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ウィザーズ・ルーン~雪風の翼~12

わたしが隠す本当のわたし
わたしを守る偽りのわたし
その両方を抱きしめて
いまの歪なわたしがいる



 フーケ事件も終息し、タバサとルイズが主役となった舞踏会が終わったある日のこと。
 いつものようにHunter Pigeonの操縦室で本を読んでいるのは、青髪青眼の小柄な眼鏡少女、「雪風」のタバサである。
 今日読んでいるのは、倉庫となっている居住区画に詰まれてあった本のひとつ。タイトルは「よく分かる四字熟語」で、ヘイズが北京語を学習するさいに、入門として漢字を学ぶ為に読まされたとか。
 そして四苦八苦して覚えた後に、先生から「記憶領域に辞書データでも入れればいいだろう」と言われて、全部無駄骨になったとか。
 さてそんな操縦室に、今日も訪問者が一人。
「フーケのゴーレムを破った上に、あんなに上手にダンスの相手を務めてみせるなんて……便利屋として世界を回ったヘイズに教えを賜りたい!」などと鼻息も荒く意気込んでいるのは、
先日決闘で敗れ、未だに恋人に許してもらっていない「青銅」のギーシュだ。
「いや、あれはなあ……」
 ヘイズは髪をわしわしと掻きながら口ごもる。
 タバサのダンスの相手を見事に務めたと言うが、実は予測演算を駆使しただけである。ワインを飲んでいた時に、タバサと踊る前に何人かのダンスを見て、踊る為のデータは蓄積できていた。
 あとはタバサの動きを予測して、演算結果から得られる「踊る為に最適な動き」をすればいいだけであった。
 元々ミリ単位で見切って、攻撃を回避できるヘイズである。ダンスのステップなど、騎士の攻撃を思えば取るに足らない。
 ギーシュはさらに顔を突き出して、
「ぼくが今モンモランシーに振り向いてもらえないのは、きっとぼくがふがいないからだ。ぼくが強くなれば、モンモランシーもぼくのことを振り向いてくれるに違いない。
というわけでヘイズ。何か案はないかい?」
 キザったらしく薔薇を銜えているところから直すべきじゃねーか? などとはおくびにも出さず、ヘイズはまず戦闘スタイルから考えてみた。
 ギーシュの戦い方はゴーレム使い。錬金で作り出したゴーレムを操って戦うタイプ。
 魔法士で言えば人形使いが最も近い。ゴーストハックと呼ばれる仮想精神体を送り、非生物を生物化して使役し戦う魔法士。
「そういえば、ゴーレムってわざわざあんなに細かくゴーレムを作る必要があるのか?」
「いや、ぼくのワルキューレは、ぼくの特技である彫金を反映した結果さ。その結果として再生能力を失ったけど、通常より速く動けることが出来る」
 なるほど青銅に錬金した結果として、再生しないのではなく再生できないのだ。フーケのような土ゴーレムならそこらじゅうに材料があるが、青銅の床の上ならともかく、普通の土の上では青銅を錬金しなければ材料がどこにもない。
「彫金の結果ってことは、もっと細かい意匠のゴーレムや人型じゃないゴーレムも作れるってことか?」
「まあね。あれ以上細かくすると、今度は作成にかかる精神力が多くなって作成数が下がるけどね。デザインの代償さ。人型じゃないのはゴーレム使いの入門で作るから簡単だね」
「ってことは人型じゃなければ、異様に細かくもならねえし、簡単に数も増やせるな」
 ヘイズがそこで思い出すように、額に人差し指を当てた。
 人形使いのゴーストハックは通常、腕や足など生物の一部を生やすだけだが、高レベルの人形使い――例えばエドワード・ザインは先端が螺子状の触手を千本以上も同時に操ることが出来た。
「だったら触手を大量に作るって言うのはどうだ? 生物である必要があるなら、タコとかイカみたいな触手を大量に持ったやつの形にすればいい」
『どうやらゴーレムは、人形使いのように元々人型に縛られるものではないようですしね』
 とハリーが付け加える。
「しかしそんなに奇怪でグロテスクなものを作るのは、モンモランシーを振り向かせる薔薇としての威厳が……そうだ!」
 とそこでギーシュが何か閃いたのか叫ぶと、「参考になったよ。あとは実践あるのみだ」と言い残してそそくさと立ち去ってしまった。
「なんだか台風のようなやつだったな……なあ、ハリー?」
『そういえばタバサさまは、さきほどから読書のお邪魔ではなかったのでしょうか?』
 とハリーのマンガ顔がひらひらと、タバサの傍まで飛んでいくがタバサの反応はなし。
 ハリーは「おや?」と首を傾げるように、マンガ顔を傾ける。
「ああ、そりゃああれだ。サイレントの魔法をかけてるんだな。今のタバサには近くで荷電粒子砲ぶっ放そうが関係ねえよ」
 とヘイズの説明。まだ一月と経っていないのに、使い魔としての能力か、すでにタバサの行動が大体分かってしまうようになった。
 ……ファンメイの時も、これくらい機微が掴めりゃ、あそこまで悪化させることはなかったんだがな……。
 とヘイズはシティ・ロンドンに残した、一人の元同居人のことを思い出した。

 ギーシュが去ってしばらくし、ハリーがHunter Pigeonのセンサーに手紙を足にくくりつけたフクロウを捉えた。
『ヘイズ。どうやら我々に用がある模様ですが、いかがいたしますか』
 モニターにフクロウの姿を大写しする。とそのフクロウの姿を見たとたん、タバサが起き上がり、操縦室の扉に向かう。
 その様子を見て、即座にヘイズもシートから立ち上がった。
「あのフクロウはタバサに用があるんだろ? だったらオレも付いていくぜ」
 そう言うヘイズに、何故か首を振るタバサ。そして静かに口を開く。
「関わらないほうがいい」
 ただそれだけ言って、早々と立ち去ろうとするタバサ。
 どうやらややこしい事情があるようだ。しかし、ヘイズも負けじと、
「まあ待て。オレはタバサに便利屋として雇われている身だろ? じゃあ雇い主の用事にも従うのが筋じゃねえか?」
「じゃあ、雇い主として命令」
「そう来るなら俺は使い魔であることを理由にするぜ? 契約は破棄といっても、ルーンはこの手にしっかりと刻まれてるからな」
「……卑怯……」
 応酬を繰り返し結局ヘイズが付いていくことを承諾させた。
 ヘイズのお人よしのおかげでタダ働きが多いものの、なんだかんだで十年以上便利屋として働いてきたヘイズである。口の上手さで十五歳の少女に負ける道理はなかった。

 タバサは手紙の内容を確認すると、すぐに手紙を丸めてしまった。
「で内容は?」
「ガリア王都のヴェルサルテイルへの召喚」
「ガリアか……ここから歩いていける距離じゃねえな」
 ヘイズはハルケギニアの地図を思い出した。ガリアはトリステインの南方に位置する大国で、馬車で何日かかけねばたどり着けないはずだ。
「今までは移動専用のガーゴイルがいた。今回はなし」
「そりゃまたなんでだ? 学院の馬車に揺られて来いってか? 手続きが面倒そうだが」
「あなたと船を召喚したから多分そのせい」
 タバサが小さく手を握り締めたのを、ヘイズは見逃さなかった。
 未だに演算機関が不調ということになっているのだが、先方はそのことを知らなかったのだろうか?
 タバサの反応を見ると、むしろ知っていてやったような……。
 そんなタバサに、ヘイズはばつが悪そうな表情で、
「あー、タバサ? 言いにくいんだがHunter Pigeonの演算機関の調整はちょっと前に済んでるんだ。ってわけで快適……とはいかねえが、ガリアまで船の旅ってのはどうだ?」
 ヘイズの言葉にタバサは目を丸くした。
 言おう言おうとしていたのだが、なにしろさっさとサイレントをかけて読書に入るので、言う機会がなかったのだ。
 まだ驚いているタバサに、わざわざタバサが付けている方の通信機から、
『すでに戦闘機動・飛行中の偏光迷彩・荷電粒子砲の使用と全ての装備が使用可能です。どうぞ搭乗してくださいタバサ様』
 というハリーの甲高い声。
 こくんと可愛らしくタバサが頷いて、二人はまたもや操縦室へと向かった。
 かくして三人のガリア行きはHunter Pigeonでの旅と相成った。

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