あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

デュエルモンスターズZERO-09

―ここはどこだろう?―

全ての悪夢から逃れ、とぼけた頭でルイズはそんなことを考えた。
あたりは闇。前後左右上下の概念が無い、全てから独立した空間。

―ああ、ここは以前 自分が使い魔と一緒に来た場所じゃないか―

正真正銘 伽藍と化した瞳で、ルイズはあたりを見やる。
その背にはかけがえの無い友人を背負って。

「シエスタ……起きてる?」

答えは無い。
代わりにルイズの背を暖かい液体が濡らした。
それが何なのかいうまでもない。
心の臓を貫かれたら赤い血がでるにきまっている。

「……いやよ」

ここは自分の心の中のはず。
なのになぜ、自分の思い通りの幻想を見ることができないのか。
せめて夢の中でくらい、現実を忘れ 友人と歓談して幸せに過ごしたいのに。

「……人生とは観劇のようにはいかぬ。厳しいものと覚悟し腹をくくってこその人生よ」

絶望に浸るルイズの耳元に聞こえてきたのは、低い男性の声だった。


「……?」

振り返った視線の先には1人の男。
肩までかかった、燃えるような赤毛と整った顔立ち。

その顔には右耳からアゴの部分にかけて、不思議な文様が浮き出ている。刺青かと思ったがその顔には鉄の板のような物が貼り付けられているのだと、近寄る事で理解できた。
全身を黒いマントで包んだ彼は目を閉じたままで薄笑いを浮かべている。

だが、男を見てもルイズは特にどうしようとは思わなかった。

「…誰かしら? 人の心に土足で踏み入るなんて随分と礼儀知らずね」

シエスタを背負ったままぼんやりと問いただす。
その眼は男ではなく、男の先にある闇を見つめている。
愛しい友人を失い、すでに思考は麻痺状態。
それでも頭の片隅に僅かに残った理性や警戒心が、

―ここは自分の心の中だ―
―こんな無礼な男、自分の心に入るのを許した覚えはない―

と警鐘を鳴らしている。
男は、そんなぼんやりとしたルイズを哀れむように見つめた。

「誰と申したか。哀しいものよ。主と契約するのを、皆 心待ちにしていたというのに」


「……アンタ、何を言っているの?」

男は質問に答えず、ルイズに歩み寄る。

「来るがいい我が主。貴方の望むものを授けるために私はきたのだから」

距離という概念がない場所を、いや場所という概念すらない空間を踏みしめ無音で移動し、ルイズの目の前にやってきた赤毛の魔人。

「私はどこへも行かないわ。ここでシエスタと二人で暮らすの。もう疲れたの。いいでしょう? 何処へ行ったってなにもできないわ。どうせ私は『ゼロ』なのだから」

虚空を見つめて、ルイズは一息に言葉を吐き出した。
すでに壊れかけているゼロを見つめ、

男はただ一言。

「……その背の少女を助けたいと思うならきたまえ。救うことができるかもしれない」

虚無の心の主はビクン、と体を振るわせた。

「シエスタが……生き返るの?」
「確約はできぬ。あくまで可能性の話だ」

背中にある少女のぬくもりは躊躇っている間にも消えてゆく。



「……連れて行きなさい。私を」
「主の命ずるままに」

男は丁寧に一礼して、自らのマントから手を出す。
それと同時に、男は独特の韻を踏みながら、何のことか分からぬ説明を始めた。

「主よ。人は皆、心の中に様々な部屋を持っているのだ。
主が召喚した千年錘の記憶は、心の奥底に迷宮を持っていた」

マントのうちから現れた、男の手は一風変わっていた。
腕には赤毛の猿の様な剛毛がびっしりと生えている。

その腕で、赤毛の怪人はルイズの胸を指し示す。

「だが我が主よ。貴方は心の中に何も無い」
「……悪かったわね。寂しい心で」

フッと男は薄く笑う。
バカにしたわけではない。大人が子供を見て微笑むのと、その顔はよく似ていた。

「だが、それでいい。心の中に『虚無』を持つものこそ我らの主たる唯一の資格なのだ」

男は腕でマントを押し広げる。

「我が主 今ここで明かそう。虚無を導く1対の片割れたるこの正体を」
「!?」


ルイズは思わず眼をみはる。
魔人がマントをバサリと開いたその先、あるべきものがなかった。
彼のマントの中には、どこまでも続く暗黒があるのみ。

胴も足も、その体を覆う布の下には存在しなかったのだ。
魔人は自らの中にルイズを誘う。

「この身に宿る虚無は主が行くべき場所に通じている」
「……アンタは」
「我は、闇より生まれしゼロ。名をヴァニティー・デビル〈虚無魔人〉」

赤い毛の生えた魔人の腕が、ルイズの肩を掴んだ。
恐怖に怯えるルイズを自らの中に取り込み、魔人は高らかに謳う。

「行け主よ! 我らと主の属する世界のために! 大いなるファラオと始祖ブリミルの確約のために!」

悲鳴を上げながらどこまでもルイズは闇の中へと落ちてゆく。
その先に、果たして何が待つのだろうか?

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