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ゼロの使い魔異聞~お前の魔法で天を突け!~-3

これは未だ訪れる己の運命を知らぬ女の物語
多次元宇宙の枝の一つの話
サモン・サーヴァントで血まみれの男を召喚したマチルダ
彼女はその男を貴族と勘違いし看病した
しかし、気づいた男はただの平民
だが、ただの平民ではないようなそうであるような男
目覚めた男とマチルダは話し、一つの決断をした
それがもう一つの物語となることを彼女は知らない


第3話「俺の名前はカミナだ!」


「はあ? てめえ、何言ってんだ?」
「言ったじゃない、召使いって」
カミナは目の前の自分より頭一つ小さい緑髪の少女を見下ろした。
当然じゃない、と言った面持ちで胸を張っている。
「貴族のすぐ側で仕えることができるなんて早々ないことよ? それに、あなた
 何処にも行くところないんでしょ? だったら――」
「断る」
「はあ?」
マチルダの顔が歪む。可愛い顔が台無しである。
「助けてくれたのは感謝する。だが、誰かの下で働くなんてえのは
 俺の生き方に反するんでな」
カミナはふんと腕を組み少女を見下ろす。
「断る」
物凄い態度である、しかも偉そうである、平民なのに。
唖然としているマチルダをよそに、カミナはシルクの服を脱ぎ捨てると
ズボンにマント、腹にサラシといつもの出で立ちで部屋を出て行こうとする。
「ま、待ちなさいよアンタ!!」
「あん?」
その行動が余りにも突然すぎて一瞬惚けてしまったが、駆け出し、マチルダは
男の前に立ちふさがる。
「アンタ、何処に行くつもりなのよ?!」
「篭りっきりてえのは俺の性にあわねえ。穴ぐら暮らしじゃねえんだからな。
 だから俺はここから出て行くぜ!」
意味不明である、理解不能である。
というか、まだ怪我だらけなのに何を考えているというのか。
「怪我は!?」
「死んじまったはずが蘇っちまったんだ。こんなの怪我のうちにゃあ入らねえさ。
 それにだ、見たことねえ場所なんだ、ぐるりと見てみてえ」
「って待ちなさい!」
机の上においてあった奇妙な色つき眼鏡をかけ、自分を押しのけ出て行こうと
する男をマチルダはぐいと押し留めた。
「だから何だよ? 召使いとかそういうのはお断りだってだな――」
「あんたね、分かってる?」
「あん?」
首をかしげ、眼鏡の奥の瞳が疑問符を浮かべた。まったく分かっていないらしい。
マチルダは頭が痛くなるのを感じた。
「アンタを治療するためにお金かかってんの。たくさん水の秘薬使ってるの。
 ま、私が太守の娘だからそんなの大したことじゃないんだけどね。
 でもね。これ、平民が払えない額のお金よ?」
これで理解できるだろう、そう思ったマチルダ。だが、次の言葉は
そんな彼女の考えを一瞬で吹き飛ばす。
「なんだ、『オカネ』って?」
「え?」
マチルダの思考は止まった。ついでに周囲が凍り付いた。
「『オカネ』っっつーのはなんだ?」
「は………は………はいぃぃぃぃぃぃぃぃ?!」
首をかしげる男のまん前で、マチルダは貴族の娘らしからぬ素っ頓狂な
叫び声をあげた。
「あん?」
だが、そんな彼女の驚愕の理由を知らぬカミナは首をかしげて疑問符を
浮かべる。
目の前ではよっぽどショックだったのか、ぶつぶつと唸ってる少女の姿。
もっとも、カミナが金の概念を知らないのも当然である。
いわゆる自給自足でサバイバルな生活が基本の世界で金など糞の役にも
立たない、というかそんなの存在するはずがない。
ゆえに、『カネ』なんて知らないのである。
まあ、目の前であんぐり口を開けてる少女を見ているのもおもしろいが、
やっぱり外の方が興味がある。
「んじゃ、行くぜ」
何度か手を目の前で振ってみたが、こちらには全く気づかない様子なので
カミナはあうあうと呻いてる少女の横を通り過ぎ、ドアの外へと出た。


「やっぱ………ちげえんだよなぁ?」
ううむと、カミナは顎に手をやる。
ジーハ村の複雑怪奇に捻じ曲がって入り組んだトンネルと比べれば、
単純極まりない造りの建物の中をすたこら通り抜けつつ、うむむとカミナは呟く。
直感的にだがカミナはここが自分のいた世界と何かが違う事は気づいていた。
それは論理とか道理とかそういった細かい事や理屈で説明できるものではない。
口で説明できるようなものではないのだ、こう、漢としては。
ただ、なんというか空気が違うとしか言いようがない。
緑いっぱいのこの風景だけじゃない、肌に感じるものが違う。
だが、だがそれにも関わらず、何かがカミナの中で同じだと告げている。
違うように見えるがどこかが同じだと言っているのだ。
違うのに同じだが同じで違う、同じが同じで違うが違う?
同じは同じで違うは同じで違うは同じだから違うは同じ?
「あー………わかんねえ」
悩むのは性に合わない、堂々巡りでぐるぐる螺旋模様になりそうな頭を
ボリボリ掻きながら、カミナはひょいと近くにあった窓から飛び降りた。
着地は鮮やか且つ完璧だった。
獣人との大喧嘩でさんざん暴れまわっただけの体力筋力があるのだ、飛び降りた
としても建物2階分くらいの高さはカミナにはたいした問題ではない。
腕やら腹やら痛むのは仕方なし、漢は黙って我慢なのだ。
つーんと来る痛みを堪えカミナは再び歩き出す。
ぶらりぶらりと歩いていると、さっきまで寝ていたでかい建物は木々に
隠れて見えなくなる。
「…………」
カミナはくいっと首だけ振り返った。
そういえばあの建物、獣人の乗ってたデカブツ、たしかダイガンザンだったか、
あれと良い勝負したでかさだった気がする。
顔はなかったが、もしかしてあれも動き出すんじゃなかろうか?
そんなことをううむと顎に手を当てカミナは考える。
腕が生えて、足が生えて、どっすんどっすん歩き出す。
うん、ものっすげえでかくて良い感じだ。
しかし、だ。
カミナは後ろにやった首を今度は天辺へとぐいっと伸ばした。
「……へへっ、やっぱお天道様っつーのは気分が良いもんだよな、おい」
さんさんと自分に照りつける太陽に手をかざし、カミナはにっかりと笑う。
死んだはずの自分がこうやって、こうして、再び自分の二本の足で立って
歩いている。
嬉しいか嬉しくないかと言えば、嬉しくないと言ったら嘘になる。
嬉しいのだが、ただ、寂しさはある。
あの後シモンやヨーコ達、大グレン団の仲間達がどうなったのかも気になる。
自分が死んだ事で涙を流すシモンやヨーコの姿を夢にも見た。
「だがよ」
そんな寂しさや不安なんて拭いただけで吹き飛んでしまう瑣末なものだ。
カミナは信じている、自分の信じた仲間達がそんな事で膝を折るわけが
ないと確信している。
自分の強がりを支えてくれたシモンが皆を引っ張ると確信している。
自分に「進め」をくれたシモンが立ち止まるわけがないと理解している。
はは、と軽く笑う。
少し感傷的になりそうな目頭をくっと押さえ、カミナはまた歩き出す。
今の自分はただのカミナだ。
たった一人の、ただのカミナだ。
自分の強がりを押してくれる奴もいない、すっぴんのカミナだ。
だからこそ。
「俺は俺なりにまた最初っから始めてやるぜシモン、ヨーコ………!」
マントを翻し、カミナはかっこつけてみた。
お天道さまに手をぐいっと突き出し、にんまりと笑った。
しかし、

「勝手にどっか行こうとしてんじゃなぁぁぁぁぁあぁい!!」

「何だァァァ!!??」
なんと、カミナの目の前に空からあの少女が降ってきた。
木々の間から、ドザザザザッと降ってきた。
そう、その様はまるでジーハ村にあの牛面ガンメンが落っこちてきた時や
アダイで落っこちてきたガンメンを思い返させるようで。
というか、大体落っこちて来てるのがガンメンというのが驚きだ。
ついでに人間が空を飛ぶというのは見たことがない、これも驚きである。
獣人の中には空を飛べるのもいるかもしれないが見たことがないので
知らない、なので驚きである。
驚く・驚き・驚いたと驚が三つと驚き尽くしの三連発ときたものだ。
「おおぅ!? いきなり空から人が降ってくるたあ何だァ!?」
「黙りなさい! あんた、私を放置するとは良い度胸してるじゃないの!」
ぐいと、少女が目の前によってきた。
「人が唖然呆然してるのを良いことに出て行くとは最高よ、笑えるわ。
 しかもお金を知らない? どこの蛮人だってえのよ、ええ!?」
どうやらこの少女、普段は普通に喋るらしいがキレると口が悪くなるタイプ
のようだ。
あの銭湯で獣人どもが人間に化けたように人間というやつもころころ変われる
らしい。今更ながら裏表のない個性的メンバーに囲まれていたカミナは
案外冷静にそんな人間の心の機微に触れ感心した。
もっとも、今考えるべき問題はそうではないのだが。
「ちょっと、聞いてるの!?」
「ん、なんだ?」
「なんだ、じゃないわよ!」
さっきと同じく自分の顔面にビシっと指をさす少女。
「ホント、アンタふざけてるわ。人がお情けで召使いにしてやろうというのに
 無視して、あまつさえ逃げ出すんだから。
 でも、よくよく考えたら仕方ないわよね、アンタお金も知らない平民で
 野蛮人だもの」
いきなりカチンときた。
これまた酷くむかつく言い草だった。
冗談やなんかで言ってるならまだしも、本気で人を馬鹿にしている言い草だ。
少女の目つきにカミナはぐっと眉間に皺を寄せた。
この目つき、あのジーハ村の村長と同じだ。
あの気に食わない、テメエ勝手なオヤジの目つきだ。
「良い? アンタのいたとこがどんだけ野蛮で未開の蛮族の土地か知らないけどね
 ここではお金がないとな何にもできないの。アンタを治したような薬だってね、
 普通はアンタみたいな奴には買えないの、分かる?」
こういう鼻持ちならない言い草、女であっても気に食わねえ。
驚きなんてどこへやら、カミナは憤懣覚めやらぬ感情が腹の中で煮えくり
かえるのを感じた。
てめえのバカで罵られるのは仕方ねえ。
しかし、見下すのと罵るのはまったく違う。
ついでに出来ない、無理だ、も気に食わない。
「ああ、そうよ! そもそも私は貴族、アンタは平民。平民が貴族の言う事を
 聞かないなんて馬鹿げてる話だわ!」
腹が立つ。
気に食わない。
こめかみの部分で血が激しく脈打つのを感じる。
少女の言葉はなお続いている。
やれ貴族がどうだ、平民がどうだ、身分の違いがどうだこうだ。
意味の分からない事、道理云々、正直耳に一つも入りやしない。
しかし、その一句一句にカミナは頭のてっぺんあたりが火山のように
煮えたぎるのを感じた。
そして、
「もう分かったでしょ? さ、そういうことだからアンタは私の―――」
「オゥオゥオゥオゥオゥオゥッッ!! さっきから聞いてりゃずいぶん
 気にくわねえことばかり言ってくれんじゃねえかッッ!!」
ばん、と大地を踏みしめ叫んだ。
頭の火山が大噴火、男だ女だ関係ない、んなこたあ知ったことじゃない。
『すっげえ気に食わない』でカミナの頭の中はいっぱいだ。
「な、何よ……!」
たじろぐ少女をしっかり見据え、でんと構えて仁王立ち。
カミナは少女をぐいっと見下ろした。
「上だ下だの関係ねえ! 偉かろうがなかろうが関係ねえ! 知ってようが
 知らなかろうが関係ねえ!!」
ギンと自慢のサングラスが輝く。
丁度良く切り株があったのでそこに片足をぐいっと乗っける。
「てめえの道理なんて知ったこっちゃねえ! 俺は俺の道を行くだけよ!!
 邪魔をするってえなら邪魔者全員踏みつけて! 飛び越え、くり貫き、
 押し通るのみ!! 退けい、俺の道を塞ぐんじゃねえ!!」
「なっ……!! 貴族にアンタ歯向かう気?!」
「はん! キゾクだかマンゾクだか何だか知らねえが、歯向かうってえなら
 上等よ!! でけえ顔面/ガンメンのさばらせるってえならぶっ飛ばすまで!!
 それに俺はアンタじゃねえ、俺の名前はカミナだ!!」
阿呆だ、こいつは相当の阿呆だ。
マチルダはこのどうしようもない阿呆に頭の髄が痛むのを感じた。
まるでトリステインの貴族みたいに芸がかった口ぶりもあれなのだが、
この頭の痛くなるような怒りの理由はこれだけじゃない。
目の前の男を見る。
「だが、俺は漢だ女は殴らねえ!! このまま行かせてもらうぜ漢道!!」
ふんと胸を張り、腕をがしっと組んでこちらを見下ろしている。
この態度、とても気に食わない。
助けてやったたうえに情けで召使いにしてやろうと言ったのに、こいつは
それを断った。
まるで自分なんか屁でもないと言わんばかりに断った。
酷い屈辱だ。
自分が太守の娘だからというのもあろうが誰も逆らう事なんてなかったのに
それをこいつはいとも簡単に断ったのだ。
こいつをこてんぱんに叩きのめして自分の前に跪かせたい、そんな嗜虐的な
感情がマチルダの中でむくむくと湧き上がる。
東には魔法がないのだろうか? だからここまで見栄を張れるのだろうか?
少し疑問に思うが、そんなのどうでも良い。
今ここでたっぷり教えてやる。
包帯だらけで可哀想だが現実というやつを叩き込んでやる。
「ふふっ」
自分自身でも驚くほどの好戦的な感情にマチルダはにまりと笑んだ。
熱でもかかったかのように身体の芯の部分がかあっと熱くなる。
「言ってくれるじゃないの。それじゃ、逆にあんたをぶっ飛ばしてあげるわ!」
マチルダは手に握ったタクトをびしっと男に向けた。
だが、
「…………あん?」
思いっきり憐れみの視線で見られた。
どうやらこのカミナという男、本当に魔法を知らないらしい。
「あー……あのよ。喧嘩を買うっていう心意気は買うんだがよ、なんだ? 
 そんなちっぽけな枝じゃ俺を殴っても意味ねえぜ?」
だとしたら更に良いではないか。
「東の方では魔法を教わらないようね。でも、丁度良いわ。貴族に
 歯向かう事の恐ろしさってのを教えてあげる」
カミナとかいう目の前の男にマチルダはさっき以上にふつふつと怒りが
湧いてくるのを感じる。
既にルーンは紡いでいる、あの男の真下からゴーレムの腕を錬金して
ドカンと殴り飛ばしてやる。
情けない叫び声をあげる姿を想像しつつタクトを振り上げようとするマチルダ。
しかし、
「危ねえ!!」
「え!? あ! わ! き、きゃあっ!?」
いつの間にというのか、10メートルはあったかその距離を一瞬で詰められ
マチルダはカミナに抱き抱えられ空を舞っていた。
ゆっくり時間が過ぎていく。
ほんの3秒かそこら、なのにその間が万にも億にも思える長さ。
そして、マチルダはカミナ越しに自分のいた場所を見た。
ゆっくりじわりと過ぎる時の中じんわりと爆発していく大地を見た。
吹き飛び巻き上がる砂塵を、刻々と砕けて征く土塊を見た。




【次回予告】

殴り合いには得物はいらねえ! 殴りあうならステゴロだ!
殴り・殴られ・殴り合い!! 漢(オトコ)は語れ、拳で語れ!!
分かる奴なら拳で語れ!!
分からねえ奴にも拳で語れ!!
拳で語ればなぁぁぁんにもいらねえッッ!!

次回!! 『ゼロの使い魔異聞~お前の魔法で天を突け!~』!!

「ド偉い口たたいてんじゃねえッッ!!」

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