あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの少女と紅い獅子-01


 無限に広がる宇宙の片隅、生物はおろか恒星すら見当たらない辺境の場で追跡劇が繰り広げられていた。
 方や黒い球体。必死に追撃をかわし、巧みに減速加速を繰り返しながら時折怪光線を放って追っ手をけん制する。
 方や赤い球体。怪光線や巧みな回避行動をものともせず黒い球体を追撃する。その動きに、一切の無駄はなく赤い球体は
遂に黒い球体の直後に迫った。
 追撃を振り切らんと黒い球体は怪光線を乱射、続いて何処からともなく二匹の怪獣を呼び出しけしかけた。一瞬動きを止めた
赤い球体の隙を突いて、一目散にその場から逃れようとする黒い球体。一拍遅れて赤い球体が怪獣もろとも黒い球体に突っ込む。

 その時であった。
 突然、まったく突然に空間が乱れた。もっとも彼らだからこそ感知できたというべきか。突然開いた亜空への扉に、しかし黒い球体は
これ幸いとばかりに飛び込む。まるで予定されていたような行動に、赤い球体は罠を疑ったがそれも一瞬。迫り来る二匹の怪獣もろとも
赤い球体も時空の歪に飛び込んだのだ。
 赤い球体が飛び込むと同時に、時空の歪は役目は終わったとばかりに消滅した。後にはただ宇宙が広がるだけであった。


 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは春の使い魔召還の儀式で何十回かの失敗の後、遂に使い魔の
召還に成功した。しかし、彼女の眼前に現れたのは彼女の予想、いや、他の生徒達そして儀式を監督していたコルベールですら
予想だにしないものであった。

「……何、コレ。竜……なの?」

 ルイズが呆然と呟く。彼女らの前に姿を現したのは、体長五〇メイルにも及ぼうかと言う巨大な二匹の竜であった。いや、彼女ら
の常識からすれば竜かどうかは怪しい。これほど巨大なものは伝説の韻竜ですらありえない。
 召還された竜モドキはピクリとも動かない。ルイズは我に返ると、少し離れて二匹を観察し始めた。
 確かに竜には似ている。一方は黒、一方は赤、色自体は大した問題ではない。頭頂部と背中から生えた巨大な角は二匹の力強さを
物語っている。使い魔の使命の一つである、主を守る事に関してはまったく心配する必要はなさそうである。
 しかもこの超巨大な生物を同時に二匹も召還したのだから、日頃から自分の魔法に関して強いコンプレックスを抱いているルイズにしてみれば
喜ぶべき事態である、だが。
「何だろ、大きいし強そうだけど。でも……」
 ルイズは二匹から何ともいえない不気味さを感じていた。オーク竜とでも表現すればその顔の醜さが伝わるだろうか。濁り切った
眼は何処を見ているか見当もつかず、全身を覆うのは鱗の代わりに妙に凸凹した分厚い皮膚。その不穏さはルイズだけでなくほかの生徒も
感じ取ったようで、遠巻きに恐々ルイズと二匹を眺めていた。
 だが、ルイズには贅沢を言っている余裕は無かった。サモン・サーヴァントの儀式を無事終了させねば二年への進級が出来ない。
 第一、この二匹をほうって置く事など出来るわけも無い。
「あ、あの! ミスタ・コルベール」
「む、何かね、ミス・ヴァリエール」
「契約をしたいんですけど、あの、どうやってやれば……」
 ルイズがコルベールに訴えると、とたんに不穏な空気を忘れたように野次が飛ぶ。
「ハハッ、ゼロのルイズじゃアレの口には届かねえな!」
「レビテーションも出来ないなんて、呼び出された方も思わなかっただろうよ」
「ねえ、ルイズ。あの口の場所まで上ったらいかが? いい運動になるんじゃなくって」
 だが、野次を飛ばされるルイズはそれに構ってる場合ではなかった。契約の儀式『コントラクト・サーヴァント』は呪文を
唱えた後に、契約対象と口付けをかわさねばならない。つまり、ルイズは目の前の竜モドキとキスしなければならないのだが……。
「皆さん、静粛に! ミス・ヴァリエール、それについては仕方がないので私が『レビテーション』を唱えてあげましょう。しかし、見たまえ」
 そう言ってコルベールは手に持った杖で、竜モドキの頭上を指した。
「君が召還のときに作ったゲートがまだ閉じていない様だがね」
 その言葉にルイズがゲートに目を向けた時、今度は黒い球体が飛び出してきた。
「ええっ、まだ来るの!?」
 ルイズが流石に驚きを隠せず思わず叫ぶ。二匹だけでも異例なのに三匹目、しかも今度はまったく正体不明である。
 飛び出してきた黒い球体は暫らく竜モドキの頭上で制止していた。再び不気味な静寂が辺りを覆う。

 静寂は一瞬だった。

「ギゥアアアアアアア!!!!」
 突然二匹の竜モドキが咆哮を上げる、離れて成り行きを見物していた生徒達はたちまち恐慌状態に陥った。――例外は居たが。
 一方ルイズはその雄叫びにすくんでまったく動けなかった。だが、それを嘲笑するものは居なかった。竜モドキの一方がルイズにようやく
気づくと虫を踏み潰すような気軽さで一歩踏み出そうとした。
「コレはいかん!」
 咄嗟にコルベールがルイズに飛びつき間一髪彼女を救出する。
「さあ一旦逃げよう、ミス・ヴァリエール」
「あ、えと、でも、あの……」
 半ばコルベールに引きずられながら、ルイズは後方を気にする。
「召還の儀式については後日再度行えるように、オールド・オスマンに掛け合おう。だがここで死んでしまってはそのチャンスも
手にする事が出来なくなってしまうぞ」
 死という単語にルイズは身を強張らせた。もう、後方を気にする事はしなくなった。

 暴れだした二匹の竜モドキが二人に襲い掛かってきた。鈍重に見えてもその巨体ゆえに追いつくのも時間の問題である。黒い竜モドキが
二人の直後に迫ったその時、竜モドキの横っ腹に火炎のブレスが浴びせられた。
 唐突な炎の洗礼に幾らか怯む竜モドキ、その隙を突いて今度は全長六メイルの風竜がコルベールとルイズを空中へと持ち去った。
「いや、助かったよミス・タバサ」
 コルベールは風竜の主――タバサに礼を言った。だが、タバサはフルフル首をふって
「まだ、危ない」
 それだけ言うと風竜に指示を出して、先ほどの救いの炎の元へ向かう。そして赤毛の少女とその使い魔のサラマンダーを回収
すると再び空に上った。
「ったく、とんでもないのを召還したわねルイズ、どうするのよアレ?」
 赤毛の少女――キュルケが悪態をつく。
「わ、わたしだって好きで呼び出したんじゃないわよ! 来ちゃったんだからしょうがないでしょう!?」
「あー、そうねわたしが悪かったわ。アンタにあれどうにかしろって言っても無理よね」
 ルイズは更に言い返そうとしたが押し黙った。キュルケもそれ以上何も言わない。
「とにかく我々ではどうする事も出来ないな、アレの相手は軍隊だよ」
 コルベールが校舎の方に目をやると騒ぎを察知して何人かの教員が出てきたが、巨獣を目にするや一目散に退散した。
「賢明」
 それを見てタバサが呟く。そして、風竜を旋回させこの場から離脱しようした。
 その時である、竜モドキが頭の角から怪光線を放った。不意を突かれたものの抜群の運動性で風竜が回避する、しかしもう一方が回避した先に
再び怪光線を放った。
「うぬっ!」
 コルベールが予め牽制用に唱えていた呪文を発動させ火球を叩きつける。相殺したものの派手な爆発が風竜を襲い、堪らず風竜は
空中でバランスを崩してしまった。
「きゃっ!」
 叫びはほんの一瞬。バランスを崩した風竜から落ちたのはよりによって魔法がまったく使えないルイズだった。
「もう! 世話のかかる娘ね!」
 キュルケがレビテーションの魔法でルイズの落下は阻止する、だが迫る竜モドキが居てはうかつに近寄れない。
 二匹がゆっくり落ちるルイズに迫る。嬲り殺そうとゆっくりと近づいてきた。
『なんて最期、自分で呼び出した使い魔候補に殺されるなんて』
 ルイズの頭をそんな考えがよぎる、だが彼女は頭をぶんぶん振ってその考えを打ち消した。
『何考えてるのよ、わたしったら。そうよ、こいつらは失敗よ。偶々出てきただけ』
 ルイズは握り締めていた杖を振りかぶる。
『失敗したなら、また呼び出せばいいじゃないのよ! ゼロのルイズ!』
 そう自分に言い聞かせ、自分を奮い立たす。彼女は今日何十何回目かの呪文を唱えだした。

「宇宙の果てのどこかにいる私の下僕よ!」
 力強い呪文が小さな口から紡がれる。
「神聖で美しくそして強力な使い魔よ!」
 眼前に巨獣が迫ってもそれは止まらない。
「私は心より求め訴えるわ!」
 精神が集中する。
「我が導きに応えなさい!」
 ルイズは大きく叫び、杖を振るった。

 同時に天上のゲートが激しく光った、というより爆発した。そしてそこからルイズの呪文に
応えるように赤い球体が飛び出してきた。

「まだ来るの? 今度は何なのよ!?」
 キュルケがあきれたように叫ぶ。コルベール、タバサの両人も新たな闖入者に警戒を向けた。
 赤い球体の登場に二匹の竜モドキがいきり立つ。赤い球体は構わず二匹の前に回りこむと黒の竜モドキの胴体に突進した。
 受け止める竜モドキ、だが球体はそのまま回転を止めず今度は垂直に急上昇し巨獣の顎をかち上げた。対応できずに黒い巨獣が
倒れこむ。間髪を居れず球体は動揺する赤い竜モドキに頭上に回りこむとそのまま頭の上に落下した。不意を突かれてこれまた
倒れる赤い巨獣。
 その時、それまで微動だにしなかった黒い球体が怪光線を放った、光線はルイズに向かう。
 彼女は咄嗟に目をつぶった。だが予想された痛みは来ない恐る恐る目を開けると、目の前には赤い球体がふわりと浮かんでいた。
「あ、助けて……くれたの?」
 赤い球体はそれには応じない。黒い球体とにらみ合うように静止している。
 暫らくして、上昇したかと思うと黒い球体は突然消滅した。それが合図だったように二匹の竜モドキは突然抱き合うと竜巻のような回転を
起こしながらこちらもどこかに消えて行った。
「ミス・ヴァリエール、無事かね!」
 脅威が去ったのを見計らって、コルベールたちが近くに降りてきた。
「はい、ミスタ・コルベール。大丈夫です怪我はありません。それより……」
 ルイズは目の前の赤い球体に目を向ける。
 球体は立ち去るでもなく、静かに彼女達の前で静止している。
「やっと危なくなさそうなのが来たわね」
 キュルケがいやみ半分といった風に声をかけてくる。ルイズはキュルケに一瞥をくれたが直ぐに気を取り直した。
「ミスタ・コルベール、この、えっと……。と、とにかく契約します」
 ルイズの言葉にコルベールは頷く。
「うむ。さあ、君が最後だよミス・ヴァリエール。ま、この状況では急かす必要もないだろうが」
 その言葉を受けて、ルイズは球体に一歩踏み出し、そっと球体に触れた。
 その瞬間、ルイズの意識が一瞬途絶えた。


 ルイズが一瞬の気絶状態から醒めると、そこは真っ赤な空間だった。上下の感覚が失われて、遠近も正確でない。
「ちょっと、何なの。また失敗?」
 その言葉に反応したのか何処からともなく声がした。
『怪我がなくて何よりだ』
 ルイズは驚いてあたりを見渡した。だがこえの主を見つける事は出来ない。
「誰、誰なの!? わたしをどうするつもり!」
『君に危害を加えるつもりはない、私は……L、いやM78星雲の戦士だ』
「えむ……、なんですって?」
『無理に理解する必要はない。私からも質問があるのだが、あの時空の歪を作ったのは君か?』
 聞きなれない言葉に一瞬思考が止まるルイズ。
『私が出てきた穴のことだ』
「ああ、そ、そうよ。貴方を呼び出したのはわたし」
『意図的に私を呼び出したのかな?』
「神聖で美しくそして強力な者を呼び出し立たつもりよ」
 ルイズの言葉に空間がユラユラうごめく。敵意はない、何処となく可笑しそうな雰囲気である。
『しかし何のためにそのような事を? ギラス達は同じ穴を通ってきた。奴らの襲来に対しての助けを呼んだ訳ではなさそうだが』
「使い魔を呼んだのよ」
『使い魔? それで私がその召還に答えたということか』
「そうよ、だから貴方にはわたしの使い魔になってもらうわ」
 そうは言ってみたものの、ルイズにしてみれば精一杯の虚勢を張った発言であった。あの竜モドキ――彼曰くギラスと
言うらしい――をあっさり撃退した謎の物体が相手では無理もない。
 学園中のメイジ、いやトリステイン王国の全軍が相手でも一歩も引かないかもしれない。気まぐれで彼女の命を奪うなど造作もないだろう。
 暫らくの沈黙を破ったのは赤い空間だった。
「いいだろう」
「え、あ、あの」
『本来なら干渉は極力避けねばならないのだが、君の身分を察するにまだ社会的影響はなさそうだ。それに、
君も見ただろう。二匹の怪獣と黒い物体、アレを放置するわけには行かない。私は暫らくここに止まる必要がある』
「わたしの使い魔に、なって、くれるの?」
『ああ、だが約束して欲しい事がある』
「何かしら?」
『私の力を頼りすぎないで欲しい』

 ルイズが一瞬呆ける、だが気を取り直すと。
「フ、フン。主が使い魔に遅れを取るわけないでしょう!?」
『いい返事だ、その言葉を信じよう。で、どうすれば良い』
 どうすれば良いと返されて、ふとルイズは思い出し、とたんに慌てだした。
「あの、その、コントラクト・サーヴァントを行うには呪文を唱えた後、えっと、使い魔と口付けを交わさなきゃ成らないの、だから……」
 ルイズの言葉が終わる前に赤い空間が歪む。たちまち目の前に、先ほどの竜モドキに勝るとも劣らない巨人の半身が現れた。もっとも、
その像はぼやけていてハッキリと見えなかったが、ルイズはその像から遥か南の地に住むという百獣の王を連想した。
『これで、大丈夫か?』
 コクリと頷き、ルイズは呪文を唱え始めた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、
我が使い魔となせ」
 そして、目の前の巨人に口付けをした。とたんに、視界が真っ白になる。


 視界が戻ると赤い空間は消え去って、元の場所に戻っていた。そして目の前には精悍な顔つきの青年が立っている。
「あ、えっと、ミスタ・コルベール。私はどれ位いなくなってました?」
 その言葉にコルベールは怪訝な顔をする。
「何言ってるのよルイズ。今、赤い球に触れたら突然光ってそこの彼が出てきたんじゃない。その人が貴方の使い魔?」
 キュルケが代わって応えるのを聞いてルイズはかつごうとしてるのかと怪しんだが、コルベールの方を見ても何かあったような
顔をしていない。タバサは――いつも通りである。
「ミス・ヴァリエール契約の儀を……」
「あ、終わりました。ねえ、体にルーン出てない?」
 そう言ってルイズは目の前の青年に向き直る。
「ルーン……この文様の事か」
 そう言って、青年は左手の甲を掲げてみせる。
「何時の間に……まあ、ルーンが刻まれてるという事は成功したのだろう。しかし、珍しいルーンだな」
 コルベールは興味深そうに観察していたが、やがて姿勢を正すと。
「まあ、大変な災難だったが。幸い犠牲者は出なかったのだからよしとしよう。君には色々聞きたい事があるがそれも後日としよう」
 そう言って、校舎に戻っていった。キュルケとタバサも続く。
「私たちも行くわよ」
 ルイズはそう言って青年を促した。そして、思い出したように立ち止まって、
「そう言えば名前を聞いてなかったわよね。貴方の名前は?」
 青年はほんの少し考えるそぶりを見せた後、
「俺の名は、おおとりゲンだ」

第一話 終わり


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