あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔エイト2


 *エイト、つかいまのしごとをする



 夜が白々と明け始めた頃――
 ニワトリはコケコッコーと鳴き、使用人たちは忙しく動き始めている時間であるが、上流階級のお坊ちゃん、お嬢様はまだまだ夢の中。
 ルイズもその例に漏れず、まだベッドの上ですやすやと眠っていた。
 が、しかし、その安眠はいきなり打ち切られることになる。

 <日の出を確認、日の出を確認――朝と判断します>

 ルイズは当然聞こえていなかったが、不思議な声が部屋に響いた。
 すると、その直後――

 「あさー!」

 能天気な声と共に、ルイズは夢の世界から叩き落された。

 「うひゃあ!」

 跳ね起きると、真横にいかにも能天気な黒髪の男の子が立っていた。

 「ごしゅじんさま、あさだよ」

 「あんた、誰……って、昨日召喚した使い魔よね……」

 ルイズはまだ眠い目をこすりながら、

 「っとに、まだ暗いじゃないの……。朝っていっても、朝一番に起こすことないでしょう」

 能天気な顔して、融通の奇怪な使い魔だ、とルイズはぼやく。

 「……私、もうちょっと寝るから……籠の服、洗濯しときなさい」

 命令してから、ぼふん、とルイズはベッドに顔をうずめる。

 ルイズの命令――それに、エイトの球が反応した。

 <メイドから洗濯のスキル学習。後に洗濯開始>

 「うん、メイドにおそわってせんたくする」

 そう言って、エイトは洗濯籠をかつぐ。

 「いってらっしゃ~い……」

 二度に入りながら、ルイズはベッドの中から手を振る。
 しかし、エイトはすぐに出て行かず、

 「メイドって、な~に?」

 とんまなことを言った。

 「あんた、わからないで教わるとか言ってたの?」

 ルイズは不機嫌そうに顔を上げて、ついに頭を抱えてしまった。

 「ようするに、使用人の女のことよ……。使用人もわかんない? つまり、粗末なかっこして働いてる女の子……いや、それだけじゃわかんないか……」

 メイドを知らない、見たこともない、どんなものかもわからない。
 そんな相手に、言葉だけでどう表現すればいいのだ。悩んだ末、

 「そうだ!」

 ルイズはぴこーんと閃き、ベッドから降りると、部屋の中にある本をごそごそとあさりだす。
 その間、エイトは洗濯籠を担いでまぬけな顔をさらしていた。

 「これよ!」

 ルイズは、ある本に描かれたイラストを指差して叫んだ。それは色んなタイプのメイド服の一覧であった。

 「色々あるけど、大体似たようなかっこうした女がメイドだと覚えておけばいいわ」

 エイトはじっとイラストを見ていたが、

 「おぼえた! じゃあいってくる」

 元気に叫ぶと、部屋を飛び出していった。

 「ちょっと、ドアくらいしめていきなさーい!」



 「メイド!」

 「ひゃあ! すみませんっ!?」

 いきなり大声で呼び止められ、シエスタは思わず身をすくませた。
 何か貴族を……メイジを怒らせるようなことを? そんな心配を振り返るが、

 「あの……?」

 立っていたのは、まず自分より年上とは思われない、見たこともない変な格好をした少年……男の子であった。

 「きみ、メイド?」

 洗濯籠をかついだ少年は、にこにこした表情でそう尋ねてくる。

 「そうです……けど」

 他の何に見えるんだろう? と思いながらも、シエスタはうなずく。

 「せんたくおしえて」

 「え?」

 「ごしゅじんさまにいわれた。せんたくしろって。だから、せんたくおしえて」

 「ご主人様……? あ……もしかして、ミス・ヴァリエールが召喚されたっていう使い魔?」

 ルイズが平民っぽい男の子を使い魔にしたとの噂は、使用人たちにも届いていた。

 「うん。ぼくはルイズのつかいま」

 エイトはこくんとうなずいた。
 その答えに、シエスタはほっとしながら、

 「そうなんだ……ええと、あなたの名前は?」

 腰をかがめて、エイトに尋ねた。
 自分よりも年下相手なので、敬語ではない。

 「エイト」

 「エイトくんね……。私はシエスタ。この学院で使用人をしているの」

 「しようにん? メイドじゃないの?」

 きょとんとするエイト。
 それにシエスタは少し驚いた顔をするが、すぐに笑い出し、

 「女の使用人のことをメイドっていうのよ?」

 「ふーん」

 「その洗濯籠は……ミス・ヴァリエールの?」

 「うん。せんたくしろってめいれい。だから、せんたくおしえて」

 「洗濯だったら、ついでにやってあげるわよ?」

 エイトの顔を見て、ちょっとかわいいかも……と思いながら、シエスタは笑いかける。
 その言動のせいか、見た目以上に幼い印象を受ける。

 「メイドにおそわってせんたくしろっていわれた。だから、せんたくおしえて」

 エイトは首を振るでもなく、子犬みたいなまっすぐな瞳でそう言った。

 「そっか。じゃあ、ばっちり教えてあげる。こっちへいらっしゃい」

 見た目は可愛いけど、けっこう頑固なのかも、と思いながら、シエスタはエイトを水場のほうへと案内した。



 「うーん……大丈夫かしら」

 部屋の中で、ルイズはもんもんとしていた。
 元気よく飛び出していったのはいいが、果たしてあの使い魔、ちゃんと洗濯してくるのか?
 知能障害というわけではないようだが、一般常識とかそういうものがずぼっと抜けている。
 洗濯しても、衣服をぼろぼろにする危険性もある。

 ――探しにいこうかしら? いえ、うーん……。

 ひとしきり悩んだ後、

 ――あ、感覚の共有をやればいいんじゃない。

 やっと、そこに気づいた。
 人間相手だし、当初は無理かと思われたが、すぐに可能であることがわかっている。
 ルイズは瞳を閉じ、意識を集中した。

 ばしゃばしゃ。
 ぎゅっぎゅっ。

 水の音と、もう一つは洗濯する音。

 ――一応、洗濯はできてるみたいね……。ん……。

 『……ああ、だめだめ』

 女の子の声が聞こえる。
 それに、黒髪の少女の横顔がちらちら。

 ――この子は……たしか、シエスタとかいうメイド。そうか、この子に教わってるのね?

 『それは、そういう風にやったら痛んじゃうでしょ? こう、優しい感じで……』

 洗濯するエイトを、女の子の手が上から包んで、洗濯の動作をさせる。
 まさに手取り、足取りという感じであった。

 『そう、そういう感じ。うまいうまい』

 楽しそうな声。

 ――……。

 何となく不愉快になって、ルイズは感覚共有を停止させる。

 「っとに、あの馬鹿使い魔、ちびのくせに女の子にでれっとしちゃって……」

 ルイズはぶつくさ言いながら、ベッドの上に寝転がる。

 「でも……覚えさせなかったら私の服が危ないし……」

 だったらエイトに洗濯なぞさせないでおけばいいのだが、ルイズはそのへんをすっかり失念していた。
 というより、意識の隅へ放り出していたとすべきか。
 そのうちに――まだ睡眠量が不足していたのか、ルイズは再び眠ってしまった。


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