あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ZEROMEGA-6


五宇たちや子供たちの声が聞こえなくなるまでティファニアはベッドの上で毛布に包まっていた。
家の中に自分以外の気配がいなくなると、ティファニアは億劫そうに立ち上がり、五宇が寝室の扉の側に置いていった枕と魔女の人形のふーけちゃんを手にとってまた床の上に戻った。
うつ伏せに寝ようとして、ふと動きが止まった。

今朝、青年と交わした短いやり取りを思い出す。
あの時、自分はこの枕を彼の頭に投げつけたはず……。
脳裏に蘇るのは見事に顔面で枕をキャッチした五宇の姿。
すると、手にもったただの布と綿の塊が急にティファニアの中で深い意味を持ち始めた。

気のせいかもしれないが、と言うか間違いなく九割方気のせいだろうが、枕の微妙な皺が五宇の顔に見え始めた。
そうだ。確かここに彼の顔がぶつかったのだ。
それに自分がうつ伏せに顔を埋め込むというのはつまり……つつつまり、セカンドキッス(間接ver)になるのでは!?

色白なティファニアの顔が一気に真っ赤になった。
細長い耳が珊瑚色に染まりながら、上機嫌な子犬の尻尾のようにぴくぴく動く。
心の中で今まで意識した事のない感情が囁きかけてきた。
遠慮する必要など何もないのだと。
これは枕! ただの枕! 彼の顔が、唇がちょっと接触した私の枕!
だから、私が顔を触れて、埋めて、あまつさえちょっと唇をつけてもぜぜぜぜ全然大丈夫!
ゆっくり、ナメクジが這い進むようなスピードでマジックアイテムと化した枕に顔を近づける。
残りあと三十サント! 
二十サント!
十五サント!
十!
九!
八…………

しかし、後僅かというところでティファニアは枕をひっくり返し、その上に頭を乗せた。
うつ伏せにではなく、仰向けに……

「ううう、私ってどうしてこんなんだろう……」

見慣れた天井に話し掛ける。
子供たちの世話をしている間は、何を考えずに済んだ。
子供たちに没頭することで余計な思考を頭の中から締め出すことができた。
でも、こうして一人で天井を眺めていると普段考えたくなかった事や目を逸らしたいと思っていた事実が次々に心の中に浮んでくる。

……認めたくないけど、頭では分かっているのだ。
筋の通らないことを口にしているのは自分の方なのだと。
命をかけた大事な任務の最中に五宇を呼び出したのは自分。
助けてもらったにも関わらず、彼を騙して「コントラクト・サーヴァント」を仕掛けたのも自分。
本来ならば憎まれ、怨まれ、罵られても仕方のない立場だ。
しかし、五宇は文句をいうどころか自分から子供たちの世話を手伝い、ティファニアに感謝しているとまで言ってくれた。
だから、青年がもとの世界に帰る方法を探すためにこの村を出て行くといった時、彼女は五宇たちを気持ちよく送り出す方法だけを考えるべきだったのだ。
間違っても、彼を責める権利などなかったはずなのだ。
それは分かっている。
良く分かっているのだが……

「ゴウさん、やっぱり行っちゃ嫌だよ……」

頭で分かっているからと言って、心がそれを受け入れるとは限らない。
この三ヶ月の間に、五宇の存在は少女の中で大きく比重を増していた。
ティファニアにとって青年は彼女を暴漢の手から救った騎士であり、初めての口づけの相手であり、そして父親以外で始めて接する年頃の異性であった。
彼と分かれることを想像するだけで我が身を切られるように辛い。

でも、五宇は確実に出ていく。
あの頑固で不器用な青年は自分にできないことを決して口にしない男だ。
ティファニアが彼を失うのはもはや時間の問題だった。
それなら、いっそのこと―――

―――自分と彼を引き裂く、その記憶を呪文で消したらどうだろう?

その考えにティファニアの心は二度ざわめいた。
一度目は歓喜に。
二度目は恐怖に。
自分はこんなに恐ろしい考えのできる人間だったのかと少女は慄いた。
しかし、慄きながらとっさに浮んだ考えを捨てることはできなかった。
あっさり捨ててしまうにはそれはあまりに甘美過ぎるアイディアだった。

―――私にゴウさんを不意討ちすることなんてできるわけがないわ!

亡霊のように付きまとう思いつきを振り払おうとして、自分に言い聞かせた。

―――はたしてそうかしら?

今日、目覚めたばかりのもう一人のティファニアがそれに反論する。
五宇とタイラは確かに強い。
もしかしたら、御伽噺で聞いた「イーヴァルディの勇者」よりも強いかもしれない。
しかし、ティファニアには五宇にも忘却の呪文は効くという確信があった。
「コントラクト・サーヴァント」に簡単に引っ掛かったように五宇は用心深いようで、結構抜けている部分がある。
それに使い魔は決して主人を傷つける事はできないと、マチルダ姉さんも言っていたではないか?
このアイディアの成功率は決して低くない。
失敗してもやり直すことができる。
後は自分に実行する勇気さえあれば―――

私、ゴウさんの記憶を消すことを前提でものを考えているわ!!

そのことに気付いた途端、ショックのあまりベッドから飛び起きた。
心臓はかつてなく激しく鼓動を刻み、背中は汗でぐっしょり濡れていた。
そのくせ、頭は凍りついたように澄み切っている。
呼吸の音が大きく頭蓋骨の中に木霊するのを聞きながら、ティファニアは自分の指が別の生き物のように杖に向かうのを見た。
人差し指で触れ、中指でからめ、親指で握り締める。

杖は手に取った。
後は青年の帰りを待つだけでいい。
ベッドの中で丸くなっていれば、彼は心配してきっと部屋の中に入ってくる。
五宇は自分が忘却の魔法を使えることを知っているが、呪文を聞いたことはない。
布団に包まりながら小声で呪文を唱えれば―――。

「駄目……やっぱり、駄目よ……」

杖を持つ手をもう一本の手で握り締めながら呟いた。
何故、と心の中の欲深い自分が問い掛ける。
昨夜、五宇も言っていたではないか、もとの世界に帰れば無謀な戦いの末に死ぬしかないと。
過酷な責務から愛する人を解放することの一体何が悪いというのか?
彼の心の大部分を占める任務の記憶を消せば、青年にとって主人である自分が全てになる。
彼の余計な記憶を消して、ただ囁くだけでいいのだ。
私だけを見て、抱きしめて、髪を撫でて、そして……。
たったそれだけのことなのに、何故っ―――!!

「だって、いなくなっちゃうもの。そんなことをしたら私が好きだったゴウさんまでいなくなっちゃうもの」

長く激しい葛藤の末にティファニアがたどり着いた、それは真実だった。
記憶を消すことは容易い、でもそれをもとに戻すことはできない。
彼女が好きになったのは口下手で不器用な優しい青年。
生真面目な彼から存在意義とも言える任務の記憶を奪ったらどうなるのか。
それが想像できないないほどティファニアは愚かではなかった。
そして、五宇を独占するために彼の記憶を消すにはティファニアはあまりに優しすぎる少女だった。

長い、長い時間をかけて、杖から自分の指を引き剥がした。
代わりに枕のそばにあった「ふーけちゃん」を抱きしめる。
涙混じりの声で切実な問いを虚空に投げかけた。

「マチルダ姉さん、お母さん、お父さん……私はどうしたら良いの?」

だけど、問い掛けた相手は誰一人として彼女の問いに答えず、代わりに―――

きゅるるるるるるるぅ…………

朝から何も食べていないお腹の虫が激しく自己主張をした。

止めだった。
致命的だった。
アルビオン風に言うならばクリティカルヒット!!
枕の上に倒れこみ、あーとかうーとか唸りながらジタバタ暴れた。
盛大に炸裂した自己嫌悪のせいで、さっきまで死ぬほど彼女を苦しめていたシリアルな葛藤が宇宙のどこかに吹っ飛んでしまった。
でもどん底まで落ち込んだおかげか、ちょっとだけ開き直ることもできた。

「……ご飯を食べよう」

寝室から出てくると、五宇たちが残してくれた食事に気付いてまたちょっと泣きそうになった。
初めて食べる彼の手料理、ちょっと焦げたり、塩加減を間違えていたりしたけど何故かとても美味しく感じられた。
そして少ししょっぱい食事を食べたせいか、急に甘いものが食べたくなった。
でも、今日子供たちに出すはずだったおやつのクッキーは昨夜、ティファニア自身が地面にばら撒いてしまった。
あのクッキーは彼女が研究に研究を重ねた結果できた苦心の作だった。
今の心境で同じものが作れるとはとても思えない。

「あ、そう言えば、桃りんごが一杯余っていたっけ……」

先日、五宇が何故か森の中から食べきれないほどたくさんの桃りんごを取ってきたことがある。
一部はジャムにしたり、冬に備えて干し物にしたりしたが、大部分は五宇がどこかへ持ち去ってしまった。
ティファニアがお昼のお弁当にするのかと聞いたら、五宇は曖昧に頷いていた。
青年は果物好きの老韻竜のために桃りんごを集めていたのだが、その一件のせいで少女は彼が桃りんご好きなのだとすっかり勘違いしてしまったのだ。

「そうだわ。桃りんごのパイを作ろう。あれだったら何度も作っているし、ゴウさんもきっと喜んでくれる」

麺棒を使ってパイの生地を作り、その上に溶き卵を塗ってから作り置きの桃りんごの甘露煮を乗せる。
何度も繰り返した同じ動作。
例えどんなに心が落ち込んでいても、身体は自然に動く。
そして身体を動かすうちに、何時しか落ち込んでいた気持ちも少しずつ上を向き始めた。

そうだ。
タイラだって言っていたじゃないか。
五宇たちは別にすぐにいなくなるわけじゃないのだ。
彼らが出かける前に、ティファニアが魔法など使わずに五宇に任務を忘れさせることだって不可能ではないはずだ。
そのためには、先ず彼の好きなこの桃りんごのパイを完成させなければ!
しかし、パイが九割方完成し、後はオーブンで焼くだけという段階になった時、誰かが扉を叩く音が聞こえた。

「ゴウさんが帰ってきたのかしら?」

エプロンで手を拭きながら、急いで玄関に向かおうとするティファニア。
だが、彼女が走り出そうとした途端、頭の中にふかふかのゴーレムの縫いぐるみに乗った「ふーけちゃん」が現れた!
「ふーけちゃん」は何故かマチルダそっくりの声で言った。

『お待ち、テファ! それは逆効果だよ!』
「え? ふ、「ふーけちゃん」何故っ!?」
『良いかい、テファ。男なんてどいつもこいつも頭と根性の悪い犬みたいなもんさ。女が尽くせば尽くすほど連中は付けあがって、お前を軽視するようになるよ』
「そ、そんな! それじゃ私はどうしたら良いの?」
『逆に考えるんだよ、テファ! 尽くして駄目なら、逆にわざと焦らして相手に尽くしてもらえば良いんだよ!』
「わ、分かったわ。ふーけちゃん! 私、頑張るわ!」

瞼の裏でサムズアップしながら、イイ笑顔を浮かべる「ふーけちゃん」に大真面目で返事をする。
自分ではまともなつもりなのだろうが、徹夜したせいで実はかなりてんばっているティファニアなのであった。

「ふーけちゃん」のアドバイスどおり玄関まで焦らすようにゆっくり歩いていく。
まだしつこく扉を叩き続ける相手を締め出すように扉の板に背中を預けた。
喉の奥から湧き上がる笑い声を必死にこらえる。
一向に開かない扉の前で、途方に暮れている青年の顔が目に浮ぶようだ。
でも昨日彼が自分に意地悪をしたから、今日ちょっとぐらいやり返しても構わないはず。
もうちょっとだけ彼を焦らそう。
その後、ドアを開けてあげよう。
そして、彼の好きな桃りんごのパイを見せてからお願いするのだ。
危険で実りのない任務なんか諦めて、私と一緒にいてくださいと。

ふいに扉を叩く音が途絶えてしまった。
まさか、五宇が怒って行ってしまったのだろうか?
慌てて顔を扉に押し付け、その向こう側の音に耳を澄ませたその時――

巨大な蜥蜴の尻尾のようなものが扉を突き破って、ティファニアの顔の前に飛び出した!

悲鳴を上げながら後ろに飛び退く。
ほぼ同時に風の魔法をぶつけられたみたいに硬い扉が木っ端微塵に砕け散った。
その衝撃に少女は床に叩き付けられ、身体の上に砕けた扉の破片が降り注ぐ。
綺麗な金髪の上に降り積もった木の欠片を振り払い、恐る恐る顔を上げる。
次の瞬間、少女の甲高い悲鳴が家の中に響き渡った!

ティファニアの家を守っていた扉は綺麗になくなっていた。
代わりに扉に匹敵するほど大きな影が外から注ぐ太陽の光を遮っていた。
その巨大な人影、司祭服と山羊の頭蓋骨の仮面を纏った怪人はティファニアの姿を認めると濁った目を歪めて笑い、


  ―――無防備に床に横たわる少女の身体に長い触手を伸ばした!




◆    ◆    ◆




ついでに、各使い魔の日常に関する子ネタを少々、
(なお、以下に出てくるキャラたちの口調は本編より大分砕けています。それから、当方姉妹スレのゼロいぬを激しくリスペクトしております)

『ガンダールヴ・コンビ』

サナカン
「始めてこの世界に来た時はいろいろトラブルもあったけど、全てご主人様との絆で乗り越えて参りました。サナカンは良くできた使い魔と判断いたします。あ、ご主人様の部屋に忍び込む不埒なネズミを発見! 微小構成体で排除排除!」

ルイズ
「サナカンが学院をぶっ壊してギーシュにあんなことをしたせいで、私は未成年で最重要危険人物に。実家には帰れないし、外出するだけでダース単位の監視がつくし、グラモン元帥とマザリーニ枢機卿が真剣に私の暗殺を検討しているという噂も……
私の明日は一体どっちなのよ!!」

『ミョズニトニルン・コンビ』

ガリア王ジョセフの日記
「ダフィネルを召喚したおかげで、自分に虚無の力があることが分かったし、優秀な部下が手に入ったし、何よりほぼ無限にダウンロードできるゲームが遊べておれってば人生の絶頂ぉーって感じ?」

ダフィネ・ル・リンベガの日記
「主人がまた徹ゲーをした。十年近く仕えているのに、あの人が何を考えているのかさっぱり分からない。突然脈絡もなく笑い出すし、独り言をブツブツ話し始めるし、ひょっとして就職先を間違ったかしら?」

『××××・トリオ』

ヴィットーリオ教皇「ナユタ、お手」
那由多「あ―――」
ヴィットーリオ教皇「ナユタ、おまわり」
那由多「う―――」
ヴィットーリオ教皇「ナユタ、おちん……」
ジュリオ「猊下! その芸に『お』をつける必要はありません! ナユタも脱ぐな! お前に「それ」はついてない!」

『コズロフとラ・ヴァリエール家の人々』

エレオノール「こ、これ食べられるの? 凄く毒々しい色をしてるんだけど?」
コズロフ「ええ、食べられますよ。ほら、お嬢様もお一つ如何ですか?」
エレオノール「い、いやよ! 喋る熊が作ったこんな赤くて緑色でおまけに中に粒粒が一杯入った変な果物なんて、私は絶対に食べないんだからぁぁ!」
コズロフ「いや、これは果物じゃなくて野菜、ってお嬢――――!! ……ああ、逃げてしまったよ。あの人、本当にアカデミーの人なのかね?」
カトレア「食べてもらえなくて残念だったわね。コズロフの作ったトマト、こんなに美味しいのに」

ラ・ヴァリエール公爵「どれ、私も一つ(シャク)」
コズロフ「旦那さま、違います! それはハバネロ!」
ラ・ヴァリエール公爵「あ―――――――――!!!」



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