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薔薇乙女も使い魔 第七話    『ルーンと指輪とデルフリンガー 』




 結局、フーケ捜索隊はキュルケとタバサで行く事になった。
 戦闘力は教師達を上回るという事で、渋々教師達も承諾した。捜索隊の二人は、ルイズ
を想って志願したのに、なんだかなりゆきでルイズ抜きに馬車で出発する事になった。道
案内兼御者として、ミス・ロングビルが同行していた。
 そして、学院長室にはオスマン氏とコルベール、ルイズと彼女の使い魔達がテーブルを
挟んでソファーに座っていた。デルフリンガーはソファーに立てかけられている。



「つまり、エレオノール女史は、引き下がったんじゃね?」
「はい。ですが、諦めたとは思えません…」
 結局、ルイズは昨夜起きた姉との大喧嘩を、全部しゃべらされた。

 話を聞き終えたオスマン氏は、ずずぅ~っとお茶を飲んだ。

「いや、もしかしたら、これは上手く行くかもしれんぞ」
 トンッとカップを置いて、オスマン氏は明るい顔になった。ルイズはキョトンとする。
「エレオノール女史はお供を連れていなかった。その上、学院に来る事を事前に君に知ら
せなかった。
 これはどういうことか分かるかな?」
「よほど慌てていたのね。では、何をそんなに慌てていたのかしら?」
 真紅が横から指摘した。オスマンも大きく頷く。
「そうじゃ。つまり、彼女はアカデミーから派遣されたワケでないということじゃ。アカ
デミーから派遣されたなら、事前に伝えるなりの正式な手続きを踏んで、昼間にゆっくり
お供を連れてくるはずだからの」
「つまり、姉さまはアカデミーの命令でもないのに、私の所に来たと言うんですか?なら
何故私の使い魔達を連れて行こうとしたの!?」
「スタンドプレー…研究を独占したかったのか。アカデミーより早く真紅と翠星石を手に
入れたかったワケだ」
 ジュンも、うんざりしたかのようにつぶやく。
「はあぁ~、まぁったくあのコーマンチキは困ったヤツですねぇ!出世争いなんか他でや
れですぅ」
 翠星石もヤレヤレというで呆れている。オスマン氏は深くため息をついた。
「そうじゃのぉ…はぁ、まったく、他でやって欲しかったのぉ」
 疲れたようなオスマン氏の姿を見たルイズは、昨日の夕方から姉を相手していた学院長
が、どれほど苦労していたか想像出来た。ジュンも、多分コルベールもロングビルも昨日
相当困ってたんだろうなぁ、それでさっきヘンな態度だったのかぁ、と納得した。

 コルベールが身を乗り出して話し出す。
「つまりですな。エレオノール女史としては、今回の事は絶対に表沙汰にしたくないわけ
です。彼女は主席研究員とヴァリエール家の地位と権力を最大限使い、君達にアカデミー
の手が及ぶ事を、防がざるをえないわけですぞ。
 でないと、今回の事が全部バレて、アカデミーから『研究材料の隠匿と独占』の責任を
問われるわけですからな。たとえ未遂でも、これはアカデミーでは致命的ですぞ!」
 オスマン氏もウンウン頷く。
「こちらでも一応念を押しておこう。アカデミーには教え子達も勤めておるしな。少なく
とも、アカデミーが学院に何の通告もなく、いきなり君の使い魔達を連れて行く事は出来
なくなるじゃろ」

 これを聞いてルイズ達は胸をなで下ろした。ジュンは、ふと気になった事をオスマン氏
に尋ねてみた。
「あの、ところで学院としては、真紅と翠星石に興味がないんですか?」
 ジュンの言葉を聞いて、真紅も翠星石もギョッとした。
「ちょ!ちょっとジュン、何を余計な事を言うの!?」
 ルイズが慌ててジュンを止めようとする。
「いや、余計な事って言っても、やっぱり気になるよ。ここだって研究機関でもあるんだ
し。だったらローゼンメイデンに興味があって当然でしょ?」
「そりゃ、そのはずだけど…」
「でも、僕らがここに来てからずっと、コルベールさんもオスマンさんも、まるで真紅達
に興味が無いかのようです。
 …どうしてでしょう、教えて頂けますか?」

 ジュンは、オスマン氏とコルベールをまっすぐ見つめた。教師二人は目を合わせ、意を
決したかのように頷きあった。

 口を開いたのは、オスマン氏だった。
「確かに君の人形達には興味がある。しかしのぉ、君たちについてはもっと別の事に興味
があるんじゃよ。君のルーンじゃ」
「僕のルーン?」

 ジュンもルイズも、真紅も翠星石も、包帯で隠されたジュンの左手を見た。

「君は、そのルーンについて、どれだけ知っておる?」
「…コントラクト・サーヴァントで刻む、使い魔の証」
「他には?」
「…いえ、僕は平民ですので、大したことは知りません。でも、コルベールさんが知って
るはずですよね。確か、僕が召喚された時、メモしていましたね」

 そう言って、ジュンはコルベールを見つめた。そしてコルベールも、普段の彼からは想
像のつかない鋭い視線でジュンを見つめ返す。
 ジュンは、気圧されそうになりながらも、コルベールの視線から目を逸らさなかった。

 しばし二人は視線をぶつけ合う。コルベールがふっと僅かに笑い、目を閉じた。代わり
に、口を開いた。
「…ふっふ、そうですね。どうにも教師をやっていると、話が回りくどくなるようです。
別に腹を探り合う必要はないんですから、単刀直入に言いましょう。
 ジュン君…君は、ガンダールヴです」

 何を言われたのか、使い魔達には分からなかった。
 ルイズは一瞬あっけにとられ、そして叫んだ。
「な、何を言ってるんですか!?それは伝説の、どちらかといえば、おとぎ話です!」
 おとぎ話と聞いて、ジュン達も以前図書館でルイズから教わった童謡を思い出した。
ただ、それがどう問題なのかは分からなかった。

 コルベールが更に続けた。
「ジュン君、君はギーシュ君とケンカしていた時、剣を握ったね。その時ルーンが光って
いたのは気付いたかな?それに、さっきの話。エレオノール女史の杖を一瞬で切り刻んだ
事。君はそんなに素早くて、ナイフの扱いに長けているのかい?」
「いえ…それがこのルーンの力だと思っていました。このルーンはガンダールヴっていう
名前なのは分かりましたけど、それはそんなに重大な事なんですか?」
 ルイズは一瞬何をいってるの?という表情になったが、すぐに、地球から来たジュン達
に始祖ブリミルも、その使い魔の伝説も分からないと気が付いた。


  神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。
            左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる


 歌を口ずさんだのは真紅だった。真紅はさらにコルベールへ問い続ける。
「つまり、ジュンはこの伝説の『神の盾』になったということですわね。具体的にはどう
いう存在なのかしら?」
「うん。始祖ブリミルの伝説では『あらゆる武器を使いこなし、敵と対峙した』とある。
伝説通りであるなら、君はあらゆる武器を使いこなして主を守る存在、と言う事になりま
すな」
 翠星石が頭をひねる。
「なら、ルイズさんは『始祖ブリミル』とやらですか?ルイズさん凄いんですねぇ」
「!!」
 言われたルイズはハッとした
「それじゃ!あたしは始祖ブリミルと同じ存在なんですか!?もしや、伝説の系統を」
「それは、分かりません。なにしろ6000年も昔の話です。確かめようがないですぞ」

 6000年というコルベールの言葉を聞いて、ジュンはあることを思い出し、慌てて立
てかけていたデルフリンガーを取り出した。
 他の者も、なんだろうと錆びた剣を黙って眺める。

「よぅっ!いつになったら俺の出番が来るかと、待ちくたびれてたぜ」
 鞘から抜かれたとたん、相変わらずのんきにしゃべり出した。
「なぁデルフリンガー。この前僕に『使い手』って言ったよな?」
「ああ言ったぜ」
「6000年生きた、とも言ったよな?」
「おう、言った」
「僕のルーンを、力を知ってる、とも」
「言った言った!で、何が聞きたいんでぇ」
「なぁデルフリンガー、お前、もしかして」

 錆びた剣は少し沈黙した。そして、大きな声で言った
「はっはぁっ!まぁそういう事だ!俺は初代ガンダールヴの左手ってわけさ!」
「なああっ!なんですとーっ!!」
 叫んだのはコルベールだった。
 オスマン氏とルイズも、目を丸くしている。真紅と翠星石は、一応すごい話らしいとは
納得した。

「そ、それは本当ですか!?本当なら凄い事ですぞっ!!」
 コルベールがデルフリンガーにすがりつくように叫んだ。
「ああ、本当だぜ。
 ただよぉ、なにせ昔々の話だからな。お前等の話を聞くまで、ガンダールヴだの始祖ブ
リミルだの、すっかり忘れてたぜ」
「い、いや、ゆっくりでも構いませんぞ。その、思い出した事を少しづつでも教えて頂け
れば」
「ん?おめぇもジュンと似たような事言うんだな。まぁいいぜ、思い出せるかどうかわか
んねーけど、何か思い出したら教えてやるよ」
「おお、有難いことです!ぜひぜひよろしくお願いしますぞ!」
「う、うむ。トリステイン魔法学院学長としても、よろしくお願い致します」
 オスマン氏も激しくヒゲを撫でながら剣に頭を下げた。大の大人が錆びた剣に頭を下げ
る姿、かなりヘンだった。

「へぇ~。こんなサビサビなのに、お前って凄い剣だったんだなぁ」
 ジュンは改めてデルフリンガーを見直した。
「ああ、こんな姿をしているのは、自分で体を変えたんだ。なにせ面白い事も無いし、つ
まらん連中ばっかりだったからなぁ。ま、本気を出せば、すっげえんだぜ。期待してな。
 ああ、それと、いちいちデルフリンガーなんて堅苦しく呼ぶなよな、デル公でいいぜ」
「分かったよ、デル公。そんときはよろしくな」


 ルイズは、しきりに「…よしっ!ぃよっし!」と気合いを入れていた。自分の系統につ
いて手がかりが見えたので、俄然やる気がでてきたようだ。
 翠星石は、アカデミーが捕まえに来ないと聞いて、安心してお茶を飲んでいた。
 コルベールとオスマン氏も、思いもかけず始祖ブリミルの遺物を発見し、感動ひとしお
だった。なんだか手を合わせて拝みそうだ。
 ジュンはしげしげとデルフリンガーを眺めていた
 真紅は彼らの姿を眺めて、ふとある事を思い出した。

「ちょっといいかしら?フーケの事ですけど…」




 キュルケとタバサは、苦戦していた。

 彼女らの前では、巨大な土ゴーレムが鈍重な動きながら、凄まじい破壊力で周囲の森や
小屋を破壊していた。
 キュルケの杖から伸びる炎がゴーレムを焼くが、30メイルもあるゴーレムは全く意に
介さなかった。
 タバサの杖から放たれた竜巻がゴーレムを襲うが、巨大ゴーレムの大重量ではびくとも
しない。
 二人は小屋の中であっさり見つけた『破壊の杖』を持ち、ウィンドドラゴンの背に乗り
宙へ逃げた。

 キュルケの炎では、ゴーレムは全く動じない。
 タバサの竜巻でも、ゴーレムはびくともしない。
 操るフーケを見つけて倒せばいいのだが、森の中に隠れているなら見つけられない。高
度を落とすとゴーレムがやたらと拳を振り回すので、危なくてしょうがない。もしゴーレ
ムの中から操っているなら、手の出しようがない。動きは鈍いので、巨大な拳の直撃を喰
らう事はないだろう。だが、ゴーレムがぶん投げる土や岩が風竜の翼に当たれば、みんな
まとめて墜落しかねない。

「さぁって、どうしようかしらねぇ…フーケの魔力が尽きるのを待つか、森を手当たり次
第に焼いてゴーレムごと炙ってみるか」
 土ゴーレムを見下ろしながら作戦を練るキュルケに、タバサがチョンチョンと『破壊の
杖』を指さした。
「帰還」
「う~ん、盗まれた『破壊の杖』も取り戻したし、確かにもう帰ってもいいかもしれない
わよね」
 キュルケはゴーレムへ視線を戻した。彼女の杖を持つ手に力がこもる。
「でもね…この『微熱のキュルケ』、ツェルプストーの名において、すごすご退散ってい
うのは頂けないわねぇ。
 あちらさんもいまだに逃げもせずゴーレムを出しっぱなしの所見ると、盗賊のクセに戦
いたいようだしね」
 タバサは少し首をかしげた。どんな上手い手があるの?と聞きたいらしい。
 キュルケはウィンクして、『破壊の杖』を指さした。
「それ、試してみない?」


「はぁ~い♪こっちよぉ~☆」
 キュルケはゴーレムからかなり離れた場所に『フライ』で降り立った。ゴーレムを挑発
するセリフと共に。その腕には、『破壊の杖』が抱かれていた。
 舞い降りてくるキュルケをジッと見つめていたゴーレムが、降り立ったキュルケへ向か
い歩き出した。

「さぁ~って、学院秘蔵の『破壊の杖』。その威力見せてもらうわよ!」
 と言って、キュルケはゴーレムに向けて杖を降った。

 何にも起きない。

「あら?」
 次は適当な魔法を杖にかけてみた。

 ウンともスンとも言わない。

「な!なによこれ!?どうやって使うのよ?」
 と言ってる間に近くまでゴーレムが近くまで来ていた。
「くぅっ!!」
 キュルケはルーンを唱え、杖の先に火球を作り出した。
 ゴーレムが拳を振り上げる。キュルケの火球がさらに巨大になる。まだ放たれてもいな
いのに、周囲に広がる熱波が枯れ草をチリチリと焦がし出す!
「さぁ…これを喰らってもまだ、溶けずにいられるかしらねぇ!」
 ゴーレムが拳を振り下ろす!と同時にキュルケも巨大な火球を杖から

「やめ------------------っっっ!!!」
 ぐわしっ!どたたたたたたた・・・

 キュルケは、デルフリンガーを右手に持ったジュンの左肩に担がれていた。
 さっきまで彼女が立っていた場所には、ゴーレムの拳が作った大穴が開いていた。
 キュルケと、上空のタバサは、いきなりの乱入者に驚いていた。

   ジューン!大丈夫!?

 遠くからルイズの声がした。
 馬にまたがったルイズの前に、真紅と翠星石もいる。

「ちょっとジュンちゃん!何であんた達がいるのよっ、てかなんで邪魔するのよ!?てい
うか早く下ろしてよ!!」
「え、あ、すいません」
 ジュンは慌ててキュルケを下ろし

 ズウゥゥン…

 土ゴーレムの蹴りをかわした。
 二人並んで走ってゴーレムから距離を取る。ゴーレムは馬にまたがるルイズ達を見て、
キュルケ達とどちらを先に攻撃するか迷ってるようだ。

「それで!まぁ学院長のジーサンと話が終わったから慌てて追いかけて来たんでしょうけ
ど!何で邪魔するのよ!?」
 走りながらもキュルケはジュンを問いただす。
「それです!『破壊の杖』ですよ!」
 ジュンは『破壊の杖』を指さした。
「はぁ?これが何よ!こんな役立たず!」
「きゅ、キュルケさんは、てか誰もそれが何か知らないでしょ!それは、僕たちの世界の
物です!」
 十分距離を取った所で、ようやく二人は立ち止まった。
「あんたの世界の物?もしかして、これも『召喚されし書物』と同じ」
「そうです!それは、バズーカ砲っていう武器です!」
「武器ぃ?これがぁ?」
 キュルケは、妙に軽い鉄製の筒を掲げてみた
「そうです!そして、それは、高熱を浴びたら誘爆、ていうか、大爆発するんです!」
「爆発ぅ!?…ってことは、もしかして、さっき」
「そう!あの火球をバズーカ片手に使ったら、キュルケさんが吹っ飛んでたかもしれない
んですよ!」
「ぇ-」

 そうこう話している間に、ゴーレムはルイズ達に向かって行った。ジュンはデルフリン
ガーを握りしめてゴーレムへ歩みを進める。
「ちょっとジュンちゃんっ!あなたじゃ無理よ、下がってなさい!」
「無理…か」
 ジュンはデルフリンガーを眼前に掲げた。
「なぁデル公、やれると思うか?」
「ははっ!任せなボウズ、俺もこんな格好してる場合じゃあねえ!」
 叫ぶなり、刀身が光り出す。

 ジュンもキュルケも、一瞬あっけにとられた
 光の中から現れたのは、今まさに研がれたかのごとく輝くデルフリンガーだった。
「これが俺の本気ってわけさ。だが勘違いすんなよ?あくまで戦うのはジュン、お前だ。
忘れるな!戦うのは俺じゃあねえ!俺はただの道具にすぎねえ!」
「…分かった。とにかくやってみるよ」
「ちょ、ちょっとジュンちゃん…」

 いきなりの展開に置いて行かれ気味のキュルケを、ジュンは振り向く。その顔は、少し
の勇気と大きな恐怖にこわばっていた。

「キュルケさん、そのバズーカ砲、預かってて下さい」
「いえ、だからあなたじゃ無理って」
「やっと・・・やっと力を手に入れたんです。真紅と、真紅や翠星石や、みんなと一緒に
戦える力を。だから…」
 ジュンは、ルイズ達に向かって右拳を振り上げる土ゴーレムをキッと睨んだ。
「だから…行きます!」
 ジュンは土ゴーレムに向けて、風のように疾走していった。その左手の包帯からは淡い
光が漏れだしていた。そして、その指輪も紅く、激しく輝いていた。


 ルイズ達は、地面に放り出されていた。
 迫ってくる土ゴーレムを見た馬が怯えて、皆を振り落として逃げてしまった。
 だが真紅と翠星石は即座に立ち直り、ステッキと如雨露を掴んだ。
「さぁ、おいでなさい!」「薔薇乙女の力、見せてあげるですよっ!」
 まだ立ち上がれないルイズの前に、二人が並んだ。

 ゴーレムが右拳を振り上げた。
 真紅と翠星石は全力で戦うため、指輪からジュンの力を得ようとした。
 ジュンも、力を送ろうと意識を指輪に向けた。
 ルーンも、輝いていた。


 力は、ローゼンメイデンに送り込まれた


「な!なんなのこれは!?」
 真紅の体は、まぶしいほどの光に包まれていた。
「すごいですぅっ!力が、力がこんなに!!」
 翠星石も輝き出す。
 余りにも多量の力が流れ込んだため、力があふれだしていたのだ。


 ブオォォッ!

 ゴーレムが拳を振り下ろした。
「えーいですっ!」
 翠星石が如雨露から地面に水をまいた、というより水圧で地面がえぐられた。

 どぅんっ!

 鋼鉄に練成された右拳は、突然出現したツタとも大木とも分からぬ植物に受け止められ
た!
「うそ…」
 ようやく杖を持って立ち上がったルイズは、鋼鉄製の、しかも信じがたい重さの拳を正
面から受け止める力技に、目を丸くした

「喰らいなさいっ!」
 真紅が掌をゴーレムの左肩に向けた。わき出した薔薇の花びらが竜巻、いや、紅い竜と
なりゴーレムの左肩に激突する!

 グラ・・・ズズゥン
 ゴーレムがバランスを崩し、尻もちをついた。左肩もえぐれている。

「ま、まさか…これほどだなんて…」
 立ちつくすキュルケは、呆然としていた。キュルケを風竜に乗せようと降りてきたタバ
サも、彼らの戦いに目が釘付けだ。

 土ゴーレムがなんとか立ち上がろうと、地面に両手をついた。
「ううぅぅぉぉおおおおあああああっっっ!!!」

 ドシュッ!

 一気に間合いを詰めたジュンが、地面についたゴーレムの左手首を切断した!

 ズズウン・・・・

 ゴーレムはバランスを失い、地面に倒れ込んだ。

「あったしだってえーーーー!!!」
 ボボボボッボボボッボボンッ!!
 ルイズの失敗魔法が連続でゴーレムの右手首に着弾する!
 ゴーレムの右手首も崩れ落ちた。ゴーレムは完全に地面に仰向けに倒れてしまった。

「ダメよ!そのゴーレムは再生するわ!」
 上空から風竜に乗ったキュルケが叫んだ。
 言葉通り、土ゴーレムの破損部分は速やかに再生され、再び立ち上がろうとしていた。

 だが、ジュンはニヤッと笑った。
「ふふん、再生怪人は弱いって言うのがお約束なんだよね~」
 言うが早いかジュンはゴーレムの足下へ飛び出した!

 ザザンッ!!

 一瞬でジュンは駆け抜けた。ゴーレムの両足首を切断して。

 ドドドオオォン・・・

 ゴーレムは突如支えを失い、地面に倒れ込んだ。急に落下した自重に耐えきれず、体が
半ば崩れそうになっている。

「そーらっ!これでも喰らいやがれですぅっ!!」
 翠星石がゴーレムに向かって如雨露から、トンでもない水圧で水をかけた。水圧自体に
ゴーレムの体がえぐられていく!

 ぶううぉおおおおぉぉっっ!!

 ゴーレムの足下から、そして土ゴーレム自身からも、無数のツタが生えてきた。ツタで
がんじがらめにされて、ゴーレムはもはや動く事も出来ない。

「さぁ!これでトドメよ!」
 真紅が、薔薇の竜巻を絞り上げ、一本の巨大な槍に練り上げた!

 ドムッ!

 ゴーレムの胸を、巨大な紅い槍が貫いた!

 だが、これほどのダメージを喰らっても、ゴーレムはまだもがいていた。なんとか動こ
うとツタに再生中の腕をぶつけている。

「うりゃうらうりゃうらー!」
 ドドドドンッ!
 とても貴族とは思えない気合いと共に、ルイズの失敗魔法が崩れかけのゴーレムをさら
にえぐっていく!

 ゴオウゥッ!
 いきなり、熱波がゴーレムを襲った!
 上空から、キュルケの火球がゴーレムに落下してきたのだ
「ふふーん!やっぱり最後を決めるのはあたしよねぇ」
 バズーカ砲を抱えたタバサは、地上の戦闘を見つめ続けていた。

 燃え上がるツタと薔薇、そして火球そのものに焼かれ、ゴーレムはしばらく悶えた後に
崩れ落ち、後には焼けこげた土の山だけが残った。


「やぁったですぅー!」「いえーい!」「すぅげー!」
 歓声が勝利した6人を包んだ。

 パチパチパチパチ・・・
拍手しながら森から出てきたのは、ロングビルだった。
「すごいですわ皆さん。まさか、これほどだなんて」
「エヘヘヘヘ…」
 ジュンは照れて頭をかいていた。
「でもですねぇ、どうやらフーケは逃がしちゃったみたいですねぇ」
「しょうがないわ。向こうもプロの盗賊、逃げ足は速いわ」
 翠星石と真紅は、顔を見合わせて残念がった。
「ま、『破壊の杖』…えと、ばずうかほうだっけ?それだけ取り戻せれば十分でしょ」
 そういってルイズはロングビルの手を取った。
「ところで、私たちの乗ってきた馬は逃げてしまったの。ロングビルさん達が乗ってきた
馬車に乗せて下さいな」
「えーっと、そうですわね。それじゃ皆様、帰りましょうか」
「おー♪」

 そんなわけで、勝利の美酒に酔いしれながら、彼らは帰路についた。



 学院長室では、オスマン氏を始め全ての教員が、全員の無事と『破壊の杖』奪還を喜び
祝福した。
 オスマン氏が整列するフーケ捜索隊の前に立ち、オホンと咳払いした。ジュン・真紅・
翠星石は、ルイズ達の後ろに並んでいる。ミス・ロングビルは窓際に立っている。
「いやー、皆よくやってくれた。学院の秘宝も取り戻せたし、何も言う事はないわい」
 皆、誇らしげに胸を張っている中、キュルケだけは少し不満げだった。
「うん?どうかしたかな、ミス・ツェルプストー」
「あたしとしては、フーケを取り逃がしたのが残念でなりませんわ」
「おーおー!そんなことか、そんな事はもういいんじゃよ」
「あら、『破壊の杖』を取り戻しただけでいいんですの?」
「いやいや、そういうわけじゃないんじゃよ」

 そういって、オスマン氏は部屋の中に並ぶ教員達を見渡した。

「やはりこれは学院の恥であるしのぉ。教員達の手でフーケを捉えねば、学院の名に傷が
付くと思うんじゃ」
 と言って、オスマン氏はいきなりミス・ロングビルを見た。
「のう、君もそう思うじゃろ?ミス・ロングビル」

 いきなり話を振られたロングビルは、キョトンとなった。
 少し沈黙の後、一筋の汗と共に口を開いた。

「ええ、私もそう思いますわ。でも、肝心のフーケの居場所が分かりませんので…」
「いやいやいやいや!君が今朝方教えてくれた情報だけで十分じゃよ!」
 そう言って、オスマン氏はミス・ロングビルにニッコリ微笑んだ。
 他の教員達もニコニコ微笑んでいた。微笑んではいたが、その立ち位置は、学院長室の
扉を塞ぎ、ミス・ロングビルを中心に円を描いていた。彼女を包囲するかのようにゆっく
りと移動していた。
 急に立ちこめだしたきな臭い雰囲気に、キュルケはキョロキョロとしてしまった。

 ミス・ロングビルは真顔で、低い声でしゃべりだした。
「そうですか、私の情報はとても役に立ってもらえましたか」
「うむ、とても役に立ったのぉ。いやー、まったく君の有能さには驚かされた!
 まさか馬で片道4時間かかる場所からの情報を、朝一番の僅かな時間で手に入れてくる
とは!おまけに『黒のローブを着た男』というだけで、性別すらわからんはずのフーケと
断定するとはのぉ。
 いやまったく恐れ入った!君には特別に、王宮から報償が出るじゃろうて」
「そうですか、でも…遠慮させて頂きますわっ!」
 彼女は杖を取り、窓へ突っ込んだ!

 ガガガガガンッ!!
「ひぃっ!」

 タバサの氷の矢が、彼女の進路を塞いでいた。
 ミスタ・ギトーの風が、彼女の杖を吹き飛ばしていた。
 ミセス・シュヴルーズの赤土が、彼女の足枷となっていた。

「そ!そんな!こんなバカなぁっ!」
 コルベールがゆっくりと、動けなくなってもがいているミス・ロングビルこと土くれの
フーケに近づいた。
「ミス・ロングビル…いえ、フーケさん。窓から飛び出なくて良かったですね」
「はぁ!?どういうことだい?」
「こういうことです」
 コルベールは、杖で窓の外を示した。

 窓の外には、100人をこえる生徒が杖を構えていた。『フライ』で滞空する者、杖に
炎をまとわせている者、使い魔を臨戦態勢にしている者、その全てが学院長室を狙ってい
た。

「飛び出した瞬間に、あなたはチリも残さず消えていました。当然、廊下にも待機させて
ますよ」
「くっ…」
 フーケは、とうとう力なくうなだれた。
「・・・やられたよ。まさか『破壊の杖』を取り戻すために、泳がされていただけだった
とはね。あんた等を見損なってたよ」
「いえいえ、それは買いかぶりですぞ。ところで、どうしてこんな事を?さっさと『破壊
の杖』を持って逃げれば良かったのに」
 コルベールの問に、フーケは吐き捨てるように答えた。
「どんな秘宝も、使い方が分からなくちゃ売れないのさ…そこの坊やが使ってくれたら良
かったんだけどねぇ」

 ジュンは、黙ってフーケを見つめていた。


              第七話  ルーンと指輪とデルフリンガー   END


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