フーケの前に立つバビル2世。
その背後には3つのしもべが控え、辺りを睥睨している。
「なぜお前はぼくの名前を知っていた。どこまで知っているんだ?」
「ど、どこまで……」
訊かれても、ほとんど知りはしない。
ただあの仮面の男に妙な絵と、名前を教えられただけなのだから。
「仮面の男とは誰だ?」
仮面の男といわれても、自分はただアルバイトを頼まれたに過ぎない。詳しいことは何も…。
と、ここまで来てフーケは気づく。自分はこの少年にバビル2世などと一言も言っていないし、今だって何一つしゃべっていないのに、
それに応えるように話しかけてくるではないか。まるで、心でも読んでいるように。
「そうだ、ぼくは心を読むことができる。だから隠してもムダだ。素直にしゃべったほうが身のためだぞ。」
なんということだ。ということはこの少年は初めから自分がフーケだと気づいていたのだ。
あの会議のときに私を重罪人に仕立て上げたのも、すべてこの少年の企みだったのだ。
身震いをするフーケ。
このまま黙っていてもただで済むはずがない。だが、この少年はあの仮面の男についてなにか知りたがっているようだ。
素直に話せば逃がしてくれるかもしれない。
「そ、それは…」
と、口を開きかけた瞬間、バビル2世がフーケ目がけ何かを放った。
昼間、武器屋で手に入れたリベットであった。リベットを指で弾いて、弾丸のように吹っ飛ばしたのだ。
「ひぃい!」
淑女とは思えぬ声を上げ、身を縮めるフーケ。
だが、リベットはフーケを掠め、その背後の木に突き刺さっていた。
木は突き刺さった箇所から血を流している。
「フッフフ…」
木がぐにゃりと動く。幹から、リベットを腕で受け止めて奇妙な格好の男が現れた。
「何者だ。」
「ジャキ…」
タバサが呟いた。
「ほほう、このわしを知っているのか。左様、わしの名前は不死身のジャキ。」
腰に刺した片刃の剣を抜く。
「その娘にしゃべられると不都合なのでな。始末させてもらった。」
なに!?とフーケを見ると、チアノーゼ特有の顔色になり、ぐったりと身を横たえている。
その背後には3つのしもべが控え、辺りを睥睨している。
「なぜお前はぼくの名前を知っていた。どこまで知っているんだ?」
「ど、どこまで……」
訊かれても、ほとんど知りはしない。
ただあの仮面の男に妙な絵と、名前を教えられただけなのだから。
「仮面の男とは誰だ?」
仮面の男といわれても、自分はただアルバイトを頼まれたに過ぎない。詳しいことは何も…。
と、ここまで来てフーケは気づく。自分はこの少年にバビル2世などと一言も言っていないし、今だって何一つしゃべっていないのに、
それに応えるように話しかけてくるではないか。まるで、心でも読んでいるように。
「そうだ、ぼくは心を読むことができる。だから隠してもムダだ。素直にしゃべったほうが身のためだぞ。」
なんということだ。ということはこの少年は初めから自分がフーケだと気づいていたのだ。
あの会議のときに私を重罪人に仕立て上げたのも、すべてこの少年の企みだったのだ。
身震いをするフーケ。
このまま黙っていてもただで済むはずがない。だが、この少年はあの仮面の男についてなにか知りたがっているようだ。
素直に話せば逃がしてくれるかもしれない。
「そ、それは…」
と、口を開きかけた瞬間、バビル2世がフーケ目がけ何かを放った。
昼間、武器屋で手に入れたリベットであった。リベットを指で弾いて、弾丸のように吹っ飛ばしたのだ。
「ひぃい!」
淑女とは思えぬ声を上げ、身を縮めるフーケ。
だが、リベットはフーケを掠め、その背後の木に突き刺さっていた。
木は突き刺さった箇所から血を流している。
「フッフフ…」
木がぐにゃりと動く。幹から、リベットを腕で受け止めて奇妙な格好の男が現れた。
「何者だ。」
「ジャキ…」
タバサが呟いた。
「ほほう、このわしを知っているのか。左様、わしの名前は不死身のジャキ。」
腰に刺した片刃の剣を抜く。
「その娘にしゃべられると不都合なのでな。始末させてもらった。」
なに!?とフーケを見ると、チアノーゼ特有の顔色になり、ぐったりと身を横たえている。
その首筋に、小さな針が刺さっていた。
「まるで忍者だな。」
「ははは。左様、わしは忍びよ。もっとも忍び殺しのジャキとしてのほうが有名だがな。今はメイジ殺しのジャキと言ったところ
か。」
白刃が宙でゆらゆらとゆれる。
「こ、これは……」
「忍法、ナナフシ…」
ジャキの身体がぼやけていく。ぼやけた身体が闇に溶け、完全に姿を消す。
「くっ!ロデム!ロプロス!」
ロデムがルイズたちを捕まえてロプロスに飛び乗る。ロプロスが空中に逃げ出す。
「これで3人が狙われることはなくなった。」
精神を集中させ、辺りをうかがう。しかし一切、人の気配らしきものはない。
「ならばあぶりだすまでだ。」
ぐっと拳を握って、交差させる。左手の紋章が強く発光しはじめた。大地が揺れ始め、バリバリと表面がめくれ上がっていく。
精神動力、サイコネキシスだ。
木が引き抜かれ、岩が飛び、森が震える。
「ぐ、わわわ!?」
ナナフシの術とは、己を木と思い込み姿を消すという昆虫「ナナフシ」に見習って、己を岩や壁、土や木と思い込むことにより、他人
にも木石と思われ、気にされなくなる術である。
しかし、このときバビル2世により精神をかき乱され、己を木石と思い込めなくなり、結果姿を現したのであった。
「ええい!なんという力だ!さすがは我らボスの宿敵!」
くるくると回転しながら、広場の中央、小屋の残骸跡に着地するジャキ。
「こうなれば奥の手よ。」
懐からたすきよりも長い布を何十本も取り出す。それを四方八方に投げ、自分の周囲を布で覆ってしまう。
「ふっふっふっ、忍法、布砦。」
精神動力をやめたバビル2世がじっと眼を凝らす。
布はまるで生きているかのように徐々に伸び広がっている。
「いったい何を企んでいるんだ…む?」
気づくと足元にまで伸びていた布がバビル2世に絡み付いていた。
「こ、これは!?」
布はたちまち手足を包み、絡まり、縛っていく。バビル2世はどんどんミイラ男のような姿になっていく。
「まるで忍者だな。」
「ははは。左様、わしは忍びよ。もっとも忍び殺しのジャキとしてのほうが有名だがな。今はメイジ殺しのジャキと言ったところ
か。」
白刃が宙でゆらゆらとゆれる。
「こ、これは……」
「忍法、ナナフシ…」
ジャキの身体がぼやけていく。ぼやけた身体が闇に溶け、完全に姿を消す。
「くっ!ロデム!ロプロス!」
ロデムがルイズたちを捕まえてロプロスに飛び乗る。ロプロスが空中に逃げ出す。
「これで3人が狙われることはなくなった。」
精神を集中させ、辺りをうかがう。しかし一切、人の気配らしきものはない。
「ならばあぶりだすまでだ。」
ぐっと拳を握って、交差させる。左手の紋章が強く発光しはじめた。大地が揺れ始め、バリバリと表面がめくれ上がっていく。
精神動力、サイコネキシスだ。
木が引き抜かれ、岩が飛び、森が震える。
「ぐ、わわわ!?」
ナナフシの術とは、己を木と思い込み姿を消すという昆虫「ナナフシ」に見習って、己を岩や壁、土や木と思い込むことにより、他人
にも木石と思われ、気にされなくなる術である。
しかし、このときバビル2世により精神をかき乱され、己を木石と思い込めなくなり、結果姿を現したのであった。
「ええい!なんという力だ!さすがは我らボスの宿敵!」
くるくると回転しながら、広場の中央、小屋の残骸跡に着地するジャキ。
「こうなれば奥の手よ。」
懐からたすきよりも長い布を何十本も取り出す。それを四方八方に投げ、自分の周囲を布で覆ってしまう。
「ふっふっふっ、忍法、布砦。」
精神動力をやめたバビル2世がじっと眼を凝らす。
布はまるで生きているかのように徐々に伸び広がっている。
「いったい何を企んでいるんだ…む?」
気づくと足元にまで伸びていた布がバビル2世に絡み付いていた。
「こ、これは!?」
布はたちまち手足を包み、絡まり、縛っていく。バビル2世はどんどんミイラ男のような姿になっていく。
忍法布砦。
川を流れる布は、流れを邪魔する異物があればたちまち絡まりつく。
同じようにこの忍法は布の流れを邪魔する異物に触れると、たちまちまとわりつき、身体の自由を奪ってしまうのである。
すなわち中央にいる術者は、まさしく砦の主のごとく、布という防護壁に守られたも同然になるのだ。
「念には念を入れさせてもらおうか。」
絡み付いていない方向の布を手繰り寄せ、再び、今度はバビル2世めがけて投げつけた。
地面に落ちた布は空に伸び上がり、ジャキと
瓜二つの姿に変化する。投げ飛ばした布の数だけのジャキが誕生し、それが白刃を構え、悠々とバビル2世に歩を進めていく。こ
うなってはもはやどれが本当のジャキであるかわからない。
「忍法布分身。」
これだけの刃を受ければさすがにバビル2世といえどもひとたまりもあるまい。ジャキたちが一斉に刃を振りかぶった。
「甘いな、ジャキ。」
布の中からバビル2世の声。たちまち布が燃え出し、灰に変わっていく。
「お前たちのボスからぼくのことを聞いているんじゃないのか?同じ能力を持っている、と。」
分身体が燃え出す。残されるはジャキただ一人。
「げえっ!火炎放射か!」
しまったとばかりに慌てて刃を振り下ろす。だが、一瞬早く、喉へとリベットが叩き込まれていた。
そして刃をかわし、眼にも留まらぬ速さでつかみかかる。
「エネルギー衝撃波を食らえ!」
ブワァッ、と身体が弾けたように電撃が走った。ジャキの全身が閃光を上げ、火花をふく。
まるで花火セットにマッチを投げ込んだようだ。
そしてそのまま倒れこむ。おそらく内臓がズタズタに引き裂かれたのだろう。口から吐いた血の泡が沸騰してこびりつき、身体のあ
ちこちが破裂したようになり骨さえ見せていた。
「ロプロス。」
安全を確認したバビル2世がロプロスを呼ぶ。降り立ったロプロスからロデムが慎重に3人を降ろす。
川を流れる布は、流れを邪魔する異物があればたちまち絡まりつく。
同じようにこの忍法は布の流れを邪魔する異物に触れると、たちまちまとわりつき、身体の自由を奪ってしまうのである。
すなわち中央にいる術者は、まさしく砦の主のごとく、布という防護壁に守られたも同然になるのだ。
「念には念を入れさせてもらおうか。」
絡み付いていない方向の布を手繰り寄せ、再び、今度はバビル2世めがけて投げつけた。
地面に落ちた布は空に伸び上がり、ジャキと
瓜二つの姿に変化する。投げ飛ばした布の数だけのジャキが誕生し、それが白刃を構え、悠々とバビル2世に歩を進めていく。こ
うなってはもはやどれが本当のジャキであるかわからない。
「忍法布分身。」
これだけの刃を受ければさすがにバビル2世といえどもひとたまりもあるまい。ジャキたちが一斉に刃を振りかぶった。
「甘いな、ジャキ。」
布の中からバビル2世の声。たちまち布が燃え出し、灰に変わっていく。
「お前たちのボスからぼくのことを聞いているんじゃないのか?同じ能力を持っている、と。」
分身体が燃え出す。残されるはジャキただ一人。
「げえっ!火炎放射か!」
しまったとばかりに慌てて刃を振り下ろす。だが、一瞬早く、喉へとリベットが叩き込まれていた。
そして刃をかわし、眼にも留まらぬ速さでつかみかかる。
「エネルギー衝撃波を食らえ!」
ブワァッ、と身体が弾けたように電撃が走った。ジャキの全身が閃光を上げ、火花をふく。
まるで花火セットにマッチを投げ込んだようだ。
そしてそのまま倒れこむ。おそらく内臓がズタズタに引き裂かれたのだろう。口から吐いた血の泡が沸騰してこびりつき、身体のあ
ちこちが破裂したようになり骨さえ見せていた。
「ロプロス。」
安全を確認したバビル2世がロプロスを呼ぶ。降り立ったロプロスからロデムが慎重に3人を降ろす。
3人とも、あのタバサでさえ怯えていた。
それもそのはずだ。大地を揺るがしたかと思うと風を起こし、炎で攻撃を弾き飛ばす。
最後は電撃でとうとう敵を絶命させてしまったのだ。水の系統以外の全ての魔法を使いこなし、しかもそのいずれも一流のメイジかそ
れ以上、といった具合であった。
もはや誰もエルフであるということは信じていない。
「詳しいことは、帰って話そう。そんなことよりもフーケ…いや、ミス・ロングビルの遺体を…」
遺体が浮かび上がりバビル2世の元へ。
「ロプロス!」
「きゅる?」
いつのまにかロプロスのそばにタバサの使い魔がいた。もっともロプロスはロボットなので、黙して語らず。一切の反応はない。
「まあ、一緒に乗せていけばいいか。」
そう言って、3人にロプロスに再び乗るように促す。怯えていたため、すんなりと指示に従ってくれる。
ただ、タバサのみが違った。
タバサはすたすたと見るも無残なジャキに近寄り
「火を。」
と催促したのである。この場合、バビル2世にしたのかキュルケにしたのかは不明である。
「火葬にするの?いまそんなことしなくても…」
あのタバサが、と珍しく思うがそれ以上に怯えてキュルケが言う。色々な意味で物騒なのだ。なるべく離れたいに違いない。
「早く。」
催促するタバサ。だが、
「今はとりあえず、学院に破壊の杖とフーケの正体を知らせることが先決だ。」
と、しぶるタバサを無理矢理乗せる。だが普段から自己主張しないタイプなので、すぐに諦める。
その間に、瓦礫の山を掻き分けて破壊の杖を見つけ出したポセイドンが、バビル2世に杖を渡す。
そしてポセイドンはロプロスの足につかまり、ロデムが飛び乗り、大空へ3つのしもべが飛び上がった。
それもそのはずだ。大地を揺るがしたかと思うと風を起こし、炎で攻撃を弾き飛ばす。
最後は電撃でとうとう敵を絶命させてしまったのだ。水の系統以外の全ての魔法を使いこなし、しかもそのいずれも一流のメイジかそ
れ以上、といった具合であった。
もはや誰もエルフであるということは信じていない。
「詳しいことは、帰って話そう。そんなことよりもフーケ…いや、ミス・ロングビルの遺体を…」
遺体が浮かび上がりバビル2世の元へ。
「ロプロス!」
「きゅる?」
いつのまにかロプロスのそばにタバサの使い魔がいた。もっともロプロスはロボットなので、黙して語らず。一切の反応はない。
「まあ、一緒に乗せていけばいいか。」
そう言って、3人にロプロスに再び乗るように促す。怯えていたため、すんなりと指示に従ってくれる。
ただ、タバサのみが違った。
タバサはすたすたと見るも無残なジャキに近寄り
「火を。」
と催促したのである。この場合、バビル2世にしたのかキュルケにしたのかは不明である。
「火葬にするの?いまそんなことしなくても…」
あのタバサが、と珍しく思うがそれ以上に怯えてキュルケが言う。色々な意味で物騒なのだ。なるべく離れたいに違いない。
「早く。」
催促するタバサ。だが、
「今はとりあえず、学院に破壊の杖とフーケの正体を知らせることが先決だ。」
と、しぶるタバサを無理矢理乗せる。だが普段から自己主張しないタイプなので、すぐに諦める。
その間に、瓦礫の山を掻き分けて破壊の杖を見つけ出したポセイドンが、バビル2世に杖を渡す。
そしてポセイドンはロプロスの足につかまり、ロデムが飛び乗り、大空へ3つのしもべが飛び上がった。
3時間後――
いつまでたっても戻らぬジャキを探しにやってきた白仮面が見たものは、瓦礫の山と、綺麗なジャキの死体であった。
あの恐るべき負傷は、軽いやけどの治りかけのように綺麗に消えているではないか。
そして白仮面の見ている前で心臓が動き出し、眼を開いて起き上がった。
「見ての通り、おまえの予測どおりだ。」
「この惨状、しもべが現れたのか。いくつか、しもべらしきものの噂を聞きつけ慌てていたのだが…」
「いずれにしろ、我らのボス――」
「「ヨミ様に急ぎお知らせする必要がありそうだな。」」
いつまでたっても戻らぬジャキを探しにやってきた白仮面が見たものは、瓦礫の山と、綺麗なジャキの死体であった。
あの恐るべき負傷は、軽いやけどの治りかけのように綺麗に消えているではないか。
そして白仮面の見ている前で心臓が動き出し、眼を開いて起き上がった。
「見ての通り、おまえの予測どおりだ。」
「この惨状、しもべが現れたのか。いくつか、しもべらしきものの噂を聞きつけ慌てていたのだが…」
「いずれにしろ、我らのボス――」
「「ヨミ様に急ぎお知らせする必要がありそうだな。」」