死者であると。
視界に入る無数の巨艦、それらの中にいるはずの人間達は、既にこの世の者ではないのだと。
ルイズは口の中に苦く広がるせつなさを感じながら、杖を振り下ろした。

「爆発/Explosion」

ルイズが杖を振り下ろすと同時、甲板上に溢れんばかりの白光が満ちた。
放たれようとする虚無の魔法の予兆。
だが、事態は何人も予期せぬ方向へ転がり落ちようとしていたのである。


一見して白光に見える光、だがその真実は虹の光であった。
ルイズの右手と左手に嵌めた、水と風のルビー。
それが相互に干渉し合い、かつてイーグル号で皇太子ウェールズが見せた虹と同質のものを発生させていた。
ただ一つ違うのは、その規模と共鳴体。
かつて共鳴を引き起こしたものはウルザの両の瞳に納まるウィークストーンとマイトストーン、二つのパワーストーンであったが、今回共鳴を起こしたのは、ウェザーライトⅡに据えられたスランエンジンであった。
古代スラン文明の英知によって創造されたスランエンジンが、自身にとっての本来の動力源であるパワーストーンと共鳴し、その力を存分に増幅する。
即ち、ルイズの指に嵌った二つの指輪、風と水のルビーと呼ばれる、二つのパワーストーンである。


「ぬ、お、おおおおおお!!」
パワーストーンによる共鳴現象の余波は、ウルザのパワーストーンにも襲い掛かった。
強大なマナを内包するパワーストーンが、始祖のパワーストーンとの共鳴増幅によって、その力を爆発的に増大させる。
脳内に早鐘のように響くグレイシャンの呻き、体中の神経は溶鉄を流し込まれたかのように焼け爛れ焦げ付く。
押さえ込むことさえ敵わぬ強大な力の暴走にウルザは耐える。
「か、はっ!」
一方のワルドも、大きく血の塊を吐き出した。
その右手に嵌めたパワーストーン、土のルビーがウルザのウイークストーン・マイトストーンと同様に、共振を引き起こしたのである。
体中に裂傷が走り、裂けた部分からマナが噴出する。マナが溢れ出す度に傷口は広がり血とマナを溢れさせた。
「共感作用かっ、しかし、これはまるで……」
搾り出すように言葉を紡ぐウルザ。
「狂人め!何故こんなことを、彼女にさせるっ!生身の人間に、耐えられるはずがないではないか!」
純白であった制服を鮮血に染めながらワルドが叫ぶ。

そう、これは二人にとって誤算以外の何ものでもなかった。
ウルザとワルド、両者は共にルイズの力を求めている。故に危害を加える気などありえるはずも無かった。
だが、二人の思惑が交錯した時、互いの意図の超えた誤算が生じた。
ワルドにとってはルイズがアルビオンの大艦隊に対して正面から立ち向かうことが想定外であり、ウルザにとってはルイズの指に嵌ったパワーストーンが自分の設計したスランエンジンと共感増幅を引き起こすことが想定外であった。


「いかん、これでは……彼女の肉体が焼き切れるっ。エンジンを停止させねば……」
だが、消耗し疲弊し体内を荒れ狂うマナの濁流に翻弄されるウルザにとっては、宙に留まることすら困難であった。
対して、パワーストーン一つのフィードバックしか受けていないワルドは、ウルザに比べれば健在であると言えた。
ワルドはデルフリンガーを片手に胸を押さえて蹲るウルザを見て一瞬の躊躇を見せたものの、眼下のルイズへと体勢を向けて、大きく手を広げた。
「死にぞこないめ、見ているがいい。この程度の力……飲み込めぬ私ではないぞ!」
かっ、と眩しくワルドの体が輝いたかと思うと、その大きく開かれた口、そして目、鼻、耳、両手、そして体中の裂傷から光の触手が伸び、宙に浮んで全身から光を放つルイズに先端を『接続』した。
次の瞬間、繋がった触手を伝わり、ルイズの体内を駆け巡っていたパワーストーンの超大な魔力がワルドへと押し寄せる。

「――ッ!!  ■■■■■!!!!!!! ――――――ッ!!」

言葉にならない絶叫がワルドの口から迸る。ワルドの魔力が風船のように膨れ上がっていく。
だが、ウルザの目から見て、それも一時の時間稼ぎに過ぎないことは明白であった。
ワルドに魔力を吸い出されながらも、ルイズの肉体は確実にパワーストーンに蝕まれている。
やはり、彼女を救うにはウェザーライトⅡのスランエンジンを停止する他に道は無い。
だが、どこの誰がそのようなことを行える?
自分自身はこの肉体を保つことで精一杯である。
オスマン・タバサは甲板の端に転がったまま動かない。
ギーシュとモンモランシーは? いや、そんな時間は無い。
誰か、誰かいないか、彼女を救えるものは……
ウルザは艦内に意識を飛ばし、注意深く探った。
想定外を超える想定外を。予期せぬ事態に対応しうる、予期せぬ存在を。

そして、それは見つかった。



小さく音と立てて、両開きの扉が開いた。
それまで錬金、その他の方策を試し、結果としてびくともしなかった強固な守りが、突然に開け放たれたのだ。
流石にこの変化に彼女もいぶかしんだが、何はともあれ厄介ごとが解決したのである、中へと入らない道理は無かった。
足を踏み入れた部屋は、めぼしをつけた通りの場所であった。
きらびやかな宝石類が棚に納められ、一方でどんな用途に使うのかも分からないガラクタが転がっている。武器や鎧、大きな鐘や中から釣り下がった円形をした何かの模型もある。
見覚えの無いものはちらほら目に付くが、それらの大部分は彼女が以前学院の宝物庫に侵入した際に目にしたマジックアイテムの数々であった。
「やっぱりね。最初から襲撃を予測して、こっちに移してたって訳ね。ふふん」
そう彼女がつぶやいたのと、彼女の目の前に男が現れたのは同時であった。
「ちっ!やっぱり罠か!」
『待て……土くれのフーケよ』
そう、船の宝物庫に忍び込んだのはブリッジから隙を見て姿を消していたフーケその人であった。
そして、その正面に立った男こそは、フーケが投獄されることとなった事件の当事者が一人、虚無の使い魔ウルザ。
だがその体は半透明でおぼろげ、背後が透けて見えている様子は誰に聞いても幽霊と答えるに違いない姿である。
『取引をしよう』
「……取引?」
『そうだ……今から私の言うことに従ってくれるというなら、この宝物庫にあるどのようなものでも一つ君に譲ることを約束しよう』
「へぇ、随分と気前がいいじゃないのさ。学院長でも無いのにそんな事言ってもいいわけ?」
『構わない、私が交渉する……』
口元に手を当てて目を泳がせて思考するフーケ、相手の提案を吟味する。
悪い話ではない、だが。
「それで、嫌だといったら?」

『君を、ここで殺す。そして君の大切なものにも消えぬ呪いを刻み付ける』

波一つ無い湖畔のような静謐さで呟くウルザ、だがその瞳はらんらんと輝いており、それが脅しでないという恐ろしいまでの圧迫感をフーケに与えた。
それは、いつかワルドから感じたあの恐ろしいまでの狂気と同質のものであるように思えた。
ならばフーケのとる道は一つ……。
「交渉も何も、強制じゃないか……」
『返事は?』
「……分かった、やるよ」



フーケは投射されたウルザの幻影の指示に従い、宝物庫から一つのマジックアイテムが納められた箱を持ち出した。
一メイルほどの大きさのその箱を両手に抱え、宝物庫から一区画離れた動力室へと走るフーケ。
フーケがそこに到着した時、動力室の扉は開け放たれており、中からはスランエンジンの咆えたける唸り声が轟いていた。
「それで、これからどうすればいいんだい?」
『箱を開き、中にあるものを取り出すのだ』
「はいはい……って、これが杖?何かの間違いじゃないの?」
フーケが取り出したのは、見たことも無い、筒状の物体。
その名は――『破壊の杖』


ウルザの指示通りの射撃姿勢を取り、引き金を引くフーケ。
肩に担がれた破壊の杖から三○○mm以上の装甲を貫通する六六mmの成形炸薬弾が発射され、ウェザーライトⅡのスランエンジンは停止した。



同時、張り詰めていた糸が切れるようにして、ルイズの『爆発』が発動し、世界を覆った。



トリステインだけでなく、ガリア、アルビオン、ロマリア、そしてエルフの聖地。
全ての国の全ての人がそれを目撃した。
この現象を、ある者はブリミルを御業だと涙し、ある者は世界の終わりと嘆いた。
各国に、この光によってアルビオンの無敵艦隊が全滅したと伝えられたのは、この暫く後のことである。



ただ一人戦場に残され、天を見上げていたジュール・ド・モットはことの顛末の一部始終を目撃した唯一の証言者となった。
彼はこの後に、アンリエッタに以下のような報告を行っている。


――まるで、一瞬で夜と昼が入れ替わったかのようでした。
  最初に単騎でアルビオン軍と戦っていたフネの上空に光の球が現れました。
  それはまるで、小さな太陽のようにまばゆい光を放っていました。
  続いて、その光の球が膨れ上がり、フネを包んだのです。
  そのまま光の塊はどんどんと大きくなって、遂にはアルビオン艦隊にまで及びました。
  それでも膨らむことをやめない光の球は、遂には空全体を覆い尽くし、やがては私自身も光に覆われてしまいました。
  目を瞑り、両手で顔を覆っても、光はそれらを貫いて私の目に届くほどでした。
  どれくらいの時間がたったのか分かりません、一瞬だったのか、それとも一分だったのか。
  光が晴れ、再び夜の闇が訪れた時、アルビオンの全てのフネは青い炎を上げて燃えていました。
  悪夢のように、朧のように背後に控えていたアルビオンも消えていました。
  何が起こったのか私には分かりません。
  ただ一つ、私にも分かることは、あの光こそがトリステイン王国を救ったということです。

                        ―――ジュール・ド・モット


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