あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔エイト1


 *サモン・サーヴァントだいせいこう!



 使い魔召喚の儀式。
 色々考えた末、コルベールは『ゼロのルイズ』の二つ名を持つ少女を一番最初にやらせた。
 魔法成功率ゼロという偉業(?)をかんがみて、最後にやらせるという方法も考えないでもなかったが……。
 ここ大一番の舞台というプレッシャーをかけることで、一発成功するかもしれないとも考えたのだ。
 で、その結果。

 「……」

 自分の召喚したものに、ルイズは言葉を失っていた。
 はたで見ていたコルベールも、他の生徒たちも。
 それはドラゴンやグリフォンではなもちろんなく、サラマンダーとかバグベアでもない。また、カエルやネズミ、モグラでもなかった。
 ましてや、どこか異世界からやってきたルイズと同年代の平民の少年でもない。
 一言で言うならば、ひとかかえもあるような、四角い箱である。
 そのように、ルイズたちは認識した。
 けれども、もしもここにどこか異世界からやってきたルイズと同年代の平民の少年なんかがいたら、間違いなくこう思ったに違いない。
 でっかいルービックキューブだ――と。
 カラフルな部位で構成されたその箱は、ふよふよと宙に浮いていた。

 「あ、あの……」

 ルイズはぎぎぎと音を立てながら、救いを求めるようにコルベールを見る。

 「おほん……。無生物が召喚されたというのは前代未聞ですが……。一応召喚成功と見てよいでしょう……。さ、ミス・ヴァリエール、使い魔と契約を――」

 「で、でも……」

 あれ、箱ですよ? と、泣きそうな顔でルイズは口ごもる。

 「さすがゼロのルイズ、期待を裏切らない!」

 「でっけえ、箱だな! 何が入ってるんだ?」

 「まさか、人間の死体とか入ってないでしょうね?」

 「じゃ、あれ棺おけかよ!?」

 野次に対し、ルイズは反論する気力もなかった。
 絶望を噛み締めながら、ルイズはふらふらと箱に近づいていく。
 箱。でっかい箱。ふよふよ浮いてる箱。
 それが自分の使い魔。
 実家になんて言おう。
 箱――これ、本当に箱か? 何か浮いているし……。もしかすると、何かのマジックアイテムかもしれない。
 そんな微かな希望をこめて、ルイズは箱に触れた。
 がちゃり……と、力のこめ具合のせいか、箱の一部が動いた。
 これは――がちゃり、ルイズはさらに動かしてみる。
 もしかすると、これ……普通じゃ開かない? そう思いつつ、動かし続ける。
 後ろでは他の生徒たちがどんどん召喚を成功させているが、ルイズはだんだんと箱に熱中し始めていた。
 そして、あることを推測する。
 これって、箱のそれぞれの面を同じ色で統一させるんじゃあ?
 統一させたら、どうなる?
 マジックアイテムという言葉が頭をよぎる。
 そうだ、普通こんな浮いてる箱なんてありえない。すごく貴重なものを、この中に隠しているのでは!?
 きゅぴーん!
 ルイズの中で、希望の光が輝いた。
 そして、ルイズは箱を――いやいや、ルービックキューブを動かす! 動かす! 動かす!
 ……いくばくかの時間経過。
 他の生徒たちはというと、みんなどんどん使い魔を召喚して、とうとう最後の一人が召喚を終えていた。

 「ミス・ヴァリエール……コントラクト・サーヴァントは終わりましたか?」

 そうコルベールが声をかけたのと、ルイズが『パズル』を完成させたのは、ほとんど同時だった。

 ヴオオオオオオオオ……!

 箱が輝き、不気味な音が鳴り響く。

 「これは……」

 コルベールが自分の杖を握り締めた時、

 <パスワード確認、パスワード確認>

 「「しゃべったあ!?」」

 ルイズとコルベールがハモる。

 ガパア!

 箱が突如として、分解した。
 中から出てきたのは、人形……いや、人間の少年である。
 年はまずルイズよりも下と見てよい。
 少年の着ている奇妙な衣服――肩パット、手甲部、靴、そして後頭部に伸びるように立っている髪を結んだ球状のもの――にそれぞれ、触手のようなものが接続されていた。
 前髪の部分と、後ろの球状のものに、8のマークが見える。

 <ガーディアン・エイト、起動します>

 声と同時に、それらは少年から切り離される。
 そして、少年は――倒れた。

 「ちょ……!」

 とっさに駆け寄るルイズは、箱の残骸がすーっと消えていくのを見逃したが、コルベールはこれをしっかりと見ていた。
 人形? ゴーレム? それとも、人間が何かの魔法であの箱に閉じ込められていたのか?
 ルイズは少年に駆け寄り、固まった。

 「くかー、くかー……」

 少年はただ寝ているだけだ。

 「……この」

 平和そうなその顔に、ルイズはちょっとムカムカした。

 「ちょっと、あんた! 起きなさい!」

 怒鳴りつけてみたが、一向に起きない。

 ――もしかして……箱じゃなくて、この子が私の使い魔?

 何ともいいがたい気分になる。

 ――で、でも、でも! あんな風に箱に入ってたってことは……もしかすると、何かすごい力とかがあるのかもしれないわ! うん、そうよ! 多分……きっと、そうなんなじゃないかな? できればそうあってほしいな…………。

 てな、葛藤をしつつ――

 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ――」

 そっと、ルイズは少年にキスをした。
 寝ている少年の左手に、使い魔のルーンが刻み込まれていく。
 すると、髪の毛の球から、声がした。

 <マスターの設定を変更します、マスターの設定を変更します…………。…………変更は無事終了しました>

 「な?!」

 その途端、ぐおんと少年が起き上がった。
 少年はじーっと、ルイズを見つめる。

 「な、なによ……」

 「ごっつあんです!!」

 バッと左手の手のひらを突き出すように、少年は珍妙な挨拶をした。

 「……あ、あんた、誰?」

 「エイト」

 「エイト……? ふーん、そういう名前なんだ? で、あんた何であんな箱に入ってたの?」

 「えーとね……」

 「うん」

 「わかんない」

 「……あ、あんたね……?」

 ルイズは頭をかかえたがすぐに気を取り直し、

 「……もういいわ! とにかく、あんたは今日から私の使い魔よ!」

 「わかった。おまえのつかいまになる!」

 エイトは元気よく応える。

 「や、やけに素直ね? ……って、お前ってなによ!? 使い魔のくせに、ご主人様と言いなさい!」

 「ごしゅじんさま!」

 「……わ、わかればいいのよ」

 あまりにも素直なエイトの態度に、ルイズはちょっと調子を崩しながらも何とか平静を保つ。
 横でコルベールがエイトのルーンを見て何か言ってたようだが、そのへんは聞き逃してしまった。



 ルイズはおかしな少年・エイトを自分の部屋へと連れてきていた。

 「まず、使い魔の仕事について説明するから、ようく聞くのよ?」

 「ようくきく。はやくおしえろ」

 素直な返事をするエイトに、ルイズは困ったような顔で嘆息した。

 ――この子、本当に大丈夫なのかしら?

 もやもやとした不安を感じずにはいられなかった。
 たとえ人間であろうが、使い魔として召喚した以上、メイジに服従するのは当然。
 ましてや平民ならばなおさらだ。
 それがルイズの認識である。
 ならば、相手のこちらの言うことに従うのしごく当たり前で、戸惑うことなどありはしないのだが……。
 その素直さゆえに、かえってルイズは戸惑っていた。
 あまりにもこちらに従順すぎる。
 言葉づかいや礼儀はアレだが、戸惑うとか、反抗するとか、そんなものが欠片も見えないのだ。
 常ににこにこへらへらした表情で何を考えているのかわからないくせに、ルイズの言うことに恐ろしいほど忠実である。
 だから、だろうか。
 ルイズはこの少年の素性がひどく気になっていた。
 これがもしも、どこか異世界からやってきたルイズと同年代の平民の少年とかだったりしたら、そんなもの考えずに、有無を言わさず服従をせまってであろうが。
 道すがら、どっからきたのか? 親兄弟はいるのか? そんなことを尋ねてみたが、何を聞いても要領を得ない。
 一応考える様子は見せるのだが、結局は、

 「わかんない」

 である。
 ちょっと頭がおかしいのでは? と思ったりしたが、こっちの命令にはちゃんと従う。

 ――まあ、反抗されるよりはいいか。

 ルイズは不安を押しやりながら、ごほんと咳払いをする。

 「まずはね……そう、使い魔は主人の目となり、耳となるの。つまり視覚や聴覚の共有………。無理みたいね」
 エイトはぼへ~っとした顔で、ルイズを見ていたが――
 「めとなり、みみとなるってな~に?」
 「わかんない? しょうがないわね……つまり、頭の見たり聞いたりしてるものが、私にも見えたり聞こえるようになることよ」
 ルイズが答えると、

 ピピピピ…………。

 例の球からまた変な音がした。

 「どうせできないんだから、いいんだけどね。……あのさ、ずっと気になってたんだけど、その髪の丸いの、なんな……」

 言いかけた時、ルイズは違和感を感じた。
 耳が、何か変だ。
 さっき自分の言った言葉を、別の誰かが同時に言っていたような。
 それに、目の奥に残像みたいに見える、このピンク頭の女はなんだ……?

 「へ? これ……私?」 

 ルイズはハッとする。
 感覚の共有ができている。
 今、エイトの見聞きしているものが、ルイズにも伝わっているのだ。

 「かんかくのきょ~ゆ~って、こういうの?」

 と、エイトが聞いてきた。

 「え、ええ。そうよ! なんだ、できるじゃない……! やっぱできるじゃない!」

 ルイズは驚きながらも嬉しくなり、

 「とりあえず、あんまり続けるのはアレだから、いったん切るとして……。次! 使い魔は主人の必要なものをとってくるの! 薬草とか、硫黄とか、秘薬の材料になるものを」

 「やくそう? いおう? ひやく? ざいりょう?」

 「……わからないわよね、あんた平民だし。それはいいわ。これはパスね。次が一番大事。主人を守ることよ!」

 「ぼくは、ルイズをまもる!!」

 エイトはうなずき、元気に返事をした。

 「やる気はすごく感じるけど……」

 今ひとつ頼りないわね……ま、しょうがないか。と、ルイズはため息をつく。
 こんな子供に、護衛など期待できないだろう。

 「後は……明日にしましょう。朝になったら起こして……それから」

 ルイズは衣服を脱ぎ、エイトに放る。

 「これ、洗濯しといて。そこの籠の服と一緒に……」

 「せんたく?」

 きょとんとした顔でエイトは動かない。

 「……あんた、洗濯もわかんないの? 今までどんな生活してたのよ……。朝になったら、メイドにでもやり方教わりなさい」

 「わかった。メイドにおそわる」

 「なら……今日はもう休むわ。あんたは床よ」

 ルイズは床を指差す。

 「毛布くらいなら貸してあげ……って」

 ルイズが毛布を持って声をかけた時には、エイトはひっくり返るようにして床に寝転がっていた。
 すぴーすぴーと寝息をたてている。

 「寝つきいいのね……?」

 ルイズは呆然としながら、自分もベッドで眠りについた。


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