あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの剣虎兵-1

 視界を覆う白煙が晴れた時、ルイズは思わず自分の目を疑った。
 もう何回唱えたか解らぬ召喚魔法。
 爆発が起こり、今回も失敗だったかと覚悟したが、今彼女の目の前には巨大な獣がこちらを見ている。
「ゼロのルイズが成功した?」
「そんな馬鹿な!」
「そもそも、あれ、なんて動物だ?」
 白い体毛に黒い縞。
 口から伸びる長い牙。
 殆どの生徒たちは知らなかったが、ルイズはそれに見覚えがあった。
 密林に住むという肉食獣、虎。
 姉であるカトレアが飼っている動物たちの一つである。
 だが目の前のそれはルイズが知っているそれよりも一回り大きく、体毛の色も違う。牙もあんなに大きくはなかった。 
 亜種なのかと目を凝らし虎の背に誰かいるのに気がついた。
 黒い服、何かの制服だろうか?
 どうやら怪我をしているらしく、血が白い毛を伝って地面に滴り落ちている。
 思わず一歩を踏み出したルイズの足が止まる。
 虎がこちらを向いて威嚇するように喉を鳴らした。
 よくよく見れば毛皮と背の人物の血で解り難いが、虎自体も怪我をしている。おそらく警戒しているのだろう。
 ルイズは一度唾を飲み込むと、姉から教えられた動物との付き合い方を思い出した。
 杖を置き、両手を上げると、虎の目を覗き込んだまま一歩近づく。
 虎のうなりは大きくなるが、ルイズは意思の力で下がろうとする足を引きとめた。
「ミス・ヴァリエール、危険です!」
「いえ、大丈夫です、先生。これはわたしの使い魔ですから」
 目を逸らさずに言い返す。
 虎か人か、どちらが使い魔にせよ、ルイズはここで引く気はなかった。
 なにしろ自分の呼び声に答えてくれたのだ。ここで放置して、使い魔が死んだとしたら、次に答えてくれるモノがいるかどうかすら怪しい。この機会を逃がすつもりはなかった。
 一歩、また一歩と虎に近づく。
 周囲の生徒の誰かがごくりと喉を鳴らした。
 ついに虎に到達し、軽くその喉を撫でてやる。
「危害を加えるつもりはないわ。ただあなたと、その背中の人を手当てしたいだけなの。許してもらえる?」
 虎は訝しげに首を傾げた。
 目の前の少女の言葉は今まで聞いたこともない響きのものだったからだ。
 だが敵意は感じない。故に虎は自らに出来る方法で親愛の情を表現した。
 すなわち舌を出してルイズの頬を舐め上げたのである。
「許してくれるのね?」
 ふたたび舐められる。
 それを許諾と見て取ったルイズは、コルベールに向かって声を上げた。
「先生! 医務室と水のメイジの準備をお願いします!」



 男が目覚めた時、まずあったのは困惑だった。
 ここはいったいどこか。
 寝台から身を起こさずに薄目を開けて周囲を観察する。建物の形式からすれば<帝国>領に思えるが、最後にいた戦場近くにこのような施設があったなどという報告は受けてはいない。
 誰もいないことを確認して身体を起こし、自分自身を見下ろして眉を顰める。
 記憶ではそこかしこに傷を受けた筈だが、その痛みが少ない、いや、直りかけなのか。してみると僕が捕虜になってからだいぶ時間が経っているのか。
 よろしい、どうやら僕を捕らえた人物は<大協約>の遵守に積極的な人物のようだ。わざわざ包帯を巻いて手当てしてくれているのだから間違いなかろう。
 扉が開き、黒髪の少女が姿を見せたのはその時だった。手には黒い服。彼の軍服だった。
 北領でユーリアの捕虜だった時に見た侍女の姿をしている。やはりここは<帝国>領か、その支配地と見て間違いない。すると少女は北領人か。
 それはまずいな。男は思った。自身が行った焦土作戦で北領人に恨まれていることには自信がある。
 内地への引き上げの際はただ守り抜けなかったことへの怒りのみだったであろうが、あれから数年経った今では男が<帝国>の補給を滞らせる為だけに村を焼き、井戸に毒を投げ込んだことは万民が知っている。
 ところが、彼の思いとは裏腹に少女の目に怒りや憎悪の色は無かった。
 驚いてはいたものの、軍服を傍の机に置くと嬉しそうに男に話しかける。
 彼は首を傾げた。その少女の言葉が理解できなかったからだ。
「すまないが、きみ。<皇国>語か<帝国>語で話してはくれないだろうか」
 少女は困ったように笑い、こちらに何かを押すような身振りをした。どうやら待っていて欲しいと言いたいらしい。
 同意した証に頷くと、彼女は扉から出て行った。
 息をつくと立ち上がり、机に置かれた軍服を手に取る。
 彼は軍人であり、将校であった。
 将校は何時いかなる時でも慌てず、兵士の模範としてあらねばならない。
 ましてや敵の手に落ちた今となっては尚更だ。もう少し見栄を張る必要があった。
 軍服は洗濯され、破れや穴も丁寧に繕われている。
 ありがたいことだと思いつつも首を傾げた。
 傷の具合から考えるに自分が捕虜になってから時間が経っているに違いない。
 なのに少女が軍服を持ってきたのはつい今さっきである。
 それまで放置していたのもおかしな話だ。
 とまれ、そこでそのような些細なことを気にしてもはじまらない。
 軍服を着用して寝台に腰を下ろし、再び扉が開かれるのを待つ。
 欲を言えば剣や銃が欲しいが、捕虜のみではそれは適うまい。
 さて、はたして鬼が出るか蛇が出るか。
 ややあって開いた扉から現れたのはそのどちらでもなかった。
 先ほどの侍女と、見たことのないような桃色の髪の少女。
 それにマントを羽織った頭の薄い男である。
 規則正しいその歩調と伸びた背筋に、どうやら彼が自分を捕らえた軍人なのかと推測する。
 ならばそれに相応しい態度を取らねばなるまい。
 踵を打ち鳴らし、これぞ軍人と言わんばかりの態度で敬礼する。
「<皇国>近衛総軍近衛嚮導聯隊指揮官、新城直衛少将であります。貴官の勇気と道義に敬意を表します」

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