あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

つかわれるもの-5


第05話 見つめられるもの



ルイズの暴力が止んだきっかけは、シエスタの発した「ミス・ヴァリエール、そろそろ朝食の御時間ですよ?」という言葉だった。
若干夢中になっていたルイズは我に返り、少々焦りながらトウカとシエスタを交互に見つめると、

「シエスタだったっけ?食堂で食べさせる訳にもいかないから、この二人に厨房で食べさせてあげて!頼んだわよ!」

などと言い残して、アルヴィーズの食堂へと駆け出して行った。
その暴力を受けていたトウカはどうなっていたのか、と言えば、考え事をしていた事と少なからず油断していた事によって、初撃をまともに喰らってしまっていた。
その後マウントポジションを取られ、回避に専念したとは言え数発の拳を身体に受け、寝起きに思い切り動いた事と相まって、たいへんにお疲れ気味であった。
そして力で振り解けばすぐ逃げられましたのに、とカルラに囁かれ、その発想は無かったと少々落ち込んだりしていたりもするのである。
まぁいくら落ち込んでいても腹は減る、と言う事でシエスタに連れられて厨房へと向かうトウカとカルラ。
その途中、どこか腑に落ちないように首を傾げているカルラの様子に気付いたトウカが、小さく声を掛けた。

「どうした?カルラ。何か考え事でもあるのか?」
「あ……いえ、シエスタの事なんですけど、何処かで見たような気がしますの……気のせいかしら?」
「いや、某も何処かで見たことがある気がするのだが……どうもな」

どこかに違和感、というか既視感を感じつつも、取り敢えず余計な事は意識から掻き消す。
そして不意にシエスタが立ち止まったそこが、目的地である厨房の前であった。
トウカが取り敢えず中に入ろうと覗いた厨房は、活気に溢れるとかを軽く超越し、戦場と言って良いほどの喧騒を醸し出していた。
数多の戦場を駆けてきたトウカとはいえど、これは流石に専門外。唖然として立ち尽くす他無かった。

「あの、お二人はちょっと待ってて下さいな。今はちょっと騒がしいですけど、もう少し経ったら落ち着きますからー!」

二人に向かって一言だけ叫んで厨房の中に駆け込むシエスタ。
厨房の喧騒がおさまったのは、シエスタが厨房に入ってから10分が経過する辺りであった。

「トウカさーん!カルラさーん!入ってもよろしいですよー!」

厨房の中が落ち着いてさらに数分経過した頃、ようやくシエスタからお呼びの声が掛かった。
待ってましたと言わんばかりの勢いで入ってきたのはトウカ。
やれやれと言った風にゆらりと入ってきたのがカルラ。
態度に多少の違いがあっても、久々の食事と言う事でどちらもなかなか嬉しそうだった。

「ようやく食事にありつけますわねー」
「そういえば暫く何も食べていなかったしなぁ……」

厨房内は多少ざわついていたが、二人の登場で一気に静まり返った。
場に流れる空気が一気に重たくなった。が、それを一切気にしない――というか気付いていない――のは、椅子に座って料理を待つ二人と、シチューの入った皿を持つシエスタだけであった。図太い。

「はい、これ余り物で作った厨房での賄いですけど、沢山あるのでどうぞー!」
「かたじけない、ありがたく頂戴するとしよう」
「んー、中々いけますわね、これ」

シチューが目の前に置かれると、同時にがっつくトウカとカルラ。
その光景を微笑ましげに眺めるシエスタに、状況を把握しきれない料理長のマルトーが尋ねた。

「なぁ、シエスタ。あの亜人さん達は何もんだ?」
「えーと、ミスヴァリエールの使い魔さんで……私の友人です」

ほぉ成る程な、と納得するマルトーを尻目に、カルラとトウカはシチューを早々と完食した。
しかし、シチューの一杯で満足するような二人ではなかった。ついでに言うと彼女達は遠慮する気もさらさら無かった。

「「シエスタ(殿)、おかわり!」」
「あ、ちょっと待ってて下さい。すぐ用意しますから!」

余程腹を空かしていたんだろう。その後もおかわりが何度か続き、両者が七杯ずつ平らげたところで、ようやくスプーンが置かれる。
二人はその食べっぷりを見て嬉しそうなマルトーとシエスタとその他厨房の皆さんに感謝を告げ、ルイズを待つために食堂の前に移動した。

食事を終えたルイズが二人を連れて向かったのは、立派な石造りの教室だった。
扉を開けてルイズが中に入った途端、一気に場が静まりかえる。
彼女が召喚した使い魔がただの平民ならば、野次の一つや二つも飛んだだろうが、召喚したのは亜人である。
なんと言うかぶっちゃけた話、トウカとカルラが怖くて、いつもみたいにからかう気にならなかったのだ。
そのおかげだろうか、ルイズは少々機嫌が宜しいようで鼻歌をこぼしながら席に着く。
一方の二人は、他の使い魔達を物珍しそうに眺めていた。

「変な生き物が一杯ですわねー」
「これが他の生徒の使い魔か。某達もこれと同類の扱いなんだろうか?」
「達じゃなくてトウカだけじゃありませんこと?私にはルーンがありませんもの」
「……いや、それはちょっと酷くないか?」

トゥスクルでは……と言うか、ウィツァルネミテアでは一度も見たことの無い生き物達。
興味は尽きないのか、二人は飽きる様子も無く観察している。恐らく初めて動物園に行った子供も、こんな反応をするんだろう。
そうして二人が使い魔達とじゃれているところに、小太りの女教師が入ってきた。
彼女は教室を一通り見回し、二人を見て若干顔が引きつったが、一先ず満足そうに微笑んで言った。

「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴァルーズ、こうやって様々な使い魔達を見るのがとても楽しみなのですよ」

そう言って、そのまま授業が開始された。
授業の内容は生徒達にとっては基礎の復習程度の内容であったが、異世界からの来訪者である二人には一切馴染みの無いものであり、その多くは興味深いものであった。

「四大系統ねぇ……こちらで言う属性と考えれば良いのかしら?」
「多少の差異はあるだろうが、根本的なものは同じなんじゃないのか?」
「んー、差し詰め"虚無"は"大神"かしらね」
「"光"と"闇"の扱いが判らんが、そんなところだろう。まぁ無理矢理こちらの常識に当てはめるのが、間違っていると思うがな」

こそこそと会話を繰り広げる二人だが、その話に興味を持った人物が居た。
言わずもがな彼女らの主人、ラ・ヴァリエール嬢である。

「ねぇ、属性とか大神とかって何の話よ?」
「いや、某達の元居た世界の話だ。こちらとの似ている点について、な」
「ふーん、そう言えば詳しい事は聞いてなかったわね」

くるりと後ろに顔を向けて二人の会話に加わるルイズ。
だがしかし、それを見逃してくれるほど教師が甘い訳でもなかった。

「ミス・ヴァリエール!授業中です、私語は慎みなさい」
「す、すいません……」
「お喋りしている暇があるのなら、この錬金はあなたにやって貰いましょうか」

何の気無しに言ったであろうシュヴァルーズの言葉。
しかし、この場にいる生徒達のほぼ全員が、顔面を蒼白に変えていた。
教室中の心の内を代弁するように、キュルケが立ち上がる。

「先生、危険です」

その場のほとんど全員が一斉に、首を縦に振る。
すでにキュルケは、いつものようなからかいを含む口調では無くなっている。
しかし当のシュヴァルーズは、心底不思議そうな顔をして生徒達に言い放った。

「錬金の何処が危険なのです?それに失敗を恐れていては何も始まりませんよ。ミス・ヴァリエール、前に」

何とも教師の鑑だと言わんばかりのセリフだが、生徒達にとっては死刑宣告に等しい。
ルイズが前に歩いて行くのをキュルケが引き止めようとしたが、既に覚悟を決めたルイズの前では無意味だった。
観念した生徒達は次々に机の下に潜っていく。約一名は、既に教室の外への退避を完了させていた。

「二人とも、隠れた方が良いわよ?大変な事になりたくなければ」

現在の状況が判らずに首を傾げる二人に、キュルケの忠告が聞こえて来る。
何が危険なのだろうかと考えながら机の影に隠れた途端、前方から爆音が轟いた。

「ッ!何が起こった!?」

内心でキュルケに感謝し、トウカは一声叫んで机の影から飛び出る。
教卓が"あった"方向を見ると、黒焦げになって倒れているシュヴァルーズと、煤で体中を真っ黒にして立っているルイズが見えた。

「ちょっと失敗したみたいね」

教室の惨状を意に介した風も無く、淡々と呟くルイズ。
その一言がきっかけとなって堰を切ったように流れ出る罵声と中傷。
ようやく彼女の二つ名"ゼロ"と、その二つ名の持つ意味を理解する事となった二人であった。

ただそんな事は些細な事だと言いた気に、カルラはルイズを見て顔を綻ばせながら、トウカにだけ聞こえるような声で呟く。

「あの子……将来大物になりますわね」
「……全くもって同感だな」




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