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デュエルモンスターズZERO-08

コルベールの部屋から出てくる一つの影があった。
その手にはキラキラと黄金に輝くものが握られている。

「やってくれたな。あのハゲ」

影……フーケは当初の目的通りに王者の証たる千年錘と、神のカードと呼ばれるものを含めたデッキをその手に掴んでいた。

だが、彼の足どりはよろよろと不確かでおぼつかない。
壁に手をかけながらどことも知れぬ場所へと土くれは歩いてゆく。

「まさかディアバウンドがやられるとはな……」

懐から取り出した一枚の札。
黒く焼け焦げ、ボロボロになったそれは、おそらくもう使うことは出来ないだろう。

『神』という駒を手に入れたとはいえ、ディアバウンドを失ったのは痛かった。この学院全員の魂を食わせれば神をも凌駕する僕になっただろうに。
炎蛇のメイジが命を賭けて土くれの牙を奪い取った結果である。

「だが、まあいい。神を手に入れた今、俺様に刃向かえる奴はもういねぇ」

自らを守り、殉死した僕の遺骸を握りつぶし、土くれはそれを投げ捨てた。

「……見てな王様。アンタにも見せてやるよ。この世の終わりってヤツを」

彼は大声で笑う。
そして再び、盗賊王の体から闇が噴き出す。
先ほどのように室内だけでない、深闇と哄笑は学院全てを包み込んだ。

そして夜が明ける。



オールド・オスマンは学院で最も長寿の魔法使いだ。
だが、この日 彼が見たモノ、感じたモノは今までで最も信じられず、最も禍々しいものだった。

「……なんということじゃ」
「ヒャッハッハッハ! 殺せ! 喰らえ! 骨一本、虫けら一匹残すな! 一から十まですべて喰らい尽くせ!!」

オスマン翁が見たモノは巨大なゴーレムたちの群れ。
どれも全長が20メイル以上はあるものばかり。

そして、そのゴーレムたちのうちの一体。
オスマンはその肩に黒いローブを纏った人間がいるのを見つけた。

その怪人はけたたましい声で笑いながら、体から闇を振りまく。
その闇と共に、怪物の群れが学院のあらゆるものを蹂躙する。


陽が微笑むことのない、破滅の朝がやってきた。





「どうしよう……」

少女 ルイズはうずくまり、泣きながら呟く。
彼女は今、牢に?がれたまま地獄を見ていた。

地下からわずかに覗けるその先、巨大なゴーレム達が学院の壁を砕き、人々を傷つけ進んでゆく。

「……アイツが言っていたのはこのことだったのね」

幾度と無く黄金の三角錐に眠っていたルイズの使い魔が自分に告げていた『戦え』という言葉。

あれはこのゴーレムの群れを指していたのだ。

牢の天井がきしむ。
パラパラと砂礫の粒が髪に降りかかったが、彼女はそれを振り払おうともしない。

ただ足元においたデュエルディスクを見つめ、涙を流すだけ。

「今の私には何もできないわ。使い魔も。僕も。……杖さえもないんだから」

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは痛感する。

いくら勉強しようとも自分は『ゼロ』なのだと。
一時の間、手に入れることのできた力も所詮は幻想【ゼロ】に過ぎなかったと。

力というものは時に人を狂わせる。人を自らに依存させる。
それが正しいものであっても。

それを『力に溺れる』と言い表す。
力とは酒や金と同類。
一度手に入れてしまえば、味わってしまえば、もうそれから離れられない。
今のルイズがまさにその状態だった。

「バフォメット…ガゼル…キマイラ…」

彼女の脳裏を占めるのは一時の間、手に入れた栄華(力)の事ばかり。

―ガゼルやバフォメットなら、こんな牢なんて苦も無く破壊して自分を地上に連れ出してくれるのに―

天井からビシ…ビシ…という音が聞こえる。

―ここも崩れるのかしら―

泣きすぎて現実逃避を繰り返した頭でゼロの少女はそれだけのことを考えた。

―魔物達が帰って来なければ私には何も出来ない……ここから出ることも……―

自嘲。

―結局私はゼロのままだったわね―

死ぬ間際に自分の生涯がどんなものだったか少女は思い返す。

優秀な姉達と常に比べられて育ったおちこぼれの自分。
魔法学院で毎日のようにバカにされて過ごしていた自分。
周りにいる人々が必死に逃げ惑う中で、ただ1人 牢の瓦礫に潰されて死ぬ自分。

「あははは、何よコレ。 私の人生なんて所詮 こんなものだったんだ」

もう、疲れてしまった。
ゼロと蔑まされるのも。
力を手放して生きるのも。

モンスターと黄金錘を手に入れた瞬間、確かに自分の人生は良くなると思ったのに。

だが、それももうここまで。
自分は地下で、誰にも見取られず死ぬのだ。
再び絶望に沈む。

そんなルイズの意識を引き戻したのは、聞き覚えのある声と、鉄格子の間から差し出された手。
包帯の巻かれたそれは、幾日か前にルイズ自身が手の主に施したものだった。

「ミス・ヴァリエール。お逃げ下さい!」

平民のメイドである少女。

「アンタ……なんでここに」
「学院長から貴方の牢の鍵を開けるようにと。他の先生方は外でゴーレムたちと戦っています。ここもそのうち崩れますから早く逃げましょう!」

そこまで言って鍵を開けていなかったことに気づき、メイド……シエスタはもどかしそうにドアを開ける。

シエスタを見ながら、ルイズはハッと気がついた。

「シエスタ! コルベール先生は私に何か、言っていなかった!?」
「……ミスタ・コルベールは行方が分かっていません。彼の部屋は何者かに荒らされた跡があったそうです。ミス・ヴァリエールの札も、三角錐も見つけられませんでした。おそらく、賊にやられたのではないかと」
「……そんな」

絶望。
コルベールが自身のデッキを返してくれる可能性はほぼ無くなった。

「さあ、早く!」

差し出された手を……ルイズは振り払った。

「放っておいて。 私はもう疲れたの。 あの子達が迎えに来るまで、私はここを動きたくないわ」
「何をおっしゃるのです! ミス!」
「私は無力な自分に戻りたくないの。 もしまた何にも無い『ゼロ』に戻るなら……私はここで死ぬわ」

抑揚の無い口調。
光の消えた眼。
そんな目の前の…自らをゼロと卑下する魔導師を見つめ。
シエスタは振り払われた手を握り締めた。

「……ゼロがなんですか!」

パァン! という凄まじい音と共にルイズの頬に熱い痛みが走った。

呆然としたまま叩かれた頬を抑えるルイズ。
シエスタはそんなルイズに抱きつき、言った。

「ミス。ゼロというのは『何にも無い』という意味ではないのです。ゼロとは『始まり』なんです」

瞳に涙を浮かべながらゼロのメイジに訴えるシエスタ。
彼女はルイズに言う。
始まったばかりの貴方の人生。
奪われるものもあるかもしれない。
壊れるものもあるかもしれない。

でもまだそれは最初。
始発地点(ゼロ)なのだから気にする必要など無い。

「……シエスタ」
「何も無い、などとおっしゃらないで下さい。 ミス・ヴァリエールには私がおります」

ルイズはぎこちなく、だが確かに微笑んだ。
ゼロである自分を受け入れてくれる者がいた。
それはなんと幸福なことなのだろう。

だが、その瞬間 彼女を悲劇が襲う。

ドン、と音をたて、巨大な刃がシエスタの左胸を貫いていた。


「……え?」

身の丈ほどもある岩石の剣。
シエスタの口から血が伝い、彼女はルイズの胸へと倒れこむ。

「さあ、王様の器よぉ、最後のゲームを始めよぉぜぇ!!」

牢の壁。
円形に切り取られた穴から覗く大きな腕と顔。

剣を持った巨人。
岩石の精霊 タイタンの肩の上で。 

戦線を布告した盗賊王 『土くれのフーケ』の笑い声と…

「いや……いやぁあああああああああああああああああ!!」

なりふり構わず絶叫するルイズの悲鳴だけがその場を支配した。


そして、その悲鳴を最後にルイズの意識は闇へと飲み込まれる。

今、虚無の力を持つ少女を最大の試練が襲おうと待ち構えていた。

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